個人事業主の税金。制度を知り上手く活用することで正しく節税を

ひとくちに個人事業主の税金といってもさまざまな種類があります。正しい申告の方法や納税の時期を知るとともに、節税のためのさまざまな方策を知ることで納税の金額に大きな差が出てきます。節税のための制度を知り、賢く活用していきたいですね。

目次

個人事業主が払う税金の種類について

2年間納めなくてよい消費税

消費税には課税事業者と免税事業者があります。消費税は2年前の売上高を元に計算され、2年前の売上が1,000万円を超えた場合に課税事業者となりますので、開業から2年間は課税事業者になることはありません。

控除される個人事業税

個人事業税とは、所得税などとは別に個人事業を営むものに対してかかる税金で、国税である所得税や消費税と異なり地方税となります。納付も年に2回に別れていて、納付時期は8月と11月です。

個人事業税の計算においては後述する青色申告特別控除は適用されませんが事業主控除があり一律290万円が控除されます。

支払った税金というのは通常は経費にはなりませんが、個人事業税に限っては租税公課として支払った年に経費計上することで控除を受けることができます。

1年間の所得で決まる所得税

所得税は前年の所得に対してかかる税金です。少し分かりにくいかもしれませんが、税法上は収入と所得はまったく別のものです。個人事業主の収入とは簡単にいえば売上のことで、売上に対して税金がかかるわけではありません。

例えば、売上が1,000万円あっても赤字なら所得税は0ということになります。まず売上高から仕入れなどにかかった原価を引き、そこで求められた粗利益から事業を行うのに必要であった経費を引きます。この利益から税法上認められている各種の控除を引いた金額が所得となり、その所得金額に対して課税されます。

法人と違い個人事業主の場合の営業年度は1月1日から12月31日までで固定されており自分で決めることはできません。従って、この期間の所得を翌年の2月16日から3月15日に申告して3月15日までに納税をします。ただし青色申告を選択している場合には、赤字を翌年以降に繰り越すことができます。

自分で計算する必要が無い住民税

住民税とは、都道府県が徴収する都道府県民税と、市町村が徴収する市町村民税(東京23区は特別区民税)を合わせた総称になります。

住民税については所得税のように自分で計算して申告する必要はありません。確定申告された金額を元に自治体が税額を計算して請求をしてきます。

場合によって支払う固定資産税

固定資産税とは毎年1月1日現在の土地、家屋、および償却資産の所有者に対し、その固定資産の価値をもとに算定される税額をその固定資産の所在する市町村が課税する税金になります。

当然それらの資産を保有していなければ課税されることはありません。

個人事業主の税金の納め方

税務署に確定申告を出す

個人事業主は、税金を収めるための所得を自分で計算して確定申告という形で翌年の2月16日から3月15日までの間に、税務署に前年度の所得と税額を計算して申告をします。
申告には白色申告と青色申告があり、簡単にいうと申告手続きが簡単だが節税メリットが少ないのが白色申告、手続きが大変だが節税効果が大きいのが青色申告です。

申告の方法は持参、郵送のほかe-taxによる電子申告があります。持参の場合確定申告期間、特に3月に入ってからは税務署が非常に混み合いますので、なるべく早い時期に申告を済ませたほうがいいでしょう。

確定申告は税理士に依頼することは可能ですが、自分で行う場合、特に青色申告ですと申告書の作成に1カ月近くかかることもありますので早目に準備をしましょう。

税理士に依頼しない場合、各地に青色申告会という会があります。入会すると、作成の代行はありませんが色々な質問に答えてくれたり、出来上がった申告書のチェックをしてもらうことができますので、自分で青色申告をしようとする場合入会を考えてもいいでしょう。

申告時に計算された所得税の納税期間は3月15日までですので期限ぎりぎりに申告書を提出した場合は、ただちに納税ということになります。

振込やコンビニ払い

納税の方法はいくつか用意されています。もっとも手軽なのは銀行振替で「口座振替依頼書」を提出しておけば指定した口座からの振替で納税が可能です。

また納税額が30万円以下であればコンビニでの支払いも可能となっています。電子申告をした場合はPay-easyで支払うこともできるようになっていますので、もっとも都合のいい納税方法を選択するといいでしょう。

個人事業主が支払う税金を少なくする方法

白色申告から青色申告に変更する

個人事業を開業して、特に何も申請をしなければ白色申告事業者となります。
白色申告の場合事前の届けは不要で帳簿付けが単式簿記でよく、確定申告のときの提出書類も青色に比べて若干少なくて済みます。

節税するほどの所得も無く、帳簿付けが面倒という場合は白色でも特に差し支えありませんが、所得が増えてきた場合には青色申告の方が控除額が大きく節税メリットがあります。

青色申告の場合、青色申告特別控除という控除が基礎控除と別に受けられます。
青色申告特別控除の金額は65万円ですので節税効果は非常に大きいでしょう。また事業年度で赤字が発生した場合、その赤字を翌年に繰り越すことも可能です。

記帳は複雑ですが会計ソフトなど簿記の知識が無くても青色申告に必要な記帳ができる方法はいろいろとあります。

また、青色申告の場合には青色事業専従者給与として家族に支払った給与を経費にすることが可能です。
白色申告の場合には専従者控除として配偶者86万円、その他の親族50万円とあらかじめ控除できる給与額が決まっています。

さらに、貸し倒れ引当金を経費にすることも認められています。これは掛売りの場合の貸し倒れに備えて積み立てておく資金のことです。
白色でも認められる部分はありますが、青色申告に比べて制限が多くなっています。

青色申告を受けようとする場合は、最寄りの税務署で「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
新規に開業した場合は1月16日以降に新規開業した場合は開業した日から2カ月、その他の場合でその年の3月15日までに提出する必要があります。

経費を見直す

所得は収入から原価、経費を引き、各種の控除を引い金額を元に算出されます。つまり経費が大きければ利益は減り税額も減るということになります。

しかし単純に経費が大きいということは、本来の事業の利益を減らしてしまうことになりますから、それでは本末転倒になります。
もちろん使っていないお金を経費計上することはできませんが、使ったお金を正しく経費に計上することで税額を減らすことが可能です。
言い換えれば本来経費に計上できるはずの金額について、漏れのないように経費計上することで節税ができるということになります。

経費に参入できるお金というのは、意外と多岐に渡っています。自宅を事務所代わりに使用していれば、家賃や水道光熱費も一部経費に参入できますし、電話代なども参入できるものがあります。
知識が不足していると本来経費にできるものを経費にできず、その分税金を多く払うということになりますので正しい知識を身に着けて節税することが重要です。

ただし、なにが経費になり、なにが経費にならないかは判断が難しく迷うことも多くありますので、必要なときには税理士や青色申告会などの専門家の助言を受けるようにしましょう。

経費の領収書は提出義務はありませんが、保管義務がありますので無くさないように決められた期間保存するようにしましょう。
1年を通すと領収書はかなりの枚数になりますし確定申告の際に見直しが必要な場合も出てきますので、できれば費目別に分けて保管するようにするといいでしょう。

小規模企業共済に加入する

小規模の個人事業主にとってメリットの大きい制度に小規模企業共済という制度があります。個人事業主の場合は当然廃業時に一般企業のような退職金がありません。
小規模企業共済はそういった個人事業主などが積立をしておいて廃業時に退職金のような形で積立掛け金に応じた共済金を受け取れる制度です。

個人事業主の場合、小規模企業共済の掛け金は全額が所得控除となりますので、掛けた分だけ節税できるということになります。貯金のように積み立てると、その分だけ税金が安くなるという制度です。

ただし、積み立てる時は税額が控除されますが、受け取るときには課税されます。ですが税額は事業所得に比べて大幅に安くなりますので節税効果は大きいでしょう。

個人事業主が税金を払えない場合

猶予制度を使う

個人事業主の納税の場合、納税は事業年度の翌年になります。前の年の所得に対して翌年に支払う形ですので、納税の時期には現金を使ってしまっていて支払いが難しいというケースもあるかもしれません。

期日までに納税が難しい場合、1年間に限り換価、納税が猶予される可能性がある制度があります。換価の猶予とはすでに差し押さえられている、あるいは今後差し押さえの対象となりうる財産の換価処分を猶予するというもので、納税猶予というのは1年間の期限に限り納税が猶予されるというものです。

いずれも要件が厳密に決まっており、かつ担保の提供が必要であるなど敷居が低い制度ではありません。

税務署に相談する

納税が難しい場合は、まずはとにかく税務署に相談をすることです。納税に関しては税務署は個別に応対をしてくれますので、いきなり差し押さえをしてきたりはしません。支払いが難しいと思ったら、まずは税務署に相談することが重要です。

その上で現在の資金的な状況、事業の状況や見通しなどを説明すれば税務署の方でも分割などの支払い方法を提示してくれることもあります。

猶予や分割については税務署側が決めることですので、心証というものも大事です。支払う意思を見せてきちんと説明をすれば、柔軟に対応してくれることも多いですので、まずは相談をするようにしましょう。そして分割などの約束をした場合には、必ずその約束を守るようにして下さい。

督促や電話連絡等を無視することは何の解決にもなりません。税金に関しては絶対に逃げることはできません。支払いの意思を見せずに督促を無視すると心証を悪くするだけでなんのメリットもありませんので、それだけは絶対にやめた方がいいでしょう。

納税が遅れた場合どうなるか

延滞税がかかる

税金が定められた期限までに納付されない場合には、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。納付期限は2段階に分けられていて、納付期限より2ヶ月以内に納めた場合と、納付期限より2カ月以上経過してから納めた場合に分かれます。それにより延滞税率も変わります。

当然2ヶ月を越えると延滞税率はかなり高くなりますので注意が必要です。

差し押さえられる

税務署からの督促を無視していると、財産の差し押さえがおこなわれます。一般の金融機関やノンバンク、カード会社などの差し押さえの場合は、まず裁判が行われ、裁判所の判決があってからはじめて差し押さえが実行となりますが、税金の差し押さえは事前に予告が来るだけでただちに実行されます。

個人事業主の差し押さえについては、給与所得者の差し押さえのように各期間ごとに支払われる給与の1/4までといった、差し押さえ金額の上限が定められていません。その差し押さえによって生活ができようができまいが関係なく、銀行口座に入金されたお金が全額差し押さえられてしまいます。

また個人事業の所得税の滞納であっても、滞納者に帰属している財産はすべて差し押さえの対象になりますから、事業に関係のあるなしに関わらず差し押さえが行われます。
ただし家族の財産については滞納者に帰属しているわけではありませんから、対象ではありません。

場合によっては、その時点で倒産や生活の破綻など死活問題になることもありえますので、十分注意をしてください。また、税金については、例え破産をして同時廃止等の決定を受けたとしても免除にはなりません。どのような状況に陥ろうとも、必ず支払わなければなりませんので、差し押さえなどの事態になる前に必ず税務署に相談をするようにしましょう。

銀行の借り入れができなくなる

個人事業主などの小規模事業者が銀行から借り入れを行う場合、基本的には日本政策金融公庫や保証協会の保証付き貸付制度を利用することになります。そういった公的な性質を有した機関からの借入の場合、必ず税金を滞納していないことが要件に入ってきます。

もちろん銀行やノンバンクが独自の審査で貸し付けるのであれば滞納をしていようが関係はありませんが、事実上そのような貸付はありえませんので、税金をすべて納税するまでは借り入れはできません。

滞納をした税金の支払いをするための借り入れだったり、差し押さえをされてしまって取引先への支払いをする資金が無くなってから借り入れをしようとしても借りることができませんので、注意が必要です。

個人事業主の納税は義務

個人事業主に限った話ではありませんが、納税は国民の義務です。給与所得者の所得税は、給与の支払い時点で源泉徴収されますが、個人事業主の場合は、所得の確定もそれに伴う納税もすべて自分で行わなければなりません。

逆にいえば、不正が入り込む余地があることにもなりますので、個人事業主ひとりひとりの意識が重要です。
納税は憲法で定められた3つしか無い国民の義務のひとつです。正しい納税を行っていくことを心がけたいですね。

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