「厚生年金保険料」の仕組みとは?保険料の計算や納付方法を知ろう

厚生年金保険料について詳しくご存じでしょうか?保険料の計算の仕方や、納付方法がいくつかあるため戸惑うことがあるようです。厚生年金には、どのようなものがあるかを理解することが大切です。厚生年金保険料の仕組みを知り、今後に役立てていきましょう。

目次

厚生年金保険料について

厚生年金保険の適用事務所と被保険者

厚生年金保険の適用を受ける事務所を適用事務所といいます。事業所単位で適用されており、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」に大きく分けられています。強制適用事業所は、法律により、事業主や従業員の意思に関係なく、厚生年金保険への加入が義務づけられています。

主に、製造業や土木建築業、運送業、物品販売業などの事業を行い、5人以上の従業員が存在する場合に使用される事業所です。任意適用事業所は、強制適用事業所に含まれていない事業所で任意で加入することができます。日本年金機構の許可を受け、事業で働く半数以上の人の同意が必要です。

一方、厚生年金保険に加入している適用事業所で働いている70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無に関係なく、厚生年金保険の被保険者の対象となります。

厚生年金保険料率の引き上げについて

厚生年金の保険料率は、年金制度の改正により、平成16年から少しずつ引き上げられてきました。引き上げの要因は、少子高齢化による年金制度を安心して利用していくことができるように見直しを行ったことがきっかけです。

そのため、厚生年金の保険料率は、平成16年10月の13.934%から毎年0.354%引き上げられたそうです。しかし、長期の年金制度の見直しにより、平成29年9月に引き上げが終了したと厚生労働省による発表がされています。平成29年9月分以降からは、厚生年金保険料率が18.300%で固定と改正されています。

また、厚生労働省のホームページでは、「厚生年金保険料率」が掲載されています。そのほか、日本年金機構のホームページでも、「厚生年金保険料額表」が掲載されています。保険料の引き上げの詳細は、厚生年金保険料額表を確認するとよいでしょう。

厚生年金保険料額の計算方法

厚生年金保険料は、毎月の給与と賞与に保険料率をかけて計算されます。毎月の給与と賞与の計算方法は、異なります。平成29年9月以降の厚生年金の保険料率は、18.300%です。毎月の給与に対しての保険料額は、「標準報酬月額×保険料率」という計算方法で求められます。標準報酬月額は、毎月の基本給に残業手当や通勤手当などが含まれています。また、毎年1回7月に4月、5月、6月の平均給料額をもとに決定されます。

賞与に対しての保険料額は、「標準賞与額×保険料率」で求めることができます。標準賞与額は、一回の賞与額から1000円未満を切り捨てた金額を指します。標準賞与額は、ボーナスや年末手当など年3回以下の支給の場合を対象としています。そのほか、一時的に支給される場合に標準賞与額が当てはまります。

保険料は事業主と被保険者が半分ずつ負担

厚生年金の保険料は、事業主と厚生年金保険に加入している被保険者が半分ずつ負担をします。そのため、会社に勤めている場合は、給料明細書の厚生年金の金額が控除額と異なります。保険料は、給料から天引きされる仕組みになっています。厚生年金保険料は、厚生労働省が発表している「標準報酬月額表」を見ながら保険料率をかけ、計算されています。保険料率をかけた金額が給料から天引きされるわけです。

厚生年金保険料を納付する場合、日本年金機構(年金事務所)が行う決まりがあります。事業主は、毎月の給料や賞与から保険料を差し引いた金額を、会社負担分とあわせて納付しなければいけません。納付期限は、翌月の末日までに納める必要があります。たとえば、5月分の厚生年金保険料の納付期限は、6月末日と決められています。

厚生年金保険料の納付について

保険料の徴収を行う日本年金機構

日本年金機構は、厚生年金や国民年金にかかる運営業務を行っています。保険料の徴収や年金の給付などの年金事業です。主に、保険料の徴収を行う場合は、納付期限までに納付がされないときが対象です。電話や文書にて来所を求めたり、事業所を訪問し、早急に納付を行ってもらえるようにします。また、督促状を送付し、期限までに支払いがない場合は、滞納処分という形をとります。滞納処分は、延滞金がかせられます。最悪の場合は、差押えの対象となることがあります。

そのほか、滞納金額が高額で悪質な事業所に対しては、国税庁に徴収を任せることがあります。国税庁は、「納付指導」という形をとり、できるだけ早く滞納額を返すことができるように計画を立てます。このように、納付期限を過ぎてしまうと大変なため、期日をしっかり守るようにすることが大切です。

翌月の末日までに納める

厚生年金保険料の納付期限は、翌月の末日までに納めなければいけません。例えば、8月分の厚生年金保険料は、その月の被保険者の状況や標準報酬月額をもとに9月10日頃に確定されます。その後、10月20日頃に「保険料納入告知書」が送付され、10月31日が納入期限となります。

納入期限が過ぎてしまった場合は、延滞金が発生することもあるため、気をつけなければいけません。納付期限は、必ず守るようにし、難しい場合は年金事務所へ相談するとよいでしょう。

保険料納入告知額通知書と保険料納入告知書

厚生年金保険料を口座振替によって納付した場合、年金事務所から「保険料納入告知額通知書・保険料納入告知書」が送付されます。口座振替を受理したことや、厚生年金保険料の合計負担額、児童手当拠出金の金額などが記載されています。保険料納入告知額通知書・保険料納入告知書は、全部で3枚につづられています。一枚目は領収済通知書、2枚目は領収控、3枚目は納入告知書(納付書)・領収書になっています。記載金額を確認し、指定されている場所に納付されているかも必ず確認しましょう。

厚生年金保険料の納付方法

口座振替で納める

厚生年金保険料は、口座振替で納付する方法があります。口座振替で納付したい場合は、事業主が厚生年金の「保険料口座振替納付(変更)申出書」に記入、押印を行います。その後、金融機関で確認印を受け、所在地を管轄する年金事務所や事務センターに持参、または、郵送をします。厚生年金の保険料口座振替納付(変更)申出書は、厚生年金の納付について、口座振替で納付したい場合や、口座振替をする金融機関を変更したい場合に行う手続きです。

会社の場合、口座振替をするときには、会社名義でなければ口座振替をすることは原則としてできません。ただし、金融機関との相談で許可を得ることができれば、代表者の名義から口座振替をすることができるようです。

金融機関の窓口で納付

厚生年金保険料は、金融機関の窓口で納付することができます。金融機関の窓口で納付する場合は、納付書をもとに支払いをする「現金納付」があります。納付期限は、納付対象月の翌月末日までと定められています。金融機関で、納付書を持参し、納めることとなります。金融機関での納付は、納付書の期限があるため、余裕があり、納付忘れや期限に遅れてしまうことがあります。納付期限を過ぎてしまった場合は、金融機関で新たに納付書を発行することができますが、必ず期限を守るように気をつけましょう。

インターネットバンキングなどの電子納付

厚生年金保険料は、電子納付での支払いをすることができます。インターネットを利用したインターネットバイキングや、携帯電話を利用したモバイルバイキング、電話の音声案内によるテレフォンバイキングなどの納付方法があります。これらの納付を行うには、納付する前に金融機関との契約を結ばなければ納付することができません。

電子納付を利用する場合は、保険料納入告知書を確認する必要があります。保険料納付告知書に記載されている情報をもとに納付を行います。保険料納付告知書の情報とは、「収納期間番号」や「16桁の納付番号」、「6桁の確認番号」を使用し、手続きを進めていきます。電子納付での保険料を支払った場合は、領収証書が発行されません。そのため、必要な方は、金融機関の窓口で納付するとよいでしょう。

保険料や年金額の計算に用いる標準報酬月額について

標準報酬月額の対象となる報酬

厚生年金保険料は、標準報酬月額をもとに金額が決定します。標準報酬月額の対象範囲は、基本給や通勤手当、年4回以上の賞与など広い範囲が定められています。一方、標準報酬月額の対象に含まれないものは、年3回まで支給された賞与や出張手当などがあります。

厚生年金保険料は、被保険者の給与を標準報酬月額の等級にあてはめることで、保険料が計算されています。一度決められた保険料額は、その後1年間使用される決まりがあります。毎年、改定されるため、厚生年金保険料が変わることがあります。

31等級からなる標準月額表

厚生年金保険は、31までの等級があり、等級によって厚生年金保険料が決められています。原則として、4月、5月、6月の3か月間の平均給与をもとに等級が決定します。厚生年金の保険料率は、年金制度の改正によって、少しずつ引き上げがされていたといわれています。

平成29年9月より引き上げが終了し、保険料率が18.3%で固定されています。厚生年金保険料は、「厚生年金保険料額表」を確認するとよいでしょう。等級や報酬月額など必要なことが記載されています。厚生年金保険料の全額分や折半額も等級によっての金額も記載されています。

標準報酬月額の決定と改定

初めて加入するときの「資格取得時決定」

入社などによって、初めて厚生年金の被保険者となったときは、「資格取得時決定」を行います。被保険者が資格取得したときの報酬により、一定方法で報酬月額を決定します。資格取得月からその年の8月までの各月の標準報酬と定められています。資格取得時決定の算定方法は、「月給や週休の場合」と「日給や時給の場合」、「その他」の項目に分けられています。月給や週休の場合、被保険者の資格取得日現在の報酬額をその期間の総日数で割り、その額を30倍した額にして報酬月額とします。標準報酬月額等級表により、等級や標準報酬月額が決定します。

日給や時給の場合は、被保険者の資格取得をした月の前一か月間に、同じ事業所や同じ業務、同じ報酬の従業員が受けた報酬額を平均した額により、標準報酬月額が決定されます。また、そのほかの場合、これら以外の方法での決定が難しい場合には、その地方での同じ業務や報酬の従業員が受けた報酬をもとに決まります。資格取得時決定の届出は、事業主が被保険者を雇用した日から5日以内に、「被保険者資格取得届」を日本年金機構へ提出します。

毎年決まった時期に行われる「定時決定」

定時決定は、厚生年金の被保険者の報酬と標準報酬月額に差がでないようにするため、事業主は7月1日現在での全被保険者の4月、5月、6月の3か月間の報酬月額を算定基礎届により届出をします。厚生労働大臣は、算定基礎届を見直し、毎年一回標準報酬月額を決定しています。見直しされた標準報酬月額は、9月から翌年の8月まで使用されます。

定時決定の対象とならない場合は、6月1日から7月1日の期間内に資格取得をした方です。また、7月、8月、9月の月に改定が行われる方も対象外となります。随時改定や育児休業を終了した際の改定、産前産後の休業を終了した際の改定があてはまります。

昇給などで大幅に変動したときの「随時改定」

被保険者の報酬が昇給や降給、ベースアップ、休業手当の支給などによる固定的賃金の変動に伴い大きく変わる場合があります。このようときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定する「随時改定」が適用されます。

随時改定が行われるときは、3つの要件が満たされている場合です。3つの要件とは、「固定的賃金の変動」や「3か月間支払基礎日数が17日以上」、「3か月間の平均報酬の等級が、これまでの等級との間に2等級以上の差がある」場合が対象です。随時改定を行わないケースは、固定的賃金と報酬の増減が一致していない場合には行われません。

随時改定の期間は、1月から6月の期間に行われた場合、改定月からその年の8月まで有効です。また、7月から12月の期間に行われた場合は、改定月から翌年の8月まで有効な標準報酬月額となります。

算定が困難なときの「保険者決定」

保険者決定は、通常の定められた方法によって、報酬月額を算定することが困難な場合や不当な場合は、厚生労働大臣が報酬月額を算定し標準報酬月額を決定します。算定が困難な場合とは、病気や欠勤などにより、4月、5月、6月に報酬を受けない場合は、これまでの標準報酬月額をもとに決定します。また、報酬の支払基礎日数が4月から6月までの3か月間とも17日未満も同様です。ただし、特定適用事務所に勤務する短時間労働者は11日と定められています。

一方、算定が不当な場合は、定時決定や資格取得時決定、育児休業等終了時の改定、随時改定のそれぞれの算定額が不当に当てはまります。厚生労働大臣により、標準報酬月額が決定されます。

育児休業後の「育児休業等終了時改定」

育児休業等終了時改定は、随時改定に当てはまらなければ、保険料は高いままとなってしまう場合に一定の要件を満たしていれば、随時改定の特例の措置がとられます。要件は、育児休業等終了日において、3歳未満の子を養育している場合です。また、産前産後休業終了日において、産前産後休業の対象となる子を養育している場合も対象となります。そのほか、事業主が申出を行うことと定められています。申出がない状態では、標準報酬月額の改定が行われないことがあります。

改定の方法は、休業終了日の翌日が属する月とその翌月、翌々月の3か月間の報酬の月平均を標準報酬月額等級表にあてはめて、等級と標準報酬月額が決まります。ただし、報酬支払基礎日数が17日未満の月は含まずに平均します。

厚生年金保険料の標準賞与額

1回150万円を上限とする標準賞与額

標準賞与額は、実際の税抜き前の賞与額から1千円未満の端数を切り捨てた額のことをいいます。支給一回の賞与につき、150万円を上限としているため、150万円を超える場合は150万円となります。たとえば、夏季ボーナスが200万円、冬季ボーナスが200万円だとします。厚生年金保険料は、一回の上限が150万円と決められているため、夏と冬ともに、上限を超えてしまう50万円に関しては、保険料の対象とはなりません。

標準賞与額の対象は、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の回数で支給されるものであると決められています。また、事業主は、賞与を支給した場合、支給日から5日以内に「厚生年金保険被保険者賞与支払届」を年金事務所へ提出しなければいけません。

標準賞与額の対象となる賞与

賞与の対象は、賞与やボーナス、期末手当、年末手当、夏(冬)季手当、などが含まれています。そのほか、越年手当や勤勉手当、繁忙手当などです。被保険者が労働の対象として、年3回以下の回数で支給がされる場合や、一時的に支給される場合を指します。また、自社製品の支給など現物支給も賞与の対象となります。

ただし、臨時に支給される結婚祝い金や、お見舞金などは賞与の対象に含まれません。年4回以上の支給は、標準報酬月額の対象となる報酬であるため、標準賞与額の対象とはなりません。あくまで、3か月を超える期間ごとに支給されるものが対象範囲です。

休職中の年金保険料と免除について

休職者の年金保険料について

休職中は、会社に出勤していませんが、その会社に在籍しているということを指しています。会社に籍があるため、厚生年金は継続されています。厚生年金保険料は、会社側と本人で半分ずつ支払う決まりがあります。しかし、休職中は、働いていないため収入がありません。そのため、休職中は、会社側が保険料を立替します。保険料額は、休職中であっても休職する前と金額は変わりません。

休職中の厚生年金保険料は、別途徴収をしなければいけません。一旦、会社側が本人が負担する金額を立替、復職時にまとめて本人に請求することがあります。ほかには、会社に対して、本人から毎月の保険料負担分を支払う方法もあるようです。別途徴収の方法は、会社によってさまざまなため、休職する前に確認しておくとよいでしょう。

産前産後休業期間の保険料免除

産前産後休業期間は、厚生年金保険料が免除になります。産前は42日、産後は56日の期間を指します。厚生年金保険料は、事業主の申出により、被保険者分と事業主分は徴収しません。被保険者側から、産前産後休業したいとの申出がある場合に、事業主は「産前産後休業取得者申出書」を記入し、日本年金機構へ提出します。提出方法は、電子申請や郵送、日本年金機構へ持参の方法があります。申出は、産前産後休業をしている間に行わなければ、保険料免除の対象となりません。

厚生年金保険料の免除期間は、産前産後休業を開始する月から終了予定日の翌日の月の前月までです。事業主は、被保険者側が産前産後休業期間を変更した場合や、休業終了予定日までに休業を終了した場合には、「産前産後休業取得者変更(終了)届」を提出しなければいけません。

育児休業等期間中の保険料免除

厚生年金保険料は、育児休暇の場合、免除されます。会社側と本人側は、保険料を支払う必要がありません。育児休業は、満3歳未満の子を養育する場合に使用されるものです。被保険者から育児休業等取得の申出がある場合は、事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出する決まりがあります。申出は、育児休業等期間中に行わなければ保険料は免除されません。

保険料の免除期間は、育児休業等を開始する月から終了予定日の翌日の月の前月までと定められています。被保険者の育児休業等期間が終了予定日の前に終了した場合は、事業主は「育児休業等取得者終了届」を日本年金機構へ提出する決まりがあります。

厚生年金保険料のしくみを知り給与計算に役立てよう

厚生年金保険料は、会社側と本人側で半分ずつ支払うことになっています。事業主は、給与や賞与から被保険者負担分の保険料額を差し引いて、事業主負担分とあわせて納付しています。標準報酬月額や等級などの基礎知識を理解することも大切です。

また、納付方法も口座振替やインターネットバイキングなどいくつか方法があるため、会社側が進めやすい方法で行うとよいでしょう。このように、厚生年金保険料は、計算方法や納付方法に違いがあるため、厚生年金の仕組みをしっかり理解し、今後に役立てていけるようにしましょう。

また、厚生年金保険料の休職は、休職する内容によって、別途徴収か免除の対象になるか異なります。会社側と本人側での確認をしっかり行うことが大切です。

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