会社を設立したときに大切な社会保険の加入や手続き方法。全ての会社に加入義務があるとされています。しかし合同会社は、社員全員が出資者であり有限責任社員であるため、加入の出来ない保険なども。しっかりと理解した上で正しい手続きをしましょう。
目次
合同会社における社会保険加入義務について
原則として社会保険への加入義務がある
社会保険とは、一般的に健康保険と厚生年金の2つの総称として使用されます。雇用保険、労災保険も社会保険にはいります。法人格のある会社・法人であれば株式会社、有限会社、合同会社、社団法人、財団法人など名称・業種問わず加入義務があり、また社長1人であっても報酬が発生している場合は、加入しなければなりません。もちろん強制加入ですので、加入するかどうかを選ぶことはできません。
また合同会社は株式会社や有限会社とは違い、社員全員が出資者であり有限責任社員として構成しています。もちろん社長と同じ代表格の代表社員という方はいますが、合同会社では全ての社員が一般的な社員とは違い、経営に携わる社員なので保険上、少し違った扱いになる場合も。
健康保険は労働者が怪我や病気になった際に、医療費等の負担を軽減させる目的で設けられた公的な保険制度です。厚生年金も老後の生活に困らないよう、老後の収入を補う目的で設けられた公的な年金制度。どちらとも加入することによって、労働期間中も退職後も従業員のためになる制度です。
法人として加入する
社会保険には会社自体が法人として加入し、合同会社であっても会社として加入できます。また従業員の人数などに関係はなく、社長1人であっても報酬が発生している場合は加入しなくてはいけませんし、従業員ごとに加入するかどうかを選ぶこともできません。個人事業主でも一定の条件を満たす場合は、社会保険への加入が義務付けられています。
社会保険の種類
社会保険には4種類ある
社会保険とは社会保障の分野の一つです。一般的には健康保険・年金保険の2つの総称ですが、雇用保険、労災保険も社会保険にはいります。この4種類はそれぞれ加入条件や保険内容が違いますが、加入することによって仕事中、仕事以外、また万が一の場合や、疾病や事故、失業や高齢化などの場合の備え、負担の軽減などにも役立ちます。もしもなにか起こってしまった際には、現金や現物支給などで生活の保障もしてくれます。
種類によって加入条件が異なる
1.健康保険
株式会社や有限会社では、社員は原則として加入義務があります。パートタイマーでも常用的な雇用であれば加入することが義務付けられ、合同会社でも代表社員を含む社員全員に、加入が義務付けられています。会社と被保険者の折半で、給料から天引きされ支払われるのが一般的です。
保険内容は、仕事以外で怪我や病気をした際に、治療費を補填してくれる保険です。加入すると健康保険証が交付され、扶養している家族も一緒に加入することができます。また病気や出産等で会社を休まざるを得なくなった場合などに、一定期間の賃金を補填したり、一時金を支給するといった仕組みがあります。
2.年金保険
株式会社や有限会社では、社員は原則として加入義務があります。パートタイマーでも常用的な雇用であれば加入が義務付けられます。合同会社でも代表社員を含む社員全員に加入が義務付けられています。会社と被保険者の折半で、給料から天引きされ支払われるのが一般的です。
65歳以降年金を給付される場合に、国民年金とは別に老齢年金が上乗せされて支払われる保険です。また万が一障害を負うことがあった際には障害年金を、死亡の際には遺族年金が支払われる仕組みがあります。
3.雇用保険
株式会社や有限会社では、社員は原則として加入義務があります。雇用保険は会社に雇用される社員の為の保険なので、法人の代表者は加入することが出来ません。会社と被保険者の折半で、給料から天引きされ支払われるのが一般的です。
雇用保険はほかの保険と違い、合同会社は社員全員が出資者であり有限責任社員になるため、会社から雇用をされていません。ですので必然的に雇用保険には加入することができません。
保険内容としては、失業をした際に会社事情の失業の場合は6ヶ月以上、自己都合の失業の場合は12ヶ月以上の加入をしていることが条件になりますが、再就職先が見つかるまでの一定期間、失業給付金を受け取ることができます。
4.労災保険
従業員を雇用した時点で必ず加入しなければいけません。労災保険については他の社会保険とは違い、被保険者という概念はなく、全従業員を加入させる義務があります。また労災保険は他の保険と違い、従業員の負担はなく全額が会社負担となります。合同会社も代表社員を含む全社員が加入することができます。保険内容としては仕事中や通勤途中などに怪我や病気をした際に、治療費や治療中にかかる費用などを保障してくれます。
社会保険に関する届け出
事業開始5日以内に年金事務所へ
社会保険は、法人を設立した日から適用となります。原則として法人設立後5日以内に年金事務所への届け出が必要です。合同会社も立派な法人ですので、設立後5日以内の届け出が必要になります。
また、届け出る際に必要な書類は基本的には決まっていますが、管轄の年金事務所や会社の状況などによっても変わってくることがあるため、事前に管轄の年金事務所に電話確認などを行い、しっかりと用意した上で年金事務所で手続きを行いましょう。もし万が一5日以上経ってしまった場合でも、早めに来所すれば追加書類等なく手続きをしてもらえます。
不安な場合は社会保険労務士へ相談を
社会保険のことについて不安な場合は、社会保険労務士に相談をしましょう。社会保険労務士とは、労働関連法令や社会保障法令に基づく書類等の作成を行い、また企業を経営していくうえでの労務管理や社会保険等に関する相談、指導を行える資格を持った方のことです。
社会保険労務士の方は、いわば社会保険のスペシャリスト。合同会社は同じ法人格を持つ法人企業であっても、株式会社や有限会社とは少し違った部分があります。もしわからないことや不安がある場合は、迷わず近くの社会保険労務士に相談をし、指導を行ってもらうことで正確かつ迅速に社会保険等の手続き、申請を行うことができます。
社会保険未加入での罰則や追徴金
義務が発生した日から2年間に遡って追徴
基本的には、法人設立後5日以内の加入が義務付けられています。しかし、なんらかの原因や故意によって未加入であり、そのことが年金事務所の調査等により発覚した場合、会社は該当する者の社会保険料を2年間に遡って追徴されます。この場合、事業所と被保険者で折半し支払います。
また追徴が決定した際に、該当する労働者が退社していた場合でも支払い義務はあるので、会社が全額負担をする場合や、連絡がつく場合には労働者の方と折半などをして支払うことになります。
健康保険法で定める罰則規定がある
健康保険法では第208条、事業主が正当な理由がなく次の各号のいずれかに該当するときは、6ヶ月以下の懲役または50万円の罰金に処する。とあります。合同会社も同様で未加入であり、また悪質な場合などには健康保険法によって処罰される場合が出てきます。
督促の期限を過ぎると延滞金がかかる
社会保険に加入していても保険料が未納の場合は、ペナルティとして延滞金がかかります。本来の納付日までに納付しなかった際に、督促状が届きます。その催促状に記載されている指定期限日までに完納しなかったとき、納期限の翌日から完納の日の前日までの期間の日数に応じ、保険料額に一定の割合を乗じて計算された延滞金がかかることに。
法人を設立したら忘れずに加入手続きを
社会保険は、法人企業であれば加入が義務付けられた強制加入の保険です。もちろん合同会社も社員の人数に関わらず報酬が発生している社員が1人でもいる場合には、法人としての加入が義務付けられています。
社会保険には4種類あり、雇用保険については合同会社は社員全員が出資者であり有限責任社員のため加入することはできませんが、残りの保険には加入することで仕事中や仕事以外、また万が一や老後にしっかりと備えることが出来ます。
会社を設立すると、さまざまな事業所への届け出や手続き等を行わなくてはいけません。法人設立後5日というのは期間としては短く、書類の用意などを行わなくてはならない為後回しにしてしまいがちですが、法人設立後から今後のことも考え、できる限り早めに加入しましょう。