合同会社の資本金を考える。準備するべき資本金額と注意点とは。

合同会社の資本金は自由設定のため、これから起業しようとする多くの方が、現実的に必要な資本金はいくらなのか悩んでいます。そこで、準備するべき資本金とその注意点を探りました。事業計画や内容に合った資本金で安心なスタートダッシュを切りましょう。

目次

合同会社の設立に必要な資本金の内訳

事業に必要な半年分の運転資金

会社設立の際の資本金の制限がなくなり、1円からの資本金でも合同会社を設立できるようになりました。法律上、資本金は自由に設定できるため、資本金をいくらに設定するか、多くの方が悩むところです。合同会社は出資者が社員となるため、資本金の金額を多くするということは出資者の負担が大きくなるということになります。

しかし、あまり過少に設定をすると会社の信用度にかかわることに。一般的に合同会社の資本金は事業に必要な運転資金の半年分程度を基準に設定するとよいといわれています。資本金とは寝かせておく資金ではなく、合同会社設立後は事業の運転資金として自由に使えるお金です。

資本金を決定するということは、合同会社設立後のことも中長期的に考えなければならず、事業計画を見直すことに繋がります。会社の信用にかかわる大切な決定ですので慎重な判断が必要となります。

オフィスや店舗などの維持費

合同会社を設立して運営するにはオフィスなど、会社の住所となる場所を決定する必要があります。飲食店や美容サロンなどの業種によっては店舗が必要です。

会社の住所となる事業所を設置するための賃貸契約に関する支出、補償金や敷金など必要な支出を資本金で賄います。一人で自宅開業という場合であればその分、コストカットできますが、複数人で起業をする場合にはやはり別途事業所が必要になるケースが多いので、その分のランニングコストは考えておきましょう。

備品の雑費やパソコンなどの通信費

開業する際には備品をそろえる必要があります。机や椅子などのオフィス家具、パソコンに電話機やコピー機などの電子機器の他、事務用品や名刺など、オフィスを構えるための雑費が必要になります。また、業種によっては店舗を構えるための内装工事が必要になります。

そのほか、事業を運営するにあたり、ホームページの開設、パンフレットなどの広告作成費用など営業促進のための費用も侮れません。しっかりと資金は準備しておきましょう。

登記に必要な創立費

合同会社設立の際に登録免許税6万円、法人の活動を定めた根本規則である「定款(ていかん)」を提出する際に貼る収入印紙代4万円(電子定款の場合は不要)の創立費が必要になります。

資本金額に1,000分の7を掛けた金額の税額が6万円に満たない場合は登記件数1件につき6万円の登録免許税が必要になります。それ以上は資本金に応じた創立費が必要になります。

パートやアルバイトの人件費

社員やパート、アルバイトを雇う場合には人件費を支払わなければなりません。開業して間もないころ、すぐに売り上げが上がるとは限りません。業種によって異なりますが、売り上げた商品が月末締め翌月末払いの取引だとしたら、商品を納品して支払いがあるまでにおよそ2ヶ月かかることになります。

取引先や顧客からの入金が無ければ自己資金で人件費を賄うことになりますので、資金に余裕をもって会社を設立するのがよいでしょう。人件費が支払えなければ信用も人材も無くしてしまいますので、余裕をもってしっかりと計画を立てることが大切です。

合同会社の資本金を決める時の注意点

少ない金額では信用面でマイナスになる

現在は、合同会社の最低資本金額が1円からとなっており、会社の設立のハードルが以前よりも低くなっているといえます。しかし、創立費用を考えると、現実的に1円〜10万円の設立費用は現実的ではないでしょう。設立間もない会社には「信用力」が低く、多くの取引先はその会社の資本金を基準に信用できる会社かどうかを測ります。(資本金額が取引の信用度に影響のない場合にはこの限りではありません)

また、銀行口座開設の際には資本金額によっては口座を開設できない場合も出てきたり、融資を受けたい場合にも少なすぎる資本金では融資が受けられない、受けられても融資金額が限られるなど大きく影響します。

例えば、金融機関の融資の多くは資本金の要件がつけられており、創業時の自己資金額の2倍までの金額しか申し込みができないなどの制限があります。

少なすぎる資本金は信用面のマイナスが生じるということを覚えておきましょう。信用面を考えると資本金は多いほうが有利に働く傾向にあります。自身の起業する業種はどうなのか、しっかりと下調べをして計画を立てましょう。

資本金を極端に多くしない

合同会社は出資者が社員となるため、資本金を多くしようとするとそれだけ社員の負担額が増えることになります。また、資本金が1千万円のボーダーラインで納めると税金が変わります。コストカットを考え、以下の観点から資本金を決定するのもいいでしょう。

法人住民税

資本金が1千万円を超えると地方公共団体が徴収する法人住民税の均等割が約14万円程高くなります。

消費税

資本金が1,000万円未満の場合は設立から最大2年間、消費税は免除されます。資本金1,000万円以上の場合はこの免除は受けられません。

取引する企業の平均資本金額を把握しておく

合同会社は会社よりも人を中心に考えた会社形態です。最低限の資本金でも代表者本人の信用度で取引できる場合も多いでしょう。しかし、取引先の新規獲得といった場合には少ない資本金では不利に働く場合が出てくるのは覚悟しておきましょう。

現在は合同会社の法人形態で起業をする方が増え、その認知度は上がってきているとはいえ、株式会社よりはまだまだ認知度、信用度は劣るところです。

ほとんどの企業は初めて取引を行う際には信用度をチェックする際に、資本金はチェック項目の上位に入ります。設立間もない合同会社の場合は特に、実績が見えないため「支払い能力」「納品能力」を不安視されがちです。取引先になってもらいたい会社の平均資本金をしっかりと調べ、業界の相場を把握しておくといいでしょう。

許認可事業の場合は定められた基準に従う

合同会社の場合でも許認可事業の場合は資本金の要件をクリアしなければ許認可を受けられませんので注意しましょう。一般建設業(自己資本5百万円以上)、一般労働者派遣事業(事業所ごとに2千万円)、旅行業(3千万円以上)などです。

また、一般貨物自動車運送事業は許認可の申請直前の自己資金が、規定の必要資金額を上回っている預金残高の証明書やその他の書類が必要になります。

「せっかく合同会社を設立したのに資本金が足りなくて事業ができない」といったことの無いように、しっかりと下調べが必要です。許認可事業は業種によって細かい規定がありますので、必ず事前に申請先に確認を取っておきましょう。

不安な場合は行政書士や司法書士に相談する

合同会社設立は株式会社に比べて提出書類も少なく簡単にできるといわれています。しかし、いざ自分で合同会社を設立の手続きをしようとすると、何かと不安になることもあるでしょう。

合同会社の手続きには何かと時間が取られるものです。直接的に売り上げなどに繋がらない作業が嫌い。そのような方は、自分で無理に手続きをするよりも、専門家に任せたほうが時間も取られず、安心して自身のこれからの事業に専念できます。

会社の必要書類に記載すべき内容が分からない、面倒な手続きの手間を省いて本業に集中したい場合や、許認可の申請や手続きも必要という場合は行政書士や司法書士といった専門家にお任せするのも一つの手段です。資本金の設定や増資についても相談できることも期待できます。

事前無料相談などのサービスを行っている行政書士、司法書士事務所も多くありますので、地域の事務所のホームページを見比べて検討してみるといいでしょう。

合同会社の業種に合った資本金額を設定しよう

合同会社の知名度は年々上がっており、合同会社の設立を考える方が多くなってきました。資本金の設定も自由なので、いくらに設定するかは迷うところです。合同会社を設立する際の資本金は、眠らせておくお金ではありません。資本金は会社を運営するための運転資金となるお金です。事業の内容によって、必要な資本金は大きく異なります。

自身の起業プラン、許認可事業か、リアル個人店舗を合同会社として法人化するのか、さまざまな事業内容により資本金の設定額が大きく異なります。自身の業種に合った資本金を設定して安心な事業運営をし、事業を成功させましょう。

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