定款変更が初めてでも安心。ポイントを押さえて戦略的に計画的に実施

定款の存在は知っていても、実際に触れたことがある人は少ないのでは?いざ、定款変更の際に迷わないように、しっかり知識をつけて、実務にのぞみましょう。定款の変更を戦略的に計画的に行うことで、事業をさらによいものにできるのです。

目次

定款を変更する場合の大切なポイント

元々の定款を書き換えるわけではない

定款とは、簡単にいうと、会社の基本的な決まりを書き記した文書のことです。そして、定款の変更とは、元々の定款を書き換えるわけではないということをまずは覚えておきましょう。会社の設立時に作成された、おおもとの定款は原始定款と呼ばれ、紙媒体であっても電子媒体であっても、そのままの状態で残ることになります。

原始定款は、公証役場に20年間保管され、閲覧したりコピーを取ったりなどが可能になります。こちらは、変更があっても書き換えられることはないため、変更がある場合は、変更点の記録や、現行定款が必要になります。

定款の変更とは、株主総会で決定された定款の変更を、議事録に残す作業からのことをいいます。そして、必要があれば、株主総会での決議後に、法務局にて定款変更に伴う登記変更の申請を行うこととなるでしょう。この一連の作業を定款変更といいます。

法務局にて登記の必要な定款変更

法務局にて、登記変更の申請が必要になる定款の変更事項は、以下のとおりとなります。登記の必要な定款変更は、商号、事業目的、住所、株式、公告方法、取締役会の設置、廃止、支店の移転、監査役、組織変更です。

逆に、これ以外のものは、法務局での登記変更申請は必要なく、株式総会での決定及び議事録の作成・保管まででよいということになります。ただし、多くの項目が、法務局での登記変更を必要としますので、基本的には、登記変更はするものと考えておいた方がよいでしょう。

登記も含めての定款変更となりますので、定款が必要になったときに、手続きが完了していないといったことのないように、注意しましょう。

法務局にて登記が不要な定款変更

法務局にて登記が不要な定款変更は、株主総会での決定を経て議事録を作成し、会社に議事録を保管しておくだけでよいです。ただし、例として、決算期の変更に関しては、税務署への「移動届出書」が、提出書類として必要となるので覚えておくようにしましょう。決算月の変更は、節税対策や、親会社や連結会社と決算月を合わせるなどといった目的が考えられるでしょう。

この際に、特に費用はかかりません。税務署へは提出書類の提出だけでよいので、法務局への変更申請に比べると、かなりハードルの低い作業になります。ただし、決算月の変更に関しては、1年以内に税務署への届け出が必要ですので、注意は必要です。

いずれにせよ、定款の変更には、時間がかかることですので、スケジュール管理は重要であると覚えておきましょう。定款が必要なときに、きちんと変更が終わっているように作業していきましょう。

定款変更は不要だが法務局の登記は必要

定款変更は不要だが法務局の登記は必要といったケースも考えられます。定款には記載のない事項で、登記されている内容に変更がある場合です。役員変更、新役員の就任、重任、辞任、退職、解任等がこれにあたります。また、資本金の増資や減資を行う際にも、登記変更手続きは必要になります。

この場合、株式会社は原資として株式を発行することになりますので、株主総会を開き、募集株式発行の決定を行わなくてはなりません。この場合、「発行可能株式総数」に注意する必要が出てきます。

この、「発行可能株式総数」は会社の定款、または登記簿謄本によって確認できますので、きちんと確認してから手続きを開始しましょう。また、会社の住所についても登記変更手続きが必要になります。ときに住所は、前の住人が登記を変更しておらずそのままになっていることもありますので、変更する際には、確認しておくとよいでしょう。

変更の登記費用はおおむね30,000円から

登記の変更には費用が発生します。おおむね30,000円からと考えておくとよいでしょう。この費用には、法務局へ支払う登記のための費用と、印紙税などがあります。この他に、郵送料などが発生する場合もありますので、そういったことも念頭に置いて手続きを進めましょう。

また、管轄登記所以外への本店移転の場合は、移転先を管轄する登記所分の申請書を作成する必要も生じます。これによって、費用が倍額以上になることがありますので、先に調べておきましょう。さらに、印紙税は、定款が電子の場合は不要になる場合もあります。手続きに必要な費用を、少しでも安く抑えたい場合は事前に調べておきましょう。

また、変更の手続きを司法書士などの専門家に頼んだ場合は、これにさらに専門家報酬がかかる場合があります。これを自分で行う、または、クラウドサービスなどを利用することで、安く抑えることはできます。しかし、手間が増えることと、結果として高くつくことも考えられるでしょう。専門家に依頼することで安心感がありますので、どちらがよいかは、よく検討しましょう。

定款変更には株主などからの議決が必要

定款の変更には、まずは株主総会を開き、株主からの議決が必要になります。そして、この決議を議事録に残すことから、定款変更の手続きを始めることになります。その後、登記の変更が必要なケースと、そうでないケースがありますが、ほぼすべての場合において株主総会の決議は必要になりますので、まずは株主総会と覚えておきましょう。

そして、作成した議事録は会社に据え置く必要があります。必要になったときにすぐ出せるように、きちんと保管しておきましょう。変更後の現行定款も同様にきちんと保管しておきましょう。

定款の変更は社会的な流れで必要になる

会社の事業として加えるホームページの作成

定款の変更は、会社の事業として、必要に応じて行うものです。会社のホームページを持っている場合は、ホームページに定款の変更についてのせ、一般にも見られるようにするとよいでしょう。また、変更をした目的、事業へのかかわりなどを、なるべくわかりやすく知らせることが、株式会社にとっては必要なこととなります。

さらに、株主総会の議事録は、必ず作成しなければなりませんので、これも、ホームページなどで公開する必要が生じるかもしれません。このことから、議事録は早急に作成し、株主への説明責任を果たせるようにしていきましょう。

ホームページは会社の顔ともいえる、大切な情報発信の場ですので、定款の変更や、株主総会での決議など、重要な出来事が発生した場合は、素早く更新するようにしましょう。

相続人による株式の売買

定款に定めることにより、事実上相続人による株式の売買を制限することができます。これはいったいどういうことかというと、定款に定めることによって、相続による株式売買で、会社経営に悪影響を与える可能性を未然に防ぐことができるかもしれないということなのです。特に中小企業にとって、相続人が持つ株式が第3者に売られることで経営に与える影響は大きく、悪影響が懸念されます。

これを防ぐ方法が、定款で「相続が発生した際に、相続人に対して、当該株式の売り渡し請求をかけることができる」と定めておくことです。こうしておくことで、相続人は株式の売り渡しを拒否できなくなりますので、相続によって、経営に多大な影響を及ぼす可能性が低くなります。

特に、経営を株主のみで行っているような企業の場合は、この定めは非常に有効活用できますので、定款になければ、変更して定めておくとよいでしょう。定款の変更は、相続の事後でも可能です。なお、この決まりは会社法に基づいており、実際の株式の売り渡し請求には、期限などの細かな決まりがあります。

定款変更の落とし穴

定款の保管は厳重に行うこと

定款の保管は、厳重に行うようにしてください。会社設立時の定款は、原始定款と呼ばれ、公証人の認証を受けたのち、公証役場にて、20年間は保管されていますので、謄本を請求することはできます。また、法務局でも5年間であれば、登記申請書および付属書類の閲覧が可能ですので、有事の際は、こちらを確認しましょう。

定款が必要になるのは、銀行との取引の際に使用する、助成金または補助金の申請の際に使用するなどが考えられます。このようなときに、紛失しているといったことがないように、定款の保管はきっちりと行いましょう。

また、定款を変更し、法務局などに申請を行わないケースの場合は、社内にしか、定款変更の記録が残らないことになりえますので、こちらも紛失しないように、厳重に保管しましょう。

原始定款と現行定款の違い

会社設立時に、公証役場にて承認された定款を、原始定款と呼びます。こちらは、公証役場にて20年間保管されることになります。こちらは、請求することで、閲覧や写しをもらうことが可能です。そして、会社設立後に書き換え、変更等が行われたものを現行定款と呼びます。

現行定款は、株主総会の決議だけで変更されることもありますので、この場合は法務局への申請などは不要となります。株主総会の議事録などによって、変更が記録される形となりますので、保管を特に厳重に行わないと、変更点がわからなくなる恐れもありますので気を付けましょう。

定款は会社を設立してから時間がたつほどに、紛失などの可能性が高まります。紛失した場合は、株主総会の決議を経て再作成をすることも可能です。しかし、そのようなことがないように、厳重に保管記録するようにしましょう。本来は、いつでも株主などが閲覧できるようにしておく必要のあるものです。

定款変更した定款には原本証明が必要

定款の変更手続きを経た定款には、原本証明が必要になります。原本証明が必要になる場面としては、行政機関などへの書類申請時などが考えられます。これは、助成金の申請などの申請時が多いでしょう。この時に提出した定款が原本と相違ないか確認されることになります。

他に、金融機関との取引時にも定款が求められ、原本証明が必要となることがあります。さらに、公証人の認証を受けた原始定款が求められるケースもありうるでしょう。

定款の原本証明には、原則、現行定款を用いることになります。会社設立以来、1度も定款を変更していない場合は、原始定款を用いることになるでしょう。定款の原本証明は、必要な定款のコピーをすべて揃えた後、「この定款の写しは、原本と相違ないことを証明する。」といった文言を追加し、日付、会社所在地、社名、代表者名を記載します。ここに、代表者印を押印することで原本証明とすることができます。

以上が一般的な原本証明方法となりますが、場合によっては、代表者の直筆の署名が求められるなど、他にも必要事項が出ることがありますので申請時にしっかりと確認しましょう。

定款変更は変更箇所がわかるように保管することがおすすめ

定款の変更は、変更した箇所がわかるように保管をすることをおすすします。株主総会の議事録を、ただ保管していくだけですと、あとで現行定款を見たときに、いつ、どの部分を変更したのかが、わかりにくい場合があります。

そのため、変更点と、目的、変更した日付がわかるように保管しましょう。株主総会の議事録なども、しっかりと保管しておくようにしましょう。定款は有事の際に必要になり、紛失した際の再作成には時間が必要になります。その間に、受けられたはずの融資や助成金が受け取れなくなるなど、不利益を被ることもありますので、大切に保管しましょう。

また、本来であれば、株主や会社債権者などが、いつでも閲覧・謄写できるように保管しておく必要があり、このことは、会社法によって定められています。決して、紛失などしないように、すぐに内容が把握できるよう厳重に保管しましょう。

定款を紛失した場合は総会などの決議を経て再作成をする

定款を紛失した場合は、株主総会などの決議を経て、再作成することもできます。公証役場に保管されていた原子定款や、法務局に申請した際の付属書類などを確認することによって、現行定款を復元できるのであれば、各種手続きに必要な原本をつくる方法がベターです。

どうしても、現行定款を復元できないのであれば、可能な限り集めた資料で、現行定款を推測して復元するしかありません。定款は、株主総会の決議を経れば、いつでも改正できるものであり、法務局などへの届け出は、その後の手続きとなります。つまり、最悪、現行定款の内容がわからなくても、株主総会の決議を得ることで、再作成が可能ということです。

とはいっても、再作成には株主総会の開催から始まり、ある程度の時間を要します。場合によっては、定款が必要なタイミングに間に合わなくなることもありますので、紛失しないように注意して保管しましょう。また、定款が必要なケースが発生したときは、まずはじめに定款の存在を確認するようにするとよいでしょう。

定款変更は会社の成長に伴い必要になる

定款の変更は会社の成長に伴い、必ず必要になってきます。必要になったときに慌てないためにも、今のうちに知識をつけておくと安心です。また、いざ、定款の変更に直面した場合も、しっかりと正しい知識を持って対応すれば、スムーズに手続きを行うことができるでしょう。

また、定款はやむを得ず変更するだけでなく、節税などの目的をもって変更することも可能です。定款変更の目的も併せて考えることで、より有利に事業を行うことができますので、よく勉強しておくようにしましょう。

また、金融機関との取引や助成金や補助金の申請など、定款が必要になる事態が発生した場合は、早めに定款の存在を確認し、備えるようにしましょう。もしも、紛失していた場合にも、対処が可能な場合がありますので、間に合うように準備しておくとよいでしょう。

定款は会社の基本となることが書かれている大切なものですので、保管は厳重に、また日頃からよく勉強しておくようにしましょう。

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