「合同会社を設立することを決めた。」そうなると、定款の作成が必要になりますよね。ですが、定款の作成は、多くの人にとって未経験。不安に感じる点も多いでしょう。まずは、定款について知り、すこしでも簡単な作成方法についても、見ていきましょう。
目次
定款で記載しておくべきこと
必須記載事項について
合同会社(または合資会社、合名会社)を設立する際には、定款を作成する必要があります。合同会社の場合、社員間の信頼関係や結びつきがもともと強い側面があることから、定款の内容は、株式会社に比べると柔軟性がある内容となっています。ですが、記載事項については一定の定めがあります。必須記載事項については、以下のとおりとなります。
☑ 1.会社の商号
☑ 2.会社の目的
☑ 3.会社の本店所在地
☑ 4.社員の氏名や住所
☑ 5.社員を有限責任社員とする旨
☑ 6.社員の出資の目的及びその額
上記の内容を盛り込むことで、合同会社設立の際の定款作成が可能となります。こういった内容を盛り込みつつ、最初から自分で作成するのは非常に大変ですので、ひな形などを利用して作成するなど、工夫して作業を軽減させましょう。
その他記載する事項の例
合同会社設立の際に定款に記載する必須事項の他にも、記載したほうがよいことがあります。会社の事業内容や、社員間の関係によっても大きく変わってきますが、おおむね以下の項目を押さえておくとよいでしょう。
☑ 1.業務執行社員の定め
☑ 2.利益の配当に関すること
☑ 3.事業年度に関すること
こういった内容を、定款で定めておくことで、のちのちのトラブルを防ぐこともできます。合同会社は株式会社のように株主総会などを開く必要がない分、意思決定が柔軟に、素早く行えることがメリットのひとつです。ですが、それゆえのトラブルも想定されます。トラブルを事前に防ぐために、定款をうまく利用しましょう。
作成時に注意するポイント
社員の住所や氏名は印鑑証明通りに記載
定款を作成する際に注意すべきポイントがいくつかあります。そのうちのひとつが、社員の住所です。住所は、なんとなく現在住んでいるところを記載してしまうこともありますが、定款にのせる際には、必ず印鑑証明通りに記載するようにしましょう。このために、印鑑証明の確認をしておくことも大切です。
また、氏名も同様に、とくに旧字や略字などの差異が出ないように注意して記載するようにしましょう。こういった細かい部分のミスは、のちのち響いてくることになります。しっかり注意して作成しましょう。
押印は実印で
押印は必ず実印で行いましょう。実印というものは、あらかじめ市町村長に届け出ることによって、必要な際に印鑑証明が受け取れるようにしてある印鑑のことを言います。なので、急にそのあたりで買ってきたものを使用することはできません。実印登録をしていないのであれば、まずは、実印登録をすることから始めましょう。
実印は、名字・名前のどちらでも作成できます。女性の場合は、結婚などで名字が変わりやすいことから、名前の方で作成・登録している人も多いようです。また、ハンコの材質など、特別な決まりはありません。ですが、重要なものなので、長く使うことを考えるとそれなりの材質のものを選ぶ方がよいかもしれません。また、なかにインクが入っていて、使い捨てなどになっているタイプの印鑑は、使用できません。
複数名で設立する際は利益配分も記載
定款には、複数名で設立する際は利益配分も記載するようにしましょう。これは、のちのち利益配分でもめないための予防策です。今後のことを考えて、ぜひ記載しておくとよいでしょう。ただし、出資比率通りなら記載しなくてもOKです。
このような対策は、会社を設立して時間がたってくると起こりうる、あらゆるトラブルの防止として、役立ってくれます。当初は不要に感じても、念のため、定款に定めておくことによって、将来的に役に立つこともあるのです。
紙の定款と電子定款について
紙の定款だと4万円の印紙税がかかる
定款は紙で作成する場合と、電磁的に作成する場合があります。このどちらを選んでもよいのですが、紙の定款を選択する場合には、経費が余計にかかるなどといったデメリットがあります。その分、紙の定款であれば、保管しやすく、最新のものがどれかなども、紙ベースで保管が可能ですので、便利に感じることもあるでしょう。
多くのものがデジタルに変わりつつありますが、アナログな部分に安心感を感じることはあるはずです。どちらがよいかは、よく検討して決めましょう。
紙の定款が選ばれなくなってきている理由のひとつに、印紙税があります。紙で定款を作成すると、課税文書扱いになり、4万円の印紙税がかかるのです。これを嫌って、少しでも会社設立時の経費を押さえようとする傾向が高まり、近年は電子定款を選択する会社も増えています。
紙の定款を使用すると、自社で保管する分の定款には印紙貼付が必要になります。これが4万円と高額であることから、電子定款の人気が高まっていることが、現状といえるでしょう。
電子定款の場合は印紙税が不要
電子定款を選択する企業が増えている理由は、紙の定款に比べ、印紙税4万円が削減できる点にあります。電子定款は、電磁的取り扱いとなり、現時点では課税文書としては扱われないことになっており、その根拠は、国税庁のホームページ上のQ&Aなどで確認することができます。
こういったことから、定款を電磁的に作成することで、印紙税分の経費を節減する方法が採択されるようになりました。会社設立時の経費は、直接的に利益を生み出すものではないことから、なるべく削減したいものです。このため、近年は電子定款を選択する会社が増えてきています。また、近年ペーパーレス化が進み、電子定款の方が扱いやすく、保管も容易と考える会社も多いようです。
定款の認証について
合同会社の場合は公証役場での認証は不要
合同会社の場合は公証役場での認証は不要です。こういったことから、認証にかかる経費などが株式会社に比べ少なくすむことも、メリットといえるでしょう。作業的な手間も軽減されますので、株式会社よりも合同会社を選択する理由の一つとしてあげられています。
また、法務局で支払う登録免許税も、株式会社が15万円であることに対して、合同会社の場合は6万円ですみます。比較的経費が低く抑えられる点も、合資会社のメリットのひとつです。
必要な手続きを行えば自分でも作成可能
定款の作成は必要な手続きを行えば、自分でも作成可能です。必要な項目を押さえ、自社の状況や事業内容に合わせて、入れ込みたい項目を足していけばよいので、苦手意識が強くなければ十分自分でも作成可能でしょう。
また、ひな形や見本を利用すれば、さらに作成は容易になります。そういったサービスをおこなっているところもありますので、調べて利用してみてもよいでしょう。定款は会社設立の為に必要なものですが、あまり時間をかけすぎて、事業を行う時間がとられてしまっては、本末転倒です。素早く作成して、利益を生み出す、本来の事業に注力できるようにしましょう。
手間を省くなら行政書士に相談を
定款のような文書の作成が苦手であり、負担に感じるのであれば、行政書士に相談してみてもよいでしょう。プロに頼むことで、お金もかかりますが、その分、作業を軽減でき安心感も生まれます。
会社設立を少しでも早く、滞りなく行うための必要経費として割り切って、行政書士に任せることも方法のひとつです。どの程度費用が発生するか調べて検討して、どちらがよいか決めるとよいでしょう。
また、この際にかかった経費は、のちのち経費計上できますし、好きな年に計上できるというメリットもあります。会社設立時にかかった経費は、経理上、有利に使うこともできるのでお得な点もあるのです。こういったことも、検討材料として考えてみてください。
雛形を利用すると簡単に定款作成ができる
定款作成は、はじめてだと非常にハードルが高く感じられるかもしれません。ですが、ひな形をうまく使えば簡単に作成できます。ひな形があることで、いちから考えて文章を起こす必要もなくなりますので、はじめての合同会社設立への不安が、少しだけ解消するでしょう。
もちろん行政書士などのプロに頼む方法もありますが、どうしてもある程度金額もかかってしまうことでもありますので、まずはひな形を見て、自分で作成できるか検討してみることから始めてみてもよいかもしれません。既存のものを上手に使用しながら、少しでも簡易に定款作成を行いましょう。これからの順調な事業のすべり出しのために、賢く上手な定款づくりを始めましょう。