法定調書とマイナンバーの関係を把握してスムーズに制度を理解する

マイナンバー制度は急速にすすめられたことから、負担感が大きく、制度そのものに抵抗感を持つ人も少なくありません。このため、担当者は制度をよく理解し、適切な取り扱いが求められます。まずは、法定調書とマイナンバーの関係を知り、理解を深めましょう。

法定調書のマイナンバー導入について

マイナンバー制度の概要

マイナンバー制度は国民すべてに個人番号を振り、それを持って管理体制を強め、税徴収や社会保障に役立てることを目的のひとつとした制度です。マイナンバーを先進的に取り入れている国では、マイナンバーで買い物ができる、図書館や公共施設の利用ができるなどといった、国民側が利便性を感じることができる段階まで進んでいます。

マイナンバー制度が浸透し、あらゆる場所で使われるようになることで、不正や不便が減るようになります。一方で、マイナンバーは流出による個人情報の悪用が危惧されています。マイナンバーは、すべての個人情報を結び付けているので、マイナンバーを知ることで、その人の個人情報の多くを紐づけることができてしまうとされています。このことから、マイナンバーは、流出に関する注意点が多く、罰則もあるため、取り扱いが非常に難しいものとされています。他者のマイナンバーを取得する際は、慎重に管理する必要があるのです。

導入時期や対象の法定調書

マイナンバー制度の導入は、平成28年1月から始まりました。税務署へ提出する法定調書への記入は平成28年分から始まり、対象の法定調書にはマイナンバーの記載欄が設けられるといった変更が加わりました。

税務署に提出する法定調書のなかで、マイナンバーの記載が必要なものは、基本的には、源泉徴収票と支払調書です。市町村に提出する分にも、マイナンバーの記載は必要になります。支払調書は年間の支払額がたとえば講演会報酬であれば、5万円を超えた場合のみマイナンバーが必要となるなどといった基準があります。報酬の内容によって、マイナンバーの取得は不要になる場合もありますので、対象となるかどうかはその都度確認しましょう。

導入による法定調書の変更点

マイナンバー制度が導入されたことで、法定調書の様式は変更になりました。法定調書にマイナンバーの記載欄が設けられ、他の従業員から会社へ申告書類にも、マイナンバーの記載欄が設けられました。ただし、扶養控除申告書にあるマイナンバーの記載欄には、とくにマイナンバーを記載する必要はありません。
税務署や市町村に提出するもの以外には、マイナンバーの記載義務はありませんので、なるべく記載しないようにしましょう。マイナンバーは記入する箇所を増やすほど、流出の可能性を広げることになります。マイナンバーの記載は、最小限にとどめるようにしましょう。

マイナンバーの猶予規定

マイナンバーには、猶予期間があるものもあります。一部の継続的取引が行われている金融商品取引業者などのなかには、3年間の猶予期間が設けられているものがあります。また、平成27年のものは、提出が平成28年になったとしても、マイナンバーの記載は不要とされており、様式の変更も適用されません。
また、支払いを受けるものが3年間の猶予規定を受けている場合であっても、支払者の法人番号や個人番号の提出に関しては猶予されませんので、この点は注意をしましょう。

法定調書のマイナンバーの記載について

本人に交付する法定調書への記載

マイナンバー制度が施行されて法定調書や扶養控除申告書にマイナンバーの記載欄が設けられました。こちらは、欄がある以上必ず記載をしなくてはいけないかというと、そうではありません。とくに、本人に渡す分の法定調書にはマイナンバーの記載は不要です。

マイナンバーは、流出やコピーの危険を最も危惧するものであり、可能な限り記載箇所を減らし、もれないようにする必要があります。本人へ手渡す法定調書は、税務署や市町村へ提出するものと違い記載の必要はありません。また、社内のみでやり取りをする扶養控除申告書のマイナンバー記載欄も記載する必要はありませんので、なるべく空欄のままにしておきましょう。

このように、マイナンバーの記載箇所を可能な限り少なくすることは、マイナンバーの適切な管理につながりますので、意識して行うようにしましょう。とくに、電磁的な管理をする場合は、記載ファイルの数を減らし、セキュリティーを万全にする必要があります。

マイナンバーの追加や変更又は訂正があった場合

すでに取得したマイナンバーに追加や変更、または訂正があった場合には、再度マイナンバーを取得する必要があります。その場合は、新しいマイナンバーを取得し適切に保管しましょう。マイナンバーの追加は、扶養家族が増えた場合や、新たに従業員を雇った場合などに必要になります。

マイナンバーの変更はあまり多くあることではありませんが、流出などの特殊事情が生じた場合には、ありうることです。この場合は、再度マイナンバーを取得し古い方のマイナンバーは、すでに一度以上法定調書などで使用している場合は、破棄せずに年限まで保管するようにしましょう。マイナンバーを取り扱う人は最低限にし、定められた人間以外が管理・使用しないようにしなくてはいけません。

マイナンバーの提供の注意点

提供を受ける場合は本人確認が必要

マイナンバーの提供を受ける際は、単にマイナンバーを通知してもらうだけでは、提供を受けたことにはなりません。マイナンバーカードなど、写真がついた証明書類で、本人確認をする必要があります。マイナンバー自体の確認はマイナンバーの通知カードでもできますが、その場合は別途、免許書などの本人確認書類が必要になります。

マイナンバーカードには写真もついていることから、これだけでも、マイナンバーと本人確認の両方を行うことができます。また、本人確認を省略できるケースもあり、それは、従業員など本人確認を書面で行わなくても間違いようがないケースになります。この場合は、本人確認を省略できるため、免許書などの提示は不要となります。

利用目的を特定し明示する

マイナンバーの取得は、乱用を防ぐため利用目的を特定し、明示する必要があります。通常の利用目的は、法定調書の作成のためであり、そのことを明示した書面などを作成・提示すればよいです。
こういった書類は、マイナンバーの管理運用方法を定める際に作成しておき、マイナンバー取得時にいつでも利用できるように備えておきましょう。マイナンバーの利用目的も、要綱などにまとめて必要な時に提示できるようにしておくとよいでしょう。

保管や廃棄について

マイナンバーの保管や管理は、マイナンバーを取り扱う上でもっとも重要なポイントです。適正な保管・管理することができず、マイナンバーを流出させた場合は、罰則が適用される場合があります。また、保管方法が適切でないと、外部に流出せずとも担当者以外の目に触れることが増えますので、これも避けなくてはいけません。

保管はカギのかかる重要書類保管庫などに保管し、電磁的に保管をする際にはパソコンのセキュリティーを強化するようにしましょう。また、コピーなどの複製はむやみに行ってはいけないことになっています。手で書き写す際にも注意をしましょう。コピーをとる際には、FAX複合機のような外部に接続している機器は避けるようにしましょう。ネットワークを通じて流出する可能性が高まります。

また、廃棄も適切に行う必要があります。シュレッダーにかけるなど、マイナンバーが識別不可能な状態にして廃棄をしましょう。廃棄も必ず担当者が自ら行い、アルバイトに任せるなどして流出させないように、注意を払う必要があります。

安全管理や措置について

マイナンバーの管理方法は、紙ベースでの管理方法がもっとも物理的な安全措置を講じやすい方法です。管理・保管・使用する人間を絞ることで、物理的にマイナンバーの流出を防ぐことができます。保管方法も金庫などでわかりやすく保管することができ、廃棄もシュレッダーや溶解処理など、識別不可能な方法で廃棄することが可能です。

一方、電磁的に保管をする際には、保管しているサーバーやパソコンのセキュリティー対策が必須となります。外部からのアクセス制限以外にも、担当者以外の人間以外が閲覧可能な状況をつくらないように注意する必要があるでしょう。このため、定期的なセキュリティーチェック以外にも、マイナンバーに関わる部分のセキュリティーの強化が必要になります。

電磁的管理をする際には、バックアップなどのとり方も問題になってきます。バックアップしたファイルにマイナンバーが含まれていた場合、こちらの廃棄や取り扱いも、マイナンバーと同様の注意を払う必要があるのです。こういったことから、電磁的管理は紙での管理よりも、ハードルの高いものとなってくるでしょう。

マイナンバーの提供が受けられないときは?

法律で定められた義務であることを説明

マイナンバー制度は急速にすすめられたこともあり、国民の理解が完全には得られていない部分もあります。このため、マイナンバーの提出を拒まれるケースも想定されています。とくに、フリーランスで多くの場所で仕事をしている場合、マイナンバーの提出先が多岐にわたり、すべての取引先を信用することはできないといった理由から提出を拒む事例もありうるのです。

著名人が、マイナンバー提出を拒む発言をテレビなどですることも、こういった事象を招く一因となるかもしれません。このため、マイナンバーのガイドラインとしては、提出を拒まれた場合の対処法を提示しています。マイナンバーの提出を拒まれた場合、まずは、法律で定められた義務であることを説明しましょう。そして、適正な補完体制や用途など、必要なことを説明し提出を促すようにします。

提供を求めた経過を記録しておく

マイナンバーの提出を拒まれた場合は、その経緯を記録に残しておく必要があります。提出を求めた時点から、提出の拒否、できればその理由やこちらから行った提出を促すための説明内容などを克明に記録しておきましょう。
これらは、後で法定調書にマイナンバーを記載できなかったときの説明資料として利用する可能性があります。簡単にいえば、提出を促したものの、了承してもらえなかったといった記録を残すことによって、努力義務を果たしたことを証明するためのものです。

マイナンバー導入を理解しスムーズな法定調書の提出を

マイナンバー制度は、担当者がよく理解して進める必要があります。マイナンバー制度の理解を深めることによって、提供を促す際にも相手にとって理解しやすい説明をすることができるようになります。こういったことが信頼につながり、従業員や取引相手の不安の払しょくにつながりますので、まずは制度理解を深めることから始めましょう。

そして、適切な管理・利用・廃棄に努めることで、罰則を回避し、コンプライアンスを遵守しましょう。そして、法定調書をスムーズに作成・提出することで、業務を円滑に進めるようにしましょう。細かな部分にきちんと注意を払うことで、マイナンバーの負担は減らしていくことができるのです。負担や不安を減らし、円滑に業務を進めていきましょう。

さらに詳しく知りたい方は
税理士に無料相談LINEChatworkメール

関連記事