国民の義務。国民年金保険料を払わないとどうなってしまうのだろう

20歳になったら加入する義務がある国民年金。国民年金は払う義務がありますが、近年では未納や滞納をしてしまう方が増えています。国民年金保険料の額や受給額はいくらなのか、未納・滞納をしたらどうなるのかを知っておくことで納付の大切さがわかります。

目次

国民年金の概要

国民年金とは

国民年金とは昭和34年(1959年)に制定された国民年金法により創設されました。すべての国民が対象で、20歳~60歳未満の方が加入する保険制度です。日本国籍の有無に関わらず、日本に住んでいる人すべてに納付する義務があります。

また、国民年金と一言でいってもいろいろあり、65歳になったら支給される「老齢基礎年金」や、ケガや病気により障害者認定されたときに支給される「障害者基礎年金」、死亡したときに遺族(扶養者)に対して支給される「遺族基礎年金」があります。

定年になったら年金がもらえるというイメージがありますが、年金がもらえるパターンはこの3点。そのため、万が一自分が障害者になってしまったり、年金加入者が亡くなった場合にも、年金を申請する必要があるということです。

国民年金の受給者数

国民年金受給者数は、平成27年度時点で3,323万人となっており、前年度に比べると170万人増加しています。

受給者数は年々増加傾向にあり、平成23年度の2,912万人と比べると約400万人も増加。これは平均寿命の伸びと高齢化が影響していると考えられています。

また、国民年金の受給者数は年々増加しているものの、少子化により国民年金の保険料を納付する人数が年々減ってきていることから、今後受給額はさらに下がっていくのでは、ともいわれています。

国民年金保険料の納付率

国民年金保険料の納付率は年々減少傾向にあり、平成26年度分は72.1%、平成27年度分は69.4%、28年度分は64.1%となっています。

実際、強制徴収を実施した人数が年々増加傾向にあり、27年4月~28年3月は84,801件、28年4月~29年3月は85,342件。原因としては、少子化による若年層の減少も背景にあげられますが、年金問題による不信感や若年層の低所得化が挙げられます。

特に、2007年の年金記録問題や年金給付額が少しずつ減少してきていることもあり、しっかり年金を納付してもその分を受給することができないのではという不安や、納めるより貯金したほうがよいという考えの人が増えてきているという現状にあります。

また、雇用形態が多種多様になり、正社員だけでなく、契約社員や派遣社員などができたことで若年層の年収が不安定になり、保険料を払えないという人が増加。その上、国民年金納付の対象者である自営業を行う人が減少傾向なのも理由として挙げられています。

このように、国民年金の納付率が減少してきているのが現状で、今後も減少傾向にあるでしょう。

国民年金の被保険者

加入の年齢

加入年齢は20歳。20歳の誕生月の前月、もしくは当月上旬に国民年金機構から送付される「国民年金被保険者資格取得届書」に必要事項を明記して、住んでいる場所の役所または役場で申請します。また、国民年金第1号の方は毎月保険料の納付が必要です。

ただし、経済的に保険料を納めることが難しい方や、学生の方は特例として保険料を免除されたり納付猶予してもらうことができます。

収入の減少や、失業などで保険料の納付が難しくなった場合は「保険料免除・納付猶予制度」、学生の場合は「学生納付特例制度」の申し込みを申請しましょう。

また、配偶者から暴力を受けた方で配偶者と住居が異なる方は配偶者の所得の額に関わらず、本人の前年所得が一定以下なら、保険料の全額もしくは一部が免除されます。こちらも申請手続きが必要なため、もしこういった状況に陥ったらまずは申請しましょう。

国民年金第1号の加入

国民年金第1号の加入対象者は、日本国内に住んでいる20歳以上から60歳未満の方で、第2号や第3号被保険者に該当しない方です。具体的には以下のような方です。
☑自営業者・農業従事者とその配偶者
☑無職、失業中の人とその配偶者
☑大学等の学生

ただし、大学等の学生は前述した納付特例制度を利用する人がほとんどなため、納付する人はほぼいないといってよいでしょう。

国民年金第3号の加入

国民年金の第3号の対象者は、会社員と公務員の配偶者です。基本的に会社員と公務員は厚生年金保険に加入しているため、第2号被保険者になります。

夫婦の片方が厚生年金保険の加入対象事業所に勤めていればいいので、性別は関係ありません。加入者の多くが主婦ですが、現代では女性の社会進出、活躍が目覚ましいため、主夫の方も年々増加してきています。

ただし、両方とも厚生年金保険に加入対象の事業所に勤務している場合はそれぞれの会社で第2被保険者になります。第3号被保険者は、国民年金保険料の納付する必要が無く、しかも基礎年金を受給できます。

ちなみに老齢厚生年金は、離婚などをした日の翌日から2年以内に請求をすることで、第3号被保険者だった期間の半分を受け取ることができます。

このように第3号被保険者は年金制度で優遇されていますが、死亡した場合や60歳に達した日、被扶養配偶者でなくなった場合は損失となります。第1号被保険者に代わる時は市区町村役場で、第2号被保険者になる場合は、新しく勤務する会社で手続きをすることになります。

任意加入制度

任意加入制度は、60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていなかったり、40年の納付済期間がなく老齢基礎年金を満額受給できない場合で、厚生年金や共済組合などの加入していない方は、60歳以降でも任意加入ができます。しかしこの場合、さかのぼって加入することができません。

☑年金額を増やしたい人は65歳までの間
☑受給資格期間を満たしてない人は70歳までの間
☑外国に住んでいる20歳以上65歳未満の日本人

ただし、平成20年4月1日から外国に住んでいる方以外の保険料の納付方法は口座振替が原則です。日本国内に居住している方で任意加入を申込たい場合はお住まいの市区長想役場で申請しましょう。第1号被保険者で40年間納付している方や、第3号で配偶者が払っている場合は基本的に加入する必要がありません。

今年度の国民年金保険料

保険料は一定

国民年金保険料は年度で変わることは無く、基本的に一定です。国民年金第1号被保険者、任意加入被保険者の1ヶ月あたりの保険料は一律16,490円です。

納付期限は法令により「納付対象月の翌月末日」と決まっているため、保険料は納付期限までに納めるようにしましょう。ただし、国民年金第3号被保険者は保険料を納付する必要がありません。配偶者が第2号被保険者で加入している厚生年金に毎月払っているためです。

もし納付期限までに保険料を納めることができないと、障害基礎年金や遺族基礎年金を受給することができないことがあるので、忘れずに納めるようにしましょう。

保険料の納付の方法

保険料の納付方法は主に3つで口座振替、納付書での支払い、クレジット払いがあります。詳しい説明は以下の通りになります。

☑1.口座振替

口座振替での納付は手間がかからず、納め忘れを防げます。「国民年金保険料口座振替納付(変更)届出書兼国民年金保険料口座振替依頼書」や年金手帳や納付書などの基礎年金番号のわかるもの、預貯金通帳もしくはキャッシュカードなど口座番号のわかるもの、通帳に使っている届出印を用意した上、通帳を持っている金融機関か、近くの年金事務所の窓口に提出するか、郵送で手続きを行うことができます。

なお、振替開始月は申込してから翌月以降になります。

☑2.納付書での支払い

納付書を使用し、納付期限または使用期限までに金融機関、郵便局、コンビニエンスストア、ネットバンキングなどで納付します。もし納付書がない場合は、近くの年金事務所まで連絡するようにしましょう。なお、1枚の納付書の金額が30万円以上の場合、コンビニエンスストアで支払うことができないので注意しましょう。

納付書での支払いはPay-easy(ペイジー)が便利で国民年金機構でも推奨されています。夜間や休日でも納付することができ、便利なサービスです。納付書の左側に記載された「収納機関番号」と「納付番号」、「確認番号」をPay-easy対応のATMやインターネットバンキング、モバイルバンキングの画面に入力することで納付することができます。

ただし、コンビニエンスストアに設置されているような複数の金融機関に対応したATMは利用することができません。また、領収書が発行されないため、領収書が必要な場合は金融機関などの窓口で納付しましょう。

☑3.クレジットカード払い

クレジットカードで継続的に支払する方法で前納が可能です。利用には申請書の提出をしましょう。利用するクレジットカードの利用限度額や有効期限に注意して使用するようにしましょう。

クレジットカード払いは「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」、基礎年金番号がわかるもの、利用するクレジットカード、被保険者とカード名義人が異なる場合は「国民年金保険料クレジットカード納付に関する同意書」を持参し、年金事務所の窓口で手続きを行うか、郵送で手続きします。

ただし、手続きに1ヶ月程度かかるため、それまでは口座振替か納付書による支払いになります。

割引制度あり

まとめて前払いをすると、割引が適用されるので毎月納付するよりもお得です。口座振替と現金払いでは割引額が違いそれぞれ以下のようになります。

☑1.口座振替

2年分から前納が可能で、2年分は納付額が378,320円で割引額は15,640円です。1年分は193,730円で4,150円、6ヶ月分は9,820円で割引額は1,120円、当月末振替(早割)は16,440円で割引額は50円です。

このように早く納付を早く行うことで、毎月振り込むよりもかなりお得となりますので、金銭的に余裕がある方は前納を検討してもよいでしょう。

☑2.現金払い・クレジットカード払い

2年分、1年分、6ヶ月分で前納が可能で、2年分は379,560円で割引額は14,400円お得、1年分は194,370円で3,510円の割引、6ヶ月分は98,140円で800円の割引になります。

現金払いでの納付は、前納用の納付書を添えて各金融機関、郵便局、コンビニエンスストアなどの窓口で支払うか、インターネットバンキングなどを利用して自宅で納付することが可能です。

なお、口座振替での前納の申し込みは締め切りがあるため、事前に締め切りを調べて余裕をもって申し込みましょう。

国民年金保険料の未納

未納・滞納した場合

国民年金の納付率は前述した通り、平成28年度は64.1%です。いい換えると3割強の方々が年金を未納・滞納しているといえます。決められた納付月の翌月末が納付締め切りとなりますが、それを過ぎると滞納となってしまい、催告状が送付されます。

年金保険料を徴収する権利は2年で時効となり、2年経過すれば徴収されることはありませんが、督促状が出された場合は時効が中断され、徴収することが可能になりました。現代では、年金保険料の徴収強化があり、支払い能力がある人に対しては、督促を行い時効にさせないようにしています。

未納の場合の督促

未納をすると、催告状や督促状が送られてきます。場合によっては、委託された業者から催告に関する電話がかかってくることがあります。

なお、催告状が届いても未納のままでいると特別催告状というものが届くことがあります。これは最終催告状の一歩手前の状況で、この時点で年金を滞納していて、免除や猶予に該当するような経済状況であれば、市役所の年金窓口で相談しましょう。

国民年金保険料の免除・猶予について

保険料免除や納付猶予制度がある

国民年金保険料の納付が経済的に難しい場合は、保険料免除や納付猶予をすることできる場合があります。厚生年金は、勤務先の給与から天引きされますが、国民年金第1号被保険者の場合は、毎月保険料を納付する必要があります。

無職となってしまった場合など、経済的に納付が難しい方は未納・滞納のままにしないで、「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の手続きを行いましょう。

保険料免除や納付猶予になった期間については年金の受給期間に算入されるものの、年金額を計算するときは、保険料の免除は保険料を納付したときと比較して1/2になります。受給する年金額を増やすには、保険料免除や納付猶予になった保険料を追納することで増やすことができます。

保険料免除手続きをすべき人

保険料免除手続きをすべき人は以下の通りです。

☑無職で収入が無い方
☑転職により収入が大幅に落ちた方
☑自営業で経営が悪化した方

このように、基本的には経済状況が悪化し、保険料が払えなくなった方が対象になります。なお、学生の方はこの制度を使うことができないので、「学生納付特例制度」の手続きをしましょう。20歳になる時に届く加入申込書に「学生納付特例制度」について記載されていたり、申込書が同封されていることがあるため、加入手続きと一緒に申請するようにしましょう。

また、配偶者からのDVが原因で別居した場合は特例免除を受けることができるため、第3号被保険者の方で別居中かつ経済状況が悪い方は申し込みましょう。

国民年金保険料の追納

保険料の後払い(追納)

保険料の免除や納入猶予を受けた期間がある場合は老齢基礎年金の受給額が低くなります。しかし、免除や納入猶予期間の保険料は追納することで、老齢基礎年金の年金額を増やせます。また、社会保険料控除により、住民税や所得税が軽減されます。

このように、保険料の後払いはメリットがあるため、なるべく免除期間や納入猶予期間など払っていない期間がある場合は追納するようにしましょう。

追納はメリットがある

追納をすることの最大のメリットは、老齢基礎年金の受給額が上がるということです。定年後、老齢基礎年金を受給することは、生活をする上で非常に重要になってくるため、満額かなるべく多くもらいたいという方は追納するようにしましょう。

支払い方法は、まず申込が必要。近くの年金事務所で納付申込書に必要事項を記入して申し込むか、郵送で申し込むことができます。また、プリントアウトして申し込むこともできます。後日納付書が送られてくるため、納付すれば完了です。

国民年金の受給

必要な保険料納付済期間

老齢年金を受け取るには保険料納付済期間(国民年金の保険料納付期間、厚生年金保険、共済組合などの加入期間)と国民年金の保険料免除期間などを合算して、25年以上納付していることが条件でした。

しかし、平成29年8月1日より、納付期間が10年以上あれば、老齢基礎年金や老齢厚生年金を受け取ることができるようになりました。

そのため、今まで払っていない人もこれから10年払えば年金を受給することができます。ただし、受給額は40年しっかり払っている人よりも低くなるため、なるべく長い期間払い、未納期間がある場合は特別後納で治めるようにしましょう。

いつから受け取ることができるのか

20歳から60歳までの40年間において全期間保険料を欠かさず納入していた方は65歳から満額受給されます。もし希望すれば早めに60歳から受け取ることも、逆に70歳から受け取ることもできます。

ただし、保険料を全額免除された期間の年金額は満額の1/2で計算されますが、保険料を未納していると、その期間は年金額の計算に入らず、満額支給を受けることができません。

もし、満額支給してほしい場合は特例後納することをおすすめします。

月額受給額はどれぐらいになる

月額受給額は平成29年4月分からは満額で779,300円となっています。なお、希望すれば60歳から65歳になるまでの間も受給することができますが、その分月額受給額が減額されます。

反対に65歳で請求せずに66歳から70歳までの間に申し出ると、老齢年金額が増額されます。なお、国民年金の計算式は以下の通りです。

国民年金の受給額計算式

平成16年度の改正で決められた保険料額×保険料改定率=毎年度の国民年金保険料額

保険料改定率=前年度保険料改定率×名目賃金変動率(物価変動率×実質賃金変動率)

なお、免除期間がある場合はこれよりも計算方法が複雑になります。そのため、計算してみてもよくわからないという方も多いです。年金の計算方法については市役所の年金課や年金事務所で聞くことができます。また、インターネットで検索してみると早見表などが出ているので確認してみるとよいでしょう。

これからの受給額の推移

老齢基礎年金受給額の推移は、1999年~2002年の804,200円をピークに年々減少傾向にあります。2017年4月からの満額の受給額が779,300円となっています。

ちなみに厚生年金の平均受給額の推移も年々減少しているため、国民年金に限ったことではありません。年金受給額が減少する原因は、少子高齢化が大きな原因といえます。保険料を納付する人口が減れば減るほど、それだけ年金受給率も減っていきます。

さらに年金受給額の減少だけではなく、年金受給年齢も現在の65歳から70歳への引き上げも検されているため、40年間毎月欠かさず年金保険料を納めても、70歳まで受け取ることができず、さらに年金受給額は少ない額になりといわれています。

そのため、老後を安心して生活していくためには、今から老後に必要な額を貯金しておく必要があります。

年金だけで老後を豊かに暮らすのは難しい

老後に必要な生活費は、平均月24万円といわれており、国民年金と厚生年金合わせても18万円弱しかなく、今後さらに受給額が減少すると考えると、預貯金から捻出する金額は6万~10万程度と考えられます。

6万円で計算すると、定年後20年間に必要な生活資金は1,440万円、25年なら1,800万円は最低でも必要になります。ただし、これは非消費支出は含まれていないため、ここに非消費支出に必要な分(月約4万円)をプラスすると、20年間であればプラス960万円、25年間であればプラス1,200万円必要になるため、最低でも3,000万円は老後の蓄えとして必要といえます。

さらに、今後高齢者福祉施設などに入所する場合も考えて、子どものいない夫婦であったり、子どもに迷惑をかけたくないと考えている方は預貯金は多いことに越したことはないでしょう。

国民年金への加入は義務

年々国民年金の受給率が下がっているとはいえ、国民年金への加入は義務であり保険料を支払う必要があります。受給額が減るとしても、定められた額を納めることで、老後に年金を満額支給してもらうことが可能になります。

年金を支給してもらうのとしてもらえないのでは老後の生活に大きく影響しますし、未納のままでいると、最悪財産差し押さえということになりかねませんので、年金を払える状況であるのならしっかり払いましょう。

 

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