国民年金の前納制度とは? その内容のメリットとデメリットについて

今までは、口座振替のみでしたが、平成29年4月から現金払い・クレジットカード払いもできるようになった国民年金前納制度。メリット、デメリット両方がある国民年金の前納制度を知って、自分のニーズに合った支払い方法を見つけましょう。

国民年金の保険料をまとめて前納する時の「割引制度」

期間による割引の違い

昭和36年には100〜150円だった国民年金の保険料は、平成17年度から平成29年度まで段階的に上がり続け、今後も増額されることが予想されます。保険料を少しでも安く納付するなどして、賢く国民年金を払いましょう。

口座振替の振替方法

☑ 1.2年前納(4月〜翌々年3月分)
☑ 2.1年前納(4月〜翌年3月分)
☑ 3.6ヶ月前納(4月〜9月分、10月〜翌年3月分)
☑ 4.当月末振替(早割。本来の納付期限より1ヶ月はやく振替する方法)
☑ 5.翌月末振替(保険料の割引なし)

上記の5種類から振替方法を選んで申し込むことができます。さらに、13ヶ月前納払いの方法を採用している市町村もあります。利用する場合は、市町村の保険料前納割引制度を確認してみましょう。

平成29年度の振替方法別1回あたりの納付額と割引額

☑ 1.2年前納の場合:納付額・378,320円 割引額・15,640円
☑ 2.1年前納:納付額・193,730円 割引額・4,150円
☑ 3.6ヶ月前納:納付額・97,820円 割引額・1,120円
☑ 4.等月末振替:納付額・16,440円 割引額・50円

なお、振替日が休日の場合は翌営業日に振替されます。上記の割引額は年利4%の複利原価法によって計算した額です。

前納のお申込みは締切日を確認

2年前納・1年前納・6ヶ月前納の前期の振替日は5月1日、6ヶ月前納後期の振替日は10月31日と決まっているため、前納の申し込みは早めに済ませましょう。2年前納・1年前納・6ヶ月前納前期の前納申し込みの締切日は2月末、6ヶ月前納後期の前納申し込みの締切日は8月末です。

すでに口座振替で前納している人は、再度の申し込みの必要はありませんが、前納の方法を変更する場合は、再度申し込みが必要です。また、保険料が一部免除された人は、口座振替の前納制度は利用できないのでご注意下さい。

口座振替の手続きが済むと、4月中旬に「国民年金保険料口座振替額通知書」が届きます。実際に口座から振替される金額を確認し、預金残高が不足しないように気をつけましょう。

付加保険料について

国民年金第1号被保険者・任意加入保険者(65歳以上の人を除く)は、定額保険料に上乗せした金額を収めることで、年金額を増やすことができます。付加保険料は月額400円で、市役所や町村役場の窓口にて申し込みをします。付加保険料の納付は、申し込んだ月からとなり、納期限は翌月末日と決められています。

国民年金基金に加入している人は、付加保険料を納めることはできません。なお、付加年金は定額のため、増額・減額はありません。付加保険料は400円という金額のため負担が少なく、将来受け取る年金のために検討してみるのもよいでしょう。

平成29年から始まった「2年前納」について

2年前納のメリット

一つ目のメリットは、節約効果があることです。平成29年度の2年前納の場合の割引額は15,640円にもなります。2年前納の納付額は378,320円、これを銀行に預けておいたとしても定期預金の金利0.03%ですので、金利はほとんどつきません。お金を銀行に預けておくよりも、国民年金の保険料を前納したほうがお得だといえるでしょう。

二つ目のメリットは、柔軟に社会保険料控除が使えることです。2年前納した場合には、保険料を全額その年の社会保険料控除の対象として計算することができるので、自営業などの人が所得の調整に使うこともできます。また、2年目の前納分を翌年の社会保険料控除に繰り越すこともできます。
家族で最も税率が高い人が保険料を納付するのが節約効果が大きいです。

2年前納のデメリット

一つ目のデメリットは、前納した期間は減免が受けられないことです。国民年金の保険料を前納した時点より収入がなくなった場合など、減免を受けられる事情ができても、減免を申請することはできません。

二つ目のデメリットは、前納制度は口座振替しか対応していない点です。通常、国民年金の納付方法には、口座振替の他、クレジットカード払い、全国の銀行、農協、漁協、信用組合、信用金庫・郵便局・コンビニエンスストアなどでの窓口払い、インターネット経由での電子納付があります。

前納制度を利用すると、クレジットカード払いや電子納付のたびにもらえるポイントがもらえないことになります。しかし、平成29年4月より、新たに現金・クレジットカード納付による2年前納が始まりました。総合すると、前納制度を利用することで保険料の納め漏れを防いだり、毎月支払いに行く手間を省いたりできることもあり、多くの人にとっては、デメリットよりメリットの方が大きいといえるでしょう。

国民年金の保険料の納付方法の種類

納め忘れもなくお得な「口座振替」

口座振替の申し込み手続きは、預貯金口座を持っている全国の銀行、農協、漁協、信用組合、信用金庫・郵便局・または年金事務所にて「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書」を提出する必要があります。なお、口座振替の申し込みには、基礎年金番号の記入が必要なので、確認をしておきましょう。

4月中旬に「国民年金保険料口座振替額通知書」が届くので、実際に振替される金額を確認し、振替日までに預金残高を確認しておきましょう。もし残高不足で振替ができなかった場合は、次の振替日までの間割引のない翌月末振替となります。

納付書で「現金払い」

前納制度の納付方法は、口座振替のみでしたが、平成29年4月から、新たに現金払いもできるようになりました。全国の銀行、農協、漁協、信用組合、信用金庫・郵便局・コンビニエンスストアなどの窓口にて、前納用の納付書で支払いができます。なお、コンビニエンスストアでは2年分の納付書は使用できません。また、ATMでは利用できません。

納付書での納付はPay-easy(ペイジー)が便利です。Pay-easy(ペイジー)なら、スマートフォンやパソコンで、場所や時間を選ばず納付することができます。また、納付書の左側に記載されている「収納機関番号」、「納付番号」、「確認番号」をPay-easy(ペイジー)対応のATMの画面に入力するだけで納付することができます。Pay-easy(ペイジー)は全国ほとんどの金融機関で利用することがでぎす。

ATMでPay-easy(ペイジー)を利用できる金融機関

みずほ銀行 ・三菱東京UFJ銀行 ・三井住友銀行 ・.りそな銀行 ・埼玉りそな銀行 ・荘内銀行 ・七十七銀行 ・群馬銀行 ・足利銀行 ・千葉銀行 ・横浜銀行 ・近畿大阪銀行 ・南都銀行 ・広島銀行 ・福岡銀行 ・ 親和銀行 ・東和銀行 ・京葉銀行 ・熊本銀行 ・ゆうちょ銀行 ・全国の農業協同組合

インターネットバンキングで「電子納付」

電子納付についても、平成29年4月からできるようになり、ATMも利用できます。インターネットバンキング、モバイルバンキング、テレフォンバンキングを利用する場合には、あらかじめ利用する金融機関と契約を結ぶ必要があります。電子納付の利用ができるかどうかは、各金融機関に問い合わせしましょう。

また、インターネットを通じて、自身の年金の情報を手軽に確認できる「ねんきんネット」というサービスが便利です。

ねんきんネットで出来ること

☑ 1.自身の年金記録の確認
☑ 2.将来の年金見込額の確認
☑ 3.ねんきん定期便や年金振込通知書などの通知を見れる
☑ 4.日本年金機構への届書を作成
☑ 5.保険料の支払い漏れなどがないかなどの確認

利用するには「ねんきんネット」への登録が必要です。基礎年金番号が確認できるものを用意し、登録申請を行って下さい。パソコン版のサービスの一部をスマートフォンからも利用できるので、パソコンを持っていない人でも年金の確認や年金見込額の試算などができます。手軽なサービスを利用して、自身の年金について把握しておくとよいでしょう。

手続きすれば前納もできる「クレジットカード」

平成29年4月から、クレジットカードでも、2年前納、1年前納、6ヶ月前納の3種類の前納が可能になりました。前納学は現金払いの前納額と同じです。利用するには、申請書の提出が必要となります。利用するクレジットカードと年金番号がわかるものを用意し、年金事務所にて申し込みをします。利用するクレジットカードの利用限度額や有効期限も確認しておきましょう。

被保険者とカード名義人が異なる場合は、「国民年金保険料クレジットカード納付に関する同意書」が必要になります。また、クレジットカードでの前納手続きには、1ヶ月程度かかります。納付開始月については、はがきで連絡がきます。利用する場合は、余裕を持って早めに手続きをしたほうが無難だといえます。

国民年金の前納した保険料が還付される場合

死亡した場合

死亡し、国民年金の第1号保険者ではなくなった場合、国民年金保険料の「還付請求」ができ、死亡した月から将来の分の前納した保険料が還付されます。国民年金方施行令9条の全納付の還付に定められています。還付制度があるので、前納した保険料について損することはありません。

厚生年金などに加入した場合

再就職などで、1号被保険者から、2号被保険者になった人が、就職した月の国民年金保険料を納付している、または前納している場合は、就職した月以降の納付済みの国民年金保険料は還付されます。

外国籍を取得して海外に居住など

国民年金保険料を前納した後、外国籍を取得するなど強制加入被保険者の資格を喪失した場合は、当該未経過期間の保険料は還付されます。帰国し、日本国内に住所登録をした場合、国民年金は強制加入被保険者となり、手続きが必要になります。転入した市区町村役場にて手続きを行いましょう。

また、一時帰国など短期間だけでも、国内に住所登録をした場合については、強制加入被保険者となり、手続きが必要になります。

過誤納付または重複納付した場合

書類の行き違いや前納した月を含めて再就職をした場合など、過払い状態になることがあります。そういうときは、そのデータに基づいて社会保険事務所から「国民年金保険料還付請求書」の用紙が届きます。定められた期間以内に手続きをすることで、前納金が還付されます。

還付請求が必要

前納制度を利用した後に事情が変わった場合などは、実際に過払いの状態になることは避けられず、きちんと手続きをしなければ還付されないことになりかねません。2年経つと、還付を受ける権利は消滅してしまうので、手続きは早めに行なうようにしましょう。

専門家以外の人は、年金についてよくわかりにくい部分や、知らない部分が多いでしょう。年金のことで困ったり、質問がある場合は、年金事務所へ相談に行きましょう。

国民年金の保険料の前納は自分に合った期間で

国民年金保険料の前納方法は、2年前納、1年前納、6ヶ月前納などがあります。納付方法も口座振替、現金払い、クレジットカード払い、電子納付などいくつかあります。2年前納となると、金額が大きくなりますが、その分割引があり、メリットもあります。前納制度のメリット、デメリットを踏まえたうえで、自分のニーズに合った支払い期間、支払い方法を選択しましょう。

国民年金の保険料は、全額「社会保険料控除」の対象となります。「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」は、毎年11月上旬に届きます。10月以降に、その年初めて国民年金保険料を納付した人は、翌年2月上旬に届きます。年末調整や確定申告で国民年金保険料を申告するために必要ですので、大切に保管しましょう。「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を失くしてしまうなどして再発行が必要なときは、年金事務所に問い合わせをして下さい。

もし保険料を納付期限までに支払わないと延滞金が加算されてしまいます。延滞金は年利14.6%にもなり、1年延滞すると約3万円です。しかし、年14.6%の延滞金は高すぎるため、当分の間特例が設けられましたが、延滞金が発生することに変わりはないので、無駄なお金を払わなくてもいいように、納付期限は必ず守りましょう。

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