国民年金でもらえる金額を把握して老後のプランをたてましょう

誰にでも必ず訪れる老後生活。あるアンケートでは、老後に不安を感じている人は6割にも達しています。年金だけではたして生活をしていけるのか不安に感じている人も多いでしょう。まずは、加入の義務がある国民年金から、しっかり把握していきましょう

働く環境で異なる国民年金支払方法

第1号被保険者が払う上乗せ年金

主に、自営業やフリーランス、個人事業主といった方たちが多く占める第1号被保険者。国民年金の第1号被保険者であれば、国民年金の保険料に付加保険料を上乗せして納めることで、将来受給する年金額を増やすことができます。

付加保険料は400円となり、毎月納める国民年金の保険料にプラスして納めることになります。付加保険料を納めることによって将来もらえる年金額は、納めた月数に200円を掛けたものになります。その年金額が生涯支給されることになるのです。尚、国民年金基金に加入している方は、国民年金の付加保険料を納めることはできません。

他にも、国民年金に上乗せして年金を増やすことができる「国民年金基金」もあります。掛金の上限金額68,000円以内であれば、7つのプランから口数を組み合わせて年金額を増やすことができます。また、国民年金基金連合会が実施している「個人型確定拠出年金」に任意で加入することもできます。

会社員の第2号被保険者が払う上乗せ年金

会社員の第2号被保険者の場合は、基礎年金として国民年金に加入していますが、上乗せ年金として厚生年金に加入しています。厚生年金は、会社員として入社した日に加入し、退職日の翌日に脱退することになります。

原則として、会社員になると、自分の意志に関係なく強制的に加入することになります。厚生年金の保険料は「給料額×保険料率」で決まります。加入者が負担するのはこの半分で、残り半分の保険料は会社が負担しているのです。

このような厚生年金に、さらに上乗せする企業年金というものもあります。企業年金には、「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」の三つがあります。しかし「厚生年金基金」は2014年の法改正以降は新規の設立が認められず、解散する基金が増えています。したがって、厚生年金基金に変わって、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金を導入する企業が増えています。

公務員の第2号被保険者が払う上乗せ年金

公務員の第2号被保険者は、基礎年金として国民年金に加入し、上乗せ年金として厚生年金に加入しています。以前は、公務員の上乗せ年金は、共済年金でした。共済年金は、厚生年金よりも保険料率が低いうえ、受け取る年金額も多かったため、共済年金と厚生年金には制度の格差が存在し、「官民格差」として批判がありました。

そのため、平成27年10月に共済年金は廃止され、公務員も厚生年金に加入することになりました。そして、厚生年金にさらに上乗せする年金として、「年金払い退職給付」というものがあります。年金の支給期間を終身とする「終身退職年金」か、20年、10年など支給期間を有期とする「有期退職年金」に分かれます。

また、有期退職年金に代わり、一時金として受け取る方法もあります。この「年金払い退職給付」は、共済年金のころは「職域加算」と呼ばれ、保険料を納めることなく、上乗せ年金を受給できていました。

これは現役世代が年金受給者を支える賦課方式でしたが、「年金払い退職給付」に変わってからは、保険料で年金を積み立てる積立方式へと変わりました。これにより、若い世代への負担減や、少子化による現役世代の減少においても運用が可能と見込まれています。

上乗せ年金を払う必要のない第3号被保険者

第3号被保険者とは、第2号被保険者に扶養されている配偶者を指し、会社員や公務員の夫をもつ専業主婦の方は、第3号被保険者に該当します。ただし、20歳以上60歳未満という年齢制限があります。

夫が厚生年金に加入することで、扶養されている妻は、第3号被保険者として国民年金へ加入することができるのです。保険料の自己負担はありませんが、第1号被保険者と同額の老齢基礎年金(国民年金の正式名称)を受け取ることができます。

第3号被保険者の分の保険料は、夫が払っているわけでも夫の会社が払っているわけでもありません。妻がいてもいなくても、厚生年金保険料は同じです。第1号、第2号被保険者が支払う保険料によって保障されているのです。

このように上乗せ年金を払わずとも、夫が厚生年金に加入すれば、国民年金へ加入できる第3号被保険者ですが、さらに将来受け取る年金額を増やしたい場合には、国民年金基金連合会が実施している「個人型確定拠出年金」に加入することができます。

国民年金の払う金額ともらえる金額

年ごとに決められる保険料

国民年金は原則的に、現役世代から徴収した保険料を、その時点の年金受給者に年金として配分する「賦課方式」という仕組みで運営されています。そのため、少子高齢化が進んでいる現在では、現役世代にかかる負担が増え、保険料を上げないと年金制度が維持できなくなってしまうのです。

平成22年の国民年金保険料は、月額15,100円でしたが、平成29年では、16,490円と上がっています。このように、国民年金保険料は、その年の労働人口や平均寿命の伸び率などを反映して決定されるため、年ごとに変動するものなのです。

実際の平均受給額

2017年3月に厚生労働省が発表した「平成27年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」という報告書によると、国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額は、月額55,244円であると公開されたようです。国民年金の保険料を40年間支払った場合には、満額の支給となり、月額64,941円になります。

また、国民年金には、「繰上げ支給」と「繰下げ支給」の制度があり、60歳で繰り上げ支給を受けた場合には、満額で45,459円となりますが、繰下げ支給で70歳から受給すると満額で92,217円まで増えます。

年金額シュミレーションを使って調べる

国民年金に加入して、受給資格期間を満たした人であれば、全員が受給できる老齢基礎年金。年金額は、現役時代に保険料を納めた期間が、どのくらいかによって決まります。

20歳から60歳までの40年間に、すべて保険料を納めた人は、平成29年度時点では、年間で満額77万9,300円の年金が支給されます。この40年間に保険料を払っていない期間がある場合は、その期間分が減額され、受け取る年金額が少なくなります。

このように保険料納付期間が40年に満たない場合は、年金額は「満額保険料×保険料納付済月数/40年×12ヶ月」という計算式で求めることができます。また、年金額シュミレーションを利用して、将来の受給額を調べることもできます。

尚、これまでは、老齢年金の受給資格期間は、25年以上でしたが、平成29年8月1日からは、10年以上となりました。

年収によっては減額される受給額

年金の受給開始年齢が65歳に引き上げられ、定年といわれる60歳以降も働き続ける人は増えています。60歳以降でも、会社勤めの人は、厚生年金に加入しなければなりません。

そして、年金受給開始年齢の65歳以降も引き続き勤務し続け、厚生年金の被保険者でいながら、老齢厚生年金をもらう場合には、給料の額と年金の額に応じて、年金の一部または全額が支給停止されることがあるのです。

老齢厚生年金の月額と総報酬月額相当額の合計が、60歳から64歳までは月額28万円、65歳からは月額47万円を超えると年金が減額されます。これは「在職老齢年金」とよばれる制度で、老齢厚生年金だけを対象とし、厚生年金加入者にだけ適用されます。国民年金は、年収に関わらず、一定の金額が支給されます。

夫婦2人の平均受給額

総務省が公開した「家計調査報告」によると、夫婦世帯の平均年金受給額は、2016年度時点で、19万3,051円となるようです。そのうち老齢基礎年金の支給は、平均で一人55,244円となり、夫婦二人では、平均11万488円の支給となるため、厚生年金などの上乗せ年金が加算された金額であると推測できます。

老後の生活費を引くと、毎月54,711円の赤字が発生しているというデータもでています。これは、高額な介護費用などが影響しているとみられています。

国民年金を収めることが難しい場合

保険料を免除される国民年金保険料免除制度

国民年金第1号の被保険者は、毎月の保険料を納める必要がありますが、所得が少ない場合や失業してしまったときなど、保険料を納めることが経済的に困難な場合は、「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の手続きを行うことで、支払いを免除される制度があります。

保険料を免除された期間分の年金支給額は減額されますが、年金の受給資格期間には算入されます。免除期間中であっても、支払い期間としてカウントされるのです。

このように未納扱いとはならないため、保険料免除を受けた期間中に、怪我や病気で障害や死亡といった不慮の事態が発生した場合に、障害年金や遺族年金を受け取ることができます。保険料を納めることが難しいときには、この制度を利用するとよいでしょう。免除される額は、全額、3/4、1/2、1/4の4種類があります。

保険料の納付に猶予をもらえる保険料納付猶予制度

20歳から50歳未満の方で、本人または配偶者の前年所得が一定額以下の場合には、「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の申請書を提出し、承認されると、保険料の納付に猶予をもらえる保険料納付猶予制度を受けることができます。対象となるのは自分の収入だけなので、世帯主の収入が多くても関係ありません。

前年所得が「(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円」以下の場合、つまり単身者なら57万円、既婚者は92万円以下の場合に申請ができます。保険料免除制度と同様に、未納扱いとはならずに受給資格期間に算入されます。

そのため、納付猶予を受けた期間中に、怪我や病気で障害や死亡といった不慮の事態が発生した場合に、障害年金や遺族年金を受け取ることができます。

免除や猶予を受けた場合の受給額

保険料免除を受けた場合、全額、1/2、1/4の4種類で減額されていますが、減額された保険料の1/2を国が税金から負担して支払ってくれます。そのため、国が負担してくれた保険料の分の年金を将来受給することができるのです。たとえば、全額免除の場合、満額支払っている人の1/2を将来年金として受給することができます。

また、納付猶予を受けた場合は、猶予を受けていた期間分の年金額は少なくなります。しかし、猶予されていた保険料を10年以内に追納すれば、将来受給できる年金額に反映されます。

国民年金を未納にしておくと起こること

不慮の事態に基礎年金が受けられない

国民年金の保険料を納付することが困難な場合には、申請により保険料の納付が免除または猶予となる「保険料免除制度」や「納付猶予制度」がありますが、このような申請をせずに、保険料が未納の状態のままでいると、万一、障害や死亡といった不慮の事態が発生したときに、「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」が受けられなくなってしまいます。

障害基礎年金とは、年金加入者が病気や怪我で障害が残ってしまったときに受け取れる年金です。老齢年金と異なり、若い人でも受け取れることが特徴です。しかし、障害基礎年金の受給要件には、「国民年金に加入していること」「一定の障害の状態であること」という二つの条件に加えて、「一定期間以上の保険料を納付していること」という条件があるのです。

この一定期間というのは、年金加入期間のうち2/3以上の期間、保険料を納付していることを指します。また、遺族基礎年金についても、死亡した人がその時点までに、国民年金加入期間の2/3以上の期間、年金を納付していることが条件となります。

将来基礎年金を受けられなくなる

保険料未納の状態が長期に続き、老齢基礎年金の受給資格期間を満たさない場合は、老齢基礎年金受給年齢(65歳)に達しても年金を受けられない「無年金者」となってしまいます。老齢基礎年金の受給資格は、以前は25年(300ヶ月)以上保険料を納めることとされていましたが、平成29年8月1日より、10年(120ヶ月)以上」へと短縮されました。

また、厚生労働省は、2015年より国民年金未納者からの強制徴収を拡大しています。督促状が送られてきても指定期限内に納付しない場合は、預貯金などの財産の差し押さえになる可能性があります。

平成27年10月から平成30年9月までの3年間に限り、過去5年分まで納めることができる「5年の後納制度」が設けられましたので、未納になっている人はこの制度を利用して納めることができます。

知識を身に着けて心配のない将来を歩む

国民年金だけでは生活できない、という不安感は多いものの、実際に国民年金のシステムをよく理解している人は少ないようです。なかには将来の破綻を懸念するあまり、国民年金を支払わない、という人まででています。

しかし、国民年金を支払っていれば、上乗せして将来受け取る年金額を増やす方法もあるのです。上乗せのシステムを利用するには、基礎年金である国民年金に必ず加入している必要があります。

また、年金に加入していなくても貯蓄をしていれば大丈夫、という考えもありますが、将来インフレが起きてしまった場合には、物価が上がり、足りると思っていた貯蓄額では足りずに生活できなくなってしまう可能性もあります。国民年金は物価スライド式なため、インフレに合わせて支給額を増やすことができ、さらに一生涯受給することができるのです。

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