「源泉徴収票と給与支払報告書はどこが違うのだろう」
このような悩みを抱え、年末調整を行っている企業の経理担当の方も多いのではないでしょうか。
源泉徴収票と給与支払報告書は年末調整時に提出が必須の書類ですが、両者の書類は同じ内容のため混同しやすいです。
この記事では、源泉徴収票と給与支払報告書の違いやそれらに合わせて必要な書類について解説します。
源泉徴収票と給与支払報告書の違いを理解し、これらの書類を抜け漏れなく提出しましょう。
目次
1.源泉徴収票と給与支払報告書とは
源泉徴収票と給与支払報告書とは、給与を支払っている会社(または個人事業主)が、従業員等に対して支払った前年中の給与額などをまとめた書類です。
源泉徴収票と給与支払報告書のどちらとも、年末調整時に社員全員分の書類を給与を支払っている会社(または個人事業主)が作成します。
この2つは同じものだと思われがちですが、別物なので注意が必要です。
源泉徴収票が所得税のための書類、給与支払報告書が住民税のための書類で、それぞれ担当しているのが税務署と市区町村となっています。
給与支払報告書の個人別明細書が源泉徴収票とほとんど同じ内容のため、混同されることが多いです。
源泉徴収票と給与支払報告書の違いについては後述します。
(1)源泉徴収票とは
源泉徴収票とは、法定調書の一つで、従業員の1年の給与支給額と源泉徴収税額を記載する書類を言います。
給与金額と納税額に加えて、配偶者控除や扶養控除などを記載した書類です。
源泉徴収票を確認することによって、支払金額や給与所得控除後の金額がわかります。
なお、表でまとめると以下のようになります。
提出義務者 |
給与を支払っている会社(または個人事業主) |
対象期間 |
2021年1月1日に在籍している全従業員の2021年1月~12月の給与 |
提出期限 |
2022年1月31日まで |
提出場所 |
会社(または個人事業主)の住所地の所轄税務署 |
税務署へ提出する源泉徴収票はすべての従業員について提出しなければならないわけではありません。
なお、詳しくは次章の「対象範囲」にて詳細に説明しています。
源泉徴収票は2枚作成する必要があり、1枚は税務署へ、1枚は従業員に交付します。
記載内容は給与支払報告書と同様で、1年間に従業員に支払った金額と各種控除額を記載しましょう。
源泉徴収票についてさらに知りたい方は以下の記事をご覧ください。
(2)給与支払報告書とは
給与支払報告書は、住民税を計算するための書類です。
2021年の例を表でまとめると以下のようになります。
書類内訳 |
|
提出義務者 |
給与を支払っている会社(または個人事業主) |
対象期間 |
2021年1月1日に在籍している全従業員の2021年1月~12月の給与 |
提出期限 |
2022年1月31日まで |
提出場所 |
2022年1月1日現在で従業員の現住所のある各市区町村 |
※31日が土日祝日と重なる場合には、次の平日となります。
給与支払報告書には、その1年間に支払った給料の額や扶養控除や配偶者控除等の控除額を記載します。
それぞれの控除は年末調整時に、各従業員に提出してもらう書類を参考に記載を行います。
給与支払報告書は個人別明細表と統括表に分類されており、前者は各従業員の分を2枚作成し、後者は従業員が居住する各市区町村の分を1枚作成します。
給与支払報告書についてさらに知りたい方は以下の記事をご覧ください。
2.源泉徴収票と給与支払報告書の4つの違い
源泉徴収票と給与支払報告書の違いは以下4点あります。
- 税金の種類・提出先・電子申告の方法について
- 対象範囲
- 作成のタイミング
- 記載内容
それでは順に解説します。
(1)税金の種類・提出先・電子申告の方法について
源泉徴収票と給与支払報告書の違いは、税金の種類と提出先です。
源泉徴収票の場合は所得税を報告するために利用し、一定の場合は税務署への提出が必要ですが、給与支払報告書の場合は個人住民税の計算に利用するため、従業員が居住する市区町村に提出が必要です。
簡潔にまとめると以下のようになります。
提出先 |
税金の種類 |
電子申告サイト |
|
源泉徴収票 |
税務署 |
所得税 |
e-Tax(国税電子申告・納税システム) |
給与支払報告書 |
市区町村 |
住民税 |
eLtax(地方税ポータルシステム) |
提出先が異なることに伴い、両書類を電子申告する際に利用するWebサイトも異なります。
給与支払報告書では「eLtax(地方税ポータルシステム)」、源泉徴収票では「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」の利用が必要ですが、2つの名称が似ているため注意が必要です。
(2)対象範囲
源泉徴収票と給与支払報告書では作成が義務付けられている対象が異なります。
給与支払報告書は、すべての従業員について提出する必要がありますが、源泉徴収票に関しては以下に該当する従業員のみ提出します。
受給者の区分 |
提出範囲 |
|
年末調整をしたもの |
①法人の役員(取締役、執行役、監査役、顧問等) |
給与等の支払金額が150万円を超えるもの |
②弁護士・司法書士・公認会計士・税理士など |
給与等の支払金額が250万円を超えるもの |
|
③上記①②以外の方 |
給与等の支払金額が500万円を超えるもの |
|
年末調整をしなかったもの |
④「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方で、退職した方など |
給与等の支払金額が250万円を超えるもの |
⑤「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方で、給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかった方 |
全部 |
|
⑥「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった方 |
給与等の支払金額が50万円を超えるもの |
(3)作成のタイミング
源泉徴収票と給与支払報告書では作成のタイミングが異なります。
給与支払報告書は年末調整時のみの作成で問題ないですが、源泉徴収票は年末調整時と従業員が退職したタイミングに作成が必要です。
なお、退職者には退職日から1か月以内に源泉徴収票の交付が必要です。
(4)記載内容
源泉徴収票と給与支払報告書の記載すべき内容はおおよそ同じですが、一部違いがあります。
給与支払報告書は住民税の納付方法について普通徴収か特別徴収となるのか記載しなくてはなりません。
分類 |
納税方法 |
特別徴収 |
事業主が従業員に支払う給与から個人住民税を毎月天引きし、まとめて納税 |
普通徴収 |
納税義務者自身が年4回に分けて納税 |
特別徴収は義務となっています。
ただし、会社や従業員に事情がある場合は、特別徴収から普通徴収へと切り替えることが認められる場合があるため、詳しくは従業員の住所のある市区町村のHPをご覧ください。
3.前々年の提出枚数が100枚以上であれば電子申告が義務
令和3年(2021年)1月以後に提出する源泉徴収票と給与支払報告書は一定の基準を超えれば電子申告が義務化されています。
源泉徴収票の場合、前々年に提出すべきであった法定調書の数が100枚以上(改正前:1,000枚以上)の場合は電子申告が義務付けられています。
給与支払報告書の場合、前々年における給与所得の源泉徴収票の税務署へ提出すべき枚数が100枚以上(改正前:1,000枚以上)であるときは電子申告が義務付けられています。
まとめ
この記事では、源泉徴収票と給与支払報告書について解説しました。
今回紹介した、源泉徴収票と給与支払報告書のどちらとも、年末調整時に従業員(会社員)全員分の書類を作成しなければなりません。
両者は混同しやすい書類のため、違いを把握して適切に申告を行いましょう。