初めての年末調整は聞きなれない言葉の連続です。社員に記入して提出してもらわなければいけない書類、事業主が記入し提出しなければいけない書類など提出物がたくさんあります。記入漏れや提出ミスのないように気をつけきちんと年末調整をおこないましょう。
目次
年末調整に提出する用紙の種類
1年の収入がわかる源泉徴収票
1年の収入が記載されている書類は二つあります。一つは源泉徴収票で、もう一つは給与支払報告書です。
源泉徴収票には支払金額、給与所得控除後の金額、所得控除の合計額、源泉徴収税額を記載して、社員一人一人と税務署に提出しなければいけません。これ一枚で、自分の額面の年収、社会保険料など控除された後の年間の手取り額などが一目でわかります。
この源泉徴収票は、それぞれの社員と税務署に提出しなければいけません。もう一つ、同じような内容のものを記載した給与支払報告書は、住民税の計算のために必要な書類ですので、従業員の居住している市区町村へ提出となります。
所得税を申告する所得税徴収高計算書
会社や個人事業主は、社員の給与から天引きし徴収した所得税を納めなければいけません。そのときに提出する書類がこの所得税徴収高計算書になります。記入の仕方は下記のURL、国税庁のホームページに記載されていますので、参考にしてください。
所得税および、所得税徴収税高計算書を納めるのには期限があります。原則として、給与や賞与などを支払った月の翌月10日までに、国におさめなければいけません。特例として常に給与を支払う人数が9人以下の場合は、半年まとめて支払うことも可能になっています。もし、所得税を納めるのを忘れた場合10%もしくは、5%の不納付課税がかかりますので、くれぐれも忘れないように気をつけましょう。
給与の合計が記載の法定調書合計表
この法定調書合計表は、税務署に提出しなければいけない書類になります。この書類は、従業員の源泉徴収票に記載されている内容なのですが、税務署がそれを一枚一枚処理し合計するのは大変なので、合計したものを作成し提出する事になっています。記入項目は次の6項目からなっています。
☑ 1.給与所得の源泉徴収票合計表
☑ 2.退職所得の源泉徴収票合計表
☑ 3.報酬・料金・契約金および賞金の支払調書合計表
☑ 4.不動産使用料等の支払調書
☑ 5.不動産等の譲受けの対価の支払調書
☑ 6.不動産等の売買または貸付のあっせん手数料の支払調書
税務署が配布している、年末調整の手引きなどを見ながら間違いのないように記載することを心掛けましょう。
扶養家族を申告する扶養控除申告書
この扶養控除申告書は扶養家族の有無を報告する書類になります。扶養家族とは税法上と健康保険上の2パターンあります。税法上の扶養家族というのは、配偶者以外の親族であること、生計が一緒であること、年間38万円(給与のみのときは103万円)以下の収入である人のことを言います。
健康保険上の扶養家族とは、配偶者を含む直系親族であること、左記以外の三親等内の親族で同居していること、内縁の配偶者の父母と配偶者の連れ子であることを言います。
この扶養控除申告書で記載するのは税法上での扶養家族のことを言います。この扶養家族の人数を報告することで、それぞれの事情に応じて減額するために必要な書類になります。この書類は従業員が記入する書類になりますが、事業主の方も間違いがないかきちんと確認するようにしましょう。
保険料を申告する保険料控除申告書
この保険料控除申告書は正式には、「給与所得者の保険料控除申告兼給与所得者の配偶者特別控除」という名前になります。その名の通り、保険料として支払っている生命保険料や地震保険、社会保険、小規模企業救済掛け金などの、支払金額を申告する書類になります。10月ぐらいから自分が加入している、それぞれの保険会社から保険料控除証明書が送付されてきます。それをもとに金額を記入し、保険料控除証明書と一緒に提出します。
配偶者特別控除に関しては、控除を受けることができるかどうかの条件があります。まず、配偶者であること、その人と生計を共にしていること、配偶者の合計所得金額が38万円以上76万円未満であることなどです。その条件をすべてクリアしていれば配偶者特別控除を受けることができますので、しっかり記入して提出するようにしましょう。
住宅ローンを申告する住宅ローン控除申告書
申告する対象は、自分の家を建てた、建売の家を購入した、中古住宅を耐震強度のためにリフォームする、省エネやバリアフリーにするときに借りた住宅ローンに適応されます。
ローンを借りた1年目のみ自分で確定申告で住宅ローン控除の申告をしないといけません。控除を受けるのが1年目でよくわからないという従業員の方もいると思いますので、住宅ローン控除についてどのような書類を提出しなければいけないのかなど、伝えれるように把握しておきましょう。
住宅ローン控除を受けるにあたっていくつか条件があります。控除を受ける年の合計年収が3,000万円以下である事、ローンを10年以上で組んでいるなどいくつか条件がありますので確認が必要になります。1年目の確定申告で住宅ローン控除を受けた方は2年目からは年末調整できますので、きちんと申告するようにしましょう。
年末調整の用紙の入手方法
国税庁ホームページでダウンロード
従業員の人数が少ない場合は、申告用紙を国税庁のホームページからダウンロードすることが出来ます。手順は次の通りです。
☑ 1.申告・納税手続き
☑ 2.税務手続きの案内
☑ 3.源泉所得税関係
いろいろな種類の書類があるのでその中から必要な物を選んでコピーするようにしましょう。気をつけなければいけない点は扶養控除の書類です。○年度給与所得者の扶養控除等申告書が翌年になっているか確認しましょう。それ以外の書類はその年度分で大丈夫です。
税務署の窓口でもらう
従業員の人数が少人数のときはダウンロードしたものをコピーすればいいのですが、たくさんいるときは国税庁のホームページから一枚一枚印刷するのは時間もお金もかかってしまいます。所轄税務署でもらうようにしましょう。自分の会社の所轄税務署がどこかというのは国税庁のホームページで調べることが出来ます。
会社を作って初めて年末調整をするという方は、わからないことも多いと思いますので、所轄税務署が開催している年末調整の説明会に参加するものいいでしょう。その際に、手引きや必要書類をもらうことが出来ます。
年末調整の書類の提出について
提出先は税務署へ
従業員に記入をお願いしていた書類、自分たちで作成しなければいけない書類、添付しなければいけない書類が全部そろっているかどうかチェックしたら、書類を所轄税務署に提出します。
基本的に、税務署に提出しなければいけない書類は法定調書合計表と、税務署から提出を求められた場合に源泉徴収票になります。そのほかの扶養控除申告書、保険料控除申告書、住宅ローン控除申告書は会社で7年間保管しておき、税務調査などのときに、提出を求められれば提出するということになりますので、しっかり保管しておくようにしましょう。
書類や用紙は郵送でも可能
郵送で提出することも可能です。ただし、荷物扱いでは郵送できないので郵便または信書便物として送付するようにしましょう。その場合、通信日付印が提出日とされます。
年末調整を郵送にすると、わざわざ税務署に行って提出しなくてもよく、時間も削減できるので、忙しくて税務署に行くことができないという方は郵送がおすすめです。しかし、初めて年末調整をおこなう場合は直接税務署に行き、専用の窓口で内容などチェックしてもらいながら提出するほうがいいでしょう。
税務署の方に確認してもらい提出すると、記入漏れやミスなどで何度も税務署に行くことは少なくなります。初めてで心配だという方は郵送ではなく、税務署に提出するほうが確実で安心です。
提出期限は翌年の1月31日
提出期限が翌年の1月31日までの種類が何種類かあります。まず、従業員に源泉徴収票を1月31日までに渡すようにしましょう。医療費控除などの理由があって、自分で確定申告をしなければいけないという従業員の方もいますので、1月中に渡すようにしましょう。
次に、税務署へ作成した法定調書合計表を提出しなければいけません。税務署から提出を求められて、源泉徴収票が必要な場合もありますので念のため準備しておきましょう。最後に市区町村へ住民税の計算用として、給与支払報告書を提出しなければいけません。いずれの書類も提出期限は1月31日までですので、必要な書類をきちんと用意しておくようにしましょう。
提出忘れの場合は確定申告をする
提出し忘れた書類がある、申告漏れやミスがあったときなどは、まず1月31日までであれば、再年末調整が可能です。1月31日以降の場合は従業員の方に確定申告してもらうようにお願いしましょう。本来、年末調整は従業員一人一人が確定申告をするものです。しかし、一人一人が確定申告をしに税務署に行くと申告される税務署側の処理も大変時間がかかってしまいます。まとめて企業が年末調整として申告をおこない、それを税務署が処理するという仕組みになっています。
企業が年末調整できる内容も決まっており、医療費控除などは従業員の方が個人で確定申告をしなければいけません。さらに過去5年はさかのぼって還付してもらうための、確定申告をすることが可能です。還付されるまでに1ヶ月から1ヶ月半ほど時間がかかりますが、従業員の方に確定申告をお願いするときはその旨も伝えておくようにしましょう。
年末調整の用紙は漏れなく提出しよう
今まで会社から言われるがままに書類を提出していた年末調整も、自分がする側になるとわからないことがたくさんで不安を感じるかもしれません。しかし、一度やり方を覚えれば毎年同じことの繰り返しですので、少しずつ慣れるようになります。初めての年末調整をおこなうときにしっかり税務署などで年末調整について教わり、知識を身につけておくようにしましょう。
必要な書類をきちんとそろえ、ミスなく提出することも大切。期日までであれば再提出できるとはいえ、修正するにも時間と手間がかかります。自分たちだけの手間だけでなく、従業員の方の税金にもかかわってくる事ですので何度も確認することが大切です。