個人事業主は確定申告書を提出します。どの程度の売り上げで消費税を申告して納付する必要があるのかについては、少し専門性が問われる分野になります。基本的な消費税の仕組みを身につけて正しい認識のもと消費税を申告する必要があります。
目次
消費税申告が必要な人
課税売上高が1,000万円以上
消費税の申告が必要な要件に課税売上高が1,000万円以上の個人事業主であることとあります。課税売上高とは一般的な商品の売上や、税理士や司法書士などの専門的なコンサルティングによる売上であったり、マッサージの施術による売上であったり、原則国内で発生する売上のことを課税売上高といいます。
ただし、家賃収入などの売上は課税売上高に含まれない場合があります。住宅による家賃収入は非課税といっって課税売上高に含みません。事務所などの家賃収入は課税売上高に該当します。駐車場収入も課税売上高とするのですが、住宅家賃と合算された駐車場収入は非課税として扱われ、課税売上高に該当されなくなります。
このように内容によって国が定める非課税に分類されるものなどを除いた課税売上高の合計が1,000万円以上になった場合に消費税を申告する必要が発生します。消費税の申告・納税義務の判定に、どれだけ仕入れや経費があったことは関係なく、2年前の課税売上高で判定していきます。個人事業主においての消費税の判定はシンプルなものとなっています。
個人事業主である
事業者は国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務があるとされています。つまり、事業者であって課税売上高1,000万円以上の要素を満たしていると、消費税を納めることになり、申告をしなければなりません。ポイントは事業者(=個人事業主など)であることです。
自分で事業を起こしていない会社勤めの会社員たちは収入が1,000万円を超えても消費税を申告及び納付する必要はないということになります。日本国内において事業として売上が発生していて、事業のために仕入れや経費のある個人事業主であることが前提となります。
消費税申告の対象期間
2年前の1月1日~12月31日まで
消費税を申告する必要のある個人事業主の判定は2年前の課税売上高が1,000万円以上かそれ未満であるかを見ていくことになります。個人事業主の場合は一つの事業期間は1月1日から12月31日となっていますので、2017年の2年前の期間は2015年の1月1日から12月31日となります。2018年の2年前は2016年の1月1日から12月31日となり、個人事業主の期間は法人に比べるとわかりやすいものとなっています。
なぜ2年前の期間が対象期間になるのか。今年の課税売上高で判定すると年末もしくは年明けでないと金額が確定されないため、その時点にならないと納税義務があるのか不明のままです。1年前の昨年で判定をおこなう場合にも金額が確定されるのは今年の事業年度と重なるため、消費税を売上に上乗せすべきかどうかの判断が適正に行なえません。そのために課税売上高などの数値がすべて確定されている2年前が消費税の納税義務の判定期間になっています。
年内に開業したばかりの人は対象外
確定申告を行う個人事業主は開業1年目は消費税の納税義務はありません。事業を7月に開始した場合は初年度が7月設立日から12月31日までとなります。しかし消費税の納税義務の有り無しの判定は2年前の期間になるので、2年前の期間自体の月数が少なければ少ないほど1,000万円の壁を超えにくくなります。
ただし、6月から12月(特定期間)の期間が1,000万円を超えていた場合には消費税の納税義務者に該当します。個人事業主の期間は1月1日から12月31日を区切りにしますので、わかりやすいものでもあるのですが、消費税の計算期間においては考慮することも大切です。初年度において開業日が6月以降であった場合には開業日から12月31日までの期間が特定期間となります。
消費税の計算方法
基本的な原則課税方式
消費税は課税売上げにかかる消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を引いて計算することを原則としています。課税仕入れとは商品などの仕入れや機械・建物の事業用資産の購入又は賃借、原材料や事務用品の購入などをいいます。税理士や司法書士への支払いも課税仕入れに含まれます。税金を支払っていないことによる延滞税、印紙税、自動車税などは税が重なってしまうため課税仕入れの中には含みません。
計算式
(課税売上高×6.3%)−(課税仕入高×6.3/108)=納める消費税額
課税仕入れ等に係る消費税を引くためには、帳簿と請求書を最大10年間保存する必要があります。課税売上に該当する売上が何で、課税仕入れに該当する仕入れ、経費が何かという判定ができると計算式もシンプルですので消費税の計算ができます。ただし取引自体が複雑であったり、取引件数が多いとミスをしやすいため、自身に合った消費税の管理方法を見つけることも必要です。
また、上記の式から、課税仕入高の方が課税売上高を超える場合に消費税の申告をおこなうと、還付といって支払っていた消費税の一部が戻ってきます。売上によって預かっていた消費税よりも仕入れや経費などによって支払っていた消費税の方が多いため、売上によって預かっている消費税はそのままです。支払い済みの消費税から売上によって預かっていた消費税の差額分が基本的に戻ります。
もし初年度と翌年度の課税仕入れの方が課税売上げを超えることがわかる場合には消費税の申告義務のない初年度において課税事業者選択届出書を提出する方法もあります。2~3年は不適用届出書を出せないなど制限もあるのですが、自身でおこなう場合には正しい知識を勉強することが必須になります。
一定額以下が選択できる簡易課税方式
課税売上高のみから消費税の計算が完結する方法が簡易課税方式による消費税の計算方法になります。ただし、今年の2年前の課税売上高が、5,000万円以下であることと、簡易課税方式による消費税の計算方法を適用したい年の最初の日の前日までに届出書を提出しておく必要があります。
計算式(一番シンプルな式)
(課税売上高×6.3%)-(課税標準額に対する消費税額-売上に係る対価の返還等に係る消費税額)×みなし仕入れ率
みなし仕入れ率は業種によって異なっており第1種事業から第6種事業まであります。第1種事業は90%であり業種の数字が増えるごとに10%減っていきます。第6種事業は40%になります。
第1種事業は棚卸業、第2種事業は小売業、第3種事業は製造業等、第4種事業はその他の事業、第5種事業はサービス業等、第6種事業は不動産業と区分されています。
それぞれの業種に合った原価率に近いものとなっているのですが、場合によって簡易の方を選択していた方が消費税を納める金額は少なくなることもあります。簡易課税を選択できる事業主は検討するべき事項と考えられます。
消費税の確定申告の方法
国税庁のサイトから申請
国税庁のホームページから消費税の申告書を作成していく方法があります。初心者の方にも分かり易いものとなっており、税理士もシンプルな会計処理で済ませることのできるクライアントに対しては使用することもあるそうです。
国税庁のホームページをひらきます。申告書・決算書、収支内訳書等作成開始を選びます。e-TAX環境が整っているのであればe-TAXを選択します。ほとんどの個人事業主は環境設定はおこなわれていないと思うので、その場合には書面提出を選択します。そして、ご自身のお使いのインターネット環境の確認をおこない、問題内容であれば次へ進んで「消費税コーナー」を選択し、順番に入力をしていくと申告書が作成されます。
確定申告書をプリントアウトし提出
国税庁のサイトの確定申告作成コーナーから手順に従い申告書が作成されるのですが、消費税の申告が簡易的なものであったり、すぐ計算できる場合には手書きで提出という方法もあります。国税庁のホームページから消費税の申告書のpdfがプリントアウトできますので、出力した紙に直接書き、自分用の控えをコピーしてその控えも合して提出をおこないます。
税務署で作成して提出
税務署に直接行ってその場で作成し、提出する方法があります。とても親切に税務署の職員が教えてくれます。基本的に今の税務署は会議室にあるようなテーブルとイスが用意されており、そこに案内されて職員さんと一緒に申告書を作成していくことになります。
スムーズに作成できるように必要な資料を、先に電話などで問い合わせしておきましょう。自身の業種や資料によって何が必要なのか、それをもとに合計値をだしておくべきかなど、程度に差はありますが事前準備も必要になってくるのです。
消費税確定申告をするときの注意点
提出期限は3月31日まで
消費税確定申告の提出は1月4日から3月31日となっています。申告書の提出期限・納期限ともに3月31日になります。所得税の確定申告が2月16日から3月15日に対し、異なっているので注意する必要があります。申告書の提出は済ましていても消費税の納付忘れや、納付はしていても消費税申告書の提出忘れの場合には、どちらにおいても延滞税がかかりますので気を付けましょう。
自身の事業の繁忙期と重なる場合や前後の場合にはゆとりをもったスケジュールを計画して、消費税確定申告をおこなっていくことが大事です。決算前の場合なら来年に備えて適した届出書や申請書を出せますし、それによって納めるべき納付も減らすことができる場合もあるからです。知らないと損することもあるのが税金の世界ですので、やはり経営者としても消費税など関わる税金についての勉強はしておいたほうがよいです。
申告義務があるなら必ず申請する
消費税の申告義務のある個人の方は、やはり期限内に適切な消費税確定申告及び納付をおこなうことが大切です。融資を考えている場合にはなおのこと申告義務を守る必要があります。消費税の申告または納付をしていないと、税金を未納していることになり、融資を受けられない場合があるからです。申告しないということは信用にも関わることになりますから、申告義務のある個人事業者に該当するのでしたら、申告をし、納税ともに期限内におこなうことです。
対象者は確定申告のときに消費税申告をしよう
2年前の課税売上高が1,000万円を超える場合には消費税の申告をおこないます。設立の初年度は申告する必要はありませんが、設立後1年が経つ頃から売上が1,000万円の金額に届きそうな場合には注意しておくべきだと考えられます。正しい消費税の知識を知り、申告をしないという選択は避けて納税及び申告に備えて健全な経営をおこなっていきましょう。一人で抱え込まずに、心配な場合には税務署も相談相手として活用することも一つの方法です。