確定申告が必要な年金について。確認すべきポイントを知る

年金は雑所得として所得税の課税対象となっています。年金を給付する日本年金機構では、支払いのさいに所得税や復興特別所得税を徴収することが義務付けられています。源泉徴収額と実際に納める税額に差額が生じる場合、確定申告でその差額を清算します。

年金受給者の確定申告

自分で準備し自分で申告する

毎年1月1日から12月31日までに得た1年間の収入を確定、翌年の2月16日から3月15日に国へ申告することを確定申告といいます。売上、経費、所得などのお金の流れを確定申告書類に記入し税務署に提出。多くの会社員は年末調整で清算するので確定申告をする必要はありません。会社員で確定申告を行うのは、所得控除が増えた場合、2か所以上から所得がある場合です。

会社の給料と違って年金には、年末調整という制度がないので自分で確定申告をする必要があります。老齢厚生年金は雑所得。ただし、すべての年金受給者が確定申告をするわけではありません。

65歳未満で108万円以上、65歳以上で158万円以上の年金受給者は、雑所得として所得税、復興支援特別税の課税対象になります。年金を支払う日本年金機構では、支払いの際に所得税を徴収することが義務付けられています。

確定申告をする必要があるのは、公的年金の年収が400万円以上で、公的年金以外の所得が年20万円以上の方が対象。そのほか、社会保険料控除や生命保険料控除などの適用を受けたい、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書を提出しなかった場合も確定申告をする必要があります。つまり、年金は税金を天引きされた状態で支給されているのです。

確定申告に必要な書類は自分で準備できるものが多いです。日本年金機構より交付される源泉徴収票以外は自分で準備できます。記入が終わったら、自分の住まいを管轄する税務署に提出します。

確定申告の期間であれば、市町村区役所でも提出は可能。郵送でも提出できます。その場合、封筒に入れるのは申告書の提出用、申告者控の2部、そのほか添付書類、切手を貼った返信用封筒も同封します。郵送の場合、消印の日付が申告した日付になります。

勤務していても申告は必要

会社などに働いていて年金も受給者されている方も確定申告が必要になります。給与に関しては、毎月の給与から所得税が源泉徴収されています。年金についても原則として所得税が源泉徴収されることになっています。

内職や定年退職後シルバー人材センターで働いた場合、給与所得ではなく雑所得。雑所得の金額は収入から必要経費を差し引いた残りの金額となるため、必要経費がなければ収入すべてが所得となり税金の対象になります。

実態はアルバイトとほとんど変わらないのに、雑所得では不利になるので給与所得に準じた扱いがされます。最高65万円までは必要経費として課税されません。

年金は年末調整の制度がないため、2か所以上から年金を受給していたり、年金をもらいながら働いた場合は、年間を通してその人の給与と年金を合わせた合計所得に対する所得税を再計算するために、確定申告をしなければなりません。一方だけでは、全体の収入と税額が把握できないからです。

確定申告時の必要書類

最寄りの税務署で必要な用紙をもらうか、国税庁のホームページからダウンロードすることも可能です。用紙は普通の用紙でモノクロ印刷でも構いません。

☑ 日本年金機構から交付された源泉徴収票(原本)

☑ 領収書、レシート

☑ 口座振替の出入金状態がわかる銀行の通帳

☑ 印鑑

確定申告の用紙は申告書A、申告書Bにそれぞれ第1表、第2表、分離課税損失申告用など第5表まで全部で8種類。サラリーマンや年金受給者などが使用するのは申告書Aです。

e-Taxという国税庁のシステムを使用して確定申告を行う方法もあります。書類作成、税金の納付もできるシステム。医療費の領収書や生命保険料控除証明書などの添付書類の提出も省略できます。ただし、税務署からの問い合わせに備えるため5年間は保管が必要。このシステムを使用するには、公的個人認証サービスとICカードリーダーが必要になります。

年金受給者の確定申告が必要な場合

確定申告が必要な条件

年金受給者でも確定申告が必要な場合があります。

☑ 公的年金収入400万円以上

☑ それ以外の所得20万円以下

☑ 社会保険控除、生命保険料控除、医療費控除などの控除を受けたい

☑ 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書を提出しなかった

以上の条件の場合、確定申告が必要になります。2か所から年金を受け取っている方は確定申告が必要となります。それぞれ支払い先から源泉徴収されていますが、一方だけでは全収入と税額が把握できないためです。

各種控除の適用を受けたい場合

年金受給者でも控除の適用を受けたい場合は、確定申告が必要になります。

☑ 社会保険料控除

☑ 生命保険料控除

☑ 雑損控除

☑ 医療費控除

☑ 寡婦(夫)控除など

などの適用を適用を受けたい場合は確定申告をします。

扶養親族等申告書を提出していない場合

日本年金機構や厚生年金基金などから扶養親族等申告書が送付されます。

☑ 65歳未満で108万円以上

☑ 65歳以上で158万円以上

の受給者に送付。扶養親族等申告書は翌年の年金の税金計算の基礎となります。扶養親族等申告書を提出しないと基礎控除や配偶者控除などの控除が適用されなくなります。

扶養親族等申告書には、扶養対象親族の数、本人以外の障害者の数などを記入します。しかし、年度の途中で扶養親族等の人数に追加、減少などの変更があった場合は確定申告を行うことが必要になります。

扶養親族等申告書は収入としてではなく所得として申告します。扶養親族がいなくても自分の基礎控除を受けるためには提出が必要。そのほか、受給者本人が障害者の場合、一般障害者控除、特別障害者控除の適用を受けることができます。

扶養親族等申告書は日本年金機構と厚生年金基金や共済などの2か所から送付されます。扶養親族等を2重に申告はできませんが、本人の分は使用できるので、両方とも提出して構いません。

年金受給者でも確定申告が不要な場合

確定申告不要制度が適用される場合

平成24年から年金受給者の確定申告不要制度がスタート。この制度は公的年金の額が65歳未満の方は年金額の支給が

☑ 公的年金などの収入が合計400万円以下、その公的年金のすべてが源泉徴収の対象

☑ 公的年金など雑所得以外の収入が20万円以下

の受給者の方が対象になります。注意しなければならないのが、年金をもらいながらアルバイト、株式などの投資で収益を上げた、家賃収入がある、生命保険の個人年金を受けている方です。

アルバイトは給与所得か雑所得、株式などの収益は譲渡所得または雑所得、家賃収入は不動産所得、個人年金は年金形式は雑所得、一時金タイプは一時所得と所得の種類が異なります。年金形式で受け取る場合は所得税が徴収されます。

所得の種類ごとに分け、給与控除、特別控除、必要経費など差し引いた金額やその金額を1/2にした金額が種類ごとの所得金額。この所得金額を合計20万円を超える場合は確定申告を行わなければなりません。

年度の途中で、扶養親族等の人数が増えたり減った場合や、生命保険料控除の適用を受ける場合、源泉徴収額と実際に納める税金に差異が生じます。公的年金等に、年末調整制度がないため、受給者本人が確定申告で差額を清算する必要があります。しかし、確定申告不要制度に該当する場合は、納めるべき税額が不足していても源泉徴収のみで終了、不足額を納める必要はありません。

確定申告不要制度の条件

年金受給者の負担を減らす目的で、平成24年からスタートした確定申告不要制度の条件ですが、

☑ 公的年金の額が年収400万円以下

☑ 年金以外の所得金額が年金以外の20万円以下

の場合、所得税の確定申告は不要となります。所得税の申告は不要でも、住民税の申告が必要な場合も。医療費控除などの還付申告には今までどおり確定申告を行う必要があります。

確定申告不要制度の対象者でも申告をすべき場合

税金の還付を受ける場合

納めすぎた税金の還付は還付申告を行います。過去5年までさかのぼることが可能。過去の還付申告については受付期間は決まっていません。

医療費控除やその他の控除を受けたいときは確定申告をする必要があります。医療費控除は、10万円以上、所得が200万円以下の場合は所得の5%以上が対象になります。年間の所得が100万円の場合、医療費が5万円以上なら医療費控除の対象になる可能性があるので領収書やレシートは大切に保管しましょう。

災害や盗難、横領などにより損害を受けた場合は雑損控除の対象。詐欺の被害は対象外になります。

住民税の申告が必要な場合

住民税は前年の1月から12月までの所得に対し1年遅れで徴収されます。住民税の申告が必要な場合も確定申告が必要。住民税の申告が必要なのは

☑ 医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、住宅ローン控除を受けるとき

☑ 額にかかわらず、年金以外の所得がある場合

確定申告をしない場合、住民税の申告は市町村区役所にて行います。年金収入のみで、年間の400万円以下。ほかの控除がなく確定申告をしない場合、住民税を申告しないと増額してしまう場合も。住民税の申告をしないことで控除が少なくなったと判断され課税金額が高くなるからです。

確定申告書を税務署に提出したら、住民税の申告を市町村区役所に提出する必要はありません。税務署からのデータが市町村区役所に届けられるからです。

年金受給者の確定申告のポイント

添付できる資料はとっておく

医療費控除は、自分の医療費のほか家族の医療費を全て合計し申告することが可能。添付書類は領収書、レシート、医療費の明細書などが必要になります。

領収書やレシートの原本返却は、確定申告の際に「原本還付請求」と記した封筒に領収書やレシートを入れておくことで、原本は返却されます。

病院に通うための交通費は、集計し「その他」として通院日と通院費用のメモ書きを添付。

もし、病院の領収書を紛失してしまったら、病院に領収書の再発行を依頼してみましょう。再発行に応じてもらえないときは、家計簿などの医療費の支出を記録したものをコピーして添付します。健康保険組合などから届く医療費のお知らせは領収書ではありません。

疑問点がある場合は確定申告会場へ

確定申告はその年度によって、いろいろと変更点があります。わからないところは、すべて税務職員に相談しましょう。

各市町村区役所などにより対応は異なりますが、確定申告期間中は休日でも税務職員が対応する場合もあります。申告を間違えて修正申告のために税務署からの問い合わせ、呼び出しがないように疑問点があるなら、確定申告会場で相談してみましょう。

確定申告の必要があるかを確認して忘れずに手続きする

老後の生活を支える年金は、税金上は雑所得として処理されます。年金は支給額によっては、年金を支払う日本年金機構より所得税と復興特別所得税が徴収されています。

平成24年から、年金受給者は確定申告不要制度が導入され、大部分の方は確定申告をする必要がなくなりました。

しかし、社会保険料控除や生命保険料控除、医療費控除の適用を受けたい場合は、確定申告をする必要があります。確定申告の期間中は、無料の相談会を開催する地域もあります。専門家の意見を聞きながら、間違いのない手続きが行なえるようにしましょう。

さらに詳しく知りたい方は
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