個人事業主の開業手続き【簡単な手続きで今すぐ始められる】

開業をする場合には、さまざまな手続きが生じるものだと思われがちですが、実際には、簡単に開業の手続きをすることができるのです。また、開業届とともに青色申告承認申請書を提出しておくことで、年末の確定申告の際に、節税対策をすることも可能です。

開業する際に必要なこと

開業日を決める

開業することを決めたら、まずは開業日を決めることが必要です。個人事業における開業日は、事務所や店舗などの契約日にするケースが一般的です。自宅をオフィスとする場合には、事業の準備を開始した日を開業日としてもよいでしょう。

事業開始前に発生した支払い分を経費に入れる場合には、経費発生日を開業日にしたり、発注や何かしらの契約が生じた日が証拠として残っている場合には、それらが発生した日を開業日にするケースもあります。このように、開業日は、任意で設定することが可能です。

開業日にまつわるイベントやキャンペーンなどを考えている方は、クリスマスやお正月など、公のイベントと重ならないようにしておくこともポイントです。事業開始前の段階でも、税務署は開業届を受け付けてくれます。

屋号を決める

屋号とは、法人でいうところの会社名にあたるものです。屋号がそのまま店舗の名前となり、銀行の口座名、名刺、領収書、契約書などに記載されるようになります。屋号は、必ずしももたなければいけないものではなく、個人名義で事業を行っていくことも可能です。

しかし、個人名義だけでは、実態がつかみずらく、顧客や取引先に不安感を与えてしまうことがあります。屋号をもつことによって、顧客や取引先に事業内容をわかりやすく印象づけ、信頼を得ることができます。したがって、屋号は読みやすく誰にでもわかりやすいものにするとよいでしょう。難しい漢字や英語など、覚えにくいものにすると、顧客になかなか浸透しません。

屋号を見ただけで、どんな事業を行っているのかがイメージでき、印象に残りやすいものにすることが効果的です。また、ほかに同じような屋号をもつところがないかどうかを、チェックしておくことも必要です。シンプルで覚えやすく、かつオリジナリティのある屋号にすることが、ビジネスチャンスを広げる効果的な方法になります。

税務署で手続きをする

開業日と屋号を決定したら、管轄の税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。「個人事業の開業・廃業等届出書」は、新たに事業を開始したときや、事業用の事務所を新設・増設・移転したとき、また、事業を廃止したときに提出する書類となります。

事業開始日から1ヶ月以内が提出期限となっています。直接、税務署に出向かなくても、書類を郵送することも可能です。郵送の際には、運転免許証などの本人確認書類の写しを添付する必要があります。「個人事業の開業・廃業等届出書」は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

また、年末の確定申告で青色申告を行いたい場合は、あらかじめ「青色申告承認申請書」を管轄の税務署へ提出しておく必要があります。事業所得が年間38万円を超えると、確定申告が必要となりますが、その際に節税メリットが受けられる、青色申告を希望する個人事業主の方はたくさんいます。

確定申告で、青色申告を行う場合は、「青色申告承認申請書」の提出が必ず必要となりますので、開業届とともに、青色申告承認申請書も一緒に提出しておくとよいでしょう。

個人オフィスを開設する

 

個人事業主のオフィスには、以下のようなさまざまなオフィスの形態があります。

1.自宅で開業する

自宅をオフィスにしてしまえば、貸事務所などで発生する毎月の賃貸料や、敷金・礼金・保証金といった賃貸契約に必要な費用を全て節約することができます。

2.バーチャルオフィス

バーチャルオフィスとは、自宅に事務所を構えながらも、住所・電話番号・電話対応・郵便物の転送等をバーチャルオフィスの会社に任せることをいいます。自宅のオフィスは、賃貸料などの発生を節約できますが、名刺やホームページに自宅の住所や電話番号などを記載する必要がでてきます。

しかし、バーチャルオフィスを利用すれば、そういった個人の連絡先を記載する必要がなくなるのです。利用料金は、月に数1,000円から20,000円ほどになります。これに別途初期費用がかかりますが、貸事務所やレンタルオフィスを借りるよりも格段に費用を抑えることができます。

3.レンタルオフィス

レンタルオフィスとは、業務に必要なデスク・イス・パソコン・電話などの設備がすでに整えられているオフィスを、賃貸借契約を結んで借りることができるオフィスのことをいいます。事務所としてすぐに使える状態であるため、内装や設備にかかる初期費用を節約することができます。

多くのレンタルオフィスは、個人使用の小さい空間から数人で使用できる空間まで、あらゆるサイズのオフィスを提供していますので、業績に応じて事務所のサイズを変更していくこともできます。

4.貸事務所(貸店舗)

貸事務所や貸店舗を借りるには、敷金・礼金・保証金といった賃貸契約に必要な初期費用が必要となります。家賃の数ヶ月分を必要とし、初期費用に100万円以上必要なこともあるため、小売業や飲食業といった、店舗を借りないと事業が成り立たない個人事業主が借りるケースが多いようです。

個人事業主として開業する際の手続き

個人事業主の開業廃業等届出書を提出する

開業前、もしくは開業してから1ヶ月以内に管轄の税務署に開業届を提出します。開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。期限内に提出しないからといって、罰則があるわけではありませんが、事業所得が38万円を超えて青色申告で確定申告を行う際には、必ず提出する必要がありますので、事業開始時に提出しておくとよいでしょう。

また、税務署が遠い場合や、忙しくて税務署へ行く時間がない場合は、開業届を郵送で提出することができます。開業届には、屋号の記載を始め、申請者本人のマイナンバー(12桁)も記載する必要があります。税務署の窓口では、マイナンバーが確認できる書類、もしくは運転免許証やパスポートを提示して、本人確認を求められます。開業届を郵送する方は、本人確認書類の写しを添付する必要があります。

所得税の青色申告承認申請手続きをする

年末の確定申告で青色申告をする場合には、あらかじめ管轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。毎年1年間に得たすべての所得を計算し、申告と納税を行う「確定申告」では、白色申告と青色申告がありますが、節税対策などの特典を受けるためには、青色申告で行います。申請書の提出期限は以下のようになります。

☑ 1.1月1日〜1月15日までに開業した場合:その年の3月15日までが提出期限
☑ 2.1月16日以降に開業した場合:開業日から2ヶ月以内が提出期限

提出期限が、土・日曜日・祝日にあたる場合は、これらの日の翌日が期限となります。「青色申告承認申請書」では、「複式簿記」「簡易簿記」といった青色申告のための簿記の方式を選択する箇所があります。これは、青色申告による節税メリットの控除金額によって変わります。

「簡易簿記」での提出は、最大10万円の青色申告控除を受けられ、「複式簿記」での提出は、最大65万円の青色申告控除を受けることができます。最大65万円の青色申告控除を受けるためには、簿記の原則に沿った記帳をし、それに基づいて作成した賃貸対照表と、損益計算書を確定申告書に添付して、提出する必要があります。

個人事業主の手続きをするメリット

節税対策になる

開業届とともに、青色申告承認申請書を提出することで、年末の確定申告で青色申告をして、節税対策をすることができます。1年間の所得が増えれば、それに応じて納める税金も上がりますが、青色申告をすれば、最大で65万円を所得金額から引くことができ、税金を抑えることができるのです。

この制度を利用することによって、所得税のみならず、所得に応じて納める金額が変わる住民税、国民健康保険料においても、金額の負担を減らすことができます。また、事業で損失がでた場合は、翌年度以降に赤字を全額繰り越して、翌年の利益と相殺することができます。最長3年間、この制度を適用することができます。翌年の利益から赤字を差し引いたものが、翌年の所得額とみなされるため、納税額を抑えることができるのです。

さらに、「青色事業専従者給料に関する届出書」を税務署へ提出すれば、家族に支払った給料を経費として計上することができます。所得から経費を差し引いた金額が、所得金額とみなされますので、節税対策にもなるのです。白色申告よりも詳細な帳簿付けをする必要がある青色申告ですが、簿記の詳しい知識がなくても、会計ソフトを使って対応することも可能です。

屋号で銀行口座を開設できる

個人事業主として屋号をもつと、屋号名義で銀行口座の開設ができるようになり、顧客や取引先からの信用を得ることにもつながります。事業を開始すると、消耗品や旅費などの経費、取引の入出金、家賃、公共料金など、多くのお金が出入りします。

節税対策のためにも、日頃からお金の明細は、しっかり管理しておく必要があります。個人名義の口座のままでは、個人で使用したお金か、事業で使用したお金か、区別がつかなくなってしまうこともありますが、仕事専用の口座があれば、お金の流れが明確になり、会計や確定申告のときにも大変便利です。

また、WEBショップなどのホームページに、個人名の振込先を掲載することも避けられます。屋号名義での口座開設には、開業届の提出が必須になります。口座名義は、屋号と代表名からなりますが、屋号名のみでも振込をすることができます。事務所や店舗など事業を営んでいる場所から、一番近い支点での口座開設となります。

公的書類として扱ってもらえる

開業届は、事業を始めたことを税務署に知らせるほかにも、さまざまな場面で公的書類として扱ってもらえるようになります。開業届は、提出用と控え用の2部を税務署へ提出しますが、控え用の開業届には、税務署の受付印が押された状態で手元へ戻されるので、公的に認められた証明書になるのです。以下のようなケースで、開業届を公的書類として扱ってもらえます。

☑ 1.銀行で屋号名義の口座を開設するとき
☑ 2.創業融資に申し込むとき
☑ 3.ハローワークの再就職手当に申請するとき
☑ 4.個人事業主の退職金代わりになる「小規模企業共済」に申し込むとき
☑ 5.保育園、または学童保育所へ申し込むとき(開業届が就労照明書とみなされます)

社会的信用を得ることができる

個人事業主として税務署で手続きを行うことは、社会的信用を得ることにもつながっていきます。税務署で受理される開業届は、いわば公に開業を認められた証明となるものです。銀行の口座開設をはじめ、さまざまなケースで公的書類として認められるほど、社会的信頼度が高いものなのです。

また、開業届を提出し、屋号をつけておくことで、顧客や取引先へ安心感を与え、信用を得ることにつながっていくのです。社会で信用を勝ち取ることは、ビジネス成功へ向けての大きな足がかりとなるでしょう。

仕事のモチベーションが上がる

事業を成功させるためには、モチベーションが大切です。会社に勤めている従業員ならば、上司や同僚との関りから自然とモチベーションを維持できるものですが、そういった目がない個人事業主は、いつの間にか気持ちに緩みが生じてしまうこともよくあることです。

多くの従業員からなる法人に比べ、個人経営の事業では、事業主本人のモチベーションが景気を大きく左右します。開業届を提出し公に認められることで、事業主としての責任感と自覚が芽生えてくるのです。

開業は難しくない

開業したいとは考えていても、実際に開業を始めるとなると、さまざまな手続きが生じることを想像し、尻込みしてしまう人も少なくありません。しかし実際には、開業は難しくなく、税務署へ提出する開業届も、わずかA4サイズ1枚の書類なのです。また、確定申告の際に節税のメリットを受けるための「青色申告承認申請手続き」の書類も同様です。

青色申告で節税の特典を受けるためには、帳簿をつける必要がありますが、特別な簿記の知識をもっていなかったり、税理士に依頼しない場合でも、会計ソフトで管理をすることが可能です。したがって、どんな人でも今すぐに開業をすることができるのです。

さらに詳しく知りたい方は
税理士に無料相談LINEChatworkメール

関連記事