開業届は起業の一歩。知っておきたい開業届の提出方法とその意味とは

フリーランスに必要な開業届ですが、実は開業届を提出しないで個人事業を続けている人も多いのは事実です。ではなぜ開業届を提出するのか、開業届の提出の意味と提出方法についてまとめます。開業届を提出してすばらしい起業の一歩を踏み出しましょう。

開業届を出す意味

個人事業主として仕事をする報告

開業届はこれから個人事業主として開業し、新たにビジネスを展開するという報告書類です。税務署や各都道府県税事務所、それぞれに開業の報告をする必要があります。その届出書が「個人事業の開廃業届出書」といい、この書類が開業届に当たります。

開業届は、「これから個人事業主となって仕事をしていく」という宣言報告みたいなもの。事業主自身の気持ちも引き締まり、屋号を付けることも認められますので事業に対しての信用度も高く見られます。

事業開始から1ヶ月以内に提出することが原則義務付けられています。法人の登記とは違い特に費用が掛かることはありません。開業届を提出することで受けるメリットは大きいもの。起業の一歩としても開業届を提出しておきたいものです。

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脱税しないために税金を納める

個人で開業する際、開業届を出さない方もいらっしゃいますが、開業届を出さなくても特にペナルティーはありません。しかし、必ず確定申告をして所得税を納めなければ所得隠しとみなされ脱税行為となってしまいます。

開業届を提出すると、確定申告の時期に申告のための書類が送付されるようになりますので、申告を忘れるといったトラブルは回避できます。

また、開業届を出さずに納税していないことが後々分かると脱税とみなされ、もちろん税金は徴収されて、関係書類を提出することになります。これはフリーランスにとって大きな痛手となり、信用問題に。そのようなトラブルにならないためにも開業届を提出して、適切に確定申告を行い納税しましょう。

また、確定申告を忘れてしまった場合、そのまま放置しては延滞金や無申告課税が課せられることになります。確定申告は3月15日までに行い、所得税を納付することになっています。もしも忘れてしまい期限に間に合わなかったとしても気付いた時点で早めに申告を行いましょう。

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過去3年の赤字を利益から差し引ける

開業届を提出すると「青色申告」ができるようになります。申告には青色申告と白色申告の2種類がありますが、青色申告の場合は開業してから3年間、過去の赤字を利益から差し引いて申告することが可能です。

例えば、今年の年間の利益が30万円の赤字だったとします。翌年に100万円黒字を出した場合、翌年の確定申告の際に「100万円−30万円=70万円」前年の30万円の赤字が繰り越されて70万円で申告することができるので、税金が安くなります。

開業してすぐは設備の投資などで必要経費が大きくかかり、事業が軌道にのらないこともあり、赤字を出してしまう場合が少なくありません。その場合、青色申告であれば3年間赤字を繰り越すことができるという個人事業にとって大きなメリットがあります。

開業届を出す対象者

経費を引いた収入が100万を超える

所得とは売り上げ(収入)から必要経費を引いたもので、例えば何か物を製作して売った場合、その材料費は必要経費となります。例えば、100万円の売り上げに対し、材料費が30万円だった場合、所得は70万円ということになります。

年間に一定の所得があれば確定申告が必要です。個人事業の場合は、年間の所得が38万円を超えたら一定の所得となります。基礎控除額が一律38万円なので、38万円以上の所得がある場合は確定申告が必要になります。

収入から必要経費を引いた所得が100万円を超えると開業届を出すことにより「青色申告特別控除」が受けられるようになります。この青色申告は開業届を提出し、きちんとした帳簿(複式簿記)を揃えることで最大65万円の控除が受けられるので、個人事業主にとって大きなメリットといえるでしょう。

青色申告の場合、例えば経費を引いた収入が100万円の場合「100万円−38万円(基礎控除)−65万円(特別控除)=0」になります、つまり100万円を超える所得があれば、開業届を提出し、特別控除額を受けたほうがメリットが大きいのです。

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副業をしている人

1か所から給与の支払いを受けていて、給与から月々所得税が天引きされ、務めている会社から年末調整で精算されている人が、副業などで給与以外の所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要になります。(副業の収入が20万円以下であれば必要はありません)

開業届を提出することで、青色申告の特別控除が受けられますので、個人事業主としての大きなメリットがあります。ただし、開業届を提出すると、廃業届を提出するまでは、年間の副業所得が20万円以下の場合でも、必ず毎年確定申告をする必要があります。これを認識せずに申告漏れになってしまうかたもいらっしゃいますので注意が必要です。

また、損益通算が可能になるため、例えば副業で赤字を出してしまっても、本業の給与所得などから赤字分を差し引いて申告することができるため、本業の給与から差し引かれた税金が還付されることになります。

開業届の書き方

開業届をパソコンでダウンロードする

開業届は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。印刷して記入して提出しても構いませんし、郵送も可能です。税務署のホームページには開業届の書き方も併せて載っていますので参考にすると良いでしょう。

もちろん最寄りの税務署で直接もらう事もできますので、提出のタイミングで直接税務署に行く方もいらっしゃいます。税務署では担当窓口の方が丁寧に対応してくれますので、不安な方は最寄りの税務署に相談しましょう。

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開業日・屋号を決める

開業届を提出する際に開業する日と屋号を決めておきましょう。しかし職業柄、特に屋号は必要ないし、屋号が思いつかないという方もいらっしゃいます。個人事業主が必ずしも屋号を付けなければいけないわけではありませんので、屋号の記載欄を空欄で開業届を提出しても問題はありません。

しかし、屋号があることで個人の仕事の信頼性が高まったり、屋号で銀行口座の開設が可能だったり、メリットは少なからずあるといえます。銀行口座やクレジットカードを私用と事業用に分けて使用することができりと経理上でも便利です。

また、開業日はいつに設定するのかと悩む方も多いのではないでしょうか。開業届の提出は、事業を開始してから1ヶ月以内の提出となっていますが、個人事業の開業日は特に決まりはなく、開業日の決め方が曖昧なところがあります。事業が可能になった日やお店オープンの日、WEBサイトを立ち上げた日などに設定したりできます。

事務所となる住所を確定しておく

個人事業主は、自宅で事業を展開する方が非常に多く、事務所兼自宅になっているため「住所地(住民票の住所)」を記載する場合が多いのですが、他に店舗がある、もしくは事務所が住まいの他にある場合は「事業所等」を納税地にすることが可能です。

また、事務所兼自宅という場合、開業届を提出していると使用面積や使用時間の割合から按分して必要経費として認められますので覚えておくといいでしょう。

提出先は納税地の管轄税務署、宛先名は所長宛てになります。管轄の税務署からは事務所として定めた住所に申告書や税金のお知らせなどの郵送物が送られてきます。

従業員がいる場合は人数を把握しておく

個人事業主でも従業員を雇うことは可能です。従業員を雇うと手続きや義務が発生します。開業時から家族や従業員を雇って開業する場合には、開業届の他にも下記のような書類の提出が必要になります。

☑個人事業の開業・廃業届出書
☑所得税の青色申告承認申請書
☑給与支払い事務所の開設支払い届出書
☑源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
☑青色事業専業者給与に関する届出書・変更届出書

また、常勤の従業員が5人以上の場合、社会保険の適用事務所となり、社会保険に加入しなければいけませんので、人数の把握をしっかりとしておきましょう。

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開業届に必要な書類

マイナンバーを用意する

開業届は平成28年から書式が変更になっています。変更箇所は個人番号(マイナンバー)の記載箇所です。申請者のマイナンバー(12桁の番号)の記載が必要となります。

また、開業届等、マイナンバーを記載した書類の提出する際には本人確認のため、マイナンバーカードの提出を求められます。郵送での提出の場合も申請者本人のマイナンバーの証明するために、マイナンバーカードの写しが必要になります。

郵送の場合は添付台紙が国税庁のホームページからダウンロードできますので、書類を貼って添付することができます。

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65万控除の青色申告承認申請書

青色申告申承認申請書は所得税を青色申告で確定申告することを承認してもらうための届出書で、提出期限は開業した日から2カ月以内です。確定申告の方法には青色申告と白色申告の2種類があり、青色申告承認申請書を届け出なければ、自動的に白色申告になります。

白色申告には特別控除はありません。青色申告承認申請書を提出するメリットとしては、最大65万円の特別控除が受けられ、支払う税金が白色申告よりも少なくて済むということが挙げられます。また、65万円の控除を受けるには「複式簿記」で確定申告を行う必要があります。

会計や簿記など、経験が無くて苦手意識が高い方も多くいらっしゃいますが、青色申告に必要な複式簿記は一般に出回っている会計ソフトを利用すれば簡単に日々の経理や必要書類の作成まで割と簡単にできてしまうものです。会計ソフトで作った書類をそのまま提出できます。会計ソフトを購入すると、購入代金は経費になりますし、フリーソフトもあるので利用してみるのもいいでしょう。

事業主にとって経理は必ずついてくるもの。経理の知識もつけば事業にプラスになりますので、これもメリットと考えて会計が苦手でも頑張ってみましょう。

また、申告方法を青色申告に変更する場合は、申告する年の3月15日までが提出期限になります。こちらも国税庁のホームページでダウンロードが可能ですのでチェックしてみると良いでしょう。

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住所がわかる住民票や免許証

平成28年から開業届を提出する際には、本人確認の書類としてマイナンバー(個人番号)を記載した書類の提出が必要になります。

マイナンバーカードを持っていない場合、番号を確認できる書類の写し(マイナンバー通知カード、もしくは住民票の写し)と身元確認書類(運転免許証、パスポート、公的医療保険の被保険者証、在留カード、身体障害者手帳等いずれか一つ)の提出が必要になります。

予め必要書類はきちんと準備しておきましょう。

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開業届を出すときに知っておきたい事

開業日は好きな日に決められる

開業日は原則「事業を始めた事実がある日」ですが、例えば、営業を開始した日の設定にするケースもあれば、事務所とする場所を契約した日や店舗を契約した日に設定するケースもあります。

また、事業の準備が始まって何かしらの契約が発生した日に設定するケースもあります。このように開業日のタイミングを事業者自身の好きなタイミングに設定することが可能になります。

ただし、「はじめて売り上げが発生した日」を記念に開業日にするということは、その前に事業を立ち上げていることになるので基本的にあり得ませんね。事業内容によっても開業日についていろいろな見解はありますが、通常は何かしらの事業が開始されるきっかけとなる日に設定しています。

最寄りの税務署で提出する

開業届は事業をする所在地の管轄の税務署に提出することになります。個人事業で自宅兼事務所にしている場合は居住している最寄りの税務署に提出することになります。自身の最寄りの税務署がどこになるのかきちんと把握しておきましょう。

管轄の税務署が分からない場合は国税庁のホームページから確認することができますので利用すると良いでしょう。

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郵送でも提出できる

開業届を税務署に提出したいが、開業準備などで忙しくて持参する時間がない、距離が遠いなどの理由でお困りのときには郵送での提出が便利です。

郵送で提出する際の注意点として、提出用の書類と別に、「控用書類」と「返信封筒」を同封して郵送しましょう。そうすることで税務署の受領印が押された書類を返信してもらえます。この控えは個人事業主にとって後に大切な書類となるので必ず控えを返送してもらうようにしましょう。

また、開業届の他にも青色申告承認申請書を提出する予定であれば、こちらも提出用書類と控えを同封するとまとめて提出出来て良いでしょう。マイナンバー等の本人確認書類も忘れずに提出しましょう。

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開業届の控えは大事に保管

開業届の控えはなくさずに大切に保管しておきましょう。開業届や各種届出書は必ず2枚作成し、1枚は手元に保管しておきます。控えはコピーでもいいですが、必ず税務署の受領印を押してもらいましょう。

例えば、屋号で銀行口座を作りたいときや助成金や補助金の申請の際には開業届の提出が求められることがあります。届け出た税務署に問い合わせることで書類は見せてもらうことは可能ですが、原本の持ち出しは不可で、コピーを取らせてもらうだけでもその手続きが煩雑になり大変な手間や時間がかかります。

個人事業主にとって、書類はいざというときになくてはならないもの。開業届の控え等は無くさずに大切に手元に保管しておくとよいでしょう。

事業を始める時は開業届を必ず提出しよう

開業届を提出することで多くのメリットがあります。開業届は開業の事実があった日からひと月以内に提出するものです。しかし「開業届を提出すること自体が面倒で、よくわからないしそんなに稼いでいないので」とさまざまな理由から開業届を提出しないかたも多いのは事実です。

開業届を提出しなくても基本的に罰則はありません。ではなぜ規定が無いのか。それは、開業届を提出しないことで個人事業主本人が損をしてしまうデメリットのほうが大きいから。

開業届を提出することで、特別な控除を受けたり、赤字の繰り越しができたり、節税になったり屋号で銀行口座を作ることが可能になるなどメリットが大きく、また、事業をしていく中で社会的に見ても信用度が高く、認められるといえるでしょう。

開業届の提出は、難しいことはありませんし、費用も掛からずメリットがいっぱい。開業届は起業の一歩です。事業を始める際には開業届を提出して自分の事業に自信をもって前進していきましょう。

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