20歳になったときから、なんとなく加入するものだと払い続けている国民年金。ところで、年金ってどういう制度なの?これからのライフプランを効率よく立てるためにも知っておきたい国民年金の任意加入について詳しくお伝えしていきます。
目次
国民年金の基本
国民生活の維持を目的にした制度
国民年金とは、日本国内に住む、20歳〜60歳のすべての人が加入する「公的年金制度」とあります。公的な制度ということは、20歳〜60歳の人は法律によって加入義務があるということです。
国民保険の被保険者には、
☑第1号被保険者(自営業者や農業等に従事する人、学生、フリーター、無職の人など)
☑第2号被保険者(厚生年金保険に加入しているお勤めの人)
☑第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人で年間収入が130万円以下の扶養家族の方)
以上の3種類があり、必ずどこかに属しているはずです。
加入することが義務付けられている分、民間の保険等と比べて実はさまざまなメリットがあります。年金というと「老後の生活費でしょ?」と考える人が多いのですが、定年退職をして収入がなくなってからだけではないことをご存知でしたか?国民年金保険料を払い続けることにより次の3種類の年金をもらうことができるのです。
☑老齢基礎年金 (65歳から死ぬまでもらえる、終身年金)
☑障害基礎年金 (病気やけがで障害が残った時に出る年金)
☑遺族基礎年金 (年金加入者が死んだ時、遺族(配偶者・子供)に出る年金)
このように、まだまだ働ける年齢で「万が一」が起きたときに本人や遺族に対して最低限の保障が受けられます。また、老齢年金にしても、人間何歳まで生きるかなんて誰もわかりません。預貯金で準備したとしても、計画通りに人生を終えることもできません。生きている限り支払われる老齢年金があれば、悠々自適とまではいかずとも、困ったことにはならないのではないでしょうか。
要するに国が運営する生命保険のようなもの、と考えるとわかりやすいです。国が運営しているため加入者の保険料だけでなく半分以上は税金でまかなわれており、実は民間の保険会社の保障よりも好条件なのです。月々1万6千円ほどの掛け金で、一生涯無条件に年金がもらえる年金保険が他にあるでしょうか?気になる方は個別で保険会社の営業マンやファイナンシャルプランナーさんに尋ねてみてくださいね。
国民の生活を維持することを目的とした、セーフティネットの役割をするのが国民年金。国民みんなでこの制度を守っていきたいものですね。
加入期間は40年間
国民年金保険の加入期間は、20歳〜60歳の40年間。40年間(480ヶ月)保険料を全額納付すると、年金保険も満額で計算して受け取れる仕組みです。納付期間が480ヶ月より不足するとそれに見合った減額での支給となります。つまり40年未満だと支払期間に応じた年金額しか受け取れないということです。
加入期間というのは「加入できる期間」といい換えることもできるので、20歳未満の未成年や、60歳以上の方は納付できる能力があっても加入できないということでもあります。
保険料は毎年引き上がっている
国民年金保険料は年ごとに決まります。保険料はみな一律です。その年の労働人口や平均寿命の伸び率などを判断し、毎年調整して決定されています。平成17年度から段階的に引きあがってきました。
ちなみに、平成29年4月〜平成30年3月までは、16,490円/月となっています。
未納者も多い国民年金
問題になっているのが、年金保険料の未納者が多いことです。特に若い世代が「自分たちが年寄りになったときに、本当にあてにできるのかわからないのに高い保険料を払っていられない」と思ってしまう気持ちもわからなくはないのですが、日本国に住んでいる以上、避けて通れないのが年金です。
支払い能力があるにもかかわらず未納の状態が続くと、最悪、自分や親・配偶者等の財産まで差し押さえられてしまいます。督促が来るような状態になると、延滞金を上乗せして支払わなくてはいけませんし、受け取れる年金額は減ってしまうしと二重に損をしてしまいかねません。そのような状態は避けたいものです。
20歳以上の学生(収入がない状態)や、社会人でも収入が少なく生活に困窮しているなど、年金保険料の納付が難しい場合には、保険料の全額または一部が免除される制度があります。申請が通れば未納扱いにはならず、将来もらえる年金額についても1/3〜1/2は保障されます。このような制度も活用するとよいでしょう。
また、未納とは別に「未加入」の期間がある世代の方もいます。今では学生であっても20歳の誕生月を迎えれば加入義務がありますが、昭和61年3月までの旧法時代は任意加入とされた人が多く、特に昭和46年3月以前に生まれた40代後半から50代の方で大学を卒業された方は、20歳以降の学生時代に国民年金に加入していなかった方も多くいらっしゃいます。また同様に昭和61年3月以前のサラリーマン世帯の専業主婦の方も強制加入ではなかったため、未加入期間がある可能性が高いです。
当てはまる方は老齢基礎年金が満額給付にならないので注意が必要です。一度ご自身の年金記録を確認してみましょう。
こういった未加入期間があるために、受け取れる年金額が減ってしまうという悩みを解消するために「任意加入制度」があります。
国民年金の任意加入被保険者
任意加入の条件
以下に当てはまる方は任意加入ができます。
☑20歳〜60歳までの保険料の納付月数が480ヶ月未満で年金額を増やしたい方は65歳までの間
☑受給資格期間(平成29年8月1日からは10年間)を満たしていない方は70歳までの間
☑海外に居住する20歳以上65歳未満の日本人(日本国籍を有していること)
次の方は任意加入ができません。
☑老齢基礎年金の「繰上げ支給」をしている人
☑厚生年金・共済組合等に加入している人
また、40年(480ヶ月)の満額納付が済んでいる人は、それ以上任意加入できません。
自分が当てはまるのかどうかわかりにくい場合は、地域の年金事務所へ問い合わせてみましょう。
任意加入の手続き
日本国内に住所がある人、および、これから海外に転居する人はお住まいの市区町村窓口で手続きができます。
現在海外に居住されている人のなかで、以前は日本に住んでいたという方は、日本国内における最後の住所地を管轄する年金事務所または市区町村窓口へ。
日本国内に住所を有したことがない人は千代田年金事務所での手続きになります。
被保険者の保険料の金額
任意加入は第1号被保険者の保険料と同額です。第3号被保険者であった場合でも、夫がまだ厚生年金に加入していても妻は60歳以降第1号被保険者ということになりますし、第2号被保険者(厚生年金加入)の場合は加入対象になりません。
ただし、任意加入の保険料や付加保険料を夫が支払えば社会保険料控除の対象となりますので、夫の所得税や住民税を減らすことができます。
60歳以上からの国民年金の任意加入制度
任意加入のメリット
任意加入をすることで受けられるメリットは、以下の2点です。
☑将来受け取る年金を少しでも満額に近づけることができる。
☑受給資格期間(10年間)を満たすことで、年金を受け取ることができる。
60歳以上で受給資格期間を満たしている人なら、任意加入をすることでどのくらい受取額が増えるか年金事務所等に相談されるとよいです。
また、60歳の時点で受給資格期間が足りていないなら、あとどのくらい納付すればうけとれるのかを確認しましょう。受給資格獲得のための任意加入は70歳までとなっています。
極端な例ですが、疑問に思ったので知り合いの社会保険労務士さんに聞いてみたところ、60歳まで一度も加入したことがない人が60歳から70歳までの10年間(120ヶ月)まるっと任意加入することで受給資格獲得することは可能だそうです。ただ、現実には出会ったことがないそうですが…。
ご自身の加入期間がわかっている場合は、以下の計算式で受け取れる年金額が算出できます。
満額・約78万円×(納付した月数/480ヶ月)
任意加入のデメリット
逆に任意加入をしてもプラスにならない場合もあります。ご自身の年金記録を確認して、合算対象期間(カラ期間)といわれる期間がないかをチェックしましょう。
カラ期間は「受給資格期間」には含まれますが、この期間は年金額には反映されないのです。たとえば10年(120ヶ月)の受給資格期間をぎりぎりクリアしたとして、そのうちの4年間(48ヶ月)がカラ期間だったとします。そうすると年金支給額自体は6年間(72ヶ月)分で計算しますから、「受け取れるけれど、少ない」ということもあり得ます。
このようにカラ期間が長ければ、任意加入をしても給付される年金額がそれに見合うメリットがないかもしれないので、年金事務所等でしっかりと確認をしましょう。
また、任意加入をしている期間は年金の受け取りができません。65歳から受け取れる年金を増やす、または受給資格獲得のために、60歳〜65歳の間に納付が完了すればよいですが、受給資格獲得のために65歳以降も納付し続けて、受け取り開始が遅くなると、その分のデメリットも考慮したほうがよいのかなと感じます。
任意加入の意味をしっかりと理解して自分で選択していこう
このように、任意加入とは、単純に「納付期間を延長して受け取れる年金額を増やす」という制度ではありません。また、国民年金の増額手段としては任意加入のほかにも、滞納期間分の納付や免除期間の追納というものもあります。
まずは、ご自身の年金加入記録を確認することと、その上でどうするのが一番メリットになるのかを見極めて使いたいですね。
年金についての相談は、日本年金機構の相談窓口や、ねんきんダイヤルでの電話相談でも受付てくれますので、気軽に相談してみましょう。