労災保険の加入条件とは?労働者にも雇用主にもある加入のメリット

労災保険は、雇用保険と合わせて労働保険として取り扱われます。雇用保険のような加入条件はなく、パートでもアルバイトでも従業員のすべてが加入する義務のある公的保険となります。事業所が適用事業所となることで、その事業所の従業員全員が加入することになります。

目次

労災保険の概要

健康保険との違い

社会保険というと、一般的には健康保険と思いがち。しかし、健康保険と厚生年金保険、介護保険を社会保険と考えるのは、狭義の意味の場合です。本来は健康保険、厚生年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険の5つが社会保険となります。

この中の労災保険と雇用保険のことを労働保険と呼びます。健康保険は、公的な医療保険で、病気やケガなどの時に治療費の一部を社会保険によって、負担してもらうものです。労災保険とは、仕事中や通勤中にケガや病気になった際に、その治療費などを保証するものとなっています。

同じようにケガや病気の際の補償を行う健康保険と労災保険ですが、労災保険は、仕事に関係する業務中であったり、通勤中などに事故や災害に合った際の公的保証です。仕事以外の病気やケガなどの保証を行うのが健康保険となります。

雇用保険とまとめて労働保険となっている

労災保険と雇用保険を合わせて「労働保険」としています。労災保険は仕事に関係して、ケガや病気などになり、また死亡した場合に労働者やその家族を守るための制度です。雇用保険は、労働者が失業したり、雇用の継続が困難であったりした場合に、労働者の生活や雇用の安定を行うための保険となっています。どちらも労働者を守るための公的保証ともいえるでしょう。

雇用保険と労災保険は、労働保険として保険料に関しても一緒に納めることになりますから、どちらも漏れのないように手続きを行うことが大切です。

労災保険の加入条件

個人加入ではない

労災保険は、個人で加入するものではありません。基本となるのが事業所です。加入の際にも、まずは事業所が労働保険の保険関係成立届を労働基準監督署に提出して、労災保険の加入手続きを行います。事業所が適用事業所となり、これによって労災保険に加入したことになります。

労災保険は事業所で賃金を支払うすべての労働者が対象となります。一人ずつの加入手続きを行うのではなく、年間の支払予定の賃金総額で保険料が概算で決定され支払うことになります。これによってその事業所で働くすべての従業員が加入したことになります。

加入する事業主の規模

労災保険への加入は、従業員が一人でもいれば加入することが義務となります。つまり従業員を使っている事業所はすべて労災保険の適用事業所となります。

雇用保険では、加入に条件があり、一定の条件を満たしている従業員が対象となりますが、労災保険の方は条件がなく、たとえ1日でも賃金を支払った従業員がいれば適用事業所となり労災保険に加入しなければなりません。

社会保険の中でも、健康保険は事業所の規模などが条件に入っていますが、労災保険に関しては事業所の規模などは関係なく賃金を支払う従業員がいるのかどうか、ということが判断の基準です。従業員がパートやアルバイトだけであっても対象となります。

パートやアルバイトでも加入可能

労災保険は賃金を支払うすべての従業員が対象となりますから、パートやアルバイトも対象となります。雇用保険は、従業員一人ずつ加入の手続を行うことになりますが、労災保険ではすべての従業員が対象です。一人ずつの加入手続きを行う必要はなく、適用事業所になれば自然にその事業所の従業員のすべてが加入することになります。

支払い賃金で保険料を算定するので、従業員の入れ替わりなどがあっても、その都度加入や喪失などの手続をとる必要もありません。

労災保険加入が適用されない人

労災保険は、基本的に従業員のすべてが加入することになりますが、適用されない人もいます。それが次の通りとなります。

☑従業員が5人未満の個人経営の農業・水産業

☑個人経営の林業で常時使用の従業員がいない場合

☑国の直轄事業、国や地方の官公署

☑事業主や法人役員

☑事業主と同居する親族

労災保険の加入手続きについて

加入は事業主の義務

労災保険への加入は、従業員のいる事業所では、事業主の義務です。パートやアルバイトでも、賃金を支払う従業員がいれば、必ず加入する必要があります。また新たに従業員を雇用することになった場合も、雇用した時点で適用事業所となりますから労災保険への加入の手続を行う必要があります。

労災保険は仕事中などのケガなどの保証を行うものですから、何かあった際には、事業主がその保証を行う必要があります。労災保険は、従業員の生活を守るためのものですが、事業主にとっても何らかの労働災害が起きた時に、その保証の手助けになる制度といえるでしょう。

労災保険への加入は義務ではありますが、事業主にとっても重要な役割を果たすものです。

手続きは保険関係設立日の翌日から10日以内

労災保険への加入の手続きは、保険関係設立日の翌日から10日以内。保険関係設立日とは、労災保険に加入する事由が発生した日、つまり従業員を雇用した日ということになります。従業員を雇用したら、その日から10日以内に労働基準監督署で手続きをとるようにしましょう。

その際に雇用保険も適用となるようであれば、雇用保険の適用事業所の申請書をハローワークに提出します。こちらも対象者がいれば強制加入となりますから注意しましょう。

労災保険は、最初に保険関係成立の届け出を行えば、その後は従業員の入れ替えがあってもその都度行うような手続きはありません。

未加入だった場合

労働中にケガなどを負い、病院に行った場合、ケガを負ったときの状況などを確認されます。仕事中の事故である場合、健康保険は使用することができません。労災保険を使用することになります。

労災保険に未加入となっていた場合であっても、労働基準監督所で所定の手続を行って労災の認定を受けることができれば、労災保険が支給されます。しかし、これは従業員に対しての保証であり、事業主は労災保険の適用になった日にさかのぼって労働保険料が徴収されるることになります。

また、事業主が故意に労災保険への加入を行っていないということが認められた場合には、労災保険の給付額の100%を徴収されることになります。重大な過失によって未加入となっていたことが認められた場合にも給付額の40%が徴収されることになります。

労災保険の保険料の目安

労災保険の保険料は事業主が全額負担

労働保険には労災保険と雇用保険があり、雇用保険の場合には保険料を事業主と従業員でそれぞれの割合で負担することになります。しかし労災保険に関してはそれがありません。労災保険の場合には、保険料の全額を事業主が負担することになります。

労災保険の保険料は、それぞれに業種によって定められた保険料率を1年間の給与の総額にかけたものとなります。危険度の高い業種が、より高い保険料率となります。労災保険料を従業員の給料などから天引きするようなことは違法行為ですので、絶対に行わないようにしましょう。

保険料は1年の給料総額で計算される

労災保険の保険料は4月から翌年3月までの1年間の間に支払った給料の総額を元に計算されることになります。この時の給料の総額とは、社会保険料などを差し引く前の給料の総額となり、通勤手当や残業手当などを含んだものと賞与なども対象となります。ただし、退職金のような一時金は含まれません。

1年分の給料総額に保険料率をかけたものが労災保険の保険料として確定します。労災保険の保険料は、先に概算保険料ということで、1年間の給料総額の見込みをもとに保険料を計算し、見込額での保険料を納めておきます。1年経過した時点で実際に支払った給料総額で労災保険料を確定し、先に収めた概算保険料と差引して納めることになります。

 

業種により保険料率が細かく決められている

労働保険の保険料は保険料率を給与にかけたもので算出することになります。ただし、雇用保険料は、事業主と労働者が負担する分があり、労災保険は事業主がすべて負担します。雇用保険の事業主と労働者の負担割合はことなり、業種によっても保険料率には違いがあります。

農林水産・清酒製造業の場合には、雇用保険の保険料率は1.1%となり、事業主負担は0.7%、労働者は0.4%を負担します。建設業の場合には、保険料率が1.2%、事業主負担が0.8%、労働者負担が0.4%、それ以外の業種は一般という区分となり保険料率は0.9%、事業主負担が0.9%、労働者負担が0.3%となります。

では労災保険の方はというとこちらは保険料率が業種によって違ったものとなり、かなり細かく業種を分けて保険料率が定められています。当然ですが危険度の高い業種の方が保険料率は高くなっています。

具体的な労災保険の料率は次のようになっています。

☑林業・・・60/1000

☑漁業・・・海面漁業20/1000 定置網漁業又は海面魚類養殖業40/1000

☑鉱業・・・5.5/1000~88/1000

☑建設事業・・・7.5/1000~89/1000

☑製造業・・・2.5/1000~26/1000

☑運輸業・・・4.5/1000~16/1000

☑電気・ガス・水道又は熱供給の事業・・・3/1000

☑その他の事業・・・2.5/1000~13/1000

☑船舶所有者の事業・・・50/1000

 

労災保険は事業主や労働者双方にメリットがある

労災保険は労働者のための保険というイメージが強くなっていますが実際には労働者だけでなく事業主にとっても大きなメリットのある公的保険となっています。労災事故などが起きた際には、労働者に治療費などの負担を行う必要がありますが労働災害は健康保険は適用されないために事業主が負担を行う必要が出てきます。

労災保険に加入していればその負担を労災保険の方で行うことが出来ますから事業を行う上では重要な備えとなってきます。労働者にとってもケガや病気で働くことが出来ない間の休業補償なども受けることができますから安心です。

基本的には労災保険への加入を事業主が忘れていたような場合であっても労災保険料は支給されますが、それはあくまでも労働者に対しての支給であり、事業主は、遡って労災保険の保険料を納める必要がありますから、万が一そのような事態になると大きな金額を準備する必要が出てくる可能性があります。労働災害では、保証額が大きくなる可能性もありますので、きちんと手続きを行うようにすることが大切でしょう。

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