厚生年金の支給額はいくらもらえるのか。受給年金について理解しよう

家族を支えてきた主婦なら、夫の扶養に入っている人も多いはず。「自分たちの受給年金はどれくらいなのか」「今からでも受給額を増やすことはできるのか」など気になったことはありませんか?将来の生活設計に向けて、厚生年金の支給額を理解しましょう。

厚生年金の支給額が決まる基準となるもの

加入期間の長さ

会社に勤務している人が加入を義務付けられている厚生年金保険。会社員なら誰しも毎月の給与から天引きされて月々の支払いを行っている人は多いことでしょう。

厚生年金の支給額が決まる基準の一つに、厚生年金保険に加入している期間があります。この加入期間は、会社員である期間のことです。そのため、自分の勤務していた年数を計算すれば、比較的かんたんに加入期間を算出することができます。

厚生年金の受給額を計算するための大まかな計算式は、平均給与×一定乗率×加入期間となっています。現在、一定乗率は平成15年4月以降に「総報酬制の導入」が行われたため、これまでの7.5%から、5.769%へ変動しています。

加入期間中の収入

上記でも述べた総報酬制の導入は、それまでボーナスを除いた月給のみで算出していた平均給与を「ボーナスを含めた年収/12」で算出することになりました。

具体的な例で言うと、「月給20万円、ボーナス40万円(4回)」という人がいた場合の平均給与は、

☑変更前(平成15年3月まで):月給20万円

☑変更後(平成15年4月以降):20万円×12+40万円×4=400万円(年収)/12=33.3万円

となります。

また、上記の平均給与での大まかな年金受給額は、

☑変更前(平成15年3月まで):平均給与×7.5/1000×加入期間

☑変更後(平成15年4月以降):年収/12×5.769/1000×加入期間

となります。

上記のように平均給与とは、厚生年金の支給額を算出する上で必要なものです。しかし、計算式はかなり複雑です。特に平成15年4月をまたいで加入しているという人の場合、それぞれを計算する必要がありますので、かなり面倒な計算になってしまうかもしれません。

長期加入と加入期間中の給与を増やすことが重要

年金は、早い年齢から加入していることで、その分受給年金の総額を増やすことができます。しかし、若い人ほど、年金に関する興味は薄いため、40代を過ぎてから増額を考える人も多いことでしょう。

厚生年金には、「長期加入者の特例」という制度があります。厚生年金や共済組合に加入してから44年以上加入している人に適用される特例で、生年月日に関わらず、定額部分と加給年金を受給することができます。また、60歳から受け取れる年金を遅らせて44年以上にすることもできます。

さらに、受給年金は報酬によっても異なるため、厚生年金に加入している期間の給与を増やすことが大切です。

2017年度の平均受給額から見えてくること

女性の平均受給額が少ない

厚生年金は、基礎年金である国民年金に上乗せされた年金保険制度です。会社で働く人が社会保険料に含まれる厚生年金保険料を毎月積み立てるという仕組みになっています。

老齢基礎年金を含む現在の厚生年金全体の平均受給額は、約14万8千円、年間で約178万円となっています。このうち、男性の平均支給額は、約18万円、年間約216万円です。これに対し、女性の場合は約10万8千円、年間約130万円が支給額となります。

女性は、結婚や出産によって会社を退社する人も多く、専業主婦やパートに従事している人も多いため、加入期間が少ない人が多いのがその理由です。

厚生年金だけの支給額で見ると、全体の月平均支給額が約9万4千円、男性の平均支給額は約12万6千円、女性の平均支給額は約5万4千円となっており、男女によって受給額に大きな差があります。

65歳未満は受給額が少ない

加入期間が25年以上の厚生年金の平均受給額は、60歳~64歳が88,353円、65歳以上は15万円~となっています。男性の場合は、60歳~64歳が99,868円、65歳以上は16万円~20万円。女性の場合は、60歳~64歳が63,010円、65歳以上は10万円~となります。

これは、1985年に改正された基本年金の支給年齢の引き上げによるものです。生まれ年を考慮して算出されるため、60~64歳の平均受給額が少なくなることになるのです。

年齢が上がると受給額が上がる

現在、厚生労働省が公表している年齢別の平均月額受給額は、以下の通りです。

男女計の年齢層別受給額・月額平均

☑60~64歳:88,353円

☑65~69歳:150,118円

☑70~74歳:151,656円

☑75~79歳:159,968円

☑80~84歳:164,689円

☑85~89歳:170,959円

☑90歳~:155,788円

年齢によって金額が異なるのは、給付乗率の違いによるもので、90歳を超えると下がるのは女性が増える為です。

独身に比べて夫婦の方が平均受給額は多い

独身の場合、男性で会社勤めをしてきた人の平均受給額は、約18万円。夫婦ともに会社勤めをしてきた人の場合だと約28万8千円です。このように、独身に比べて夫婦共働きの厚生年金加入者は受給額が多いことがわかっています。

また、男性が会社勤めで、女性が専業主婦の場合の平均受給額は平均約5万円、夫婦合わせて約20万円。妻が65歳になるまでは加給年金39万6千円もらえるので、独身よりもはるかに受給額が上回っていることがわかります。

厚生年金の支給額をあげる上乗せ方法

確定給付企業年金

2002年4月に施行され、現在日本で最も多く利用されている企業年金制度である、確定給付企業年金。会社が拠出、運用、管理、給付を行う確定給付型の企業年金で、会社勤めをしている勤労者の老後の年金給付に役立っています。

確定給付企業年金が退職一時金と異なる大きな点は、「外部積立」と「平準的な掛金拠出」があることです。退職一時金の場合は、積立義務がないため、計画的な資金の準備や保全等が行われていないこともあり、万が一会社が倒産した場合などには、支払われないこともあります。

それに比べると、確定給付企業年金は、毎月の給料と合わせて企業年金の掛金を計画的に拠出し、積立されるため、外部の企業に保全されることとなります。また、会社の資金繰りなどで取り崩すことができないので、万が一の場合でも積み立てたお金は保証されることになります。

ただし、確定給付企業年金は勤労者にとってのメリットは大きいものの、会社側の負担が大きくなることがデメリットとなります。給付額が保証されているとはいえ、企業の業績が著しく悪化した場合などは、減額されてしまう可能性もあります。

確定拠出年金に加入した場合に将来もらえる給付は以下の通りです。

☑老齢給付金:原則60歳から年金、もしくは一時金として支給される

☑障害給付金:高度障害と認定された場合、年金、もしくは一時金として支給される

☑死亡一時金:死亡時に一時金として支給される

企業型確定年金、個人型確定拠出年金など、確定拠出年金制度に加入している期間が通算10年に満たない場合、受給開始年齢は段階的に引き上げられます。65歳までには支給が開始されることになっています。

企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金は、企業が決まったルールに基づいてお金を拠出するという制度です。企業型は企業が掛け金を出すため、会社の損金として処理することとなり、60歳未満の従業員を対象に原則全員が加入することになります。

掛金の運用商品については、加入者である企業が決定することになり、運用実績に応じた受取額となり、掛金の限度額は27,500円で、運営主体は企業、運営管理機関と資産管理機関は企業が選ぶことになります。

企業の退職金制度の枠内として、勤続3年で付与されます。ちなみに、確定拠出年金には、企業型のほかに個人型も。

厚生年金に頼らず自分で年金を作る方法

個人型確定拠出年金

個人型確定拠出年金に加入した場合、毎月の掛金は自分で決めます。月額5000円以上、1000円単位で自由に決めることができます。年に1回金額を変更することも可能で、給料から天引き、もしくは口座振替によって納付することになります。

職種によって上限額が異なり、2017年1月の時点では、

☑公務員:1万2千円

☑会社員(企業年金あり):1万2千円、もしくは2万円

☑会社員(企業年金なし):2万3千円

☑専業主婦:2万3千円

☑自営業:6万8千円

となっています。

また、積み立てている掛金は、全額所得控除の対象となり、非課税の対象です。控除された分、税負担が軽くなります。もちろん、確定申告や年末調整時に還付を受けることもできます。

また、個人型確定拠出年金を年金として受け取る場合は、公的年金控除が適用されます。一時金として受け取る場合も退職所得控除が適用されるので、税制面で優遇されるメリットもあります。

給付の受け取り方法は、5年以上20年以下の期間年金として受け取る方法と、一時金として受け取る方法があります。

拠出を開始した時点から受給する権利があり、運営管理機関は加入者である本人が選ぶことができますが、掛金の運営主体と資産管理機関は国民年金連合会が行います。

低解約返戻金型終身保険

低解約返戻金型終身保険とは、一生涯の保障が付いている終身保険の一種です。保険料払込期間の解約返戻金が低いのですが、保険料も安く抑えることができます。

各保険会社で販売されている終身保険は、一生涯保険料が上がることはありません。貯蓄性もあり、一定の利率に応じて解約返戻金が貯まっていきます。

先述の通り、低解約返戻金型終身保険の特徴としては、保険料を全額払い込むまでの解約返戻金は低いことにあります。その反面、全額払い込んだ後は大幅に解約返戻金が上がるので、払い込み完了時に110~120%上乗せされるという大きなメリットがあります。

また、その他にもインフレなどの影響を受けない、病気や介護にも対応している、通常の終身保険よりも保険料を安く抑えられるなどの利点もあります。

ただし、途中解約すると元本割れする、保険の見直しがしにくい、保険会社が倒産すると満額受け取れない場合があるなどのデメリットもあることも理解しておきましょう。

ちなみに、低解約返戻金型終身保険にも死亡保障がついているので、被保険者が死亡した場合は、家族に保険金が支払われるようになっています。老後の蓄えを目的とするだけでなく、死亡した際の保障や相続税対策や葬儀代などの積立としても利用することができます。

自分の年金支給額を知るには

自分で計算する

将来自分がいくら年金をもらえるのか、誰もが気になるところですよね。自分の年金支給額を知るための方法の一つとして、自分で計算して算出するという方法があります。

厚生年金保険は、国民年金に上乗せされた2階建て構造となっています。そのため、自分で計算する際には、1階部分の国民年金と2階部分の厚生年金をそれぞれ計算することが必要となります。

1階部分の国民年金の計算式は、780,100円×納付月額/加入可能年数×12となり、何ヶ月納付して加入年数がどれくらいになるのかを調べてから当てはめてみましょう。例えば、30年間毎月国民年金を滞りなく払っているのであれば、780,100円×360ヶ月/480ヶ月=約585,000円となります。

次に2階部分の厚生年金です。厚生年金は、国民年金のように一定額を支払うというわけではないため、個人の年間収入によって異なります。

自分が働いてきた期間と、その間の給与・賞与などを全て算出するのは、とても大変です。これまでの明細をすべて取り出し、今後の見込み額についても大まかに計算する必要があります。労務の給与部門などに問い合わせてみるのもよいでしょう。

ねんきん定期便で確認する

年金を納めている人に、年1回誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」。年金定期便には、これまでに支払った保険料で受け取ることができる年金額が記載されています。

ただし、50歳未満の場合は実際に支給される金額がわからないので注意が必要です。将来の年金額は、年間収入や加入期間などによって変動します。記載されている見込み額について「思っていたよりも低い」と感じる人もいるかもしれません。

ねんきん定期便で確認できる見込み額は、厚生年金基金から支給される額を除いて計算されているので、厚生年金基金に加入しているかどうかをチェックして、不明な点は連絡先に電話するのがよいでしょう。

ネットで調べるねんきんネット

日本年金機構が行っている「ねんきんネット」サービス。年金ネットは、インターネットを通じて、自分の年金情報をいつでもどこでも確認することができるシステムです。

基礎年金番号を持っている人なら誰でも利用することが可能で、「年金記録の確認」や「将来の年金見込み額の確認」「年金定期便の閲覧」「日本年金機構から送られてきた各通知書の確認」などを利用することができます。

ねんきんネットを利用するには、事前の利用登録が必要となります。登録時には「基礎年金番号」と「メールアドレス」が必要となるため、年金手帳や年金証書などの基礎年金番号がわかるものを事前に準備しておきましょう。

また、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」に記載されている17桁の番号「アクセスキー」を持っていると、登録がスムーズです。もし、アクセスキーを持っていなくても登録は可能ですので、まずはサイトを確認してみましょう。

ねんきんネット
詳細はこちら

自分の管轄の社会保険事務所に出向く

パソコンの操作に自信がないと言う人や、ねんきん定期便をなくしてしまったなどの場合は、社会保険事務所に直接出向いてみるのもよいでしょう。自宅の所在地を管轄している社会保険事務所を調べ、予約してから来訪するようにするとよいかもしれません。

一般的な年金の相談等は「ねんきんダイヤル」を利用する方法もあります。直接相談をしたり、来訪の予約などを受け付けてくれるので、なかなか出向く時間が取れないなどの人にはおすすめです。

年金の支給額を知って引退後の生活設計に役立てよう

老後の生活は、多くの人が不安を感じることもあるでしょう。月額で支給される年金は、自分たちの生活にとっては、最重要であるともいえます。

支給される年金額を調べることは大切です。自分が老後の生活に毎月いくら必要なのか。どれくらいの生活費があれば良いのかを十分考えて、貯蓄や拠出年金などを利用するのもよいでしょう。誰しもが抱える老後の生活について、しっかりと計画を立てるためにも必要な生活費と需給年金額を調べて、引退後の生活設計に役立てましょう。

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