起業を考えている人が増えている昨今。実際に会社を設立する際に必要な定款や登記などといった、国への申請はとても重要なものです。あとで慌ててしまうことのないように登記の前に必要な準備と申請方法をきちんと理解しておきましょう。
目次
会社設立登記の前に行う準備
設立項目の設定と印鑑の作成
会社を設立しようとした場合、設立後にさまざまな会社との取引が発生します。法務局に登記されている企業は、一般的に公開されているので、いつ、どのような目的で設立されたのか、どんな手段で利益を得ているのかなどをすべて閲覧することができます。
こうした情報は、会社そのものの信頼度を高めることにつながります。初めての会社との取引や銀行からの融資などには、必要不可欠と言えるでしょう。また、会社設立時には登記を行うことが義務付けられているため、登記しないままでいると過料を徴収されてしまうこともあるので、注意が必要です。
会社設立に伴う登記手続きは、それほど複雑なものではありません。事前準備をしっかりしておけば、手続きもとてもスムーズに行うことができます。
以下の項目は、定款を作るまでの間に決めておく必要があります。
設立項目の設定
設立項目の設定事項として必要なものは、次の通りです。
☑商号(会社名)
設立するための商号は、会社の顔とも言うべき大切なものです。すぐに覚えられてインパクトのある商号を考えておきましょう。
☑事業目的
これから設立しようとする会社が「どのような事業を行って利益を生み出すのか」を明らかにしておく必要があります。
☑本店所在地
定款を作るまでの間に会社の本店場所を決めておきましょう。自宅なのか、事務所を構えたり、レンタルオフィスを利用するという方法もあります。まずは、しっかりとした本店所在地の住所を決めておきましょう。
☑資本金
会社設立時に必要になる費用が、資本金です。会社の信頼度のためにも適正な金額を準備する必要があります。一般的な資本金は300万〜1000万円となっています。
印鑑の作成
会社にとって必要な印鑑は、全部で4種類あります。会社設立手続きを行う際に必要となりますので、早めに準備しておくのがよいでしょう。
☑代表者印
法務局に届けて登録をする印鑑です。一般的には直径18mm程度の丸印が使われています。
☑銀行印
法人口座を解説する際やその後の取引で必要となる印鑑です。代表者印よりも少し小さめなものにすると区別がつきやすいでしょう。
☑社印
見積書や請求書などに多用される社印。一般的には角印が使われています。
☑ゴム印
各種の契約書やサインの代わりなどに幅広く使われるのがゴム印です。会社名、所在地、電話番号、FAX番号などが彫られています。
定款の認証と出資金の払込み
会社の憲法とも言われる定款(ていかん)は、会社の規則を定めたものです。会社名、所在地、取締役名やその他の細かなルールをすべてこの定款に記載します。
定款の作成が終わったら、認証を受ける必要があります。定款認証は、会社の所在地と同一の公証人役場で申請を押します。あらかじめ、会社所在地を管轄する公証人役場を調べておくのがよいでしょう。
作成した定款原案を公証人とやりとりして認証を受けます。原案についてチェックしてもらいたい場合は、事前に連絡を入れておくとスムーズです。
内容のチェックが終わりすべての修正が完了したら、訪問希望日と公証人のスケジュールを照らし合わせて、定款認証の日時を予約しておきましょう。
定款認証時に必要な書類
定款の認証を受ける際に必要な書類等は、次の通りです。
☑定款(印刷したもの3部)
定款には、発起人全員の署名と押印(個人印)、割り印が必要となります。公証役場での保存用と会社保存用、登記用の3部が必要となります。
☑発起人全員の印鑑証明1通ずつ
発起人全員の印鑑証明書は、必ず事前に準備しておきましょう。印鑑証明書は、定款認証のほか、設立登記の申請時にも必要となりますので、2通準備しておくのがよいでしょう。
☑収入印紙:4万円分
事前に郵便局で購入しておきましょう。
☑公証人へ支払う手数料:5万円
公証人へ支払う費用は5万円程度、そのほかに定款の謄本を作成する費用として1ページにつき250円の現金が必要となります。
☑定款の謄本(写し)の交付手数料:250円×ページ数
☑委任状(代表取締役以外の代理人が認証を行う場合)
原則として定款認証を行う際は、発起人全員で行くことになります。どうしてもいけない場合は、発起人の委任状が必要となります。
会社設立登記書類の作成
必要書類の用意
会社設立登記書類を作成するためには、まず必要書類の準備が必要となります。そのほかにも、取締役全員の印鑑証明書や登記すべき事項を保存したCD−Rや、FDが必要となります。
登記申請書の作成
会社設立を申請するための、登記申請書類を作成するには、登記申請書に記載する内容を理解しておく必要があります。
登記申請書に必要な記載事項
☑1.登記の事由
☑2.登記すべき事項
☑3.課税標準金額
☑4.登録免許税
☑5.申請年月日
☑6.申請人
☑4.申請先法務局
以上を登記申請書の様式に基づいて作成しましょう。また、登記を申請する際には、ページ数×250円程度の登記費用が必要となります。
払込証明書の作成
払込証明書とは、定款に記載された資本金が口座に振り込みされていることを証明するための書類です。作成するための手順は以下の通りです。
資本金の払込
資本金の払込は、定款認証を受けた後に行います。新規開設した代表取締役の個人の預金通帳に、各発起人から出資金を払込んでもらいます。振込み金額と振込み人の氏名がわかるように、個人名で振込みを行います。
払込証明書を作る
資本金の振込みが終わったら、登記の際に必要となる払込証明書を作成します。インターネットにひな形や参考例などが挙げられているので、参考にするのがよいでしょう。
払込証明書とともに、出資金を振込んだ通帳のコピーが必要です。通帳の表紙、裏表紙、払込の記録が印字されているページを1枚ずつコピーし、払込証明書にこの3枚を添付します。
払込証明書を綴る
資本金の払込証明書が全て用意できたら、作成した払込証明書を一番上にして、通帳の表紙のコピー、通帳裏表紙のコピー、通帳の明細部分のコピーの順に重ね、左端2箇所をホチキスで止めます。そして各見開きのページ綴り部分に割印を押しましょう。
発起人の決定書の作成
発起人決定書とは、会社の所在地が発起人全員の同意の元、決定されたものであることを証明するためのものです。インターネット上にあるひな形や参考例を元に作成するのがよいでしょう。
就任承諾書の作成
就任承諾書は、会社から委任を受けて、会社の役員に就任することを承諾したということを証明するためのものです。
会社設立登記の提出
用意した書類を綴じる
まずは、会社設立登記の際に注意しておきたい事項を確認しておきましょう。
☑1.会社登記の申請は必ず代表取締役が行うこと
会社の登記申請は、設立する会社の代表取締役が行うことが原則です。司法書士に申請してもらう場合は、委任状が必要となります。
☑2.会社設立登記の申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局で行うこと
会社の本店所在地を管轄する法務局で、会社設立登記の申請を行います。これ以外の場所で行うと、申請が却下されてしまうことになりますので、注意してください。
☑3.申請書に記載する電話番号は間違えないように気をつけること
万が一、申請書に不備があった場合は、登記官より連絡がきます。その際必要になるのが、申請書に記載された電話番号です。忘れずに記載するようにしましょう。
☑4.登記申請した日が会社の設立日
会社の設立日は、登記申請を完了した日ではなく、申請を行った日になります。もし、特定の日を選んで会社設立日にしたいのであれば、その日を選んで法務局に申請をしにいきましょう。
なお、月の1日を選んだ場合、その月が丸ごと法人税の対象となるため、6000円ほど多く支払いをすることになります。特に1日にこだわりがなければ、1日以外を選ぶようにするのがよいでしょう。
☑5.会社設立登記の申請は、払込証明書を作成後2週間以内に行うこと
会社を設立した場合、登記申請を行うことが義務付けられています。これに違反した場合、最悪100万円以下の過料を徴収されてしまうこともあります。会社設立申請は、払込証明書を作成した日から2週間以内に必ず行いましょう。
すべての書類作成が完了したら、すべての書類を綴ります。書類の順番は、法務局指示の順に綴じることが必要です。審査がしやすいように正しく綴るようにしましょう。
☑1.登記申請書
☑2.登録免許税の収入印紙を貼付したコピー用紙(A4)
☑3.定款
☑4.発起人決定書
☑5.取締役の就任承諾書
☑6.代行取締役の就任承諾書
☑7.監査役の就任承諾書
☑8.取締役全員の印鑑証明書
☑9.払込証明書
登記後に登記簿謄本の取得
登記登録が終わったら、市役所や税務署、年金事務所などへ税務や労務の手続きが必要となります。手続きを行う際には、登記簿謄本が必須となりますので、登記簿謄本の取得方法についても確認しておきましょう。
登記簿謄本を取得するには、直接法務局の窓口で行う申請方法と、オンラインで申請する方法があります。どちらでも取得することは可能ですが、オンラインで申請するほうが時間を気にせず、手数料も割安になるというメリットがあります。
必要書類をしっかり確認し不備のない申請書を作成しよう
会社にとっての登記とは、設立する会社の存在を一般的に広く証明することができることもあり、信頼を得るためにも必要不可欠なものです。会社役員や資本金、事業内容を明らかにすることで会社の信用性も高まり、企業同士や銀行との取引もスムーズなものになります。
登記を円滑に完了させるためにも必要書類をしっかり確認し、不備のないように申請書を作成しましょう。