定款とは?作成時に注意する点や認証までに必要な手順を理解しよう

定款とは基本的な規則

株式会社を設立するときに必ず必要

定款(ていかん)とは、会社の基本的な規則のことをいい、会社の設立手続き上で必ず作成しなければならない書類です。株式会社を設立するときは、会社の運営方針を決めることが必要になります。定款を作成することにより、会社の根本的な規則や重要な決まりごとをしっかりと定めることができます。

もし株式会社を作成する場合は、会社を立ち上げた発起人全員によって作成することが必要とされます。定款に必要な絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項を発起人が作成し、署名および記名捺印をすることによって初めて効力が生じることになります。

絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項のことをいい、一方で相対的記載事項は記載がなくても定款の効力自体には影響がないという特徴があります。任意的記載事項は、その記載がなくても定款が無効になるわけではありませんが、会社が任意に基本的事項を定めたい場合は、あえて定款の中に記載します。

会社の憲法とも呼ばれる

会社の憲法とも呼ばれる定款は、株主総会や取締役会などで決められるような重要な規則を定款に記載することで会社の方針や体制をより明確にすることができます。定款は一度作成されたあとも発起人の意見や話し合いの場によって定款変更を行うことができます。

定款の変更には特別会議などを行う必要がありますが、会社の根本的な規則として重要な意味を果たしています。定款を作成する場合は、絶対的記載事項のみを定めて認証手続きを行うこともできますが、会社の憲法ともいえる規則を定めるためにも、相対的記載事項、任意的記載事項をしっかりと記載することで、社内だけでなく、外部の関係者に会社運営に対する基本姿勢を示すことができます。

株主総会の収集時期や取締役に与えられる絶対的な権限は、定款によって定めることができるため、もし定款に記載がない場合は、周囲に対しては暗黙の了解として周知されることもありますが効力が低くなります。

定款のひな形は二つある

定款のひな形には、取締役会を設置しないタイプと取締役会を設置するタイプの2種類があります。

日本の中小企業のほとんどは取締役会非設置会社といわれていますが、会社の中に取締役が3名以上いる場合は、取締役会を設置することができるため、会社の経営に関することは株主総会ではなく、取締役同士の話し合いによって決めることができます。

もし会社設立時の出資者の中に、家族や親戚以外の方が多くいる場合などは、取締役会を設置することで、業務執行に関する決断がスムーズに行われるようになります。取締役会を設置するタイプのひな型には、設置しないタイプよりも記載事項が多くなりますが、大まかな内容はどちらも同じになります。

ワードのテンプレートを使うことでスムーズに作成することもできますので、絶対的記載事項として記載される会社の目的、商号、所在地、設立の際の出資される財産価値、発揮人の氏名もしくは名称、住所、発行可能株式総数をまずはしっかりと定めるようにしましょう。

電子定款は印紙税不要

株式会社を設立する際に作成する定款は、公証人の認証を受けることが義務付けられています。定款認証では公証人の手数料5万円と、収入印紙4万円の費用がかかります。しかし、紙の定款ではなく電子定款を利用する場合は印紙代4万円が不要となるため、少し節約することができます。

もともとは紙に印刷して製本した定款を公証人に持ち込み、それを認証してもらうという形をとっていましたが、最近ではパソコンで作成した電磁的記録による定款が認められるようになりました。紙の定款認証も行うことができますが、PDF文書などで定款を提出することで、印紙税分にかかる費用をなくすことができます。

印紙税とは、経済的取引などを目的にに作成される文書に課税される税金のことをいい、紙ではない電子文書は印紙税の対象から除外されます。定款作成時は紙ではなく電子定款として提出することで、印紙税4万円分がお得になります。

定款作成時に気をつけるポイント

会社名の中に株式会社という表記が必要

定款作成時に気をつけるポイントがいくつがありますが、そのうちのひとつが会社名です。例えば会社の所在地ですでに使われている社名は、当然ながら使用することができません。その場合は法務局へ行って商号調査簿で確認するか、もしくはインターネットで登記情報サービスを確認する必要があります。

また、すでに商品登録されている名前もありますので、商標登録がされていないか特許電子図書館で調べるようにしましょう。社名の名前以外にも、株式会社の会社名には必ず株式会社という文字をいれ、もし合同会社の場合は、会社名に合同会社と入れる必要があります。

そのほかにも、有名企業の称号をそのまま使用したり、誤解を招くような表記を使うことはできませんので、注意が必要です。保険会社ではないのに保険という表記がついてしまうと、誤解を招く恐れがあります。記号やアルファベットの使用は可能ですので、社名を考えるときは正しい商号を使用するようにしましょう。

支店や部など部門を表すものはだめ

会社の名前を定款に記載するときは、○○事業部のように、ひとつの会社の支店や部門など、一営業部門を表す商号は使用することができません。混乱をまねくような会社名は法律で禁止されているため、会社名としてもふさわしいとはいえないでしょう。

会社を設立すると、なぜその会社名にしたのですか?と聞かれることがありますので、他の会社にはないユニークな名前を考えることで、相手に会社名を覚えてもらうことができます。社名の由来をどのように説明したらよいのかという点も考慮し、社名を決めるのがよいでしょう。

また、発音のしやすさもポイントのひとつです。声に出して言ったときに、言いやすい名前やインパクトのある名前などを考えてみましょう。最近ではWEBサイトによってPRしたりする会社も多くなってきていますので、会社名にまつわるドメインが使用できるか事前にチェックしておくことも大切です。

会社名に使用できる文字の範囲がある

会社名として使用できる文字にも制限がありますので、社名を考えるときに注意するようにしましょう。法律では以下の文字以外は使用することができません、ローマ字だけの名前や数字だけの名前にすることは、法律上可能になります。ローマ字と日本語を組み合わせたり、大文字と小文字を組み合わせることも可能です。

しかし、株式会社や合同会社などは英語表記ではなく、日本語表記で入れる必要があります。記号を使用するときは、会社名の頭や末尾に使うことはできないため、注意することが大切です。

  • 漢字
  • ひらがな
  • カタカナ
  • ローマ字(大文字・小文字)
  • アラビア数字
  • 一定の符号「&」(アンバサンド)「’」(アポストロフィー)
  • 「,」(コンマ)「-」(ハイフン)「.」(ピリオド)「・」(中点)

業界によっては入れないといけない文字がある

起業する会社の業種によっては、必ず入れないといけない文字もあります。銀行や信託、保険会社などの場合は、必ず会社名に銀行、信託、保険という業種を表す文字を入れることが義務付けられています。また、銀行ではないのに銀行と名乗ったりするなど、関係のない業種の場合はこれらの文字を入れることはできません。

特にお金を扱う金融機関は社名が分かりづらいと信頼の低下につながります。会社の意味や目的がはっきり分かることはもちろんですが、会社の経営について知ってもらうためにも、分かりやすいネーミングを考えるようにしましょう。

将来行う予定の事業も記載する

定款作成時には、事業内容についての記述が含まれています。定款の目的欄に記載されていない事業は行うことができないため、将来行う予定の事業についても記載することが必要です。

個人事業ですでに行っている事業内容に加えて、近い将来に開始予定の事業がある場合は、会社設立時から定款に記載しておくことで、スムーズに進めることができます。定款に記載された会社の目的は、登記事項なため、もし定款に記載していなかった事業を行う場合や、目的の追加が必要な場合は、定款変更をする必要があります。

定款変更には登記自体の修正を行う必要があるため、手間と費用に時間がかかってしまうことも。定款に記載がない場合は事業を行うことができませんが、記載しているからといって必ずしも事業が行われる必要はありません。将来スタートするかもしれない事業がある場合は、定款作成時に記載するようにしましょう。

しかし、取引先が登記謄本を取り寄せた際に関連性のない目的が記載されていると、事業内容に疑問を抱く場合もあるため、ある程度明確になった内容をもとに定款を作成することが大切です。

スムーズな定款認証の手順

管轄の公証役場を調べる

実際に定款認証を行う場合は、事前に管轄の役場の場所を調べておきましょう。全国の都道府県に公証役場はありますが、事前に必要な書類や情報を集めたい場合は、最寄りの役場の場所も把握しておく必要があります。

定款認証を行う公証人は、原則として30年以上の実務経験がある法律実務家の中から、法務大臣が任命した公務員が選ばれます。公証人の仕事は、公正証書を作成し認証を行い、 確定した日付の付与を行うことです。定款を公証役場で公証人に認証してもらい、それによって初めて定款の効力が発生します。

また、定款の認証を受ける公証役場は、本店所在地と同じ都府県内の公証役場で行う必要があります。電子認証を受けたい場合は、発行できる役場が限られていますので、事前に場所を確認するようにしましょう。

電子認証は4万円の印紙代がかかりませんが、その分専用ソフトなどが必要になるため、認証手続きに必要なソフトのダウンロードなどの前準備が必要になります。行政書士に認証を代行して行うことで定款認証を行うこともできますので、会社設立時は定款の作成や提出方法についても、話し合ってみるようにしましょう。

事前に定款をチェックしてもらう

公証役場へ定款の認証に行く前には、事前に作成した定款の内容が合っているかどうかチェックしてもらうようにしましょう。その場合は提出する公証役場へ電話をし、定款の認証の前に内容をチェックしてほしい旨を伝え、メールかFAXなどで全文を送って記載された事項を確認してもらいます。

定款のほかにも印鑑証明書や発起人のうち行くことができない方がいる場合は、委任状も必要になるため、まとめて一緒に送って正確な記載がされているかを判断してもらいましょう。定款に記載される目的欄は、表現方法や内容によっては記載できないこともあります。

会社設立に際しては時間に余裕を持って定款を作成するようにし、準備期間を設けることが大切です。万が一不備があった場合は、発起人同士で相談するなどし、事業内容についてもう一度見直してみるようにしましょう。初めての場合は内容の過不足などもあるかもしれませんので、専門家のアドバイスを聞くことも大切です。

必要なものをすべてそろえる

定款に必要な主な書類は、以下の6つになります。定款作成に合わせて前もって準備するようにしましょう。

☑定款3通
☑発起人全員の印鑑証明書、各1通ずつ
☑収入印紙:4万円
☑公証人へ払う手数料:5万円(現金)
☑定款の謄本(写し)交付手数料:約2,000円(250円×ページ数)
☑委任状(代理人が定款認証を行う場合のみ)

定款は3通提出する必要があり、すべて発起人全員の署名押印、割印が必要になります。押印は必ず個人の印鑑で行うようにしましょう。持っていく定款3通は公証役場保存用、会社保存用、登記用として必要になります。定款の認証をしてもらった後は、公証役場保存用の定款に収入印紙を貼って消印をします。

収入印紙は郵便局でも買うことができるため、事前に用意するようにしましょう。定款は原則として発起人全員で行く必要がありますが、仕事が忙しくて行けない場合は委任状を用意して提出する必要があります。

公証役場で定款認証を受ける

管轄の公証役場を調べて事前に定款をチェックしてもらい、必要な書類を全部揃えたら、いよいよ定款認証を受けることができます。公証役場へ行く際はあらかじめ電話で日時などを指定し、行くようにしましょう。当日でも訂正箇所を指摘される場合もありますが、よほど大きな修正でない限りはその場で訂正することができます。

訂正の際は捨印を押し、定款が受理されれば用意した定款3通のうち、1通が原本となり、公証人役場に提出されます。この1通の表紙の裏側に収入印紙を貼って実印で消印を行います。残りの2通は謄本という朱印が押され、一通は法務局で会社登記用に使用し、もう1通が会社での保存用になります。

保存用の謄本は会社名義の手続きの際にも必要になるため、大切に保管するようにしましょう。定款認証の手続きがすべて終われば、ついに会社登記などの具体的な手続きに入ることができます。

定款認証に必要なもの

定款は3通必要

定款が完成したら、1通ではなく保管用や提出を含めて3通用意する必要があります。そのためにも、定款を製本する必要がありますが、製本の仕方などは特に決められているわけではありません。一番簡単な方法は、作成した定款をA4サイズで片面または両面プリントアウトしてホッチキスで止める方法です。

表紙は定款と記載し、見やすいようにA4サイズの用紙を使って袋とじするようにしましょう。袋とじした箇所と定款の最終ページに発起人全員が押印して完成です。これと全く同じものを3通用意し、公証役場保管用の1通の裏表紙に収入印紙4万円を貼ります。

電子定款による認証の場合は、製本の方法が異なります。専用ソフトで申請を行うので、公証役場に申請完了の旨を伝え、後日データを受け取る形になります。

発起人全員の印鑑証明書

株式会社を設立するにあたり必要になるのが、発起人全員の印鑑証明書です。

実印は市町村役場に実印として登録してある印鑑のことをいい、会社設立時の定款の書類に押印する印鑑は個人の実印を原則として使用することになります。印鑑証明書を提出するにあたり注意する点は、印鑑証明書を発行してから3ヶ月以内のものが必要になる点です。

昔に作成したものは提出できませんので、再度役場にいって証明書を発行する必要があります。印鑑証明書は本人の実印であることを証明する大切な書類なので、定款の認証をする際はもちろんですが、会社の登記申請をする際にも法務局へ提出します。

定款の場合は発起人全員の印鑑証明書がそれぞれ1通ずつ必要になります。また、印鑑証明書は印鑑登録を先にする必要がありますので、印鑑証明書を初めて作るという方は、まずは印鑑登録をする必要があるため、実印と身分証明書を持参して役場に申請に行きましょう。

郵便局で購入できる収入印紙

収入印紙は財務省が発行する証票のことをいい、1円~10万円まで31種類の収入印紙があります。収入印紙は税の支払や行政に対する手数料の支払いのために利用されるもので、国が租税や手数料を徴収するための手段として使われています。

収入印紙を購入できる場所はいくつかありますが、郵便局は比較的全ての種類がそろっているため、窓口に行って収入印紙を購入したい旨を伝えましょう。会社を設立する際に必要な定款は、印紙税額は一律で40,000円と定められています。

また、収入印紙を使用する際は、印紙税を収めるために収入印紙に消印をする必要があります。公証人保存用の定款に収入印紙を貼って消印をしますが、文書と印紙にまたがるようにして押すようにしましょう。もし定款に間違いなどがあった場合に備えて、公証役場に行って確認してもらってから貼るようにするのがよいでしょう。

また、公証役場では収入印紙が売ってない場合が多いので、行く前に郵便局で購入することが大切です。

5万2000円ほどの現金

定款の際に認証してもらう公証人に支払う費用は、定款の認証費用5万円と謄本代として約2000円がかかるため、全部で5万2000円が必要になります。カードなどでの支払いではなく、公証役場の窓口で当日現金で支払うため、前もって準備するようにしましょう。

公証人へ5万円支払いますが、定款作成料は250円×ページ数分なため、定款の枚数によっては値段が異なります。製本するときの枚数を確認してあらかじめ計算したうえで、現金を用意することが大切です。また、定款認証手数料の5万円には消費税はかかりませんので、それ以上用意する必要はありません。

しかし、定款の提出を行ったあとは会社の設立のための登記手続きがありますので、さらに諸費用がかかってくることになります。

発起人が揃わなければ委任状

公証役場での定款認証は発起人全員で行くことが基本ですが、もし発起人が揃わない場合は委任状の提出が求められます。その場合は、代理として役場に行く人の名前と住所、定款作成日から定款認証の申請日までの間の日付、公証役場へ行くことができない発起人の名前と住所、個人の実印が必要になります。

また、修正に備えてあらかじめ書類に実印で捨印を押しておくことも大切です。特に書式のフォーマットに制限などはありませんが、不備がないかしっかりと確認することが大切です。

委任状は1枚用意するだけではなく、委任状を一番上にして下に定款を印刷したものを重ねて袋とじにし、押印をする必要があり、これで初めて委任状として扱われます。また、押印する場所は名前の横と委任状上部の捨印、袋とじ部分の割り印に押す必要がありますので、押し忘れに注意しましょう。

きちんと調べて準備をしよう

定款という言葉は、会社設立を考えたことがある方や起業したいと考えている方は聞いたことのある言葉かもしれませんが、会社設立のためになくてはならないものです。定款を作成することで会社の事業の目的や理念、規則を明確にし、事業をスムーズに行っていくことができます。

定款を作成するにあたり、発起人同士での話し合いはもちろんですが、会社の名前を考えたり、事業をスムーズに行うための規則や事業内容についてしっかりと考える必要があります。株式会社を設立するにあたり大切なことは、目標とそれに対する準備です。

定款作成時は事前にしっかりと準備をしてから認証手続きを行うようにしましょう。

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