会社設立時の資本金額はどれくらいが相場?会社法改正以降の常識

目次

株式会社の資本金の相場

株式会社とは従来、最低資本金制度というものがあり最低資本金は1,000万とされていました。しかしこれは平成18年の会社法施行とともに廃止されます。そのため法律的には資本金が1円から会社を作ることができるようになりました。

従来は株式会社は最低資本金は1,000万、有限会社の場合で300万円の資本金が必要でした。その当時も1円会社というものがありましたが、5年以内に最低資本金まで充足させる必要があり、敷居は低くはありませんでした。平成18年の会社法施行により最低資本金という制度そのものが撤廃されましたので、理論上は1円の資本金で会社を作ることが可能となりました。

では、実際に設立するとなるといくらくらいの資本金で設立するのが相場なのでしょう。これは業態により大きく異なりますが、しいてあげると下限は100万円、上限は999万と言ってよいかもしれません。

会社設立時の資本金の決め方

まずは上限999万円を超えてよいかを考えよう

資本金上限の999万円を超える場合のデメリットについては後述しますが、そうはいっても最初から事業規模が大きい場合は1,000万未満の資本金ではたちまち資金が底をついてしまう場合もあります。業種によっては最初に大きな設備投資が必要なケースもあるでしょう。当然ながらこのような場合には上限金額を超えることは仕方ありません。
また、創業時の制度融資などは資本金の倍額程度に設定されていることが多いため、必要な資金の3分の1を自己資金で用意すれば、あとは融資でまかなえるというケースもあるでしょう。肝心なのは、初期の事業全体の見通しと資金計画を綿密に練り上げて、その中で初年度の予算計画全体を見通し、必要な資本金を決めることです。

資本金が1,000万円以上だと消費税の免税事業者になれない

消費税の課税業者か否かの判定は2事業年度前の売上高を基準に判定するため、設立から2事業年度は消費税の納税義務を免除されることになります。簡単にいえば設立から2年間は消費税納税業者になることはないということです。しかし資本金1,000万以上になるとこの判定基準は適用されず、第1期から消費税の納税義務者となってしまいます。そのため2年間は免税事業者でいるために資本金は999万円に設定する会社が非常に多いのです。
会社設立当初は資金的に厳しい状況であることが多く、消費税納税が大きな負担になることも考えられます。
非常に大きな規模で立ち上げて、一気に数千万円の資本金で設立する、というような場合でなければ999万円までにしておくのが賢明でしょう。

資本金が1,000万円を超えると住民税の均等割りが増加する

資本金が1,000万円を超えると地方税の均等割が大きく増加します。従業員50人以下の会社であれば年7万円で済んでいたものが18万円まで増加します。地方税については税法上不利な扱いになるのは消費税の判定と異なり、資本金が1,000万円であれば大丈夫です。1,000万円を1円でも超えた場合には不利な取り扱いとなります。

資本金が小さいことの具体的なデメリット

資本金が大きければ大きい程対外的な会社の信用は上がります。簡単にいえば規模の大きな安心できる会社という印象をもってもらえるということです。資本金というのは単なる「見せ金」ではありません。設立後にかかるさまざまな経費は資本金でまかなうわけですし、売り上げが軌道に乗るまでの数ヶ月間の運転資金もすべて資本金でまかなうことになるわけです。

そのような資金が非常識に小さい場合、はたして会社としてどの程度本気で設立しているのかなどの疑問を持たれることにもなりますし、なにかあったときにすぐに倒産してしまうのではないかと危惧されることにもなります。そういったことから当然資本金が小さければ信用度は落ち、デメリットが生じてしまうのです。

資本金が小さいと融資が受けずらくなる

銀行は融資の判定基準として純資産の金額を考慮します。資本金は純資産の構成要素のひとつですから資本金が大きければ大きい程銀行からの融資は受けやすくなります。一般的には融資限度額は純資産の3倍くらいと考えておけばよいでしょう。

また、創業時は貸借対照表も損益計算書もまだ存在しないわけですから、創業時の制度融資などは資本金をひとつの目安とすることになります。この場合限度額が資本金の2倍を上限とすることが多いようです。自己資金だけで会社を回して行くのは業態にもよりますが、なかなか難しい場合もあります。

その場合融資が受けられるかどうかは非常に重要な資金戦略となりますので、設立時にはそれらを考慮して資本金を決定するべきでしょう。

取引先との取引を継続できなくなる可能性

得意先が大きな会社の場合、社内での与信審査基準を通過しないと取引を行わないなどの社内ルールを持つ会社もあります。掛け売りの与信は当然のことながら、COD取引(キャッシュオンデリバリー)を申し出たとしても取引口座そのもが開設されないことも多々あります。売り上げ実績がない会社の場合は資本金以外に判断基準がないともいえますので、想定している得意先にそれらの規制がないか確認しておくことが必要でしょう。

実際に会社を立ち上げてから、資本金が原因で取引口座開設が頓挫するようなことがあると、初年度から大きくつまづくことになってしまいます。

もし決めきれない場合もあとで変更手続き可能

資本金の額というのは不変のものではありません。あとで変更をすることも可能ですので思い切って決めてしまうのもひとつの考え方ではあります。

資本金を増やす場合(増資手続)

増資とは文字通り「資本金を増やす」ことですが、通常発行株式の一株当たりの金額はそのままですから、増資するということは、あらたに株式を発行することを意味します。
当然一株当たりの価値は下がることになるので第三者の株主がいる場合は利害の調整が必要になってきます。第三者割当増資などを行った場合は、自分の持ち株比率そのものが減ってしまいますので、経営戦略上の問題も出てきます。

株主割当増資であれば持ち株比率は変わらず、簡単にいえば自分がお金を追加で出すだけですので、問題が起こることはありません。

資本金を減らす場合(減資手続)

減資を行う場合には、株主総会の特別決議を経て、債権者に異議申し立ての機会を設けるなどきわめて煩雑な手続きが必要となります。減資というのは簡単にいえば事業規模の縮小を意味しますので、今までお金を貸してくれていた銀行が減資をするならお金を一括返済してくださいというかもしれませんし、仕入れ先からは買掛金の即時支払いを求められるかもしれません。

減資は現在の債権者にとっては不利な状況となるため、事前に十分な協議を行い債権者の同意をとりつけるなど根回しが重要です。

資本金の変更手続きは専門家へ相談

資本金の変更手続きは非常に複雑であり会社法上の規制も多くあります。司法書士、行政書士、また税理士、会計士など専門家に依頼することをおすすめします。

実際には専門家の手を通さずに完了させることは不可能と考えてよいでしょう。

まとめ

最低資本金制度が撤廃されたことにより、資本金1円からでも会社の設立が可能となり新規起業のハードルは大きく下がったといえるでしょう。しかしながら、資本金が設立当初の必要な経費をまかなうものである以上、一定の金額を用意しておく必要はあります。具体的には下限は100万円、上限は999万円と考えていいでしょう。
上限金額を999万円としたのは初年度から消費税納税業者になるのを避けるため、地方税均等割りの金額を下げるためです。もちろん、それを上回るメリットがあり最初から数千万円の資本が用意できる場合は、この限りではありません。
下限金額を100万円を目安としたのは、極端に低い資本金ですと銀行融資が受けられない、または融資金額が少なくなる、取引先の規定に引っかかり取引口座が開けないなどのデメリットがあるためです。資本金の金額は開業後に変更することは可能ですが、第三者の出資を仰いでいる場合などは出資者の利害の調整が必要になりますので、十分な注意が必要です。

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