合資会社の特徴とは。他の会社形態との違いを把握して今後に活かそう

合資会社は会社の形態の1つです。個人事業や株式会社やその他の会社形態にはそれぞれに特徴があります。合資会社の特徴やメリット・デメリットを知り、他の会社形態との違いを把握して知識を深めておくと、今後の仕事や経営などに活かすことが可能です。

合資会社の特徴

無限責任社員と有限責任社員で構成

合資会社は、無限責任社員と有限責任社員で構成されている会社形態のことをいいます。無限責任社員とは、会社の債務に対し無制限に責任を負う社員のこと。有限責任社員とは、会社の債務に対し出資額までの責任を負う社員のことです。

無限責任社員は合資会社の経営に関わりますが、有限責任社員は原則として経営には関わることはありません。合資会社を設立する際には、無限責任社員と有限責任社員を各1名以上、合計で2名以上必要となります。

会社形態別の出資者責任

☑ 1.株式会社→間接有限責任(1名以上)
☑ 2.合同会社→間接有限責任(1名以上)
☑ 3.合名会社→無限責任(1名以上)
☑ 4.合資会社→無限責任、直接有限責任(各1人以上、合計2名以上)

無限責任社員はリスクがある

無限責任社員にはリスクがあります。その理由は会社の経営が悪化した際、もし会社がすべての債権を払いきれなかったら、個人の財産からも返済する可能性があるからです。無限責任を負っている方は、直接債権者に対して弁済を行わなくてはいけません。このように直接的に責任を負うことを直接責任といいます。

その一方で、無限責任社員のメリットは業務執行権を持つため経営に大きく介入できるということ。さらに無限責任社員が会社に出資する際には、金銭的な出資に加えて労務出資(労働することを出資する)や信用出資(その人が持っている信用を出資する)も認められています。法的に無限責任社員が認められている会社の形態は、合資会社と合名会社です。

有限社員はリスクを回避できる

有限責任社員は出資額までの責任を負う必要はありますが、無限責任社員がいることから、万が一会社が倒産してもリスクを回避することができます。つまり、出資したお金は消失してしまうものの、それ以上の責任は負わなくてもいいということです。

法的に有限責任が認められているのは、株式会社の株主、旧有限会社の社員、そして合資会社の有限責任社員。ただし、株式会社の株主などは、債権者に直接責任を負うのではなく、出資した会社に出資した金額だけの責任を負うことになっています。このように債権者に対して間接的に責任を負うことを間接責任といいます。間接有限責任を負うもののみで構成されているのは、株式会社(特例有限会社も含む)と合同会社です。

社員2名以上で設立可能

合資会社を設立するためには、無限責任社員1名と直接有限責任社員1名が最低限必要となります。つまり個人のみでは設立できず、社員2名以上で設立が可能になるということです。

万が一途中で社員が1名になった場合は、社員1名でも可能な会社形態である、合名会社や合同会社などに組織変更する必要があります。合名会社は無限責任社員のみで構成され、会社法上社員は1名以上。合同会社は出資者全員が間接有限責任社員で構成されており、社員は1名以上いれば大丈夫です。

持分会社に分類される

持分会社とは会社形態の総称のことです。会社の形態には、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社などがありますが、日本において、合同会社・合名会社・合資会社の3つが持分会社とされています。

株式会社は所有者である株主と経営を分離させる形態ですが、持分会社では、所有と経営は分離されません。また、社員でなければ業務執行をすることができないということも特徴です。

株式会社と持分会社の違い

株式会社は所有者と経営者が別の人格になるので、業務執行を行う者と、業務執行を行う者の監査をする者などと様々な機関が存在して複雑です。持分会社にはそのような機関は存在しません。

設立する際の違いもいろいろあります。例えば公証人の認証の必要がないなど。株式会社と比べると持分会社のほうが設立の手続きも簡単です。

出資金の制度がない

合資会社(合名会社も含む)には出資金の制度がありません。現金による出資は義務付けされておらず、出資は信用・労務・現物が認められているため、コストを抑えることも可能です。

設立に係るコストを抑えたいのであれば、出資金の制度がない合資会社と合名会社、及び合同会社は設立費用が少なく済みます。株式会社は設立に係るコストは高くなり手続きも複雑ですが、社会的な信用面でいうと他の会社の形態と比べて高いということがメリットです。

会社形態別の出資金制度

☑ 1.株式会社→出資金1円以上(金銭やその他の財産の出資が可能。信用や労務の出資は不可。)
☑ 2.合同会社→出資金1円以上(金銭やその他の財産の出資が可能。信用や労務の出資は不可。)
☑ 3.合名会社→出資金の制度なし(金以外も可能で、信用や労務や現物の出資が可能。)
☑ 4.合資会社→出資金の制度なし(金以外も可能で、信用や労務や現物の出資が可能。)

設立手続きに費用が掛からない

合資会社を設立する際には、株式会社と比べると登録免許税が安かったり、資本金に現金を用意しなくてもいいなど、手続きに費用が掛からないということが大きなメリットです。少ない投資で会社を設立することができるため、設立コストを削減することができます。

設立手続きの費用は、合資会社、合名会社、合同会社はほとんど差がありません。コスト面だけ見ると、この3つの会社の形態を設立する際は株式会社よりも費用が抑えられます。

株式会社の設立手続きに係る費用

☑ 1.公証人手数料(定款認証)→5万円
☑ 2.定款印紙代→4万円(電子定款の場合は0円)
☑ 3.登録免許税→15万円
☑ 4.会社実印等→約2万円(会社実印1万円、銀行員1万円とした場合ですが、実際はもっと高くなる可能性がある)

合計金額は約26万円となります。(その他にも登記簿の謄本や印鑑証明書や各種諸経費で数千円以上が必要です。)

合資会社、合名会社、合同会社の設立手続きに係る費用

☑ 1.公証人手数料(定款認証)→なし
☑ 2.定款印紙代→4万円(電子定款の場合は0円)
☑ 3.登録免許税→6万円
☑ 4.会社実印等→約2万円(会社実印1万円、銀行員1万円とした場合ですが、実際はもっと高くなる可能性がある)

合計金額は約12万円となります。(その他にも登記簿の謄本や印鑑証明書や各種諸経費で数千円以上が必要です。)

設立手続きが比較的簡単

持分会社(合同会社、合名会社、合資会社)は、株式会社と比べると設立手続きが簡単だといわれています。さらにこの中でも特に設立手続きが簡単だといわれているのが合資会社です。

合資会社を設立し、実際に取引などを開始すると登記が必須になります。そのためまずは登記事項(会社の基本事項)を策定することから始めましょう。

登記事項の内容

☑ 1.目的
☑ 2.商号
☑ 3.本店の所在地及び支店の所在地
☑ 4.合資会社の存続期間、または解散の事由についての定款の定めがあればその定め
☑ 5.社員の氏名、または名称及び住所
☑ 6.社員が有限責任社員であるか無限責任社員であるかの別
☑ 7.有限責任社員の出資の目的及びその価額、すでに履行した出資の価額
☑ 8.(合資会社を代表する社員がいる場合)合資会社を代表する社員の氏名または名称
☑ 9.(合資会社を代表する社員が法人の場合)法人の代表社員の職務を行うべき者の氏名及び住所

設立の手順

☑ 1.登記事項(会社の基本事項)を策定する。
☑ 2.社員が出資者となって出資金を準備する。
☑ 3.損益の分配割合を決定する。(定めない場合は出資価額に応じる。)
☑ 4.業務執行社員や代表社員を決定する。
☑ 5.定款の作成をする。(有限責任社員と無限責任社員を明記する。認証は不要。)
☑ 6.出資金の払込みをする。
☑ 7.法務局で会社の登記申請をする。

必要書類

☑ 1.定款(2部)
☑ 2.印鑑証明書(1部)
☑ 3.払込金額が記された預金通帳のコピー(1部)
☑ 4.払込証明書(1部)
☑ 5.登記申請書(1部)
☑ 6.CD-Rもしくはフロッピーディスク(1枚)
☑ 7.印鑑届出書(1部)

条件により必要書類等が異なることがあるので、手続きをする前に法務局でご確認ください。

社会保険に加入できる

合資会社を含めた法人は個人事業者と異なり、社会保険・厚生年金に加入することができます。法人の場合は法定上、社会保険の強制適用事業所です。

強制適用事業所とは、医師に関係なく強制的に社会保険に加入する会社(事業所)のこと。個人事業主でも、法定16業種の適用業種であり尚且つ従業員が5人以上であれば強制適用事務所となり、社会保険に加入できます。一方で社会保険の任意適用事業所というのは、社会保険に加入する権利を持つ会社(事業所)のこと。非適用業種にあたる個人事業主または5名以下の個人事業主が該当します。

決算書を公表しなくてもいい

合資会社には決算公告の義務がありません。そのため、株式会社のように決算書を公表しなくてもいいです。株式会社へ決算公告の義務があり、決算書を毎年公表しなくてはいけません。さらに官報への掲載は約6万円かかります。

決算を公表したくないのであれば、合資会社は最適。運営コストの負担を減らせるということはメリットです。ただし現在は経過観察措置をしているので、将来法改正をした際に決算公告の義務が発生する可能性はあります。

株式会社への組織変更が可能

これまでの商法では合資会社は株式会社への組織変更は不可でしたが、会社法が施行されて合資会社が株式会社へ組織変更することが可能になりました。合資会社だけでなく、合名会社や合同会社も株式会社への組織変更が可能です。

会社法が施行される前は組織変更ができなかったため、いったん株式会社を設立してから合資会社と吸収合併するという手段が多く用いられていました。しかし現在は会社法施行に伴い、手続きを取ることで組織変更が可能になったのです。

組織変更の手続き

☑ 1.組織変更計画を作成する。
☑ 2.組織変更の効力が発生する日の前日までに総社員の同意を取り付ける。
☑ 3.債権者保護の手続きをする。
☑ 4.登記をする。

組織変更計画で決めること

☑ 1.会社の事業目的、商号、本店所在地、発行可能株式総数、それ以外で予定する定款の規定
☑ 2.株式会社の取締役の氏名
☑ 3.株式会社が会計参与設置会社の場合は会計参与の氏名または名称、監査役設置会社の場合は監査役の氏名、会計監査人設置会社の場合は会計監査人の氏名または名称
☑ 4.持分会社の社員が取得する株式数とその算定方法、株式割当てに関する事項
☑ 5.持分会社の社員に持分に代わる金銭などを交付する場合、その内容、数、金額、算定方法、金銭などの割当てに関する事項
☑ 6.組織変更の効力が発生する日

組織変更をする前に、合資会社にも株式会社にもそれぞれメリットがあるので、なぜ組織変更を行うのか、株式会社に組織変更した際のメリットとデメリットを再確認しましょう。

取締役や監査役が必要ない

株式会社の場合は、取締役3名以上・監査役1名以上の決まりがありますが、合資会社は取締役や監査役が必要ありません。業務執行機関がシンプルなので、迅速な意思決定と柔軟な経営が可能になります。

合資会社は無限責任社員が業務執行を行い代表者としての権限を持ちます。株主総会や取締役会をやる必要がないので、他の会社の形態と比べて運営上の負担は少ないです。

自由に定款に規定できる

合資会社は持分会社のため、定款自治の範囲は広いです。会社法に違反しない限り、会社の内部組織等を定款で自由に統計することができます。

自由に定款に規定できるので、組織運営の自由度は高いです。定款の内容は会社法により定められており、「目的、商号、本店の所在地、社員の氏名と住所、社員一部が無限責任社員で、その他の社員が有限責任社員であるということ、社員の出資の目的とその価格」は必ず記載しなければいけない事項になっています。

いつでも退社することが可能

持分会社には退社制度があり、いつでも退社することが可能です。やむおえない理由がある場合はいつでも退社することが出来るが、代謝登記後2年間は退社登記前に存在した会社の債務に対して無限責任を負い続けなければいけません。

退社する従業員には、退社時に出資額の払戻しが行われます。しかしそうすると資金が目減りしてしまうため、資金が減ることを防ぐための制度を定めているのです。

任意退社の場合

従業員は退社の6ヶ月前までに予告をすると、会社の事業年度の終了時に退社できます。ただし他にやむをえない事情があり、それが認められた場合はいつでも退社可能です。

多くの場合は任意退社が可能ですが、商法によると、持分会社の存続期間を決めていなかった場合と従業員が存続する間は持分会社を存続すると決めていた場合に適用されるということが定められています。

法定退社制度

法定退社制度とは、任意退社以外の退社の制度のこと。法で定められている退社条件を満たしているのであればすぐに退社できるという制度です。法定退社制度の条件は以下のようになります。

☑ 1.定款で定めた事由が発生した場合
☑ 2.総社員の同意があった場合
☑ 3.死亡した場合
☑ 4.合併により当該法人の社員が消滅する場合
☑ 5.破産手続きの開始を決定した場合
☑ 6.解散した場合
☑ 7.後見開始の審判を受けたこと
☑ 8.除名した場合

払戻しについて

従業員の退社時に行われる出資額の払戻し以外にも、払戻しを請求できる制度があります。持分会社は従業員が出資者ではありますが、常に出資し続けなければいけないということではありません。

株式会社とは違い、出資金の払い戻しを請求することができます。ただし有限責任社員のみで構成されている合同会社の場合は、払戻額に限度があるので注意しましょう。

合資会社は無限責任社員と有限責任社員によって構成される

合資会社のメリットは、株式会社と比べて設立費用が安く済むこと、資本金を用意する必要がないこと、個人事業主とは違い社会保険に加入できることなどがあります。手続きが簡単でコストの負担も少ないということは大きなメリットです。

対してデメリットになるのは、合資会社は無限責任社員と有限責任社員によって構成されるということ。無限責任社員は会社のすべての責任を負わなくてはいけないということ、設立には最低2名以上必要になるため、自分以外の誰かを常に雇用し続けなければいけないということがデメリットになります。会社の形態にはそれぞれにメリットとデメリットがあるので、それらを把握して自分に合う形態の会社を見つけることが大切です。

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