社会保険の加入条件は平成28年に改正。自分も対象なのか把握しよう

社会保険の加入条件は、平成28年の改正によって以前よりも加入することができる人が増えました。対象となっているのは、パートやアルバイトなどの短時間労働者となりますが、条件があるため加入できるのかしっかり理解しましょう。

目次

社会保険のしくみ

社会保険は3つの保険と厚生年金で成り立っている

社会保険というと健康保険をイメージする人が多いのですが、実際には、健康保険だけでなく、労災保険、雇用保険の3つと、厚生年金を合わせた、合計4つのものです。社会保険は民間会社がおこなっている生命保険などとは違い、公的な保険となり、国民の生活を守るために作られたものとなっています。そのため、条件を満たしていれば加入することが義務付けられています。

ただし、社会保険には、狭義の意味で考える場合と広義の意味で考える場合があり、一般的には狭義の意味で考える健康保険、厚生年金のことをさして社会保険と考えることが多くなっています。労災保険と雇用保険に関しては、労働保険として考えられています。

健康保険は会社員の場合となり、自営業や短時間労働者、無職の場合には、国民健康保険が同じ役割を果たすものです。健康保険は、ケガや病気、出産、死亡に対しておこなえる公的社会保障です。

厚生年金は、老後の生活や障害、死亡に対しておこなわれる社会保障制度となり会社員の場合には、厚生年金保険、自営業者などは、国民年金が対象です。

社会保険は会社員が加入する保険


一般的に、社会保険というと健康保険のイメージとなっています。社会保険は会社員が加入する保険となります。ただし、社会保険への加入は、個人が選択することができることではなく、条件を満たせば加入することが義務です。会社が社会保険の適用事業所となっているのかどうかで、社会保険に加入するのか、国民健康保険に加入しなければならないのかが違ってきます。

社会保険の適用事業所には、2種類があり、条件に当てはまり加入が義務となっている強制適用事業所と、任意で加入をおこなう任意適用事業所があります。どちらの場合でも労働者が加入する点では特に違いがあるわけではありません。重要となるのは事業所が適用事業所であるのかどうかという点でしょう。

社会保険で保証される内容を理解する

社会保険というと「加入しなければならないもの」ということで加入しているものの、どのような保証があるのかは、よくわかっていない人も多くなっています。しっかりと保証内容を理解することで、民間の保険への加入の際にも役立てることができます。また、申請漏れなどを防ぐこともできますから、まずはしっかりと理解するようにしましょう。

大きく分けると社会保険では、公的医療保険と公的年金保険、公的介護保険となります。医療保険の保証内容となっているのが医療に関するもので、日ごろ病院などを受診した際などに、3割の負担で医療費を支払いますが、残りの7割が社会保険から支払われていることになります。また、高額医療費ということで、月に10万円以上の医療費を支払った場合に、10万円を超える分を負担してもらうことができます。

さらに出産の際には、出産一時金として一定額が支給されますし、出産や育児のために仕事をすることができない間の保証もあります。ただし、こういったものは自分で申請をおこなう必要がありますから、しっかり制度を理解していないと、申請をおこなわずに済ませてしまう可能性もあるため気を付けましょう。

社会保険に加入する方法を知る

社会保険への加入の方法を知るうえで、まず理解しておく必要があるのが、加入には強制適用事業所と任意適用事業所の2種類があることです。強制適用事業所は、社会保険への加入が義務となっている法人となります。常時従業員が働いている法人事業所はもちろんのこと、法人格となっている事業所はすべて強制適用事業所となり、社会保険への加入が義務づけられます。

任意適用事業所は、加入が義務となっているわけではなく、希望によって適用事業所になることができます。この場合には、常時5名以上が働いている工場や商店、事務所などの事業をおこなっている個人事務所が対象となります。

社会保険に加入するためには、事業所の住所を管轄している年金事務所に加入の書類と添付書類を提出することになります。この場合、いつでも加入することができるというわけではなく、強制適用事業所の場合には、加入の義務が発生した日から5日以内に申請をおこなう必要があります。会社を立ち上げた場合などには注意して、記入漏れや提出遅れのないように、しっかりと申請をおこなうことが大切です。

会社員以外は国民健康保険加入


社会保険というと会社員の加入する健康保険をイメージする人が多くなっていますが、国民健康保険も社会保険の1つとなります。国民健康保険は、会社員以外の人などが加入することになる公的医療保険となります。自営業者や短時間労働者、無職の人などが対象となってきます。

国民健康保険の場合には、健康保険とは違い、国が運営をおこなっているのではなく、市町村が国から補助金をもらい運営をおこなっています。そのため手続きもそれぞれの市町村役場でおこなうことになります。内容に関しても市町村によって違いがある部分もありますから、しっかりと確認しておくようにしましょう。

平成28年より加入条件変更

加入条件の変更で対象者が増える

社会保険の加入条件は、平成28年より変更となりました。これは、より多くの人が社会保険に加入することができるようにということでしょう。もともとの加入条件を満たし加入している場合には、あまり関係してきません。しかし、これまで条件を満たすことができなかった人、パートなどの人には大きく関係しますからチェックが必要です。

これまで、パートやアルバイトなどで働いていた人の場合には、社会保険といっても配偶者の扶養になっていことが多かったかもしれません。なかには、扶養でいるために勤務時間などを調整していたということも少なくありません。加入条件が変更することで、これまで扶養となっていた人が社会保険に加入する必要が出てくるケースが多くなります。扶養を外れ社会保険に加入することで、手取りの収入が減少することになりますから、しっかりと理解しておきしましょう。

具体的な社会保険加入条件の改正点

「労働時間」の改正点

平成28年におこなわれた社会保険の変更は、加入条件の変更となっています。より多くの人が加入することができるように、これまでより条件が緩和されたと考えてもよいでしょう。

大きく改正されたのが労働時間となります。これまではの社会保険への加入条件は次の通りです。

☑ 雇用先が社会保険の適用事業所である
☑ 正社員の4/3以上(週30時間以上)の勤務時間がある
☑ 雇用契約期間が一定期間以上ある

では、改正されてからの条件は、次のようになります。

☑ 勤務時間が週20時間以上あること
☑ 月額賃金が88,000円以上あること(年収で106万円以上)
☑ 勤務期間が1年以上見込まれること
☑ 従業員が501人以上の企業

となります。

「収入」の改正点

これまでの社会保険では、賃金に関しては年収が130万円以上ある場合に、社会保険への加入をおこなうことができました。平成28年の改正によって、賃金に関しては、月額賃金が8,8万円以上であることが条件となります。年収では106万以上円となりますから、これまでよりもかなり引き下げられたことになります。

所得の上限を引き下げることによってより多くの人が社会保険へ加入することができるようになりました。ただし、配偶者などの扶養になっていて年収の調整をおこなっていたような人の場合には、さらなる調整が必要となる可能性があります。また、社会保険に加入することで保険料を支払うことになりますから、手取りが少なくなる可能性もあります。

「勤続年数」の改正点

勤務年数にも改正がおこなわれたことから、これまで勤務期間に関しては、雇用期間が一定期間以上となっていたものが、改正後には勤務期間1年以上となりました。つまり、他の条件はクリアしていても勤務期間が1年以上ない場合には、社会保険への加入をおこなうことができないということになります。

 

「職場環境」の改正点

社会保険では、これまで、法人の場合には従業員数に限らず社会保険への加入が義務づけられていました。改正後に関しては、従業員数501人以上の企業となりました。これは、パートやアルバイトといった短時間労働者が対象となりますから、小規模事業所の場合でもこれまで通り社会保険に加入していることができます。

短時間労働者であって社会保険への加入を考えているのであれば、加入しやすくなる従業員数が501人以上の事業所を探すのが手っ取り早いということです。実際には、社会保険の内容をしっかりと確認して事業所がどのようになっているのかを確認する必要があります。

2017年4月より500名以下の会社でも対象となる場合がある

平成28年の社会保険の改正によって501名以上の事業所では、パートやアルバイトなどの短時間労働者に関して社会保険の加入の条件が改正されました。これをきっかけに、これまで社会保険に加入することができなかった人でも加入することができるようになりました。

500名以下の会社でも対象となる可能性があります。対象となるのは、事業所の労働組合の同意を得た場合となります。労働組合がOKを出せば事業所が手続きをおこない社会保険への加入が可能となります。

社会保険加入条件変更でパート・アルバイトへの影響

年収106万円の壁により、収入が減る可能性がある

社会保険の改正がおこなわれ、加入することができる対象が増えました。以前は年収130万円以上であったものが年収106万円以上となり、年収の限度額が引き下げられたことから、パートやアルバイトの人でも条件をクリアしやすくなりました。

社会保険への加入がおこないやすくなりましたが、その反面、逆の影響がでることも考えられます。これまで、扶養になっていて130万円を超えないように調整していた人も多いでしょう。130万円を超えないようにしていた人の場合は、改正によって社会保険に加入することになります。その場合には、これまでにはなかった社会保険料が必要となります。

社会保険料が給与から天引きされることになりますから、これまで通り働いていた場合には、手取りが少なくなるということです。こういったことを考えると働き方についても検討する必要が出てくる可能性もあるでしょう。

働ける時間が限られる可能性がある

パートやアルバイトで働いている人の中には扶養になっていることも多くなります。こういった場合、収入は多くはないため、扶養のままで社会保険料などの負担を少なくしたいということもあります。社会保険の改正によって年収の上限がこれまで130万円であったものが106万円に引き下げられました。

扶養のままでいたいと考えるのであれば、これまで130万円を超えないように働いていたのを、106万円を超えないようにしなければいけません。そのためには、働く時間を調整することが必要となりますから、扶養でいるためには働くことができる時間が大幅に減少する可能性もでてきます。

同じ職場に長期間努められなくなる可能性がある

社会保険は適用事業所であることが加入の第一の条件となります。適用事業所となっている事業所では、条件をクリアしている従業員は全員社会保険に加入することになります。従業員によって社会保険であったり、国民健康保険であったりといったことはありません。

改正後の社会保険では、加入の条件のなかに、1年以上の勤務期間が見込まれることが入っていますから、逆に考えると1年以上の雇用期間になると、社会保険への加入が必要となる可能性があります。パートやアルバイトの場合には、収入が少ないこともあり、扶養になることで、自分で社会保険に加入しないことを選択している場合も多くなっています。

社会保険に加入することで保険料を納める必要がでてきますから、それを節約したいということです。しかし雇用期間が条件に入ることで、社会保険に加入せざるを得ないことも考えられます。加入しないためには事業所を変える必要もでてくるため、長期間同じ事業所にいることができないケースも考えられます。

誤解が多い「年収130万円以上」の意味

社会保険には、130万円の壁などとよばれる条件があります。これは社会保険の扶養に関するものとなり、130万円以上の年収がある場合には、扶養になることができません。それまで扶養になっていた場合であっても年収が130万円を超えれば扶養からはずれる必要があります。

扶養からはずれるだけでなく、社会保険か国民健康保険に加入することになります。そのため保険料を納めることになりますから支出が増えるということになります。ただし、ここで勘違いしてはいけないのは、年収が130万円以上になった場合には、扶養からはずれるということで、「社会保険に加入することができない」ということではありません。また、税務とは、また違ったものとなりますから同じように考えないことが大切です。

派遣社員は注意が必要

派遣元会社の従業員数が501名以上の場合

派遣社員は、社会保険の判断もややこしいと感じる場合があります。そもそも派遣社員の場合には、派遣会社が大元の事業所ということになりますが、社会保険などに関しては派遣元の会社がおこなうことになります。つまり派遣された先の会社ということになります。

派遣元の会社が従業員数501名以上であれば短時間労働者であっても社会保険に加入することができます。その場合には、社会保険の手続も派遣元でおこなうことになります。

契約内容を見直す

派遣社員の場合には、派遣元と契約をおこない働くことになりますが、その際の契約の内容によっても社会保険の加入には違いがあります。最初の契約内容で派遣期間が2ヶ月を超える場合には社会保険には強制加入となりますが、2ヶ月以下の場合には、社会保険への加入はありません。ただし契約の更新があった場合には、その時点から社会保険には強制加入となります。

派遣元との契約がどのようになっているのかをしっかりと確認しておくことで無用なトラブルを避けることができます。また、契約更新となった際には、特に注意して社会保険がどうなっているのかをチェックするようにしましょう。

社会保険に加入するメリット

将来もらえる年金が増加する


社会保険に加入するメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。当然ですが、メリットがなければ加入せずに済むような方法を考えますが、メリットがあればそれを考慮することになります。

社会保険では医療保険と年金保険、介護保険となります。もっともわかりやすいのが年金保険でのメリットでしょう。社会保険に加入することで将来もらうことができる年金が増加することが考えられます。国民年金に加入していた場合には、老齢基礎年金が年金として支給されますが、厚生年金に加入していた場合には、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金が支給となります。

つまり国民年金よりも厚生年金の方が実際に支給される年金額が多くなるということです。それだけでなく、保険料にも違いがあります。厚生年金であれば保険料の半額を事業主が負担することになりますから、自己負担額が半分で済むことになります。少ない額を納めて多くもらうことができるのが厚生年金となります。

手当金の給付で安心できる

国民健康保険と健康保険を比較すると国民健康保険には、傷病手当金や出産・育児手当といった手当がありません。病気などの治療で仕事ができない場合の保証であったり、出産や育児の間の手当が支給になるのとならないのとでは、大きな差がでてきます。

仕事をすることができない間でも、その補償を受けることができれば生活の心配は少なくて済むため、社会保険の方が手厚い補償を受けることができるといえます。国民健康保険や国民年金と健康保険、厚生年金保険では、保証内容にも違いがありますからしっかりと理解することが必要です。

また健康保険や厚生年金であれば、保険料の半分を事業主が負担することになりますが、国民健康保険や国民年金では保険料の全額をそれぞれが負担しなければなりません。この辺りも十分に考えることが必要です。

ダブルワークは適用外

各自社の社会保険に加入がルール

本業だけでは、収入がたりないということで副業などをおこないダブルワークとなっている人は増加してきています。こういった場合の社会保険はどのようにしたらよいのか理解しているでしょうか。社会保険は本業の会社で社会保険に加入するのがルールです。本来は、ダブルワークでどちらも社会保険に加入する条件を満たしているような場合には、収入の多い方で加入し、もう一方の方の収入も合わせて比例配賦することになります。この方法はとても面倒になるため、会社の方ではあまり歓迎されません。

そのため、副業の方は社会保険の加入条件を満たさないような時間や収入に抑えている人が多くなります。ただし扶養になっている人の場合には、本業と副業で合わせて年収が130万円を超える場合には、扶養をはずれる必要がありますから注意しましょう。

いくつかの仕事を掛け持ちしていても各社で月額5万円だとすると加入の義務はありませんが、年収で130万円をこえると扶養からははずれるため、国民健康保険への加入が必要となります。

年収130万円以上は扶養からはずれるので注意

ダブルワークをしている人でも各事業所の月額が5万円以下であれば、社会保険に加入する必要はありません。ただし、社会保険に加入する必要はなくても、年収がそれぞれの収入を合わせると130万円を超える場合には、扶養からはずれることになります。

一つ一つの事業所の収入ということではなく、年収はその年に得た収入のすべてとなるため、扶養からはずれたくない場合には、注意しましょう。扶養からはずれて社会保険に加入することができればメリットも大きなものとなってきます。しかし国民健康保険に加入することになると社会保険よりも不利になる可能性があります。

年収が130万円を超えて社会保険への加入が強制となりそうな場合には、あとで後悔しないように、早めに対策をおこなうことが必要です。

社会保険加入の条件を知ることで収入への影響を把握する

社会保険に加入することで得ることができるメリットは、とても大きなものとなりますが、メリットだけでなく、加入することで保険料の支払をおこなう必要がでてきます。しっかりとどのような条件で社会保険の加入となるのかを理解しておきましょう。

社会保険は個人の判断ではなく、事業所が適用事業所となっているのかで加入する義務がでてくるため、実際に加入することで、どの程度の支払をおこない、収入がどのように変化するのかを知っておく必要があります。扶養でいられるように、勤務時間などの調整をおこなうことも必要となってくるので、あとで慌てることのないように気を付けましょう。

特に短時間労働者では、平成28年に改正がおこなわれ条件が緩和されて、加入しやすくなっているため注意が必要です。社会保険に加入しやすいのはメリットですが、強制加入となると保険料が給料から天引きされることになり、手取り額が減少してしまうことになります。事業所と相談して、条件の範囲内で仕事をするなどの調整をおこなうことも必要になるでしょう。

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