個人事業主にとっての経費とは?計上できるものとできないものの違い

事業に必要な経費は、きちんと申請することで節税効果が期待できます。個人事業主の場合には、仕事もプライベートも区別がつきにくい分、経費にできるか否か判断がつきにくいもの。経費について正しい知識を身に付け、正しく、賢く、節税対策に役立ましょう。

目次

個人事業主の経費とは何か

事業するためにかかる費用

個人事業主にとっての経費とは、簡単にいうと、事業を営むためにかかる費用のこと。職種によっても異なりますが、事業を始めるためにはさまざまな費用がかかります。開業するためには、事業を行う場所を用意したり、必要な機械や用品を揃える必要があるでしょう。

また、事業を行うためには、さまざまな税金もかかってきます。事業を始めるために必要な費用は、すべて経費として認められます。領収書やレシートなどを保管しておくことで、経費として申告することができ、支払うべき税金を少なくすることができます。

使用したものが経費

事業をスタートさせてからも、運営していく上でさまざまな費用がかかってきます。事務作業に使うペンや消しゴム、ファイル、伝票、コピー用紙などの文房具も多くの場合必要になるでしょう。電気や水道、ガスなどの光熱費に、電話やパソコンなどの通信費も事業所を持つ上では欠かせないもの。

取引先や現場まで移動するための交通費、事業を宣伝するための広告費など、事業のために使用したものは、基本的に経費として計上することができます。

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個人事業主が経費に出来るもの

事業に必要な消耗品

事業に必要なさまざまな消耗品は、経費として計上することができます。ただし、一般的な消耗品のイメージと少し異なる部分があるため、注意が必要です。経費における消耗品とは、購入価格が10万円未満もしくは、使用可能期間が1年未満のもののこと。

日常生活において、消耗品というと、洗剤やティッシュ類、文房具などをイメージする人も多いでしょう。事業においても、コピー用紙やボールペン、伝票、インクカートリッジなどは消耗品として計上しています。

それに加え、パソコンやプリンターなど、一見すると消耗品に見えないものであっても、10万円に満たない額で購入したり、使用できるとされる期間が1年に満たなかったりすることで消耗品費として計上することができるのです。

消耗品費は、買ったときではなく、使用したときに経費として計上します。1つのものをある程度まとめて購入した場合には、未使用のものは資産となりますが、処理が面倒になるため、条件を満たす場合に限り、購入時に経費とすることが可能です。

毎年同じくらいの数を継続して購入し、毎年同じように一括で計上している場合に限って、購入時に消耗品費として経費計上することができます。

勤務中に使用した交通費

交通費は、移動するためにかかる費用のことで、経費として計上することができます。具体的には、バス代や電車代、タクシー代、ガソリン代、駐車場代、高速道路代など。取引先への移動や、事業に必要なものを購入するための移動も、交通費として認められます。

交通費の場合、電車代など、領収書が発行されないことも多いもの。支払いがあったことの証明として、出金伝票を利用することができます。出発地や到着地、日付、金額を明記することで、領収書がなくても経費として計上することができます。

出張など、仕事を行うために車や交通機関を使用した場合でも、出張期間のうち一部をプライベートな時間として過ごすこともあるでしょう。その場合には、出張にかかった交通費すべてが経費となるわけではなく、仕事をした割合で経費となる分を算出することになります。

ご祝儀やお香典

冠婚葬祭に用いられるご祝儀やお香典などの慶弔費も、事業としての関わりがある人に贈る場合には、経費として認められます。慶弔費は、従業員に送る場合には福利厚生費として、取引先へ送る場合には交際費として計上します。

領収書が出ない代わりに、出金伝票を使うことで証明できるでしょう。また、慶弔費清算書などを作成することでも計上可能で、それらに加え、招待状などがあるとなお良いとされています。ただし、必要以上に金額が大きい場合には、経費として認められないことがあるので注意が必要です。

仕事場にかかる費用

事業内容によって、事業所があったり、作業場があったり、仕事場とされる場所はさまざまです。これらの仕事場にかかるさまざまな費用も、経費として計上することができます。事業所の家賃や光熱費、通信費、修繕費など、仕事場を維持していくためにかかる費用です。

個人事業主となると、自宅を事業所として使用する人も少なくありません。その場合には、家賃や光熱費などの一部を経費として計上することも可能です。事業として使用する割合や、時間、コンセントの量などを基に算出し、事業として支払う分を決定します。

仕事場にかかる費用は、多くの場合、全額もしくは一部を経費として計上することができます。事業を始める際に、あらかじめ使用するスペースや時間などを決めておくとわかりやすいでしょう。

個人事業主の経費に出来る税金

会社が業を営む為の個人事業税

個人事業税とは、個人で事業を経営している人にかかる税金のこと。都道府県に対して支払う地方税にあたります。事業主控除として、年間290万円を差し引くことができるため、年間の所得が290万円以下の場合には支払う必要はありません。

この個人事業税も、経費として計上することができる税金のひとつです。個人事業税は、所得や、業種ごとに異なる税率などから算出され、租税公課という費目を使うことで、経費として計上することができます。

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土地や建物にかかる固定資産税

事業を行う上で必要な、土地や家屋にかかる固定資産税も、経費とすることが可能です。固定資産税は、事業所や作業場など、事業のために保有している土地や家屋に対し、評価額を基に算出されます。事業に必要な税金として、経費に認められるのです。

自宅を事業所として使用する場合には、固定資産税の一部を経費として計上することができます。事業所として使用する日数や時間などをもとに、事業として支払う分を算出し、経費として計上します。

土地や家屋を取得した時にかかる不動産取得税

不動産取得税とは、土地や家屋を取得する際にかかる不動産取得税のこと。地方税として都道府県に支払います。購入や贈与、改築、増築など、新たに取得する際だけでなく、リフォームなどで家屋の価値が高くなる場合にも課税されることになります。

不動産取得税も、事業所や作業場など、事業に関わる土地や家屋の場合には、経費として計上することができます。経費として処理する際には、租税公課の費目を使います。

事業用に使用した車の自動車税

事業を運営していく上で、自動車を使用することも多いでしょう。事業のために使用した車に対してかかる自動車税も、経費の対象となります。自動車税は、自動車を所有する人に対してかかる税金で、排気量などによって決定します。

さらに、排出ガス基準や燃費基準を満たすことで受けられる、エコカー減税などもあり、支払うべき税金を少なくすることができます。また、営業用と家庭用では、自動車税が異なります。営業車として認められることで、ナンバープレートの色が変わり、支払うべき税金を抑えることができるのです。

仕事とプライベート、両方で使用する場合には、使用する割合などに応じて、その一部を経費として計上することになります。

登録により権利が発生して資産になる登録免許税

土地や建物を登記する際に必要となる登録免許税。あまり聞き慣れない名称ですが、土地や建物が誰のものであるかを公的に登録するために必ず発生する、重要な税金の1つです。登録免許税も、事業に関わるものに関しては、経費として計上できます。

新しく土地や住宅を購入したときや、売買や贈与などで所有者が変わるときなどにかかり、取得する土地などの価格に応じて算出されます。また、住宅ローンの借り入れを行う際、金融機関側が担保として抵当権を登録するためにも、この登録免許税がかかります。

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金券ショップで印紙を買った場合の印紙税

印紙税とは、収入印紙を購入し、契約書や領収書などに貼ることで収める税金のこと。印紙を貼り、その上から消印をすることで、納税したということになります。収入印紙は、郵便局やコンビニ、金券ショップなどで手に入ります。

印紙税も、事業を運営していく中で発生するものであるため、経費として計上することができます。金券ショップでは、通常よりも安い金額で購入することができ、印紙代を抑えたい事業主で利用している人も少なくありません。

郵便局やコンビニで購入する印紙が非課税なのに対し、金券ショップでは、課税対象となり、課税仕入とすることができます。

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個人事業主の経費に出来ない税金

年の所得に応じて課せられた税金

事業の運営に関わる税金は、経費として計上できますが、所得に関する税金については経費にできません。所得税は、1年間の収入に対して課税され、収入に応じて支払うべき金額がことなります。個人の収入となるため、事業に関する税金とはならず、経費として計上できないのです。

毎月の給料や年末徴収によって納められるサラリーマンとは異なり、個人事業主の場合には、確定申告によって、所得額を申請し、支払うべき税金の額が決定します。所得税自体は経費とはなりませんが、実際の収入からさまざまな経費を差し引いた額を所得とすることが可能です。

所得額を少なくすることで、課税される金額も少なくできるため、節税することができます。

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相続した財産に課せられた税金

亡くなった人から、財産を相続する際にかかる相続税も、経費の対象外となります。財産を相続するのは個人となり、事業とは直接関係がないとされるためです。相続税は経費として認められませんが、元の持ち主の借金などが残っている場合や、葬儀などにかかった費用を財産の総額から差し引くことができます。

また、贈与された財産に課せられる税金、贈与税についても、経費としての計上はできません。

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一定以上の収入のある人が課せられた税金

住民票のある都道府県や市町村に対し、支払う義務のある住民税。生活保護受給者や、収入が125万円以下の障害者や未成年、寡婦などには、支払いの義務がなく、一定以上の収入のある人に課せられる税金です。こちらも経費として認めることはできません。

住民税は、その年の収入によって算出する所得税とは異なり、前年度の所得によって算出されます。結婚して、専業主婦になった場合など、その年に収入がなくとも、前年に収入があると、その収入に応じた住民税が課税されることになります。

正社員として働いていた場合には、それまで会社が負担してくれていた部分も自分で支払うことになるため、余裕を持って準備しておくと安心です。

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法定納期限までに納付しなかったお金

決められた期限までに税金を納めなかった場合には、延滞した日数によって延滞税が加算されます。延滞料は、支払いが遅れたことに対する罰則金となるため、経費として計上することはできません。納税通知書などに記載されている納期限は必ず守るようにしましょう。

また、申告書など、申告期限までに提出しなかったり、実際とは異なる内容で申告したりする際には、加算税といわれる税金を支払う必要があります。こちらも延滞税同様、経費としての計上はできません。申告書などの書類は、正しい内容で、期限内に提出することが大切です。

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違反した際に支払ったお金

交通規則を守って車の運転を行っていないと、駐車違反やスピード違反など、交通違反での罰金を取られることがあります。違反した際に払うお金は、たとえ業務中であっても、経費として計上することができません。

取引先へ向かったり、現場などへ移動したりと、業務中に起きた交通違反に対しては、その罰金を、事業に関する費用として会社自体が負担することもあります。処理上は、会社負担となる場合であっても、経費としては計上できないので、注意が必要です。

経費は事業にかかせない

個人事業主にとって、事業による売り上げはもちろんのこと、経費も非常に重要で、経営に欠かせないものです。事業として成立させるためには、売り上げが必要ですが、その売り上げをあげるためには、さまざまな費用がかかります。

事業所の用意や必要な設備の準備、光熱費、交通費、消耗品費、各種税金など、事業に関わる支出は、経費として計上することで、売り上げから差し引いた額を所得とすることができます。所得額が少なくなることで、確定申告で決定する支払うべき税金を抑えることができるのです。

経費は事業にとって欠かせない重要なもの。正しい知識を身に付けることで、賢く節税対策に役立てていきましょう。

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