起業時の融資を受けるためには、まずは融資の制度について理解するところから始めましょう。融資を受けるためには担当者の方に事業の成功の見通しをアピールする必要があります。成功するための事業計画を立てて、しっかりと準備を整えておきましょう。
目次
創業時の公的創業融資
日本政策金融公庫の新創業融資制度
創業時の公的創業融資の方法で最もメジャーといえるのが日本政策金融公庫の新創業融資制度の利用です。日本政策金融公庫の国民生活事業には、事業を始める方や事業を開始して間もない方を対象に無担保及び無保証人で利用できる「新創業融資制度」というものがあります。
創業の要件、雇用創出等の要件、自己資金要件など、利用できるのは日本政策金融公庫が定めた要件を満たしている方に限ります。詳細はサイトをご覧いただくか直接支店窓口にお問い合わせください。
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都道府県や市区町村の制度融資
各都道府県や各市区町村では、地域の中小企業者に対して経営の安定や企業の振興を図ることを目的に制度融資を設けています。これらの制度融資は都道府県や市区町村によって内容が少し異なります。
利用を検討している場合は、各自治体のホームページや各市区町村のホームページでご確認ください。もっと詳しく知りたい場合は県庁や市役所にある担当窓口に直接相談して詳しい説明を受けましょう。
自治体、信用保証協会、金融機関の3つの機関が審査する
自治体の制度融資は、実際に自治体が直接融資をするのではなく、自治体、信用保証協会、金融機関の3つの機関が協力して中小企業の資金調達を円滑に進めようとする制度です。つまり信用保証協会の保証付きで借り入れ、取り扱い金融機関の銀行などから融資を受けるということ。3つの機関が審査をするため、融資が実行されるまでに90日ほどと日にちがかかる場合があるので注意しましょう。
自治体によって制度が異なり、都道府県を単位としている制度融資もあれば市区町村を単位としている制度融資もあります。いずれにしても信用保証協会の債務保証があって実行されるものです。また、制度融資の取り扱いがある金融機関の窓口で相談すると、色々な制度を紹介してもらえます。
新創業融資制度の良いところ
積極的な起業資金の融資
新創業融資制度の利用にはメリットがいろいろあります。その1つが、起業家に対しての起業資金の融資が積極的だというところです。その理由は、政府系の金融機関として新しい産業を生んで育てるということを政策的に行っているからです。
銀行などの一般的な金融機関の融資制度は、貸し倒れのリスクを恐れているという背景があるので資金の融資に消極的です。それに対し、日本政策金融公庫の新創業融資制度は企業が成長することを重視しているので、積極的に起業資金の融資を行っています。
多いと3000万円の無担保無保証
日本政策金融公庫の新創業融資制度の融資限度額は最大3,000万円(うち運転資金は1,500万円)です。しかも無担保無保証となっています。創業時に高額融資を受けられるということで、騙されているのではと疑ってしまいそうですが、日本政策金融公庫は国が全額出資している公的な金融機関なので安心です。
実は2014年3月1日に制度が改正され、創業者に対して以前よりも条件が有利になりました。以前は限度額は1,500万円だったのが3,000万円まで無担保無保証で融資可能になったのです。自己資金は以前は融資額の3分の1以上必要だったのが10分の1以上必要と変更されています。他にも創業者に有利な条件に変更され、より魅力的な資金調達手段の1つとなりました。
無担保とは
土地建物や機械などの設備類などを返済原資にする必要がないということ。
無保証とは
ここでは本人保証のことをいい、法人に融資するので代表取締役の個人保証をとらないということ。
連帯保証人が不要
無担保無保証に加えて、経営者本人の連帯保証人としてのサインも不要となっています。日本における一般的な事業融資は、経営者本人が連帯保証人としてサインをすることが多いので、連帯保証人が不要というのは経営者にとって有利な制度だといえるでしょう。ちなみに希望する場合は代表者が連帯保証人になることもでき、その場合は利率が0.1%低減されます。
融資を受ける条件としても一般的な金融機関よりハードルが低いです。実際に申請を希望する場合は、申請の際の注意事項等もあるのでプロの税理士に相談してから行うようにしましょう。
融資されるまでスピードがはやい
日本政策金融公庫の新創業融資制度は、自治体の制度融資と比べると融資されるまでのスピードが早いです。自治体の制度融資の場合は2〜3か月ほどかかる場合があるのに対して、新創業融資制度の場合は申し込みから融資まで1か月〜1か月半程度。素早い事業展開のためにも、融資されるまでのスピード早いということはメリットになります。
融資実行までに2か月ほど違いが出るということは、その分創業が2か月ほど遅れるということ。そしてその間は売上の機会を損失するということになります。売上が立たない間でも固定費は発生するため、創業が遅れることは損失が大きくなってしまうのです。
新創業融資制度の気をつけるポイント
少し金利が高い
自治体の制度融資と比べると、新創業融資制度のほうが少し金利が高い場合が多いです。自治体の制度融資には、利子補給や信用保証料の補助などがあるので金利が安い印象を与えます。
各種優遇措置を実施した自治体の制度融資と比べると、新創業融資制度の金利は高くなってしまうケースが多いです。制度金利の場合、地域によっては1%未満の低金利で融資を受けられるケースもあります。確かに制度融資の金利の低さは魅力的ですが、それでも一般的な金融機関からの融資の金利と比べると、新創業融資制度の融資の金利は十分に低いです。
準備次第で融資確率が大きく変わる
新創業融資制度の融資を受けるためには準備することがいろいろあります。まずは日本政策金融公庫の支店窓口に行き、各種提出書類を入手して提出しなければいけない書類の確認をしましょう。ちなみに提出書類はサイトからダウンロードして郵送することも可能ですが、直接支店窓口に行って事前に確認しておいたほうが確実です。
提出書類は、創業計画書、借入申込書、履歴事項全部証明書、(設備投資がある場合は)見積書、資金繰り表、(許認可が必要な場合は)許認可証、生活衛生関係の事業、(500万円越の融資の場合は)知事の推薦書など。事業によって必要書類は異なります。その中でも融資確率が大きく変わるくらいに大切な書類が創業計画書です。
創業計画書とは
創業計画書は1種の事業計画書のことで、日本政策金融公庫に対して事業について説明する資料です。日本政策金融公庫から融資を受ける際に、事業が成功できる見通しがあるのか、きちんと返済できるのかを判断するための重要な資料となります。
創業計画書に書かれている内容次第で融資の審査に影響を与えます。創業計画書に記載する内容は主に以下の項目です。
☑ 1.創業する動機
☑ 2.経営者の略歴など
☑ 3.会社の取扱商品やサービス、セールスポイントについて
☑ 4.取引先や取引関係など、顧客ターゲットについて
☑ 5.従業員について
☑ 6.借入の状況、自己資金について
☑ 7.必要な資金と資金の調達方法について
☑ 8.将来の事業の見通し、売上計画について
その中で審査で特に重要視されるポイントは、以下の3つの項目です。
☑ 1.創業する予定の事業の経験
☑ 2.自己資金と借入のバランスがとれているか
☑ 3.借入を返済できる能力があるかどうか
審査が通らないと融資を受けることができません。しっかりとアピールできるように丁寧に記載しましょう。
担当者に成功すると信じてもらう
新創業融資制度を利用するためには、日本政策金融公庫の審査に通らなくてはいけません。それまでの過程は、提出書類等の準備→借入の申し込み(書類を提出)→面談→結果の通知→融資の実行です。
融資を受けるためには、創業計画書などの書類や面談などを通して、担当者に事業が成功すると信じてもらう必要があります。審査が通るようにしっかりと準備を整えてから新創業融資制度の申請をしましょう。
融資を受けるための準備が大切
日本政策金融公庫の新創業融資制度も都道府県や市区町村の制度融資もその他の融資制度も、それぞれにメリットとデメリットがあります。利用しやすいといわれている新創業融資制度についても注意するポイントはあるので、日本政策金融公庫のサイトや窓口で詳細を確認しておきましょう。
融資を受けるためには、必要な知識を理解してしっかりと準備をすることが大切です。事業が成功する見通しをしっかりとアピールできるように、準備を整えておきましょう。