仕事をするにあたって加入することになる「雇用保険」。せっかく加入するのなら、しっかりと加入する目的を明確にしたいものですよね。加入に関する手続き方法や流れと共に、あまり知られていない目的を掘り下げて、それぞれチェックしていきましょう。
目次
雇用保険の加入手続きと目的
事業主が加入手続きをする
雇用保険の加入手続きは、「適用事業主」である労働者を雇用している事業者が行います。ほとんどの事業主が雇用保険法の「強制適用事業」となりますので、業種や規模などを問わずに労働保険料の納付や各種届出などを行う義務を負うことになっています。個人の事業の農林水産業などでは、例外的に従業員が5人未満などの事業所は「暫定任意適応事業」と分類されて、労働者の任意で雇用保険への加入が可能な事業もあります。
自分が会社で仕事をする身となった場合、すぐに手続きが行われているのか確認しましょう。相手も人間ですので、手続きの数が多かったりするとミスをしてしまうかもしれません。任せきりにせずに、自分の身は自分で守るための確認は大切です。
労働者の生活及び雇用の安定
そもそも雇用保険とはどんな制度なのかというと、大きな目的としては「労働者が失業した場合に雇用や継続が困難なとき、生活や雇用の安定を図る為に必要な給付を行う」というもの。これは幅広く知られている失業したときの生活支援、再就職の支援などとして認知されています。でも雇用保険は、それだけの社会保険制度ではありません。育児や介護などの理由で休業しなければいけなくなったときに、一定の要件を満たしている場合は給付を受けることもできます。
定年後の再雇用で賃金が減ってしまった場合にも、継続して就労できるように給付を受けられる制度でもあるのです。雇用保険は厚生労働省が管理と運営を行い、その事務手続きや給付などは、各地にある公共職業安定所であるハローワークで行っています。維持運営にかかる財源は、加入事業主から納められる保険料と国庫での一定額の負担で賄われています。
労働者の異動ごとに手続きをする
転勤や転職などの労働者の異動ごとに、手続きを行わなくてはならないのが「雇用保険」です。転勤を命じた場合には、事業主は労働者に対し「雇用保険被保険者転勤届」の提出を促すこととなります。これは転勤発令の翌日から起算して10日以内に、この転勤届や必要な書類を転勤後の事業所の所在地を管轄する公共職業安定所に提出しなければなりません。
また転職や離職で今の会社から離れる場合には、「雇用保険資格喪失届」を提出しなければなりません。次の会社で給付の手続きや加入をする為に必要となりますので、忘れないようにしましょう。
再就職の促進を図ろうとする制度
「雇用保険は労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。」
こちらは健康保険法第一条に書かれている文章を抜粋したものですが、見て分かる通り加入することで保険の給付だけではなく、再就職を後押ししてくれる制度となっています。失業保険の給付で生活を安定させるため、そちらに目がいきがちですが、労働者が教育訓練を受けたときに必要な給付金の支給をする教育訓練給付も行っているのです。
そのほかにも職業の安定を図るための雇用安定事業、労働者の能力を向上させる能力開発事業などを行うことで、メイン以外に「労働者の失業防止、再就職の促進を図ろうとする制度」でもあります。
退職時の雇用保険手続きの流れ
1. 雇用保険被保険者証の有無を確認
では退職時からの雇用保険の手続きの流れを見ていきましょう。まずは「雇用保険被保険者証」の有無を確認します。「雇用保険被保険者証」は在職中は会社側で保管しておくのが一般的なものなので、もしない場合には再交付してもらいましょう。再交付してもらうためには、ハローワークに出向いて再発行の手続きを行います。
手続きには本人確認のための身分証明書と印鑑が必要ですので、忘れずに持参しましょう。本人確認が済めば手続きはそれほど面倒なことはありません。また、以前の雇用保険被保険者証の被保険者番号と番号が異なっている場合には、統一することで加入期間の合算ができますので、確認してハローワークで手続きを行いましょう。
2. 離職票は職前に本人が記名押印する
会社で作成するものとしては、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」があります。この書類に目を通し、離職する本人が離職前に署名し捺印します。このときに、離職理由などについて内容を確認しておきましょう。この後に発行される「離職票1、2」に反映されます。特に離職票2にはここで書かれていた退職した理由が書かれてきますので、確認して間違いがなければ署名などを行います。
3. 離職理由等の記載内容の確認をする
離職の理由はしっかり確認しましょう。この理由が後に、とても大切になってくる場合があるのです。なぜかというと、自分の都合でやめたのかそれとも会社の都合でやめたのか、どちらの退職理由なのかで待遇が変わってくるからです。待遇とは具体的には失業保険の降りるまでの期間や、降りた後の支払い期間が変わってくるというもの。
もしも会社都合での退職にもかかわらず、自己都合という理由になっていたら損になる場合もありますので、本当に間違えがないのかしっかり確かめましょう。もし離職理由が違っていれば、ハローワークから事業主に対して記載内容についての確認が行われます。
離職票の退職理由が違っているのであれば、離職票2の本人の判断を問う欄に事業主のつけた離職理由に対して異議が有りに○をつけ、署名捺印して提出しましょう。不備や誤りに関して訂正届や必要書類を提出して内容の訂正もできますので、何か気が付いた場合には早急にハローワークに問い合わせをしましょう。
4. 離職後雇用保険被保険者離職票が届く
基本的に離職してから10日後くらいに、退職した本人に「雇用保険被保険者離職票1、2」が渡されます。10日たっても何も音沙汰がないのなら、勤めていた会社に問い合わせましょう。失業保険はこの離職票を出したらすぐに給付されるものではないので、早ければ早いほどいいのです。
それでも会社が何も動いてくれない場合には、ハローワークにその旨を伝えましょう。離職票が届いたら記載内容を改めて確認し、間違えがなければ雇用保険のメインでもある、失業保険の給付に向け手続きを行っていきます。
この段階では、まず離職票1に失業保険が降りた際の振込先情報を書き込みます。振り込むことができない金融機関もありますので、注意して書き込みましょう。確認印が必要となりますので、金融機関にいくということも考えておくといいでしょう。その際に署名や捺印を求められますのでしっかり行い、確認印まで揃えたら準備はOKです。
失業保険は管轄のハーローワークで手続きをする
1. 必要書類を用意する
ハローワークにいってスムーズに手続きを行うために、必要な書類が揃ってているかチェックしましょう。一つでも欠けていると手続きができません。主に必要なものは、「離職票1、2」「雇用保険被保険者証」「証明写真」「身分証明書」「印鑑」「振込先に指定している通帳」となっています。一つ一つ確認していきますが、離職票は先ほどまで確認していた2枚の書類で振込先情報を記載したものです。
雇用保険被保険者証は有無を確認して用意してあると思います。証明写真はどこで撮影してもいいですが、ハローワークに写真機が設置されているところが多いので、そこで撮ってもいいかと思います。これらをしっかりと用意し、1度で手続きが終わらせられるよう確認を行いましょう。
2. 受給要件を満たしていることの確認
受給の資格が要件を満たしているのか確認しておきましょう。誰でも申請すれば受給できるというものでもありません。1つ目は、雇用保険に加入していて月々に保険料をしっかり納めているかどうかです。通常は雇用している会社が給与から保険料を自動的に引いてくれていますので、明細書でも確認ができます。
2つ目は、雇用保険の加入期間です。加入期間は離職以前の2年間に1年以上加入していれば要件が満たされます。また同じ職場でなく転職などしていても、合算して1年以上加入期間があれば受給できます。会社都合の場合は、例外的に離職以前の1年間に6ヶ月以上加入していることと決められています。
3. 受給資格の決定
受給資格の決定はハローワークにて失業保険の手続きを行って、受給者資格があるかどうか判断してもらい、資格があれば「受給資格の決定」となります。また資格の有無には「労働の意思および能力を有するのに職業に付くことができない状態であること」が必要です。
要するに、働く意思がこれからもあるのかということが、失業保険を受給するためには大切なのです。その後、受給資格決定を受けた方は受給説明会の日時が知らされます。
4. 離職理由についての判定
離職理由は記入されているものから判断されます。自己都合で退職の場合給付期間が最大で150日なのに対し、会社都合での退職の場合は最大で330日に給付期間が延びるのです。このように同じ失業状態であっても、理由によって給付の期間に差が出ることもあります。
会社都合の退職を望む方も多いですが、会社側は企業のイメージダウンにつながったりなどの不利益があるため、自己都合で退職させようとするケースもあります。ですので、手続きの際は、離職理由の確認を忘れずに行いましょう。
5. 雇用保険受給資格者のしおりをもらう
手続きが終わり受給者の決定を受けると、「雇用保険受給資格者のしおり」が渡されます。この初日の手続きはこのしおりをもらうことで終了です。指定された日に失業保険をもらう為の雇用保険受給説明会が行われますのでしっかり参加しましょう。
失業保険の給付期間は、自己都合退職である「一般受給資格者」は失業が想定でき、再就職の準備に時間的な余裕があるため、雇用保険加入期間によって給付日数が変わってきます。そういったところの説明を今後受けることになります。
雇用保険受給者初回説明会への参加
雇用保険受給資格者証と失業認定申告書の配布
「雇用保険受給資格者のしおり」が手元に渡ってから約1週間〜3週間後に開かれる「雇用保険受給説明会」に参加すると、失業保険の認定に必要な「雇用保険受給者資格証」と「失業認定申告書」が配布されます。
「雇用保険受給者資格証」は、手当の支給額や申し込み日など細かく書かれたもの。「失業認定申告書」は求職活動をしているかどうかなど自分自身で記入して提出するものです。
第一回目の失業認定日の通知
失業認定日というものが設けられ、その日にハローワークにいき求職活動の実績の報告をすることとなります。求職活動をしていないと、必然的に失業保険は給付されませんので注意してください。
1回目である初回認定日までには、この説明会が求職活動の1回としてカウントされますので、焦って動こうとしなくても大丈夫です。この説明会内で、認定日の通知もされます。
求職活動の状況確認
配布された「失業認定申告書」において、現在の求職活動の状態がどの程度なのかを、ハローワークに提出して確認してもらうことになります。内職や就労など記入する箇所がいくつかありますので、漏れのないように記入しましょう。その後のハローワークでの面談などに役立てられますので、できるだけ丁寧に書いてください。
雇用保険の失業等給付 受給資格者のしおり
受給資格者のしおりには、失業保険の給付日数についてや求職活動について、また失職認定や今回の説明会について書かれています。しおりをもらった際に、説明会に必要なものをハローワークの職員が説明してくれますので、一度目を通しておくとよいでしょう。
失業保険給付までにすること
待機期間は7日間ある
失業保険が給付されるまでには、待機期間として最低でも7日間の本人調査の為の期間が設けられています。その待機期間の後、失業保険についての説明会である「雇用保険受給説明会」が行われるのです。
求職活動を証明する
失業保険の認定日には休職活動状況を報告することになりますので、何かしら行動ができるように、履歴書や職務経歴書など書いて用意しておくのも良いでしょう。どんな小さなことでもいいので、休職に関する活動をしてみてください。分からなかったり困ったら、ハローワークで相談してみるのも一つの手です。
各種講習やセミナーの受講をする
ハローワークでは職業訓練として各種講座やセミナーなどを開催し、求職者の能力向上を図っています。こういったものを受講することで、「教育訓練給付制度」という給付金も場合によっては受けられることもあります。期間や日時は決まっていますので、ハローワークで調べたり問い合わせたりしてみましょう。
給付制限は3ヶ月ある
自己都合の退職である一般受給資格者の場合、待機終了の翌日から3ヶ月間は給付制限期間として、失業保険の給付が一切ありませんので注意しましょう。ただし、この3ヶ月の間にどれだけアルバイトをしても失業保険の受給には影響されませんので、期間内での短期のアルバイトなどをして生活費を稼ぐことが可能です。
制限期間中に2回目の失業保険認定日までに、最低でも3回の就職活動実績がないと、制限期間後に失業保険がもらえませんのでしっかり行うことも忘れずに。
雇用保険の手続きは離職票と必要書類を提出する
雇用保険の手続きには必要な書類がいくつか出てきます。もらう場所やタイミングも違いますので、どの書類についてもなくさないように自分自身でしっかりと管理することが大切です。必要書類をそろえて不備がないようにした上で、手続きをスムーズに進めてください。1日でも早く失業保険の給付を受け、次の就職に備えられるようにしましょう。