会社に勤務している方は自動的に厚生年金に加入しています。厚生年金は国民年金とともに将来の老後の大切な収入源です。その年金制度は近年、改正が相次ぎ2017年8月からは年金保険料の納付期間が10年でも年金受給資格が得られるようになりました。
目次
厚生年金の受給資格の条件
老齢基礎年金の受給資格を満たしている
老齢基礎年金の受給資格は、国民年金と厚生年金の保険料納付期間が10年以上。以前は25年の納付期間が必要でしたが、2017年8月からは、国民年金、厚生年金を合わせて10年の納付期間があれば老齢基礎年金の受給資格を満たすことになります。
例えば、国民年金に5年加入したあと会社員として5年以上勤務している場合、合計で10年以上国民年金に加入しているので、厚生年金の受給要件を満たしていることになります。
厚生年金の被保険者期間が1ヶ月以上ある
会社に入社して1ヶ月でも厚生年金に加入している期間があれば受給資格が満たされます。しかし1ヶ月だけの厚生年金の加入期間では老齢厚生年金は少額です。
転職などで新しい就職先に入社したときは、その事業所を通して厚生年金に加入。厚生年金には、国民年金の保険料も含まれています。厚生年金に加入したことがない場合は、老齢厚生年金は受け取ることができません。
65歳に達している
老齢年金ともいわれる老齢基礎年金や老齢厚生年金は65歳から受給資格が満たされます。厚生年金に加入していた方が受け取ることができる年金を老齢厚生年金といいます。老齢厚生年金は65歳からの支給です。
65歳が受給資格の適用になりますが、66歳まで老齢基礎年金や老齢厚生年金の請求をしなかった場合、最長70歳まで年金の繰り下げ申請ができます。ただ65歳になった時点で、障害厚生年金や遺族厚生年金などを受給している場合や、65歳から66歳になる間に障害厚生年金や遺族厚生年金の受給をした場合は繰り下げ申請はできません。
厚生年金の受給額について
納めた保険料によって変わる
厚生年金は社会保険の一つとして、会社などに勤務する人は強制的に加入するものです。その厚生年金の保険料は加入期間と加入期間中の収入によって決められており、同じ年齢でも保険料は人それぞれ異なります。
厚生年金を含む社会保険では、会社員の方の給与を報酬と呼びます。報酬は平均額により国が定めた一覧表により標準報酬月額が決まります。標準報酬額は毎年4月5月6月の3ヶ月の給与の平均額から算出され、1年間利用されます。標準報酬額は厚生年金のほかに健康保険料の算出にも利用されます。
国民年金は、全ての方が同じ金額を納付します。厚生年金の保険料は給与が高いほど高くなり、多く納付した分だけ年金として受け取れる「報酬比例」という仕組みになっています。
60歳から64歳は受給額が少ない
2000年の法律の改正により、年金の支給開始年齢が65歳へと引き上げられることになりました。以前の制度では60歳からの支給であったため、段階的に引き上げられますが、経過措置として60歳から64歳までは特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます。女性は、雇用状況などから支給開始年齢を5歳低く設定されていたため、男性よりも5年遅れての開始となりました。
特別支給の老齢厚生年金は、受給資格があり満たす人のみが受給できます。
☑ 男性は昭和36年4月1日以前に生まれた方、女性は昭和41年4月1日以前に生まれた方
☑ 老齢基礎年金の受給資格がある
☑ 厚生年金の被保険者期間が1年以上ある
生年月日が早いほど年金の支給の開始が早くなります。昭和36年4月2日以降に誕生した方(女性は昭和41年4月2日以降)は、特別支給の老齢厚生年金は支給されません。
特別支給の老齢厚生年金は、加入期間や加入期間中の報酬によって決まる報酬比例部分といわれるものです。老齢基礎年金の部分は支給されないので、受給額は少なくなります。この特別支給の老齢厚生年金は2026年度には無くなることが決定しています。
年齢が上がると金額も上がる
老齢厚生年金は、厚生年金の加入期間により受給資格の65歳になったときに支給される金額が異なります。そしてその年金額は改定することがあります。
老齢基礎年金を受給しながら在職、厚生年金の保険料の支払いをしていた場合。退職し再就職をせずに1か月が経過すると、退職するまで納めた報酬比例分がその次の月から反映されます。そのほか65歳になったときには、報酬比例の部分が増額改定されます。70歳に到達すると、厚生年金の被保険者資格がなくなりますが、報酬比例部分は増額します。つまり、年齢が上がるごとに給付される金額が増額されるのです。
厚生年金の受給者のメリット
老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを受給できる
自営業の方は国民年金に加入、会社員の方は厚生年金に加入。日本の年金制度は2階建ての家に例えられ、1階部分の老齢基礎年金と2階部分は老齢厚生年金といわれています。老齢基礎年金は国民年金の保険料からの支給になり、老齢厚生年金は会社などで加入していた厚生年金からの支給です。
厚生年金に加入していた方は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを受給できます。厚生年金の保険料には、国民年金の保険料が含まれているので、保険料は国民年金だけの方よりは割高になっています。
厚生年金に加入している事業所の中には、厚生年金基金にも加入している事業所があります。この場合3階建ての家と例えられ、3階部分が厚生基礎年金基金となり、その事業所に勤務している方は、自動的に厚生年金基金にも加入。老齢基礎年金、老齢厚生年金のほか厚生年金基金からも年金が支給されます。
加給年金と振替加算がある
厚生年金には加給年金と振替加算という制度があります。厚生年金の加入期間が20年以上ある方が65歳に達したとき、その方に生計を維持されている被扶養配偶者などがいるときに支給されるものです。被扶養配偶者には、配偶者、18歳未満の子、20歳未満の障害がある子どもが含まれています。
配偶者は65歳になるまで、子どもは18歳に達した年度末までが条件になっています。妻が年上の場合は加給年金の要件を満たさないので、受給することはできません。
配偶者が65歳になると加給年金は振替加算に変更されます。加給年金の受給資格は失いますが、振替加算として受給することができるのです。配偶者は自分の老齢基礎年金と振替加算分を受け取ることになりますが、振替加算の対象には条件があります。
☑ 昭和41年4月1日以前に誕生した方が65歳になったとき
☑ 老齢厚生年金の加入期間が20年未満
☑ 年収が850万未満
年上の妻の場合、夫が65歳になったときに振替加算の受給資格が発生します。手続きをしないと受け取れませんので忘れずに手続きを行ないましょう。
65歳より前から年金がもらえる
「繰り上げ支給」の申請をすることで、65歳にならなくても年金の受給が可能です。65歳よりも前に年金を受け取り始めることで、総支給額が65歳からもらう人よりも多くなります。
しかし、デメリットもあります。繰り上げ支給を受けることで年金額は一生涯減額されます。そのほか障害基礎年金を請求することもできず、寡婦年金も支給されないなどがありますので、申請する前にきちんと考えるようにしましょう。
☑ 年金額が一生涯減額
☑ 障害基礎年金を請求できない
☑ 寡婦年金が支給されない、寡婦年金を受給している場合は権利がなくなる
☑ 65歳になるまでは、遺族厚生年金、遺族共済年金がもらえない
☑ 65歳以上で年金を受給するより所得税が高くなる
☑ 働きながらの場合、「在職老齢年金」により減額
65歳未満の方で働きながら年金を受給する方は、「毎月の給料」と「年金月額」の合計額が「28万円」以上にならないか確認する必要があります。28万円を超えてしまうと年金は減額されてしまうからです。
未納のままだとどうなるか
不慮の事態に年金が受けられなくなる
公的な保険制度である社会保険は、厚生年金や健康保険、雇用保険、労災保険、医療保険などがあり事業所は強制加入となっています。事業所である会社に勤務している場合は、社会保険料として給与から天引きされることで保険料を納めています。
しかし、その事業所が社会保険に未加入だったり保険料を納めていないなど、未加入の場合は追徴か罰則が課せられます。年金事務所の調査によって事業所の未加入が発覚した場合、該当する方の保険料を2年間に遡り追徴されます。追徴分として事業所と加入者で保険料を折半し納付します。
罰則としては、正当な理由がない場合6か月以下の懲役か50万円の罰金。未納の場合は、延滞金を納付します。それでも納付されない場合は病気、怪我をしたときに受け取れるはずの障害厚生年金や遺族厚生年金、傷病手当も給付されなくなります。
少子高齢化に伴い、社会保険制度の財源確保が難しくなってきているので、社会保険料の引き上げや未納へのペナルティが強化されるといわれています。
老齢基礎年金を将来受けられなくなる
厚生年金の保険料を納めていない場合は、国民年金の部分の保険料も納付していない可能性が高いです。老齢基礎年金は国民年金を25年以上(2017年8月からは10年以上)納付することが受給資格の要件の一つになっています。
老齢基礎年金はその半分は税金でまかなわれているので、年金の保険料を納めていない方でも半分は負担しています。しかし、国が定める年金の納付期間を守らず、年金保険料を納めないことで老齢基礎年金の受給資格を失うことになります。
近年、日本年金機構では厚生年金を含む社会保険への未加入の事業所の洗いだしを進めています。マイナンバー制度も、社会保険制度への未加入を防ぐためのものといわれています。
会社に勤務している方は、社会保険は強制加入ですので問題はありませんが、中小企業に勤務されている方の場合もしかしたら厚生年金に加入してないこともあります。その場合、将来受給できるはずの老齢厚生年金は受給できないことになり、老後の生活に大きく影響することになります。
厚生年金は老後の生活に関わる
厚生年金は、老後の生活を支える大切な収入源となるものです。会社などに勤務する方は、厚生年金に強制的に加入することになります。厚生年金の保険料は会社と半分ずつ負担となるので、保険料は収入や加入期間により人によって異なります。
厚生年金の加入者は国民年金の加入者でもあります。受給条件を満たして年金を受給できるようになると、老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給ができるようになります。しかし、それは事業所を通して年金の保険料を納めている場合です。
厚生年金の保険料を納付していない場合、追徴や罰則の規定があります。厚生年金の保険料を納付しないのは事業所の責任ではありますが、雇用される側からもチェックが必要です。