節税対策は何が有効か。税金の控除制度を正しく理解する

国民の義務の1つである納税は、さまざまな種類があります。所得税、消費税などがあり、私たちの暮らしのために使われています。国に納める大事なお金ではありますが、税金にはいろいろな控除の方法もあります。賢く控除を受けて節税対策に役立ててみましょう。

節税対策をするメリット

翌年の税金が安くなる

医療にかかった金額が多いときは、医療費控除を申請。医療費控除が適用されると翌年の住民税が安くなります。1年間の医療費が一定の金額以上になる場合は、確定申告をしましょう。

1月から12月までの1年間に10万円以上の医療費を支払った場合、確定申告をすることで、医療費控除が適用され所得税や住民税が安くなります。事業主は確定申告の際に医療費控除の申請を行いますが、会社員の場合、年末調整では行うことができないので確定申告が必要。

条件としては

☑ 1月1日から12月31日までの1年間

☑ 自己又は自己と生計を一にする配偶者とその親族

10万円以上の医療費を支払った場合となります。医療費控除を行うことで所得控除が受けられ、所得税を少なく支払うことができます。所得税は住民税と連動しているので、住民税も少なく収めることになります。

住民税は前年の所得税の金額から算出。本年の6月から1年間の住民税が安くなります。

年末調整で還付金額が増える

年末調整とは、年間の所得を11月から12月に再計算することです。サラリーマンは、毎月給料から所得税を天引きされています。会社では、給料の金額に合わせて毎年「源泉徴収税額表」という早見表にもどついて概算の税金を差し引いています。

給料に対する税額ですが、年の途中で収入が変わったり、扶養家族が増えたりすると合わなくなる場合があります。また、生命保険や地震保険、社会保険料などが控除の対象になりますが、その金額は人ぞれぞれ違うため1年分の税金との誤差が生じます。

源泉徴収税額表は少し多めの金額で設定されています。収入に変化がない場合は還付金が発生し、収入が増えたり扶養家族が減った場合には、不足分が発生する場合も。年末調整のときには、控除の忘れがないか確認しましょう。

税金が掛からない

配偶者がパートなどで収入を得ている場合、注意しなければならない点があります。年間の合計所得金額が38万円以下ならば所得として見られないのです。給与所得控除の金額は最低65万円。パートの給与所得が103万円以下の場合、給与所得控除の65万円を差し引くことにより合計所得が38万円以下になるので配偶者控除を受けることができます。

☑ (例) 給与収入 98万円の場合

給与所得=給与収入—給与所得控除=98万円ー65万円=33万円

合計所得は33万円となり配偶者控除を受けることができます。

また、配偶者特別控除という配偶者に38万円以上の所得がある場合でも、配偶者の所得金額により一定の所得控除を受けることができる場合もあります。

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会社設立する人が節税対策をするメリット

家族の収入として計上できる

同居の家族を会社の役員にすることで節税対策になります。夫婦で会社を経営し収入を得るのであれば、例えば奥様を役員にし役員報酬を労働の対価として支払うことで、所得の分散になります。

法人税の税率は約30%から40%ですが、所得税と住民税の合計税率は15%から50%です。所得税と住民税は税率の幅が広い「累進課税」。所得が多い人ほど税率も高くなり、税金の負担も大きくなる仕組みです。

ある一定の所得までは、法人で税金を支払うより個人の所得税と住民税として支払ったほうが合計しても安くなる場合もあります。重要なのは、専従であること。ほかに仕事をしていたり、極端に高い給料はいけません。

消費税を安くできる

買い物をした際に、支払っている消費税。自動的に税務署に支払われているわけではなく、お店で一旦預かり、1年分の消費税を集計したうえで納付しています。サービス業はもちろん、ほとんどの業種では売上金を受け取るときに消費税を預かり、税務署に納付することになっています。

消費税は売り上げが税抜きで1,000万円を超えた場合が対象。2年前の売り上げが1,000万円を超えていたかどうかによって消費税納めるかどうかが変わります。ただし、設立したばかりの会社は2年前の売り上げはないので、最長で2年間は消費税を納める必要はありません。

消費税を抑えるには「簡易課税制度」を利用します。この制度を利用するには、新しい年度が始まる前に税務署に届出書を提出する必要があります。売り上げの金額のみで消費税を計算する方法です。

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収入から必要経費を引ける

所得が多いほど所得税の税額は大きくなります。所得税の基本的な計算式があります。

☑1. 収入ー経費=所得金額

☑2. (所得金額ー所得控除)×税率=所得税額

☑3. 所得税額−税額控除額=納税する金額

「収入ー経費」で算出した所得金額は利益。この利益を下げることで所得税を節税できます。事業費などの必要な経費は全て計上できます。事業に合致していれば、例えば自宅家賃、自宅経費、車の経費などの一部を経費として引くことができます。

サラリーマンが節税する方法

生命保険に加入する

生命保険も控除の対象になります。生命保険や医療保険、学資保険などが対象になります。契約時期によりますが、平成24年以降に契約した生命保険の保険料が年間8万円以上を支払っている場合、最大で4万円を所得から差し引くことができます。

平成23年以前契約の旧制度と平成24年以降契約の新制度に分かれている生命保険控除料。平成23年以前に契約した生命保険は、死亡保険金などの一般生命保険と、入院給付金などを対象とする医療保険が同じ区分になっています。そのほか、個人年金保険料も控除の対象。控除の限度額は所得税10万円、住民税が7万円となります。

新制度の生命保険料控除では、新たに介護医療保険料控除が新設されています。全体の所得控除限度額は所得税が12万円、住民税が7万円です。

病院にかかった領収書を保管する

医療費控除は、医療機関へ1年間10万円以上(年収200万円未満では所得の5%)の支払いがあった場合が対象。出産、歯医者、入院などの費用は医療費控除の対象になります。病院にかかった場合は、領収書の保管をしましょう。そのほか、薬局で薬を購入したときも医療費控除の対象になる場合があるので領収書はとっておきましょう。

2017年1月からセルフメディケーション税制がスタート。医療用から一般用に転用された市販の医薬品を、薬局などで購入した場合、税込で年間1万2,000円が医療費控除の対象となる制度です。上限金額は8万8,000円。生計を一とする配偶者や親族の購入費なので、家族はもちろん実家の親を扶養家族の対象にしているのなら、別居の親が購入した医薬品も対象になります。

セルフメディケーションにはいくつかの条件があります。対象の医薬品が決められている、健康の維持増進及び疾病の予防の取り組みとして一定の取り組みを行っていることの2つ。健康診断やインフルエンザなどの予防接種、市町村で実施するガン検診などの行っていることが条件です。

2つの条件を満たし、レシートの原本、健康診断や予防接種を証明するものの写しを確定申告で税務署に提出すると医療費控除を受けることができます。注意点としては薬局の領収書を使用することはできますが、ネット通販で購入し、領収書を自宅のプリンタで印刷した医薬品の領収書は使用できません。

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介護保険や年金積立をする

生命保険料控除は、生命保険料控除と介護保険料控除、個人年金保険料控除の3種類に分かれています。それぞれ1年間に支払った保険料で控除が受けられるようになっています。平成22年税制が改正され平成22年より以前の契約を旧制度、平成22年以降の契約を新制度とよび控除の内容が変わりました。

個人年金保険で控除を受けるには4つの条件があります。

☑ 年金の受取人は契約者本人、またはその配偶者

☑ 年金の受取人は被保険者

☑ 保険料を払う期間が10年以上

☑ 個人年金の種類か確定年金、または有期年金の場合、年金の受取開始が60歳以降で、年金受取期間が10年以上である

以上の条件を満たす個人年金は「個人年金保険料税制適格特約」という特約がつき控除の対象。

平成22年新たに加わった控除になります。入院などの補償がある医療保険は介護保険料控除の中に含まれます。新たに医療保険に加入するのであれば、介護保険料控除の対象になる可能性があります。

生命保険料控除は、その保険会社によっても違いがあります。例えば「個人年金」と名前がついていても一般生命保険料控除の対象となる保険もあるので、確認が必要です。

扶養家族を増やす

扶養している人がいる場合、扶養控除を受けることができます。対象は6親等以内の血族か3親等以内の姻族になります。扶養家族1人につき38万円控除できます。

ただし、条件があり

☑ 配偶者以外の親族(親等以内の血族か3親等以内の姻族)

☑ 納税者と生計を一にしている

☑ 年間の合計所得が38万円以下である

☑ 青色申告者の事業専従者としてその年1年間一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない

以上が条件になります。生計を一にするとありますが、明確な規定はなく例えば別居している高齢の両親を扶養家族にしても控除は受けることができます。ただし、アルバイトをしている子供さん、両親の年金収入に注意が必要です。

法人が節税する方法

事業に関わる領収書を保管する

会社の所得に課せられる税金を法人税といいます。会社の所得とは、各事業年度の収入から原価や費用など必要経費を引いた金額です。税金は利益に対して課せられます。利益を抑えることができれば税額も低くなります。ビジネスに関係する領収書は必ず保管。

経費として落とすには領収書が必要ですが、すべての領収書で認められるとは限りません。事業用として認められるよう、税務署や税理士に説明できるものでなければなりません。条件としては、

☑ 事業に関する支出

☑ 支出を証明できる

☑ 常識の範囲内

となります。経費として領収書以外にレシートでも、領収書の宛名が「上様」でも経費として落とすことは可能です。

家族に役員として給料を払う

会社には1人以上の役員が必要です。家族を役員に加えることで、所得が分散され節税対策になります。夫婦で会社経営をする場合、妻を役員にすることで得られるメリットは4つ。

☑ 家族の所得税が節税

所得税は、所得金額が多いほど税率が高くなる累進課税。家族で経営する会社の場合は、家族を役員にし、役員として報酬を支払いをすることで家族の所得税の節税になります。

☑ 家族の相続税、贈与税の対策に

妻が役員として、報酬を受けることで資産形成が可能。妻が無職の場合は、社長が亡くなった場合の相続税の申告の際、妻名義の資産は社長の遺産と税務当局は判断する可能性があります。また、贈与税の対象となる場合も。そのリスクを回避することができます。

☑ 社会保険に加入することが可能

年間130万円以上の役員として報酬を受けることで、国民保険第2号の被保険者となり社会保険に加入することができます。社会保険料は、会社と社員で折半なので会社で負担した社会保険料は、法定福利費として損金扱いとなります。

☑ 退職金を支給できる

役員にも退職金を支払うことができます。そして、その退職金も損金として扱えるので、法人税の節税対策になります。

車両は事業目的に切り替える

自動車は毎年4月1日時点での自動車の所有者に対し自動車税が課せられます。この自動車税、商用車と乗用車で課せられる金額に違いがあります。総排気量が1L以下の自家用乗用車と事業用乗用車では自家用乗用車は年額29500円、事業用乗用車では年額7500円と、事業用自動車は税金が安く優遇されています

事業用乗用車の自動車税が安い理由としては、商用車は私たちの生活に必要な物資の運搬、輸送、公的なサービスの提供など公的に使用される車と位置付けられているためといわれています。

自動車の任意保険は、事業用の場合は特定のドライバーではなく多くの方が運転する可能性があります。そのため、年齢を問わないタイプの保険に加入する必要があり、保険料は一般的な自動車保険よりも高くなる可能性。

家族経営の会社の場合、個人自動車保険に加入し、家族限定特約を選択することで法人の商用車よりは安く加入できる可能性があります。

退職金控除を利用する

法人の節税対策は、社長などの役員の報酬を高くし会社の経費として利益を低くすることで節税に。

税法上、会社は法人税が課税されます。社長の報酬には所得税が、法人税として役員の報酬は、給与にあたる「役員報酬」一般社員の賞与にあたる「役員賞与」そして退職金にあたる「役員退職金」の3種類に分類。役員報酬と役員退職金が増えると会社の利益が下がるので法人税は低く抑えられます。

社長の退職金には退職金控除を利用することを考えましょう。役員退職金はほかの給与所得とは別の課税方法で課税。給与所得控除に比べると優遇、分離課税が適用されるので所得税率が抑えられます。また、役員退職金を支払うことで会社の利益が一時的に下がり、法人税も低くなります。

節税対策で得をしよう

国民の義務である納税。その税金を納める際、国では個人向けや法人向けにさまざまな向上の制度を設けています。節税対策を行う前に、その控除制度について正しく理解することが大切です。

個人では、年末調整の生命保険控除のほかに、確定申告を行うことで医療費控除が受けられ、翌年の所得税や住民税が安くなる可能性があります。法人では、家族経営ならば家族を役員にすることで所得を分散させることも可能です。

控除制度を上手に活用して節税対策を行いましょう。判断に迷ったりよくわからないこともあると思います。そんなときは、税理士の方や最寄りの税務署へ問い合わせすることも大切です。

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