節税の知識は財産となる。無駄な税金を払わないために知っておくこと

納税者が知らないだけで、日本の税制には、節税方法はたくさんあります。節税は、納税者に与えられた大事な権利になり、ちょっとした知識があれば税金の控除をうけられる人はたくさんいます。自分の大事な権利を生かして無駄な税金は少しでも減らしましょう。

目次

個人事業主の節税

個人事業主の福利厚生目的の支出を見直す

福利厚生費とは、従業員の勤労意欲の向上や労働力の確保を目的として給料以外の方法で与える報酬になります。福利厚生費は、事業者に義務付けられている法定福利厚生とそれ以外の法定外福利厚生に分けられており、従業員を雇っていない個人事業主は、勘定できない科目です。

福利厚生費の範囲

☑1.通勤手当

☑2.職務に必要な技術の習得費用

☑3.食事の支給

☑4.社宅や寮の賃料

☑5.レクリエーション旅行、研修旅行

☑6.報奨金の支給

☑7.消耗品

税務上の基準を満たせば、福利厚生費等として経費に算入できますので節税にもなります。

経費

事業に関るもので、税務上費用と認められるものが経費となります。税金は、事業の利益に対してかかることが多いため、経費が多いほど利益が少なくなり節税になります。(売上−経費=利益)経費のポイントは、事業に関係する費用がどうかです。

事業に使用している割合に応じて経費化できる支出を見直す

個人事業主は、プライベートの支出と事業用の支出が混在していることが多いもの。例えば、個人事業主の多くは自宅と事務所を兼ねています。この場合、家賃や光熱費の一部は、売上のために必要な経費であると考えることができます。

全体における経費の中で事業にかかった経費を合理的な基準によって分けることを、「家事按分」といいます。家事按分には明確な決まりがないため、按分比率の計算は事業者の責任でしなければなりません。経費にすることは有効な節税対策ですが、税務署で質問された際、算出根拠をしっかり説明できるようにしておくのが得策です。

家事按分の代表的な項目

☑1.家賃、持ち家の場合の減価償却費、住宅ローン、保険、固定資産税など

☑2.水光熱費

☑3.通信費

☑4.車関連費用

事業者の目的により経費化できる支出を見直す

事業を円滑に進めていくために、事業に関係ある会社や個人に対して接待、供応、慰安、贈答などの接待交際費の支出は必要となります。

接待交際費は、利益を出す目的のために必要な支出である、ということが重要なポイント。また事業者は、接待交際費が事業活動と直接の関連をもち、業務遂行上に直接必要であった場合に、経費化できます。

個人事業者に対しては、この接待交際費の税務上の限度額はありません。ただし、用途が不明な場合や明らかに売上と見合わない接待交際費は、当然認められませんので注意しましょう。

65万円青色申告特別控除見直す

青色申告特別控除とは、「青色申告制度を利用して、きちんと簿記の原則に沿った記帳をし、税金を正しく計算している人には、ある一定の控除を認めます」というものです。青色申告特別控除は、65万円控除と10万円控除があります。

青色申告特別控除65万を受けるには

☑1.不動産所得、事業所得を得る事業を営んでいること

所得には区分が10種類あり、このうち事業所得と不動産所得に青色申告特別控除は使えます。事業所得とは、事業から得た所得のことを言います。単発ではなく継続して事業を行っている場合に認められます。

不動産所得とは、アパートやマンションの家賃収入や駐車場による所得を言います。ただ一定以上の事業規模がないと認められません。

☑2.複式簿記で記帳していること

簿記には、単式と複式があります。青色申告控除を受けるには複式簿記で記帳する必要があります。

☑3.貸借対照表と損益計算書の添付が必要

複式簿記の記帳をもとに作成した貸借対照表と損益計算書の添付が必要となってきます。貸借対照表とは、事業で保有している財産や借金を表したものです。資産(事業の財産)、負債(事業の借金)、資本(開業資本とこれまでの利益の総計)で構成されています。

損益計算書とは、1年の事業における利益がどれくらいあったかを示す成績表のことで、売上、仕入、経費、利益で構成されています。

☑4.発生主義で記帳すること

売上や経費を記帳するタイミングには、発生主義と現金主義とがあります。青色申告特別控除を受けるには、発生主義で記帳しなければなりません。

発生主義とは、売上や経費が発生したタイミングで計上することをいい、売上なら取引が成立した日、経費なら請求書を受取った日になります。

現金主義とは、売上や経費を実際の入金、支払いのタイミングで計上することであり、売上なら実際に取引先から入金された日、経費なら実際に支払った日などをいいます。

☑5.確定申告に必要な書類を法定申告期限内にすること

青色特別申告控除を受けるには、期限内に管轄の税務署に、所得税の青色申告承認申請書の提出が必要です。提出期限は、青色申告による申告をしようとする年の3月15日までに税務署に提出します。期限を過ぎると青色申告特別控除は受けられません。

青色専従者給与を見直す

専従者給与とは、生計をともにしている配偶者や子供、親族への給与になります。青色申告の場合、条件を満たすことによって専従者給与を必要経費として計上できます。

青色事業専従者給与としての条件

☑1.青色申告者と生計を1にする配偶者やその他の親族であること

☑2.12月31日現在で年齢が15歳未満でないこと

☑3.その年を通じて6ヶ月を超える期間、青色申告者の営む会社で働いていること

☑4.青色事業専従者給与に関する届出書を管轄の税務署に提出していること

☑5.給与の額が一般常識を考慮し、妥当な金額であると認められること

☑6.届出に記載されている方法により支払われ、記載されている金額の範囲内で支払われていること

☑7.青色事業専従者に支払われた給与であること

以上の条件を満たさない限り、青色事業専従者給与としては認められないため、給与計算時には注意が必要です。

白色申告の専従者控除

白色申告の専従者に支払った給与は、経費にはなりませんが事業専従者控除として確定申告の際に一定額の控除が可能です。事業専従者控除として申告した金額は、専従者にとっては収入になりますので、他の仕事と掛け持ちしている専従者は合算して確定申告する必要があります。

貸倒引当金の計上を見直す

企業だけではなく、個人事業者でも貸倒引当金の計上で節税が可能です。個人事業者も青色申告している場合には、貸倒引当金のうち一定額は経費として認められます。

貸倒引当金は、回収不能となりそうな売掛金などを、見込みで「貸倒引当金」として損失計上することができます。よって貸倒引当金とすることで損失を当期に計上することができるのです。これは、将来の出費や損失に備えたり、必要経費の前借りとして節税効果があります。

貸倒引当金の取り扱い

所得税法上では、原則として見積りでの損失計上は認めていません。青色申告をする場合にかぎり、貸倒引当金の必要経費としての計上を認めています。無制限ではなく、一括評価で認められるのは、年末において貸付金の帳簿価格合計額の5.5%までとなっています。

小規模企業共済等掛け金を見直す

小規模企業共済とは、中小企業基盤整備機構が取り扱う小規模企業の事業主向けの共済制度のこと。小規模企業共済は、小規模企業共済等掛け金を経営者の退職金や事業資金の目的として活用するもので、加入できるのは小規模企業を経営している事業主や個人事業主に限られます。

小規模企業共済等掛け金は、1,000円〜70,000円で自由に設定することが可能です。小規模企業共済は、小規模企業共済等掛金控除として、掛金の全額が所得控除の対象となります。所得控除とは、所得税と住民税を軽減できるもので、小規模企業共済支払金額×(所得税率+住民税率)となります。

共済金の受取方法とは

原則としては一時金形式になります。法人が解散したり、死亡や65歳以上での引退などの場合は、一時金と年金の受取り形式を選ぶことができます。

一時金は退職金を受取るのと同じなので、退職所得として控除をうけることができ、所得税の負担を軽くする事が可能です。年金は、退職所得ではなく雑所得として扱われるので、公的年金等控除を受けることができます。

税金制度の隅から隅まで活用を見直す

個人事業者と法人では、かかる税金が違います。

個人事業にかかる税金

☑1.所得税

事業所得に応じて5~45%の税率でかかる累進課税

☑2.個人事業税

事業所得の3~5%

☑3.個人住民税

事業所得の10%(所得割)所得に関係なく一律4,000円(均等割)を足したもの

法人にかかる税金

☑1.法人住民税

資本金1億円以下の法人、標準税率の場合

法人税額×17.3%(法人税割)

資本金等の額と資本金+資本準備金と比較しいつれか多い金額により判定する(均等割)

☑2.法人税

所得が800万円以下の場合、所得の22%

所得が800万円以上の場合、所得の30%

☑3.法人事業税

所得が400万以下の場合、所得の3.4%

所得が400万円超〜800万円以下の場合、所得の5.1%

所得が800万円超の場合、6.7%

これだけを見ると、個人事業のほうが税金負担が少ないように見えますね。個人事業は、儲けが所得に直結していますが、法人では個人の所得と法人の所得に分かれています。所得を分散させることで、節税の幅が広がります。これは、法人設立をするメリットの1つです。

法人にするメリット

☑1.所得が分散できる

法人にすると、事業主以外の人に対しても給与を払ったり、法人内部に留保するなど、所得を分散できます。これによって所得税基礎控除に加えて、給与収入がある人のみが受けれる、給与所得控除が受けられ節税ができます。

☑2.退職金が費用になる

個人事業の場合には、事業主自身の退職金は必要経費として認められません。法人にすると事業主に対する退職金も、法人の費用として認められます

☑3.生命保険料の一部全部が費用になる

個人の生命保険の所得控除は、年間最大12万円までしか認められません。法人にすると事業主を被保険者とすることによって制限がなくなり、保険料の一部や全部は法人の費用となります。

☑4.税率が一定

個人の場合には、所得が高くなるに従って税率が高くなる累進税率となりますが、法人税は原則として一定になります。また中小法人の場合は軽減税率が適用されています。

☑5.消費税免除

特定期間の売上高が1,000円以下の場合や、特定期間の給与1,000円以下なら消費税免除の条件を満たします。法人にして所得の分散をすると、給与の調整で消費税が免除されます。

税金制度をフルに活用するなら、個人事業を継続しながら、法人設立をするという方法を取るのが効果的でしょう。有限責任事業組合を設立すると、パス・スルー課税という特殊な課税方式が採用できます。パス・スルー課税は有効な節税方法となりますので、有限責任事業組合の設立も選択の1つになります。

個人事業主の節税を極めるということ

公的年金に加えて給付を受けられる私的年金に確定拠出年金があります。運営の主体は国民年金基金連合会で、個人事業主が加入できるのは個人型です。確定拠出年金の掛金は、小規模企業共済等掛金控除として全額が所得控除され、所得税と住民税が軽減されるため節税に有効的。

投資信託など自分で商品を選んで運用もでき、運用益は非課税になります。一時金で受取る場合には、退職所得控除の対象となり、年金で受取る場合には公的年金等控除の対象となるのです。

年金受取額が増える可能性も

確定拠出年金は、将来の蓄えとして年金を積み立てながら節税し、運用成果で受取り額が増える可能性もあります。年金や共済についてよく調べて、節税と老後の備えもしっかりしましょう。

30万円未満の少額減価償却資産の一括費用計上を見直す

個人事業を営む上で必要とされる備品は、青色申告をする個人事業主であれば、1個あたり30万未満の少額減価償却資産については、購入した年度に一括費用計上ができます。これを「少額減価償却資産の特例」といいます。

少額減価償却資産の特例が適用されるのは、青色申告者である中小企業や個人事業主に限られます。特例を使って全額を損金処理した場合は、30万未満の償却資産は固定資産台帳に記載する必要があり、固定資産の課税となるのでご注意ください。償却資産の合計額が150万円未満であれば課税されません。

特例を使用せず、固定資産として計上する

利益の少ない年度に30万未満の減価償却資産を購入した場合、これ以上利益を減らしたくないと考えるのであれば、特例を利用しないで固定資産として計上し、通常の法定耐用年数で減価償却していく方法も選択できます。ただし購入時に採用した税務処理方法は、その後変更することができません。

サラリーマンができる節税

特定支出控除の利用

特定支出控除とは、サラリーマンが仕事をする上での必要経費のうち、給与所得控除の1/2を超えた金額が控除適用となる制度です。

特定支出控除の範囲

☑1.通勤にかかる費用

☑2.転勤の際にかかる引越し費用

☑3.単身赴任者の帰宅にかかる費用

☑4.研修にかかる費用

☑5.資格取得のための費用

☑6.業務に関する図書費の購入費用

☑7.業務に関する衣類の購入費用

☑8.業務に関する交際費用

特定支出控除を受ける際には、会社側から業務上必要だと承認された書類と領収書が必要になります。

サラリーマンでも確定申告した方が良い場合

基本的にサラリーマンは、確定申告をする必要はありません。しかし、確定申告をしたほうがよい場合もあります。なぜなら、住宅ローンを組んで住宅を購入した時、一定の条件を満たせば10年間は税金が還付されるからです。

この住宅ローン控除の適用を受けるには、初年度だけは自分で確定申告をしなければなりません。確定申告に基づいて翌年の年末調整で、所得税の調整がされます。所得税から還付しきれなかった住宅ローンの控除額は、住民税から控除されるのです。

住宅ローン控除は、年末借入残高の1%に相当する額を納めた所得税から還付され、年間の控除額の上限は40万円で10年間適用されます。

給与から差し引ける所得控除を見直す

給与所得控除とは、給与収入がある人のみが受けられる控除になり、給与収入の額に対して、一定の金額を差し引く仕組みです。サラリーマンの必要経費を自動的に計算する項目が給与所得控除になります。

基本となる所得税の計算式

☑給与の収入金額−給与所得控除=給与所得

☑給与所得−各種所得控除=課税所得

☑課税所得×税率=所得税

年収ごとの給与所得控除額の計算方法

☑1.180万以下

収入金額×40%(65万円に満たない場合には65万円)

☑2.180万円超360万円以下

収入金額×30%+18万円

☑3.360万円超660万円以下

収入金額×20%+54万円

☑4.660万円超1000万円以下

収入金額×10%+120万円

☑5.1000万円超

収入金額×5%+170万円

所得控除額の基準はすべて年収に応じてになるため、職種や勤務形態といったことは考慮されません。

その他の控除を見直す

給与所得控除のほかの控除を漏れがないように、積み上げていくことがサラリーマンの節税になります。主なその他の控除は以下の通りです。

医療費控除

生計を同一する親族のために、支払った医療費の合計額が、10万円を超えた場合超えた分が控除の対象となります。共働きで、別々の健康保険に入っていても合算できます。

配偶者控除、配偶者特別控除

配偶者控除は、結婚している配偶者の収入が103万円以下なら控除額は所得税で38万円控除されます。配偶者の収入が103万を超え141万円未満であれば、配偶者特別控除の対象に。配偶者特別控除は、年収が増えるとともに徐々に減り、141万円になると0円になります。

生命保険控除

生命保険は加入する期間が長いので、わずかな節税でも累積すれば大きな節税になります。2012年からの契約は新制度となり控除方法が変更されています。旧制度の所得税の控除額の上限は10万円、新制度の所得税の控除額の上限は12万円になります。

不動産所得があるときに受けられる控除

サラリーマンの納税は源泉徴収で行われるため、給与所得以外に20万以上の所得を得てる場合は、確定申告が必要です。不動産所得を申告する場合、青色申告で10万円か65万円の控除が受けられます。不動産所得で65万の控除を使うには、事業規模である必要があります。

☑総収入金額−必要経費=不動産所得の金額

この不動産所得の金額に所得税率がかかってきます。不動産所得の所得税の計算は非常にシンプルなものです。

事業所得があるときの控除

サラリーマンを続けながら、副業して年間20万円以上の収入があると確定申告が必要に。確定申告する時は、雑所得としてではなく事業所得として申告することで、受けられる控除が多くなります。

青色申告することのできる人は、事業所得者も含まれており、最大65万円の控除が受けられることも。また、副業が赤字の時は、異なる区分の所得と通算でき、その年の総所得金額を小さくできます。この赤字が通算しても控除しきれない部分の金額が生じた場合、翌年以降3年にわたって繰越して控除することが可能です。

確定拠出年金で節税して老後資金作りを見直す

これまで確定拠出年金に加入できたのは、個人事業者と企業年金や企業型拠出年金のない会社に勤めるサラリーマンに限定されていました。改正によって20歳から60歳までの国民年金、厚生年金加入者が加入できるようになったのです。

確定拠出年金は、老後資金になりますので受取れるのは60歳以降になります。自分で運用する年金ですが、定期預金、保険、投資信託などから選んで組み合わせたりも可能です。

拠出するとき、運用しているとき、受取るときの3段階で税金優遇が受けられるというのが、最大の魅力。毎月一定金額を積立てていく形ですが、この掛金は一定の限度額の範囲内であれば非課税となります。掛金として支払った金額は全て所得税の控除になるということです。

節税できるものは節税しよう

日本の税金は、所得税、法人税、消費税が主な税金となっています。このような税金に対して、納税者は税金に関心がなかったり、知らなかったりすることが多いもの。

実際にちょっとした知識があれば、紙切れ1枚出すだけで何万円、何十万円も節税できます。納税者が無駄な税金を払わないためには、自分の税金に敏感になり、与えられている権利を生かしましょう。

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