法人成りのメリットとデメリットを比較。節税のポイントもおさえよう

個人事業主から法人成りをすることを検討しているのであれば、法人成りのメリットとデメリットを知ることが大切。メリットとデメリットを比較することで、どちらが自分に合っているのかを知ることができます。節税のポイントをおさえておくことも大切です。

給与面で法人成りをするメリット

給与所得控除が受けられる

個人事業主が法人成りをした場合、給与所得控除が受けられるようになるという節税メリットがあります。給与所得控除は、法人化の代表的な節税メリットです。

給与所得控除とは、自営業者との課税のバランスを保つために設定されたもので、会社員の概算経費のことをいいます。個人事業主から法人成りして株式会社を作り、法人の役員となって役員報酬を支給される場合でも給与所得控除の恩恵を受けることができるのです。

給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額)→給与所得控除額

☑ 1.180万円以下→収入金額×40%(65万円に満たない場合は65万円)
☑ 2.180万円超360万円以下→収入金額×30%+18万円
☑ 3.360万円超660万円以下→収入金額×20%+54万円
☑ 4.660万円超1,000万円以下→収入金額×10%+120万円
☑ 5.1,000万円超1,500万円以下→収入金額×5%+170万円
☑ 6.1,500万円超→245万円(上限)

退職金が必要経費になる

法人成りすると、退職金を必要経費にできるという節税メリットを受けることが可能です。法人成りをすると社長の自分に対して給与や退職金を支払うことができ、それを経費として計上できるようになります。

また、家族従業員にも給与や退職金を支払って経費として計上することができます。しかし働きや勤続年数に応じた金額でない場合は、過大退職金とみなされて否認される可能性があるので気をつけましょう。

個人事業主の退職金の扱いについて

個人事業主では事業主が受け取る退職金の概念すらありませんし、家族従業員への支払いは必要経費にはなりません。もし個人事業主が家族従業員に対して多額の退職金を支払うと、個人事業主から家族への贈与とみなされ、多額の贈与税を支払わなければいけないので注意が必要です。

所得を分散させられる

法人は役員報酬を必要経費にすることができます。配偶者や子供や両親など親族を役員にして役員報酬を支払ったり、会社に残すなど法人内部に留保して所得を分散することも可能です。

また、役員以外の家族にも所得を分散することができます。個人で高額な所得を受け取るよりも、所得を分散することで総合的に所得税を節約することができるのです。

法人成りで節税できるポイント

家を社宅に出来る

法人成りすることで家を社宅にすることができ、社宅家賃を経費に計上することができるのは法人ならではの大きな節税メリットの1つです。ちなみに会社が負担した社宅家賃も、所得税などの税金はかかりません。

法人契約ではなく個人契約のままだと社宅という取り扱いがされないので節税メリットを受けることができなくなります。「ここは社宅だ」といくらアピールしても税務調査では認められないので、必ず大家さん(あるいは不動産オーナー)との契約を法人契約に切り替えることを忘れないようにしましょう。

個人事業主の社宅と経費について

自宅が賃貸住宅の場合、事業で使用している部分のみ必要経費にすることができます。自宅全体の床面積のうち、業務使用が3割ほどの床面積の場合は、単純に3割が経費になるということです。

業務使用の床面積の割合については、税務調査が入って調査官がチェックするため、実際の面積以上を経費にしていたら税務調査で否認される可能性があります。実態通りに必要経費としましょう。

法人成りの社宅と経費について

法人成りをすると、大家さんあるいは不動産オーナーとの契約は法人契約に切り替えられます。そのため社宅という取り扱いが可能になるのです。

社宅になることで少なくとも5割以上は経費にすることができます。固定資産評価証明書を取得し通達通りに計算すると、8割以上を損金経理できることもあるので、節税効果は大きいです。

消費税が最大2年免税される

会社を設立して法人化すると、特殊な場合を除き消費税の納税が最大2年免除されます。免税事業者になるからといって、お客様から消費税を請求してはいけないということは一切ありません。

消費税の納税が最大2年免除されるという特典は、個人事業主を立ち上げた際にも受けることができます。個人事業主を立ち上げて2年間消費税が免除されてすぐに法人成りをすると、法人化したことによる消費税2年間免除儲けることができるので、最大で4年間消費税を納めなくてもいいということになるのです。これは消費税法で定められていることなので、決して脱税ではありません。

消費税が2年間免除されないケースとは

例外として消費税が1期目しか免除されず、2期目からは消費税を納めなくてはいけないケースがあります。1期目の最初の6ヶ月間の売上高と役員報酬を含む給与の額が1,000万円を超えた場合は、2期目より消費税を納税する必要があるのです。

生命保険が必要経費になる

個人事業主の生命保険は、最高で12万円の生命保険料控除ということになっており、節税メリットは少ないです。法人の場合は、保険の種類によっては保険料の全額を必要経費にすることができます。

法人成りしたことで必要経費にできるのは、定期保険の掛け捨ての部分です。万が一のことがあり会社が死亡保険を受け取った場合、個人には一銭も入らないということではありません。保険金に相当するお金は遺族へ死亡退職金として支給するという方法があります。(この退職金の一部は個人の相続税の課税対象となる。)

法人成りをする上でのデメリット

書類作成など事務負担が増える

法人成りをするといろいろなメリットがありますが、一方でデメリットもあります。その1つが書類作成などの事務負担が増えるということです。

税務署に提出する書類が増えるので、それに関する事務負担は大きくなります。法務局で登記を行う機会が増えることも特徴。経理と申告の手間が増えて税理士などの専門家に依頼するケースが多くなり、手間だけでなく事務コストの負担も増えます。

法人登記費や税理士を雇う費用が発生する

法人税の申告など、法人成りをすると経理と申告に関する書類の作成が増えます。別表や資料など申告書に添付する書類も増えるので、税理士に依頼するケースがほとんどです。そのため、税理士を雇う費用が必要になります。

法人税の申告書の作成を自分でやろうと思うと、それをマスターするまでには何年もの年月を要することとなるので、税理士に依頼したほうが効率的です。申告以外でも役員の任期満了による登記が必要になったりと、登記を行う機会が増えるため、法人登記費の費用も発生します。

赤字でも法人住民税がかかる

法人では赤字でも払わなくてはいけない税金があります。それは、法人住民税の均等割と消費税(免税事業者の場合を除く)です。法人住民税には、所得に応じた法人税に住民税率を乗じた「法人税割」と、法人の資本金などに応じて定額に税金がかかる「均等割」とがあり、この2つを足したものが法人住民税となります。

「法人税割」は赤字の場合は払う必要はりませんが、「均等割」は定額で所得とは関係ないので、赤字でも払わなくてはいけません。また、免税事業者でない場合は消費税も払う必要があります。また、資本金や出資金の額が1億円を超える法人は外型標準課税の支払いが必要になったり、会計上は赤字でも法人税の課税所得が黒字になる場合は法人税、住民税、事業税の支払いが生じるケースもあります。

社会保険への強制加入

法人成りすると、事業主や従業員の意思に関係なく社会保険への強制加入が必要です。社会保険の強制適用事業所の条件は以下のようになっています。

☑ 1.事業主を含め従業員が1人以上いる会社、国や地方公共団体などの法人
☑ 2.常時使用の従業員が5人以上いる(一部の業種を除く)個人事業主

強制適用事業所になると、健康保険や厚生年金保険などの社会保険への加入が必要となり、加入しないと法律で罰せられることになります。

メリットとデメリットを比較して自分に合った選択をしよう

個人事業主から法人成りすると、いろいろなメリットがある一方でデメリットもあります。法人は節税のメリットを受けることができますが、事務負担が増えるというデメリットもあるので注意が必要です。

法人成りを検討するのであれば、まずはメリットとデメリットをよく理解することが大切。両方を比較して自分に合った選択をするようにしましょう。

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