償却資産申告は事業者の義務。償却資産を理解して正しい申告をしよう

事業を営んでいる方は、償却資産の申告をする義務があります。土地や家屋の所有は、法務局の登記から把握できますが、償却資産は自己申告しないと、市区町村は把握できません。償却資産に課せられる税金・償却資産税をきちんと納付しましょう。

償却資産の基礎知識

事業に使用するもの


償却資産とは、消耗品である資産のこと。土地及び家屋以外で、会社や個人事業者が事業のために使用するものであり、備品や工具や機械などの事を指します。具体的に例は以下の通りです。

☑1.構築物
内装、舗装路面、庭園、門、堀、看板、広告塔、ゴルフ練習場、受変電設備、予備電源設備など

☑2.建物附属設備
蓄電池、電源設備、屋外給排水、ガス引込み設備、そで看板、可動間仕切り、中央監視装置、貯水槽など

☑3.機械・装置
各種製造設備等の機会及び装置、クレーン等建設機械、機械式駐車場など

☑4.船舶・航空機
ポート、釣船、漁船、遊覧船、飛行機、ヘリコプター、グライダーなど

☑5.車両・運搬具
自動車税、軽自動車税のかからないもの(フォークリフト、構内運送者など)

☑6.工具器具備品
自動販売機、事務机、ロッカー、キャビネット、電子計算機、コピー機、応接セット、テレビ、レジスター、冷蔵庫、洗濯機、立看板、金庫、冷暖房機器、衣装、楽器、書籍、消火器、切削工具、ロール、測定工具、パソコン、陳列ケース、医療機器、金型、衝立など

償却資産は償却資産税がかかる

償却資産には、償却資産税と呼ばれる固定資産税の一種の税金がかかります。固定資産税とは、毎年1月1日(賦課期日といいます)現在の土地、家屋、家屋、償却資産を所有している人が、固定資産の価格をもとに算定された税額を市町村に納める税金です。償却資産に関しては、固定資産税の枠組みの中で、別途償却資産税と呼ばれます。

償却資産申告の対象外がある

償却資産に含まれない資産もあります。他の税金が課税される資産や形のない資産、金額の条件に満たない資産は償却資産税がかかりません。主に、下記の内容のものが対象外となるものです。

☑1.10万未満のもので、必要経費や損金に換算されている資産
☑2.20万未満のもので、3年間で費用を償却している資産
☑3.自動車や原動機付き自転車など自動車税や軽自動車税が課税される資産
☑4.無固形資産、特許権やソフトウェアなど形のない資産
☑5.耐久年数(資産が利用に耐え得るとして法定された年数)が1年未満と設定されているもので、必要経費や損金に算入している資産

☑6.棚卸資産(商品、仕掛品、貯蔵品など)日常業務では在庫と呼ばれ会社が販売する目的で一時的に保有している資産
☑7.非減価償却資産(100万以上の美術品等、電話加入権、土地や土地に附属する借地権など)時間の経過によって価値が下がらない資産
☑8.繰延資産(創立費、開発費、社債発行費など)その支出効果が1年以上に及ぶもの

損金とは

費用の一部になります。費用のうち、法人税を計算するときに税制上、かかる税金を減らせるものです。

償却資産申告書の書き方

法人マイナンバーを記入する


社会保障・税番号制度が導入されました。それに伴い、平成28年分以降の償却資産申告書を提出する場合は、法人マイナンバーの記入が必要となっています。法人マイナンバーについては、申告時に本人確認の手続きは不要です。

マイナンバー制度(番号制度)とは

マイナンバー制度とは、国民に番号を割り振り、社会保障や納税に関する情報を一元化に管理する共通番号制度です。
法人マイナンバーは1法人に対し、1番号のみ。全ての法人に割り振りされるわけではなく、指定されるのは、国の機関、地方公共団体、設立登記法人、国税に関する届出を提出することが規定化されている団体になります。法人マイナンバーは、利用範囲の制約がない、つまり無制約ですので、誰でも自由に使うことが可能です。

機械や備品を種類ごとに記載する

償却資産の申告をするときに提出する書類では、償却資産の種類を6つに分けています。

☑1.構築物
☑2.機械及び装置
☑3.船舶
☑4.航空機
☑5.車両及び運搬具

☑6.工具、器具及び備品

償却資産の申告には、償却資産申告書、種類別明細書(増加資産・全資産用)、種類別明細書(減少資産用)という3種類の書類を使います。このうち種類別明細書を記入する際に、上記の6つに分かれた償却資産の中で、機械や備品などの資産明細をわけて記入します。また償却資産の所有や増減の状況に応じて、提出する書類もかわってきますので、注意しましょう。

申告先は地方自治体

償却資産申告書の提出先は、償却資産が置いてある市区町村になります。複数の市区町村に償却資産を持っている事業者は、その償却資産がある市区町村ごとに償却資産申告書を提出します。
リース資産については、リース会社が償却資産を申告します。また、償却資産申告は、リース会社の所有権を置いてある市区町村に提出します。

償却資産申告の注意点

毎年1月31日までの提出

償却資産申告書の提出期限は、毎年1月31日になります。

☑1.初めて申告する場合

1月1日時点で所有する全ての償却資産を申告します。書類は、償却資産申告書、種類別明細書(増加資産、全資産用)です。
償却資産がない場合は、種類別明細書(増加資産、全資産用)の提出は必要ありません。償却資産申告書の備考の欄に該当資産なしと記入します。

☑2.前年度以前に申告している場合

前年の1月2日から翌年の1月1日までの期間に、増加または減少した資産や、それ以前に取得した資産や除却した資産の申告漏れもあわせて申告します。書類は、償却資産申告書、種類別明細書(増加資産・全資産用)、種類別明細書(減少資産用)を提出します。
償却資産がない又は増減がない場合は、種類別明細書の提出は必要ありません。償却資産申告書の備考の欄に該当資産なしと記入します。

☑3.事業を廃止、休業、倒産した場合

1月1日時点において、事業を廃止(廃業・合併・市外移転)、休業、倒産している場合は、償却資産申告書の備考欄に該当資産なしと記入します。種類別明細書の提出は必要ありません。

償却資産の申告は義務

償却資産の所有者は毎年1月1日時点(賦課期日)の資産を、申告する義務があります。また償却資産は、土地、家屋のような登記制度がないので、償却資産を事業者がどれだけ所有しているかという事を、市区町村が正確に把握することは難しいこと。そのため、事業者が自己申告を怠らないようにしましょう。
市区町村に納める地方税である償却資産税も、その償却資産について市区町村の調査があります。調査の結果、誤りや申告漏れがあった場合は、追加で税金がかかるので注意しましょう。

減価償却後も申告の対象

減価償却とは、資産価値は、購入後から常に一定ではなく、どんどん価値が落ちていきます。この時の経過に伴って、価値が落ちていく固定資産を取得した時に、一度に支出した費用を計上するのではなく、耐用年数(使用可能年数)に渡って計上する方法をいいます。
耐用年数は、資産ごとに決められています。これは、耐用年数を法律で決めることにより、会社が多額の減価償却費を計上することを、防ぎ利益操作をできないようにするためです。減価償却が済んでいる資産に関しても、まだ事業において使用できれば課税対象になります。

課税標準が150万円未満は免除

償却資産の評価額の合計である、課税標準額が免税点(150万円)未満である場合は、償却資産を持っていても、償却資産税はかかりません。免税点(150万円)未満は各市区町村の合計ではなく、市区町村ごとに行います。
免税点未満で課税されない場合も、申告をしないと、市区町村の担当者が、現状調査にくることがあります。市区町村側も申告がなければ、その事業所の資産の有無を確認しようがないのです。申告をしなければ、税金は課せられないという不公平さがないようにするためです。

対象のものをきちんと把握して申告しよう

償却資産の申告は、減価償却の処理一つで、利益に差がでます。また償却資産は自己申告になりますので、申告漏れなどがあると追加で税金などが課せられます。
また申告するのは、償却資産税ではなく、償却資産になります。償却資産税は、自分で税額を計算する必要はありません。自己申告をした償却資産に基づいて、市区町村が税額を計算しますので、償却資産の対象となる資産をしっかり把握して、申告するようにしましょう。

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