「給与支払報告書はどのように作成すればいいんだろう?」
「給与支払報告書の提出先と提出期限を知りたい!」
このような悩みを抱えた事業主の方や経理担当者の方も多いのではないでしょうか?
給与支払報告書は注意点も多く、業務が複雑になりがちです。
この記事では、給与支払報告書とはどんな書類であるか、また提出の際の注意点について解説します。
この記事を読んで、給与支払報告書の基礎知識を身に付けましょう。
目次
1.給与支払報告書とは
給与支払報告書とは従業員の住民税を適切に計算するために、従業員を雇用している企業・個人事業主が各市区町村に提出することが義務付けられている書類です。
記載すべき内容は源泉徴収票と同様で、その年に支払った給料や控除額等についてです。
まずは給与支払報告書の給与支払報告書の内容から解説を行います。
(1)給与支払報告書とは
給与支払報告書は、個人別明細表と総括表に分かれています。
個人別明細表と総括表の提出枚数と主な記載内容は以下の通りです。
提出枚数(従業員1人につき) |
記載内容 |
|
個人別明細表 |
2枚 |
給与所得者の氏名、住所、生年月日、給与の金額など |
総括表 |
1枚 |
個人明細書の枚数や内訳など |
総括表は、提出する個人別明細表をまとめる表紙となるものです。
従業員が住んでいる市区町村の数だけ総括表と個人別明細書が組み合わされた「給与支払報告書」が作成されることになります。
(2)給与支払報告書の提出先
給与支払報告書は給与を支払っている会社(または個人事業主)が各市区町村に提出します。
なお、2021年の情報を提出する場合は、以下のようになります。
提出義務者 |
給与を支払っている会社(または個人事業主) |
対象期間 |
2021年1月1日に在籍している全従業員の2021年1月~12月の給与 |
提出期限 |
2022年1月31日まで |
提出先 |
2022年1月1日現在で従業員の現住所のある各市区町村 |
※31日が土日祝日と重なる場合には、次の平日となります。
仮に、100人の従業員がそれぞれ別の市区町村に居住していた場合、100の市区町村に給与支払報告書を提出しなければなりません。
アルバイトやパートタイム等の雇用形態の方について提出を行う必要があるので注意しましょう。
なお、前年1年間に1回でも給与を支払ったことがあれば、たとえ退職していたとしても給与支払報告書を提出する必要があります。
ただし、一部の従業員については特例が認められて給与支払報告書の提出が免除される場合もあるので後の章で解説します。
(3)給与支払報告書の提出期限
給与支払報告書の提出期限はどの市区町村も同様で1月31日までとなっています。
提出場所は各市区町村の市役所市民税課で以下の2つの方法で提出することが可能です。
- 郵送、窓口持参(紙媒体または光ディスク等の電子媒体)
- 電子申告(地方税ポータルシステム『eLTAX』)
なお、基準年(前々年)に税務署に提出した源泉徴収票の枚数が100枚以上である場合はeLTAXまたは電子媒体での申告が義務付けられているので注意しましょう。
(4)給与支払報告書が提出不要な場合
退職した従業員で、1年間に支払った給与が30万円以下の場合は、給与支払報告書の提出は不要です。
市区町村によってはたとえ給与が30万円以下の場合でも提出が義務付けられている場合もあるので、各市区町村のHPを確認しましょう。
なお、退職した者の給与が30万円以上の場合は給与支払報告書の提出が必要です。
2.給与支払報告書を提出しないとどうなるか
給与支払報告書の提出は義務付けられていますが、提出漏れ等で期限までに提出できなかった場合は、事業者・従業員ともにリスクがあります。
それぞれ順に解説します。
(1)事業者に罰則がかかる恐れがある
給与支払報告書の提出を怠ると、事業者に1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。
また、提出内容が虚偽である場合も上記と同様の罰則を科せられます。
(2)従業員に負担がかかる
給与支払報告書の提出を怠ると従業員の月々の住民税の支払額が多くなり、負担になってしまいます。
給与支払報告書の提出を期日までに行わないと、住民税の課税額が周知される6月に間に合わない場合があります。
その場合、特別徴収の場合は1年分を12カ月に分けて納付する住民税をより少ない月数で分けることになり、従業員の納税のタイミングがズレます。
給与支払報告書の提出は会社側の業務なので、従業員との信頼を崩さないためにも期日は守るようにしましょう。
3.給与支払報告書を提出する際の3つの注意点
給与支払報告書の基本的な知識について説明してきました。
ここでは給与支払報告書に関する以下の3つの注意点を解説します。
- マイナンバーの記載が必須である
- 電子申告が義務の場合がある
- 特別徴収と普通徴収を分類する必要がある
順に解説を行います。
(1)マイナンバーの記載が必須である
平成28年度より給与支払報告書にはマイナンバーの記載が必須になりました。
マイナンバーを記載する際は、従業員の本人確認を行い、本当にその番号が従業員の者であるかを確かめなくてはなりません。
詳しい解説は以下の記事にて行っているのでご覧ください。
(2)電子申告が義務の場合がある
先述した通り2021年1月より制度が変更され、前々年の源泉徴収票の提出枚数が100枚以上の場合はeLTAXまたは電子媒体を利用した給与支払報告書の提出が義務付けられています。
eLTAXとは都道府県や各市区町村に対し地方税に関する手続きをインターネット上で行えるサービスです。
eLTAXを利用すると給与支払報告書と、国(管轄税務署)に提出する源泉徴収票のデータを同時に作成することが可能です。
CD・DVD等の電子媒体を利用した申告の場合は、11月頃に事前に申告書を提出の上、テスト申告を行う必要があるので注意しましょう。
(3)特別徴収・普通徴収を分類する必要がある
給与支払報告書の総括表には特別徴収と普通徴収のそれぞれの人数を記載する必要があります。
分類 |
納税方法 |
特別徴収 |
事業主が従業員に支払う給与から個人住民税を毎月天引きし、まとめて納税 |
普通徴収 |
納税義務者自身が年4回に分けて納税 |
上記の通り、特別徴収とは企業が従業員の給与から住民税を天引きし毎月分割して支払う方法で、普通徴収では個人が年4回に分けて住民税を支払う方法です。
原則、特別徴収は義務ですが、普通徴収とする場合、「普通徴収切替理由書兼仕切書」の提出が必要な場合があります。
なお、会社や従業員に事情がある場合は、特別徴収から普通徴収へと切り替えることが認められる場合があるため、詳しくは各市区町村のHPをご覧ください。
まとめ
今回の記事では給与支払報告書の提出に関する様々なポイントを解説しました。
給与支払報告書は従業員の住民税の計算に影響するため、誤った報告をすると住民税の納税額が正しく計算されません。
給与支払報告書の記入についてはぜひ専門家に相談しましょう。