1年に1度やってくる確定申告。提出期限が遅れることでペナルティーが課され、本来払う必要もなかった税金を支払う義務まで負わなくてはいけなくなります。期日を守り、申告漏れがないようにするためにも、確定申告の基礎を理解し、正しく納税しましょう。
目次
確定申告の期限に関する基礎知識
所得税は2月16日から3月15日
所得税とは利益に対してかかる国の税金。個人の所得に対して課されている税金であり、国の税制度の中心となっている国税です。会社勤めをしている場合は給与所得から、個人事業として経営している場合は、経営の中で生まれた事業利益に所得税が課されます。
所得税の申告は、2月16日から3月15日までに税務署に申告する義務があります。会社勤めの場合は、会社の方で源泉徴収として行われていることがほとんどであるため、税務署に個別で申告する必要はありませんが、個人事業主は申告を自身で行わなければなりません。
勤め先で源泉徴収されていても申告する必要があるケースとは
本業として勤め先があっても、もう1つ副業として事業をしていたり、ほかの収入がある場合は確定申告が必要となります。給与所得とは別に雑収入が20万円以上あると、その収入に対して所得税が課されるのです。
また、給与所得が2,000万円を超える人は年末調整の対象になりません。高額所得者として確定申告の義務が課されるためです。税理士や会計士を依頼しなければいけないほど難しい申告方法ではありませんが、自分で確定申告をすることになります。
消費税は2月16日から3月31日
消費税は、事業を行う方が納める税金の1つですが、すべての個人事業主が納めなければいけないというものではありません。基準期間における課税売上高により申告が必要か否かが分かれます。
申告が必要な場合
個人事業主で前々年度(2年前)の売上高が1,000万円を超える場合は所得税が課される課税事業者となり、消費税の申告が必要です。逆に、前々年度が1,000万以下の売上高であれば免税事業者と区分します。
また、法人の場合は前々期(2年前の事業年度)の売上高が1,000万円を超える場合は課税事業者となり、1,000万円以下であれば免税事業者とされます。基本は2年前の事業売上高に対し、1,000万円を超えるか超えないかによって課税・免税と区分されているようです。
振替納税の場合は4月下旬の振替
振替納税とは、確定申告をした本人が税務署に口座振替を申請し、本人名義の口座から納税額を自動的に引き落とす制度のことです。振替納税を依頼すると、4月下旬に納税額が振替となります。
また、この納税に対する領収書は平成29年1月から領収書を送付されないこととなりました。そのため、領収書や振替結果の送付を希望する場合は、振替納税を依頼する際に税務署に依頼する必要があります。
振替納税を依頼していたのに残高不足になった場合
振替納税を税務署に申請していたのに、口座の残高が不足して引き落としができなかった場合は、法廷納期限の翌日から完納日までの期間分に延滞税が加算され、その分を本税と一緒に支払う必要があります。
延滞税も決して安くはなく、平成28年の場合は年7.3%が本税に加算されていました。ただし、延滞税は年によって変動するため、延滞してしまった場合は、税務署に確認しましょう。
還付の申告は1月1日からOK
還付申告というのは、源泉徴収で払い過ぎた税金を返してもらう申告手続きのことです。確定申告をすれば、還付申告も一緒に済みますが、還付申告だけであれば確定申告期間に関係なく、1月1日から申告をすることも可能です。
特に会社で年末調整をしてもらっている給与所得者や、年400万円以下の年金受給者は原則確定申告をする必要はありません。しかし、還付申告をして戻ってくる金額があることを知らない人が多いため、自分に戻ってくるお金があるのかどうかを確認することが必要です。
税金が戻ってくるケースとは
還付申告をして税金が戻ってくるケースは以下の通りです。
☑医療費控除:1年間で10万円以上の医療費を支払った場合
☑住宅借入金特別控除:住宅を購入し、住宅ローン控除の対象者となっている場合
☑認定住宅新築等特別税額控除:住宅の寿命を延ばすための「長期優良住宅」または環境対策として「低炭素建築物」といわれている認定住宅を新築または購入した場合
☑寄付金控除:住んでいる地域のふるさと納税をした場合
☑雑損控除:震災や洪水などの災害や盗難などにより、住宅や家財が損害を受けた場合
☑社会保険料控除:年末調整した後、成人した子供の国民年金保険料を支払った場合
☑配偶者控除・扶養控除:年末調整後に婚約・結婚をし、戸籍に配偶者が増えたり、親との同居を始めた場合
この還付申告は、申告をする前年1月1日から12月31日までにかかった金額で行います。あくまでも1年間にかかったもので申告をするため、例えば3年前から計算して医療費が10万円超えたとしても還付申告の対象外となります。また、還付申告は、万が一その年に提出が間に合わなくても、5年間は申告の猶予があります。
郵送の場合は特定記録郵便を使う
確定申告時期の税務署は非常に混みあいます。窓口にたどり着くまで2時間待たされたというのはよくある事です。そのため、税務署に行く手間を省くために、郵送で行うことも可能です。ただし、郵送で行う場合は、特定記録郵便を使うのがベストでしょう。
特定記録郵便というのは、相手が引き受けたところまで記録を行うため、確実に届ける方法です。普通郵便の場合、万が一紛失されても補償や探すことなど特定することが難しいため、せっかく準備しても郵送事故で台無しになります。
また、税務署への到達日が提出日とみなされるため、特定記録郵便を行うことにより到達日が確認でき、確実な確定申告書類の提出が可能となります。
確定申告の申告忘れを防ぐ方法
毎月の帳簿管理をしっかりと行う
個人事業主や、法人など会社を経営している場合は、毎月の帳簿管理が確定申告に向けてとても重要となってきます。会社によっては、月締め、3ヶ月締め、半年締め、年締めと決算を行っているところがありますが、確定申告を自分で確実に行うのであれば、月締め決算が一番早く集計ができ、申告書の作成が簡単です。
年締めの場合、1月1日から12月31日まで1年間分の収入や経費を仕分ける仕訳日記帳の作成や現金出納帳、振替伝票など帳簿をつける必要があるため、取引が多いと非常に時間がかかり、確定申告に間に合うかどうかということになってしまいます。
青色申告の場合は帳簿が多いため時間がかかる
税務署に青色申告で提出している場合、白色申告よりも控除額が多い分、帳簿も多く必要となり、提出書類も多くなります。そのため、慌ててやれば申告漏れがあっても見逃してしまい、その後の税務調査で指摘され、重加算税を請求されることも。
青色申告で確定申告をしている場合は、できるだけ毎日、もしくは毎月の帳簿付けをすることがスムーズに確定申告を終わらせるためには大切な作業です。
医療費の請求書はきちんとまとめておく
健康が自慢という人でも、季節の変わり目や感染症が大流行すると病気になるリスクは避けられません。また、スポーツを楽しんでいたり、車の運転をしていれば突然事故やケガに襲われることもあります。
そのため、病院にかかった場合の医療費の請求書や領収書はしっかりとまとめておくことが大切です。1年間で10万円以上の医療費を支払った場合、高額医療として還付申告で税金が戻ってくるため、その申告で必要となります。いつ、なにがあるかわからないので、大切にまとめて取っておきましょう。
保険料の控除証明書を保管しておく
毎年、生命保険に加入している人には保険料控除証明書というのが送られてきます。年末調整を行う際に、保険料控除証明書の金額に応じて控除が受けられるためです。
年末調整を会社に行ってもらっている場合は、申告する本人が被保険者になっている生命保険分の控除証明書を、申請書とともに会社に提出する場合がありますので、必ず郵送されてきたら保管しておきましょう。
スケジュールに確定申告日を記載しておく
忘れないためには、スケジュール帳やカレンダーに確定申告日を記載しておくのがおすすめ。頭の中で分かっていても、多忙な現代を過ごしているとどうしても忘れがちになります。
確定申告時期は、大体毎年決まった日になっていますが、見える場所やスケジュール帳などに書き込んでおけば、何か用事があるときや、予定を確認するときにパッと目に飛び込んでくるため、確定申告時期を思い出すことができます。
申告書は余裕をもって作成する
心づもりをしておくよりも、準備をしておくことの方が余裕を持つことができます。申告書を作成するためには、コツコツと記帳を行い、帳簿の管理をしておくことが大切です。
税務署から確定申告用の書類も送られてきますが、便利な電子申告である「e-Tax」を利用する場合は、手続きや用意するものも必要になります。前もって申告書の準備を行い、余裕をもって作成しましょう。
税理士に作成を依頼しておく
あまりにも取引先が多く、自分では管理ができない場合や、時間の節約をしたいという場合は税理士に作成を依頼しておくのも良策です。1年の売上高が1,000万円を超えている場合は、自分で行うのも非常に困難を極めます。
また、税理士は税の知識を兼ね備えた専門家であるため、節税にも詳しく、見えていなかった部分をしっかりとサポートしてくれます。
税理士に依頼するのは費用が掛かる
税理士に依頼すれば、時間の節約や節税対策にはなりますが、決算のみ依頼するのか、顧問として毎月の記帳や帳簿・決算まで依頼するのかによって依頼料が変わってくることがあります。そのため売上高が1,000万円以下である場合は依頼料が負担となることも。
依頼料も安いものではありません。売上高が1,000万円を超えていて、依頼料を払っても無理がなく、その分帳簿をつけている時間も利益に結び付けるようであれば依頼した方がよいのですが、依頼料が負担になる場合は、自分で申告を行うのも一つの手といえます。
確定申告の期限を過ぎた場合の対処法
1日でも早く申告書を提出する
もし、確定申告書の提出を忘れてしまったことに気づいた場合は、提出期限を過ぎていても1日も早く提出をしましょう。提出期限を過ぎた場合は、期限後申告として取り扱われ、提出期限日から期限後申告をした日までに対し、延滞税が加算され、本税と一緒に支払う必要があります。
また、期限後申告をしたり、所得金額の決定を受けたりした場合、申告によっては納める税金のほかに「無申告加算税」というものが課されてしまいます。この加算税は非常に負担が大きいものであり、原則として納付すべき税額に対し、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額が加算されます。
間に合わないという場合であっても、自暴自棄になって投げ出さず、確定申告書類を提出することに勤めましょう。
修正申告は自主的に提出する
修正申告というのは、納める税金が少な過ぎた場合や還付される税金が多過ぎた場合に行います。誤りに気付いたときはできるだけ早く、自主的に提出を行うことが大切です。もし、税務調査などで申告漏れが発覚した場合、罰則として重加算税が課されることとなり、本税にさらに多く税金が加算され、支払う必要があります。
自分で誤りに気付き、自主的に提出した場合は、「過少申告加算税」といい、10%程度の加算税で済みます。しかし、重加算税の場合は35%の加算となり、納税額の負担が大きくなることがあるため、注意が必要です。
期限後申告を税務署に行う
確定申告には、3つの提出方法があります。
☑1.税務署へ直接提出する
☑2.郵送で書類を提出する
☑3.電子申告で提出をする
以上の3つが主な提出方法ですが、期限を過ぎてしまった場合は、税務署へ出向き、直接提出するのがベストです。期限後提出の場合、提出した日が「納税期限日」となります。そのため、税務署に提出したらその場で納税することが必要となり、延滞税も合わせて支払わなければなりません。
郵送にすればその分納付する時間もかかるため、余計に延滞税がかかります。提出した後すぐに支払った方がリスクも費用も掛からないため、できるだけ税務署に出向き、書類の提出後すぐに納税するようにしましょう。
確定申告の期限後に申告した場合の罰則
遅れた日数に応じた延滞税の発生
延滞税は、確定申告期限日から確定申告を終えるまでの日数分かかってしまいます。納付期限は2段階に分けられており、延滞税率も変わります。延滞税率は以下の通りです。
☑納付期限から2ヶ月以内に納付した場合:2.9%
☑納付期限から2ヶ月以上を経過して納付した場合:9.2%
また、延滞税の計算は、納付税額に延滞税率をかけて、延滞日数分の延滞税額を算出されます。延滞税の計算方法は以下の通りです。
☑納付期限日から2ヶ月以内に納付した場合
納付税額×2.9%×延滞日数÷365=延滞税
☑納付期限日から2ヶ月以上経過して納付した場合
(納付税額×2.9%×2ヶ月分の延滞日数÷365)+(納付税額×9.2%×2ヶ月を経過した分の延滞日数÷365)=延滞税
となり、2ヶ月以上を経過して納付した場合の方が、リスクが大きくなります。納税額が大きければ大きいほど延滞税という罰則が大きく響くため、2ヶ月以内に払うということがポイント。できるだけ早く支払うことで延滞税のリスクが下げられます。
申告しない場合は無申告加算税が発生
確定申告はとても難しいため、面倒になって投げ出してしまう人もいたり、帳簿や取引先の情報・確定申告に必要なデータをパソコンなどで管理していたけれど、何らかの衝撃によってデータが飛んでしまって確定申告ができないなど、さまざまな理由があるものです。
しかし、確定申告すらしないという場合は、無申告加算税というものが課せられてしまいます。この無申告加算税は、本来納付すべき税額が50万円までであれば15%、50万円を超えた分に関しては20%にあたる金額を納めなければいけません。さらに延滞税も一緒に支払う必要があり、沢山のリスクがあります。
その他にも払う可能性があるペナルティーとは
無申告であった場合、そのほかにも払わなければいけない税金があります。
☑1.利子税
何らかの理由により、確定申告をできず、期間を延長した場合に課税されることがあります。課税率は原則7.3%となっています。
☑2.重加算税
先述した通り、事業所として営業しているのにもかかわらず、虚偽の申告や脱税・隠ぺいが発覚した場合、罰則として支払うべき税金+35%が課税されます。
確定申告をして、納税をすることは国民の義務です。国を守り、住みやすいようにするために税金は使われています。書類作りが面倒であったり、何らかの問題が生じたとしても、それに対処する方法を考えなれば、本来払う必要のない税金を支払う義務まで課されてしまいます。
確定申告を確実に行うことでリスクを減らすことができるため、無申告は避け、対処法を見出しましょう。
2年連続すると青色申告が取り消しになる
青色申告は、「欠損金の繰越控除」や「青色申告特別控除」など、多くの控除が受けられる申告方法です。しかし、2年連続して無申告や期限内に確定申告書類を転出できなかった場合、青色申告を承認が取り消しとなります。
節税対策に青色申告は必須
白色申告の特別控除額は10万円ですが、青色申告特別控除額は65万円と非常に差が開きます。この55万円の差は大きなメリットです。また、欠損金の繰越控除というのは、赤字であっても翌年に赤字分が繰り越せるため、翌年に利益が出ていたとしても繰り越した赤字分を利益から差し引けるため、節税対策にもなる重要なポイントです。
この青色申告が取り消しになった場合、売上高が多い会社にとっては打撃も大きいため、できれば避けたいところです。
還付の場合は連絡も罰則もない
還付申告は自己申告です。還付の対象となっている部分があったとしても、税務署から「還付対象になっている」という通知すらありません。というのは、個人が1年を通して医療費を多額に支払っていたことや、住宅ローンを支払っているという実態まで税務署が関知していないためです。
そのため、還付申告をしなくても罰則はないのですが、申告をしなければ戻ってくる税金も戻ってきません。還付対象となっているかどうかは自己申告であるため、必ず自分で把握し、還付申告を行う必要があります。
確定申告の期限を守って正しく納税しよう
納税は国民の義務。いくら支払うのが面倒であっても、国の下で生活している以上、支払う義務は個人・企業にあり、その税金を使って国民が住みよい暮らしができるように取り組まれているのです。
確定申告が遅れれば、払わなくてもよかった税金まで支払い義務が課されてしまいます。後ろ指をさされないよう、確定申告の期限を守り、正しく納税をしましょう。