個人事業主の選べる健康保険。自分で賢く正しく選んで損を避けよう

通常、会社に勤めていると、その会社の健康保険に入ることになり、保険の種類を選択する余地はありません。
ですが、個人事業主は健康保険を選ぶことができる場合があるのです。
自分の場合はどうなのか、どちらを選べば得なのか、よく考えて選択しましょう。

個人事業主の健康保険について

個人事業主の健康保険選択肢は4つある

健康保険を選ぶことができる。こういった状況は、実は非常にレアケースです。通常会社に勤めていると、その会社の健康保険に入るしかなく、選択の余地はありません。
ですが、個人事業主の場合、その時の状況に応じて、選べる健康保険の幅が広がる場合があります。

そして、選ぶ保険によって、損得が大きく変わってくるのです。損をしないように、すこしでもメリットが大きいように、現在自分が選ぶことのできる健康保険を把握し、賢く選択しましょう。

まず、個人事業主が選ぶことができる保険は4つで、下記の中から選ぶことができます。
☑「国民健康保険」
☑「健康保険組合」
☑「以前の会社の健康保険を任意継続」
☑「配偶者などの被扶養家族になる」

ただし、すべての個人事業主が、このすべてを選択可能というわけではなく、それぞれに加入のための条件があります。

迷った時はとりあえず任意継続

会社をやめた直後に、どの健康保険に入ろうか迷った場合は、とりあえず前職の保険を任意継続しておく方法もよいでしょう。
社会保険は扶養家族の分の保険料がかからないことから、扶養家族が多い人にとっては、非常に得な保険となっています。
最大2年間継続でき、他の保険に切り替えたくなったら、いつでも切り替えられることも、大きなメリットです。

また、国民健康保険と比べると、多くの場合、社会保険の方が内容が充実していることなども、任意継続のメリットとなります。
任意継続のためには、資格喪失後20日以内に、任意継続の申請が必要になりますので、この期限に遅れないように申請を行うようにしましょう。

また、事業収入によっては、配偶者の扶養家族となって配偶者の保険に入れる場合もあります。
この場合、保険料がかからなくなるなどといったメリットが生じることもあり、非常にお得です。まずは扶養に入ることができるか、確認してもよいでしょう。

国民健康保険の加入方法と保険料について

国民健康保険は市区町村役場に行って加入する

国民健康保険は、特段の条件はなく、日本国民であればほぼすべての人が加入することができます。加入の方法は、市町村の役場に行って手続きをすればOKです。
国民健康保険は市区町村運営の国民健康保険組合に加入することになります。また、国民健康保険は、自分で手続きに行かないと自動的には加入できません。

社会保険の資格を喪失した後に手続きをせずにいると、無保険状態になります。病気やけがなどで医療機関にかかった際は、全額自己負担になってしまうので注意が必要です。
通常、健康保険に加入していると、自己負担は3割ですみます。無保険の場合、万が一入院や手術をした場合は、とくに高額な医療費がかかりますので、保険には必ず加入しておくようにしましょう。

国民健康保険料が高い理由

国民健康保険料は、会社に勤めているときに入っていた社会保険料と比べ、高額に感じることがあります。
この理由は、社会保険料が、事業主と従業員の間で折半していることに対し、個人事業主が加入する国民健康保険は全額負担になるためです。
また、確定申告をする際に、個人事業主は、基礎控除が33万円しかないことも、通常の会社勤務時よりも負担が増えたと感じる点です。

通常の会社勤めのときは、基礎控除が38万円ありますので、基礎控除は減ったと感じられることでしょう。
また、国民健康保険は所得に応じて金額が増えるため、基礎控除が少ないことによって、保険料が増加することもあり得ます。
少しでも保険料を下げるために確定申告をしっかりとし、経費と出来る部分は経費計上して控除額を上げる必要があるでしょう。

高額になる前に保険料は安くする方法がある

国民健康保険が高額にならないようにする対策としては、なによりも、確定申告をきちんとすることです。
経費として計上できる金額が上がることで、課税額を減らすことができます。
また、青色申告をおこなうことで、特別控除の金額が加算されるので、さらに課税額を減らすことができるかもしれません。
保険料を減らす取り組みとして、まずは青色申告の事前申請をし、確定申告に備えるようにするとよいでしょう。

また、国民健康保険組合を脱退して、健康保険組合に加入する方法もあります。
これは、業界内で設立された健康保険の組合に加入するか、事業所単位で設立して加入するか選ぶ方法があります。
すでに、業界内に健康保険組合がある場合は、加入を検討してみるとよいでしょう。

または、法人を設立し節税をはかり、その結果保険料を軽減する方法も考えられます。
法人化することによって、経費として計上できるものが増えますので、課税額を減らすことができるかもしれません。
ただし、法人化することによって、事務作業が増えることもありますので、メリットだけでなくデメリットも生じることでしょう。

国民健康保険料の計算方法

国民健康保険料は、前年の所得に応じて保険料を算出しています。
上限金額は国が一律で定めているので、無制限に高くなることはありません。年間の上限金額は89万円で、市町村によって計算方法は異なることがあるようです。

自分の保険料が実際いくらになるかは、所属の自治体に問い合わせをするとよいでしょう。正確な金額を回答してもらえます。
その保険料を見て、他の保険と、どちらが得になるかを考えるようにするとよいでしょう。
また、これまで扶養してきた家族がいる場合は、その家族の分も、今度は保険料を負担することになります。このことも、計算に入れるようにしましょう。

任意継続について

任意継続は2年間継続可能

退職後も、以前の会社の健康保険を任意継続することができます。任意継続には期限があり、継続可能なのは最大で2年間です。
任意継続をすると、これまで会社が負担していた保険料の半額が自己負担になりますので、単純に負担が倍になることがあります。
これによる負担は大きいので、金額を確認して、検討してから任意継続を決めるとよいでしょう。

任意継続は、申請期限に少しでも遅れると継続できず、一度でも支払いが遅れると強制脱退になるなど、条件が厳しいところがあります。
任意継続したい場合は、期限には十分注意しましょう。

任意継続の保険には最高限度額がある

任意継続の場合、退職前の給与が高いと保険料が高額になるといった不安があるかもしれません。
個人で開業してからすぐは、収入が少なく安定しないことも多いでしょう。そのため、保険料負担が苦しく感じることもあるかもしれません。

社会保険を任意継続した場合の保険料は、標準報酬月額は28万円が上限となっています。このことから、会社負担分を自己負担にしても、一定の金額までで保険に加入することができるようになります。
所得や扶養家族の人数によっては、国民健康保険よりも低額になることもありますので、よく見比べて検討しましょう。

また、任意継続は、いつでもやめて他の保険に移ることもできます。逆に、一度やめてしまうと二度と入ることはできません。とりあえず入っておいても、損は少ないかもしれません。

条件が合えば1人分の保険料で世帯全員適用される

社会保険のメリットのひとつに、扶養家族の保険料を負担しなくてよいことがあります。
配偶者や扶養家族の1年間の収入が130万円を超えていない場合、扶養家族によっては一緒に住んでいる場合など、条件が合えば、1人分の保険料で世帯全員適用されるので、非常にお得となっています。

逆に、国民健康保険には、扶養家族といった考え方がないので、基本的には人数分の保険料を負担することになります。
この点は、社会保険と国民健康保険の大きな違いであり、社会保険を任意継続する、大きなメリットといえるでしょう。

扶養家族が多いのであれば、社会保険を任意継続する方が得になることが多いので計算してみましょう。また、家族も社会保険の福利厚生を享受することができる点も、メリットのひとつと言えます。

自分の事業内容や不要の有無などで条件に合う保険をしっかりと見極めて最適な健康保険を選ぼう

健康保険は、安心して暮らしていくためには、必須のものです。会社に勤めている間は、健康保険を選ぶなどといった発想もないため、なんとなく入っているだけかもしれません。
ですが、個人事業主になることで、選択の幅が広がり、否応なしにどれかひとつを選ばなくてはいけなくなります。

その時に、自分自身や家族、事業に合った保険を賢く、正しく選択するためにも、しっかりと健康保険について知り、最適なものを見極めて、選べるようにしましょう。
もしものときのために、または日常の健康を守るために、健康保険はあなたや家族に寄り添う、非常に大切なものなのです。

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