個人事業主になる知識を習得。新たなビジネススタートの準備をしよう

街の中にあるパン屋や花屋、美容室はチェーン店ではない限り、個人事業主が個人で経営しているお店です。個人事業主とは法人を設立せず、個人で事業を営んでいる責任者のこと。個人事業のメリット、デメリットを習得して、立派な個人事業主を目指しましょう。

個人事業と法人の違い

個人事業は届け出を出せば開業できる


税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」という、いわゆる開業届を提出すれば、個人事業がはじめられます。開業届を提出することで、税務署に個人事業主として申告や納税をすることを通達します。開業届は、提出に手数料はかからず、必要事項を記入するだけの簡単な書類なので専門知識もいりません。

2部作成をして、一部を提出し一部を控えとして持ち帰ります。開業届は事業を行っていることを証明する書類なので、大切に保管しましょう。また、開業届は事業を開始してから一ヶ月以内の提出が必要です。ただし開業届を提出するまでの期間に利益が上がっても問題はありません。開業届けに税務署から押印を貰い、受理されたことが証明されれば、開業手続きは完了です。

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法人は開業に費用がかかる

ほとんど開業費用のかからない個人事業主とは異なり、法人の開業には設立費用が必要です。株式会社の設立には定款作成や認証、法務局に提出する法人登記申請書、税務署に提出する法人設立届などの手続きが必要となり、その際に、25〜30万円ほどの手数料などの諸費用がかかります。法人開設に必要な書類作成には、専門知識がいるものが多いため、一般的に司法書士など専門家にお願いすることとなり、さらに費用がかかることもあるのです。

また、開業費用とは別に資本金を準備する必要があります。今は株式会社の設立は資本金1円から可能ですが、得策ではありません。資本金の金額は、会社の信用性につながります。資本金が多ければ資金に余裕があると判断され、大口の取引きや融資審査に大きく影響し、事業拡大や会社の成長にも大きく関係します。

個人事業主のメリット

資本金がほとんどかからない

個人事業主は資本金の記載が不要のため、資本金はかかりません。法人設立の場合は、法人登記の際に資本金が必要ですが個人事業の開業では登記の必要がないため資本金という概念がなく、まとまったお金の準備は必要ないのです。しかし、商売が軌道にのるまで給料や家賃、交際費や消耗品などの経費等、運営資金が必要ですので準備資金としていくらか準備できているほうが安心です。

やりたい仕事ができる

個人事業主になる一番のメリットは自分のやりたいことが、自分の考えているようにできるということです。個人事業主は事業の経営者になるので、事業内容や事業計画も自身で考え決定します。これは組織の中にいてはなかなかできないことです。自分で考え行動するようになるので、知識が増えるのはもちろん、判断力や決断力が身につき自身のスキルアップにもつながります。

個人事業主は日々のスケジュール、就業時間、稼働日数が自由なのもメリットです。また上司や部下、取引先などの人間関係で悩む心配がないため、精神的ストレスが軽減されます。

会計処理が簡単

法人は書類作成が難しく時間もかかるので税理士にお願いする必要があります。その反面個人事業の会計処理は、簡易帳簿による記帳が認められているため、簡単に行うことができるのです。1年に1回個人の確定申告をするだけなので、煩わしい事務処理は必要ありません。

また会計ソフトを使うことで、より簡単で正確に作業を進めることができます。しかし、確定申告前にまとめて処理するとなるとやはり大変な作業になります。経費の領収書はその都度入力するなど、できる事務処理はこまめに片付けるようにしましょう。

個人事業主は会計処理が簡単といえど、多少の会計知識は必要です。エクセル操作ができたり、簿記の知識があれば大いに役立ちます。会社を経営していくうえで売上げや資産、負債などの管理は必須事項です。経営者として、会計に関しての知識は勉強し、身につける努力はしておきましょう。

所得が赤字だと税金がかからない

個人事業主には、所得税・住民税・個人事業税・消費税の4つの税金を納める義務がありますが、所得に応じて免除される税金があります。

まず、所得税は所得が38万円以下なら免除です。次に、住民税は所得が35万円以下なら均等割・所得割いずれも免除。最後に個人事業税は、所得が290万円以下なら免除です。したがって、所得が赤字の場合は所得税・住民税・個人事業税は支払う必要がありません。

消費税に関しては、開業から2年間と前々年の所得が1000万円以下の場合、納税は必要ありません。ただし所得が1000万を超えていれば、赤字でも支払い義務は生じます。

個人事業主のデメリット

信用が低いから取引先が見つかりにくい


「社会的信用性が乏しい」「業績がいつ傾くかわからない個人事業主は、倒れたら事業も倒れてしまう」「登記もいらないから誰でも開業できる」など、これが企業が考える個人事業主に対してのイメージです。事業が軌道に乗ればイメージは変わってきますが、個人事業主になったはじめの頃は、こういったリスク面ばかりが先行しなかなか取引先がみつからないのが現状です。

また、銀行などの金融機関の融資審査がとおりにくいことや、借入できる限度額も法人にくらべ低いことにも頭を悩ませます。社会的信用をあげるには、まずは事業を継続することが大切です。急成長を目指すのではなく、コツコツと着実に実績を重ね会社の技術・能力・評判を高めていくことで信用をつくっていきましょう。

失業が無いから失業保険が無い

個人事業主は雇用保険に加入できないため、仕事を失っても失業手当ての受給資格はありません。雇用保険とは雇用されている側が対象であり、失業に備える保険です。雇用保険加入者は失業し職を探している一定の期間、失業手当が受給できます。

個人事業主は雇用する側の人間、個人であっても経営者です。たとえ失業しても自己責任と考えられてしまうため、雇用保険に加入し失業手当を受給することはできません。また、一部特例もありますが、同居家族や配偶者も不正受給の可能性などから雇用保険に入ることはできません。

失業保険のない個人事業主のために、小規模企業共済制度というものがあります。倒産や失業のために備える退職金制度です。これは同居家族でも共同経営者として加入することができます。

白色申告などの複雑な記帳が必要

個人事業主になると、確定申告を自分でしなければなりません。確定申告とは、所得に応じた税金を支払う手続きのことで、白色申告と青色申告の2種類があります。

控除額のない白色申告の場合は、簡単な形式での記帳が可能で単式簿記を使用します。控除額のある青色申告は複雑な記帳が必要で、複式簿記を使用します。青色申告の場合、処理が難しいため会計ソフトを使うか税理士など専門家にお願いしましょう。

年金が無いので老後の生活が心配

個人事業主は厚生年金には加入することができないため、国民年金に加入します。国民年金は厚生年金にくらべると保険料が少ないため、将来受給できる年金も少ないです。一方、会社員が加入する厚生年金は、国民年金に厚生年金を上乗せした保険料を納めるため、将来受け取る年金額も高くなります。また厚生年金は収入額に保険料が比例するため、収入が上がれば将来受け取る年金額も多くなります。

国民年金加入者と厚生年金加入者では、将来受け取れる年金額に大きな差が生じることになります。将来が不安なら国民年金基金の加入や国民年金にプラスした備えを考え、受給金額を増やしましょう。

大企業はなかなか個人事業と取引をしない

企業が個人事業と取引をする際、仕事内容によって源泉所得税が発生する場合があります。この場合企業は、個人事業主に源泉所得税を差し引いた報酬額を支払い、個人事業主の源泉所得税を国に納めます。つまり、法人同士での取引では必要のない、税金に関しての事務手続きが必要になります。

また、個人事業は誰でも簡単にはじめられ、財務諸等の公開義務がないことなどから、社会信用度を図る指標がないとし、信用問題から個人事業とは取引しない企業もあります。こうした社会的信用や税金に関しての手続き面などから、法人同士の取引にこだわる企業もあるのです。

個人事業主が払う税金について

収入から必要経費を差し引いた利益の所得税


所得税とは、1年間の所得に対して課せられる国税です。会社員の場合は、会社が毎月給料から徴収し、一括して国に納めてくれますが、個人事業主の場合は自分で計算、申告、納税をしなければなりません。

所得税は、「1年間の収入合計-必要経費-所得控除-青色申告特別控除」から算出される「課税所得」が基準となります。必要経費とは商品の仕入れ代金や人件費、通信費や消耗品など事業に必要だったお金のこと。所得控除とは全員一律で差し引かれる基礎控除38万円に加え、配偶者控除や扶養控除、生命保険控除などを指します。

青色申告特別控除とは確定申告を青色申告する事業主のみ引かれる、最高65万円の控除のことです。収入からもろもろ差し引かれ算出された課税所得に対し、速算表通りに税率がかけられ、所得税が決まります。税率は累進課税制度により、所得の合計金額が大きいほど高くなります。

納税期限は、2月16日~3月15日まで。納税方法は、申告納税制度が採用されており、通知書は届きません。自ら税務署へ出向き、現金で一括納税します。またネットバンキングでの送金や銀行口座からの口座振替での納税も可能です。口座振替の場合は支払日が少し遅れます。

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事業主個人に課税される住民税

住民税とは地域で必要な費用を、その地域に住んでいる住民みんなで分担して収めるために課せられる地方税のことです。地方自治体が所得税の確定申告をもとに算出するため、自分で計算する必要はありません。

住民税は道府県民税と市町村民税の2つが含まれ、それぞれ均等割と所得割で構成されており、その合計金額が徴収されます。均等割とは、地域によって金額は違いますが全員平等に支払う金額。所得割は、納税者の所得に応じて金額が変動します。住民税額の目安は、課税所得金額の約10%です。

納税方法は6月に一括納付か、6月、8月、10月、翌1月の4期にわけた分割納付。市区町村役場から、6月の上旬から中旬に納税額通知書が送付されてきます。納税期限は納付書に記載されており、金融機関や直接役場で支払います。また、納付書にバーコードがついている納付書はコンビニでも支払い可能です。

業種によって納税額が違う個人事業税

個人事業税とは個人がお店を経営したり、事務所を開いたりと、事業を行ったいることに対し課せられる地方税です。所得税の確定申告後に地方自治体が算出するため、自分で計算する必要はありません。

個人事業税は「1年間の収入合計-必要経費」の合計と「事業所得金額」を基準に算出されます。この事業所得金額から事業控除290万円が全員一律で差し引かれ、その金額に一定の税率を乗じ算出されるのが個人事業税です。税率は3~5%で、事業内容によって異なり大きく3つに設定されています。

納期方法は、基本的に8月と11月の分割納付。地域によっては一括納付か分割納付か選べます。8月頃、納税額通知書が送付されてくるので、納付書に記載されている期限通りに金融機関で支払います。納付書にバーコードがついているものはコンビニでも支払い可能です。尚、個人事業税を納める必要がない個人事業主には納付書は届きません。また、個人事業税は経費(租税公課)にできるので、忘れず経理処理するようにしましょう。

仕入れや経費で支払った消費税を差し引いて納税する消費税

消費税とは、商品やサービスなどに課税され、消費者が負担する国税です。個人事業主は、消費者や企業から商品やサービス代金に加え消費税を請求し、一旦預かり国に納めます。消費税は自ら算出し申告、納税しなければなりません。

消費税は「消費者や企業から預かった消費税-仕入れや経費などで支払った消費税」から算出される差額を納税します。尚、開業して2年間と、前々年(2年前)の売上高が1000万円超えていない個人事業主は免税されます。ただし、年間売上が1,000万円を超え、なおかつこの期間において給与等の支払いが1,000万円を超えた場合は納税しなければなりません。

納税期限は3月31日まで。自ら税務署に出向き、現金一括で納税します。口座振替でも納税は可能ですが、支払日が少し遅れます。

個人事業主になるための準備

取引先の挨拶のために名刺を作る


名刺は、起業したことを知らせる大切な挨拶ツールです。事業を開業したらまず、銀行や取引先、お世話になる知人に挨拶が必要になります。これから事業をスムーズに進めるためにも、名刺交換をすることで、名前と顔を覚えてもらい事業内容や会社名を宣伝しましょう。

名刺には名前や会社名、電話番号、住所、アドレス、ホームページのURLなどを記載します。名刺屋さんに頼めば発注後数日で出来上がり、数百円~数千円と低コストで作成できるので簡単に準備ができます。

会社のアピールのためにホームページを作る

なんでもネットで調べる今、営業ツールとして、ホームページを作成することは必要不可欠です。ホームページは、会社や店舗の案内、商品やサービスの魅力を伝えるなど、色々な情報を発信します。それは顧客や個人、企業に対してのアピールとなり、集客や取引につながります。

ホームページは、できるだけ多くの人に見てもらう必要があります。初期投資はかかりますがホームページ作成会社に依頼をして、会社や店舗のイメージに沿ったデザインで、好印象でわかりやすいホームページを準備しましょう。

取引先等の金銭のやり取りのために個人事業用の銀行口座を作る

できれば開業前に個人事業用の銀行口座を開設し、事業で必要な現金の出し入れを統一しましょう。事業をはじめると、経費や企業との取引に際して多くのお金が出入りするようになります。きっちり事業用の銀行口座を準備しておくことで、事業でのお金の流れを明確にし、プライベートと仕事がしっかり区別できるようになります。そのため、経理処理や確定申告などがスムーズにおこなえます。

銀行口座の名義は個人名と屋号で開設し、事業用とプライベートの区切りをしっかりつけましょう。また、口座を開設する銀行選びも重要です。都市銀行、地方銀行、ネット銀行それぞれメリットがあります。将来銀行から融資を受けたい、地域密着型の銀行で事業について相談したい、支払いが多いから振り込み手数料が安いところがいいなど、自分の事業を今後どうしていきたいかで決めるようにしましょう。

会社のために使用する個人事業用のクレジットカードを作る

個人事業用のクレジットカードを作ることで、仕事の支出とプライベートの支出をしっかり区別します。消耗品、交通費、交際費など仕事をする上でたくさんの支払いが生じてきます。仕事関係の支払をするときは、事業用のカードで統一することを徹底すれば、経理処理もだいぶ楽になります。また、カード会社が支払金を一旦立て替えてくれるので、小口で現金を用意する必要がありません。

クレジットガードは毎月明細書が届きます。明細書を見れば、経費内容、支払い金額、使った日時まで確認することができるため、帳簿づけが助かります。明細書は確定申告の際、経費の証明として使えるのでしっかり管理しましょう。

個人事業用のクレジットカードは、年会費がかかっても経費処理できます。持つカードが増えるというデメリットもありますが、経費管理や経理処理のために1枚準備しましょう。

個人事業主になるための届け出を提出する

個人事業主になるためには「個人事業の改廃業等届出書」を税務署に提出します。A4の用紙で必要箇所の記入のみと簡単に作成ができます。この開業届の提出が終われば個人事業主です。ただし、安全や防犯、衛生上の理由で、保健所や警察の認可が必要な業種もあるので、自身の事業内容について調べる必要があります。

また、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出すると節税効果があります。任意なので必ず提出が必要な書類ではありませんが、最大65万円の控除が受けられるメリットがあります。

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従業員を雇う場合は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出が必要です。会社は給料を支払うとき、源泉徴収をして所得税を一旦預かり、税務署に納める義務があります。従業員がいない場合は提出は必要ありません。

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個人事業から会社設立するメリット

株式を発行して出資者を集められる

株式会社は株式の発行ができるため、多くの個人や他企業から、会社の活動に必要な資金を集めることができます。資金を提供してくれる出資者が多くなれば、会社の活動費が増え、サービスの向上やより良い製品の開発につながります。また、会社の活動の中で出た利益は、出資者に配当金として支払われます。

個人事業では資金がかかりすぎて挑戦できない事業が、出資者から資金を集めることで挑戦できるようになり、会社の発展に大きくつながります。

個人の人材募集より会社の方が応募が多い

個人事業を法人化することにより、会社自体の信用度や安定感が高まるため、求人への応募率がアップします。求職者が仕事を選ぶ際、会社の規模や給料面、福利厚生、就業時間などあらゆる面に注目します。個人事業より法人のほうが体制がしっかり整っている印象があるため、求職者に安心感を与え、応募へとつながるのです。

応募率が高まれば、会社側はより多くの人材と出会うことができるため、採用の幅が広がり、会社が求めている人材を採用できる可能性が高まります。将来、事業を組織化しようと考えている人は、法人化も事業拡大に向けた一つの手段です。

自分に合った働き方を見つけることが大切

個人事業主は、自由な環境で自由に仕事ができます。好きなことや得意なことが仕事にできるわけですから、楽しいワークスタイルが想像できますよね。事業が軌道に乗れば、法人化し、組織のトップになるなんてことが近い将来あるかもしれません。

しかし自由であるが故に、全てが自分次第だということを忘れてはいけません。やる気のない日も、辛い時も、自分自身を厳しく管理する必要があります。これは、組織の中で育ってきた人にはなかなか難しいことです。どういった環境で働くことが自分に合っているのかをしっかり見極め、新たな一歩を踏み出しましょう。

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