企業ならではの悩み、法人税の節税。簡単なようで実は気を付けないといけないことや、年間の節税額等に頭を悩ませている経営者も少なくありません。法人税を納めることは大切なことです。しっかりとした節税方法で、社会に貢献できる企業を目指しましょう。
目次
知っておきたい基本的な法人税節税方法
役員報酬を最適な一定金額に設定する
一般的に中小企業が節税を考えた際に、1番初めに役員報酬の金額をしっかり決めることが重要といわれるほど、とても大切なものになります。役員報酬は定期同額給与にすることによって損金に算入することが可能です。
定期同額給与とは毎月同じ金額を支給することで、ひと月のみ役員報酬の金額を上げたとしても節税にはなりません。また役員報酬を最適な金額に設定することによって実質的な現金の支出はなく、正当な節税をすることができます。
旅費規程の作成
法人の場合、出張旅費規程を作成することによって役員や従業員の出張の際に日当を支払うことで損金に算入することができるので、節税することが可能です。この場合の日当とは出張手当ということになり、新幹線代や飛行機代、ホテル代などの実費とは別に、現金で支給されます。
また出張手当は消費税の計算上、課税仕入として取り扱うことが可能なため消費税の節税もすることができ、実費の交通費などは経費になりますので、法人から個人に現金を動かすことで多くの節税効果が期待できます。
節税投資商品と合わせて考える
節税投資商品のなかでも、生命保険が節税効果が出やすく一般的な方法です。生命保険には掛け捨てタイプのものや返戻金付きなどの種類があります。掛け捨てタイプのものは、保険料の全額を費用として計上することができ、法人加入することで個人加入するよりも安く保険を購入することが出来ます。
返戻金付きの生命保険にはタイプによって保険料を全額費用にすることができ、なおかつ一定期間後に支払った保険料の60%から70%が返ってくるものも。
また生命保険に加入することで起こるメリットは多く、節税しながら保険の内容に応じた保障が受けられるうえに、商品や加入期間にもよりますが緊急時などで、急な資金繰りで困った際に使える予備資金を帳簿外に貯めておくこともできます。
決算直前で予想以上の利益が出た際の節税として、1週間から2週間程度で審査から加入、加入後は損金として計上できるため期間のない場合でも節税することが可能です。
法人税節税と対策時期の重要性
未払い費用や短期前払費用の損金計上
まず未払い費用とは営業取引以外の継続的な取引から生じた確定債務ではあるが、決算日までに支払いが到来していない費用のことをいい、実際の支払日を待つことなく今期に未払い費用として損金計上することが可能です。
また年度内に来年になってから支払う費用を計上することが出来るので、年度末の駆け込み的な節税にもなります。一般的に会社負担分の社会保険料、固定資産税、従業員給与、水道光熱費、保険料、電話代などが未払い費用として計上することができます。
前払費用とは、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、事業年度終了時においてまだ提供を受けていない役務に対するもののことをいいます。その中でも支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものについては、短期前払費用として計上することが可能。
しかし短期前払費用として計上するためにはいくつかの要件を満たす必要があるのでしっかりと調べたうえで計上することが大切です。一般的に会社や事務所などの賃料や、保険料等を短期前払費用として計上することが出来ます。
どちらの方法も年度末の駆け込み的な節税として有効的ですが、年間を通した節税計画を明確化することで、しっかりとした節税につながりますし、また年度末の節税もしっかりと行うことが可能になります。
支出時期の調整が黒字幅を下げる
普段からの節税対策として、各種費用の支出のタイミングを調節することはとても重要になってきます。黒字による益金の増加が見込まれそうな年度には、来年度などで行う予定だった設備投資や修繕などを前倒しすることで、設備投資費用や修繕費を損金へ算入することが可能になり、黒字幅を下げることができます。
法人税節税対策における注意点
節税効果の永久性に着目する
一口に法人税の節税といってもさまざまな方法があり、節税効果には、永久に節税効果のある方法、一時的な節税効果がある方法があります。
永久的に節税効果のある方法
未払費用の損金計上、短期前払費用の損金計上、各種費用の支出の時期の調整、出張旅費規程の整備などです。もちろん未払費用、短期前払費用については、年末の駆け込み的な節税としても使える方法でもありますが、未払費用計上は月ごとにも使える節税方法でもあるので年間の安定した節税にも繋がります。
消費型節税、投資型節税
一時的に備品の購入や不動産などの購入で損金を多く増やす方法や、投資をすることで法人税から一定額の控除を行う方法、保険などに加入することで一定額の控除などを行う方法はあくまでも一時的で、現金が必要になる方法です。
一時的や、年末の駆け込み的な方法として行う場合にはよいでしょうが、備品や不動産の購入、投資や保険の加入などは本当に必要であるかなどを見極めることも大切になってきます。
しっかりとした節税を考えるのであれば永久性のある節税のほうがよいでしょう。
将来的に必要な厚生年金を考慮する
株式会社等の法人は必ず加入している厚生年金。10年間以上保険料を収めた方が65歳になったとき、国民年金に上乗せして厚生年金が支給される仕組みになっています。
また毎月の保険料は給料から天引きで、支払は会社と折半というものが一般的です。遺族年金や障害年金などにより加入者に万が一のことがあった場合などにも家族、加入者にきちんと支払われる仕組みになっています。
定額支給である国民年金とは違い、厚生年金は平均月額報酬に比例し、また計算方法が本来水準方式、従前額保証方式など複雑なため年度による水準の変化や計算方法の変化によって、受給額にも変化があります。
しかし支払った保険料よりも圧倒的な給付額であるともいわれ、将来的にどれぐらいの受給額が必要であるかを考慮した上で、月の報酬額を決定することが大切です。
キャッシュが必要な節税対策
一時的な節税や課税の繰り延べは、益金の計上と同じタイミングで同じぐらいの損金の計上が必要になってきます。損金を計上するためには基本的にキャッシュが必要となります。
しかしその一方で不必要な備品等の購入や保険等の加入は損金に計上出来ますが、経営上必要もないのに出費するのであれば、キャッシュフローの無駄遣いということにもなりかねません。
一時的に節税が必要だからと、むやみやたらに出費をするのではなく、経営していくうえで本当に必要であるかをしっかりと確かめたうえで、キャッシュフローに無理のない節税を行うことが大切です。
誤った節税対策がある
ひとまとめに節税対策といっても誤った知識で節税を行ってしまった際、犯罪になってしまうことがあります。代表的なものとしては架空人件費の計上、売り上げを抜く行為など。
架空人件費の計上とは、実際は働いていないのにも関わらず、架空の従業員に給与を支払ったとして計上することです。しかし実際は従業員に支払っていないので誤った節税になってしまいます。同じように売り上げを抜くことも実際にあった売り上げをなかったことにする行為ですので、誤った節税です。
また悪質な不正にはとても重いペナルティが科せられます。脱税は刑事事件となるため、所得税法、法人税法などの各税法に基づき、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます。
延滞税や加算税という罰則もあり、納付までの延滞料がかかってしまったり、故意に脱税を行った場合には、重加算税として実際に納付する35%から40%を納付しなければいけなくなりますので、注意しましょう。
正しい節税対策が社会的信用に繋がる
個人事業主との大きな違いとして、社会的信用は法人企業の最大のメリットといえるでしょう。会社の経営をしていく中で、お客様はもちろんのこと、銀行や仕入れ先など新たに契約する際などにも会社の内情が、しっかりと目の行き届いた安心のあるものであることが大切になってきます。
法人企業である以上、法人税を支払うことはとても大切なことです。しかし節税を行うことによって必要最低限の金額に抑えることは、企業を経営する多くの経営者が目指すことであると思います。
そこでしっかりとした法人税や節税の知識を身につけることで、年間を通してそれぞれの企業に合った方法で正しい節税を行うことにより、会社の収支のバランスが安定し、また社会的な信用にも繋がっていくでしょう。