慣れない帳簿付けは、簿記の知識がなければ難しく感じてしまうこともあるのではないでしょうか。決算に向けての仕分けは、毎日の仕訳がベースです。まずは決算時にあれこれ悩むことのないよう、最低限必要な知識と仕訳のルールや基本を理解しておきましょう。
目次
仕訳の基本
取引を借方と貸方に分類して記載
毎年の確定申告で決定される「法人税」。正しい税金を収めることは、企業に課せられた義務でもあります。法人税は、益金ー損金によって算出される「所得金額」が課税対象となっています。そのため、決算に向けた日々の仕訳業務が必須となるわけです。
仕訳は、会社が行った取引すべてをひとつひとつ記載するものです。商品の取引だけでなく、事務用品の購入や、毎月の水道光熱費の支払いなども含まれます。
まず、仕訳を行う際の最初の考え方としては、取引を「2つに分割」することです。例えば、100万円でパソコン3台を購入したとします。この時の考え方は、
☑パソコン3台を手に入れた
☑100万円支払った
ということになります。
次に、この2つの考え方を仕訳帳へ記載すると考えてみましょう。仕訳帳は、「取引が発生した日付」、「勘定科目」や「借方」と「貸方」、「金額」を記載することになっています。
ただし、この取引を詳しく文章化するわけではありません。実際にお金や物が増減した取引の内容を勘定科目というグループに入れて取引内容を記入していきます。
たとえば、会社で使うボールペンやコピー用紙は「消耗品」、トイレットペーパーや細々したものは「雑費」などといった勘定科目に振り分けることで、まとまりのある帳簿を管理することができるようになります。
これらの勘定科目を仕訳帳の借方、貸方にそれぞれ当てはめて記帳することが仕訳の基本といえるでしょう。
借方と貸方の合計は必ず一致
仕訳帳における左側の欄を「借方」、右側の欄を「貸方」といいます。それぞれのグループに整理した勘定科目は、借方と貸方にわけて記載します。
借方と貸方のそれぞれの詳細は、以下の通りです。
☑借方:資産の増加・負債の減少・資本の減少・費用の発生
☑貸方:資産の減少・負債の増加・資本の増加・収益の発生
購入したパソコンの勘定科目を「什器備品」として、上記の例を仕訳してみると、
借方には、「什器備品 1,000,000」と記載され、貸方には、「現金 1,000,000」が記載されることになります。この時、借方と貸方の合計金額は、必ず一致することになります。
様々な仕分け
現金や売掛金などの資産
勘定科目には、取引内容を端的に表すための様々な科目があります。勘定科目は、帳簿をつける上での共通事項となっており、誰が見てもすぐに明確な取引が確認できるようになっています。
そして、それらの細かな勘定科目は、「資産」、「負債」、「資本」、「収益」、「費用」の5つの大きなグループに分けられることになります。
このうち、「資産」とは、会社が所有する財産のことです。資産には、現金、預金、小口現金、売掛金、受取手形、繰越商品、貸付金、未収金、前払金、立替金、仮払金、などの「流動資産」や、土地、車両などの「固定資産」、そして創立費や開業費などの「繰延資産」といったものがあります。
繰延資産については、数年にわたって減価償却される費用となります。
資産の仕訳ルールは以下の通りです。
☑借方:資産の増加
☑貸方:資産の減少
未払い金や借入金などの負債
「負債」とは、会社が負っている債務のことです。資産に対してマイナスの資産であり、返済義務を伴うもの。買掛金や未払金、短期借入金、支払手形、貸倒引当金、前受金、預り金、借受金などの「流動負債」や、長期借入金や社債といった「固定負債」などがあります。
負債と聞くと、マイナスなイメージを感じることもあるかもしれません。しかし、企業したばかりの会社では仕入れや運営費用などのランニングコストなどの費用が不足しがちで、資金が必要となります。さらに新規事業に投資したり、会社規模を大きくする上では負債は欠かすことのできないものです。
負債の仕訳ルールは以下の通りです。
☑借方:負債の減少
☑貸方:負債の増加
資本金などの資本
新しい会社を設立したり、企業したりする際に元となるお金のことを「資本金」といいます。資本金は、事業を始めようとした時に準備しておく自己資本のことで、その金額の大きさによって会社の大きさを示すものとなります。
つまり、資本金が大きい企業は、会社の信用度も高まるので、銀行からの融資を受けやすくなるなどの影響があるのです。より大きな取引をするためには、100万円の資本金よりも1,000万円の資本金を出している会社のほうが有利となるわけです。
資本の仕訳ルールは以下の通りです。
☑借方:資本の減少
☑貸方:資本の増加
ここまで先述してきた「資産」、「負債」、「資本」の3つは、決算書の1つである「貸借対照表」を作成する際に欠かすことのできないものです。貸借対照表は、会社の財産についての状況を明確に知るためのものであり、会社がどんな状態なのかを判断する書類となります。
還付金や売上高などの収益
会社が営業活動で得た収入のことを「収益」といいます。売上、受取手数料、受取利息、商品売買益、受取配当金などがあります。
ちなみに売上といっても、物を売るだけではありません。サービスによる対価も、もちろん会社の売上となります。
簿記上の収益とは利益を生み出す元となる収入総額のことで、収益から費用を差し引いたものが、会社の「純利益」となります。
収益の仕訳ルールは以下の通りです。
☑借方:収益の減少
☑貸方:収益の増加
給料や仕入高などの費用
収益を得るために支払われた出費額のことを「費用」といいます。会社が収益を得るためには、商品の仕入れや、人材の育成などさまざまな費用がかかります。
費用には、仕入れ、給料、通信費、旅費交通費、水道光熱費、広告宣伝費、保険料、支払利息、支払い家賃、減価償却費などがあり、これらの費用の合計額は収益から差し引くことになります。
費用の仕訳ルールは以下の通りです。
☑借方:費用の増加
☑貸方:費用の減少
つまり、収益額が大きく、費用が少ないほうが会社の利益額は大きくなるということになります。
「収益」と「費用」は、決算書の1つである「損益計算書」を作成する際に欠かすことのできないものです。損益計算書は、1年間にどれくらいの利益額があったのか、会社の営業成績がすぐにわかる決算書として作る必要があります。
仕訳の際のポイント
勘定科目については統一されたルールはない
一般の経理などで使われていて基本となっているのは、「複式簿記」でしょう。大切なのは、この複式簿記によって決められたルールを守ることです。基本的に仕訳は、先述した5つのグループごとに行うことになります。仕訳自体の手順や詳しいルールは、慣れてしまえばさほど難しいものではありません。
また、仕訳に伴う勘定科目について、統一されたルールはありません。大まかな科目内容に従って記載すれば特に問題はないと考えてよいでしょう。例えば、購入したコピー用紙を「消耗品」に分類するか、「事務用品費」に分類するかは、その会社によって異なる場合があるということです。
仕分け後の勘定科目はその後持続させる
コピー用紙は「事務用品費」に記載すると決定した場合、その後の仕訳では、コピー用紙は事務用品費であることを持続させる必要があります。まずは、このルールに基づいて仕訳を行っていくのが基本となります。
また勘定科目は、一般的なものから商業簿記や工業簿記で使用するものもありますので、自分の勤め先の会社ではどのように仕訳しているのかをよく理解しておきましょう。
難しく考え過ぎずに売上や経費を明確にする
ここまで仕訳についての基本的なルールや、記帳の際に必要な勘定科目について触れてきました。
仕訳は、すべての重要書類を作成するためのベースとなるものです。まずは、あまり難しく考えずに日々の売上や仕入れ、経費などをきちんと記載することを考えましょう。
毎日の積み重ねによって次第に余裕が持てるようになり、次のステップに踏み出すこともできるはず。まずは、慣れることが大切です。