健康保険被扶養者(異動)届の基本と提出のポイント。再確認が大切

健康保険被扶養者(異動)届はどんなものなのか分からない人もいますよね。各健康保険ごとに規定も変わりますので、一度確認してみることも大切です。提出時に必要な書類や提出するタイミングなどポイントを押さえながら基本をおさらいしてみましょう。

健康保険における「被保険者」と「被扶養者」について

健康保険に実際に加入している方が「被保険者」

まずは言葉について学んでいきましょう。あまり使い慣れていないと、この「被」という字の意味など考えず保険にかかっているのだから「保険者」としても良いのではないだろうかと思ってしまいがち。

ですが単に「保険者」とすると意味は社会保険(健康保険)の場合、政府または健康保険組合(協会けんぽ)のどちらかを指している言葉です。これに「被」という字が付くことで、〜されるという意味がありますので「被保険者」は保険金を納めてその保険を受けられる人のことです。

会社員は健康保険組合の「社会保険」に加入し、自営業者や国民健康保険組合の事務所に使用されていたり、社会保険に該当しない場合は政府の「国民健康保険」に加入します。

また被保険者になれる人はどんな人かというと適応事業所に使用されている人は、国籍・性別・年齢・賃金の額などに関係なくすべてなれます。社会保険と国民健康保険とのくくりの違いはありますが、被保険者になることができます。

被保険者に扶養されていて被保険者の健康保険に加入している方が「被扶養者」

では次に「被扶養者」についてですが、先ほどと同じように意味としては、被保険者に扶養されている人のことです。ですので被保険者の健康保険にそのまま加入することになります。

健康保険では被保険者が病気になったり怪我をしたりした場合や亡くなったとき、出産した場合に保険給付が行われますが、その「被扶養者」ですので同じように病気や怪我、死亡、出産について保険給付がされるのです。

この被扶養者の範囲は大きく分けて2つあり、それぞれ以下の通りとなります。

☑被保険者の直系尊属、配偶者(この場合の配偶者は戸籍上婚姻届がない事実婚や内縁関係も含みます)、子ども、孫、弟妹、兄姉で主に被保険者に生計を維持されている人。

☑被保険者と同一世帯で、主として被保険者の収入により生計を維持されている人。被保険者の三親等以内の親族、配偶者の父母が含まれます。

この被保険者の収入により生計を維持という基準は、対象者が同一世帯に属しているか属していないかで変わってきます。属している場合は、対象者の年収が130万円未満(60歳以上や障碍者厚生年金受給程度の障害者の場合180万円)かつ被保険者の年収の2分の1未満である場合は基準内となります。

同一世帯に属していない場合は、対象者の年収が130万円未満(60歳以上や障碍者厚生年金受給程度の障害者の場合180万円)かつ被保険者からの援助(仕送りなど)による収入額より少ない場合は認められます。

各健康保険で「被扶養者」の規定が異なる

被保険者が加入する健康保険ごとに「被扶養者」の規定条件が異なりますので、加入するにあたっては必ず条件を確認しましょう。出産手当金や失業給付金も収入の一部と考え、すべての合算で年間130万円の収入を超えてしまうと「被扶養者」から外れてしまう場合もあるのです。

他にも金額にかかわらず、失業保険を受給している期間は「被扶養者」として認めないという場合もあるようです。「被扶養者」として認められない場合は、国民健康保険に加入し、それまで加入していた社会保険は被扶養者でなくなった時点までさかのぼって削除されます。

ですので、被扶養者であるための条件などを確認する為にも今一度、被保険者の健康保険組合に確認することが望ましいです。

ちなみに国民健康保険にはそもそも「被扶養者」という概念がありません。出生して住所が決まった時点で被保険者となるからです。ですので国民健康保険の場合はそれぞれに保険料を納めることになります。

健康保険被扶養者(異動)届とはこんな時に提出する書類

新たに被扶養者を追加したい

この健康保険被扶養者(異動)届は、大きく分けて3つの場合に健康保険組合や社会保険事務所に提出することとなります。まずは新たに被扶養者を追加したいという場合に提出します。

新しく扶養家族に追加するというタイミングとはどんなときなのかというと、被保険者が結婚をし配偶者ができてその配偶者が被扶養者になる場合や、子どもが誕生して子どもを被扶養者とする場合などが考えられます。

既に被扶養者となっている方を扶養から削除したい

次に健康保険被扶養者(異動)届を提出するタイミングとしては、すでに被扶養者として被保険者の健康保険に加入している場合に被扶養者から外れる、いわゆる削除する場合です。

被扶養者でなくなる場合とは、被扶養者であったが、収入を増やしたい為年収130万円を超えて配偶者が働く場合や、被扶養者となっていた子どもが独立し、社会に出て自ら働く身となった場合などがあげられます。

既に被扶養者となっている方の記載事項に変更や訂正がある

3つめはすでに被扶養者として加入しているが記載事項に何らかの変更や訂正がある場合です。確認のために現在登録されている内容が印字されて手元に来たときに、名前の漢字や、生年月日の印字にミスがあれば訂正します。

他にも子どもの場合は、転校したり、学年が変わったときに変更します。このようなタイミングで記入訂正などをして、手続きをする可能性の高いものが「健康保険被扶養者(異動)届」の提出です。

こんな時は加入している健康保険の規定を確認する

子どもの出生

子どもの出生があった場合、被保険者の事業主または担当者に「子どもが生まれたので扶養の手続きをお願いしたい」ということを伝えれば「健康保険被扶養者(異動)届」が渡されますので、それと同時にその子を扶養に追加するために必要な書類について、一緒に確認をとりましょう。

また子どもの出生となれば、被扶養者として加入していれば配偶者である妻が健康保険組合から「出産育児一時金」を受け取ることができます。金額的には1児に付き42万円が支給されます。(産科医療補償制度に加入されていない医療機関等での出産の場合には40.4万円が支給)

この支給にも条件があり、妊娠4ヶ月(85日)以上で出産をしたこと(早産・死産・流産・人口妊娠中絶も支給対象として含まれます)となっています。ですので子どもを授かったときに、健康保険の規定を確認して、必要な書類をそろえたり、速やかに手続きを行えるようにしましょう。

同居する家族(親族)が増えた

同居する家族または親族が増えた場合にも確認が必要です。一時的に退職した家族がいる場合や、該当する親族の範囲である三親等までの親族の生計を被保険者の収入で行うときなどに、被扶養者を追加しなければならない場合です。

確認して親族の範囲が該当する範囲なのか、加入条件である、年収についても範囲内に収まっているか、それぞれ健康保険組合のHPなどで条件を見ながら確認することができますので、ご自身でまず判断しましょう。

また同居というくくりですので、対象となるのは被保険者の三親等以内の親族、被保険者の配偶者の父母。配偶者がもし亡くなった場合、その後の父母および子については同居していて被保険者の収入によって生計を維持されている人が、基本的な加入条件に当てはまる対象者になります。

被扶養者が就職した

被保険者の保険に加入していた被扶養者に就職や転職などがあった場合、別の健康保険に加入し被扶養者だったものが被保険者となります。その場合元々被扶養者として加入していた健康保険から削除する手続きが必要となります。

この場合は削除の申請となりますので、まずは新しい就職先で健康保険に加入をし、その就職先から保険証が交付されてから、速やかに被扶養者から削除をします。

そのためには提出書類として「被扶養者異動届(減)」、「該当する被扶養者の保険証」、「新たに交付された保険証のコピー」が必要となります。各健康保険協会で手続き方法も変わるので確認しましょう。

被扶養者の収入が増えた

配偶者などの被扶養者の収入が増え、被保険者の健康保険組合の収入条件を超えてしまった場合は、被扶養者とはなれませんので削除の手続きをとることとなります。まずは配偶者などの勤め先で社会保険に加入できるのか、確認が先になります。

加入できたのであれば被扶養者が就職した場合と同じように「被扶養者異動届(減)」、「該当する被扶養者の保険証」、「新たに交付された保険証のコピー」を用意して被保険者の被扶養欄から削除の手続きを行いましょう。

もし社会保険に加入ができない場合には、国民健康保険の加入となりますが、その際には市町村・区役場にて手続きを行います。加入していた社会保険の資格喪失証明書が必要となったりしますので、窓口で確認または電話で確認して必要なものをそろえましょう。

被扶養者が後期高齢者医療制度の被保険者になった

被保険者の被扶養者が、75歳以上および一定の障害がある65歳以上が加入する医療制度の後期高齢者医療制度は、加入者全員が「被保険者」となります。それまで被扶養者であった被保険者の父母、祖父母など対象者となった場合には、それまでの被扶養者から削除する手続きが必要となります。

後期高齢者医療制度に関しては「広域連合」と呼ばれる都道府県ごとの全市区町村が加入しているところが運営しています。ですので保険料の決定や、医療費の支給は広域連合が行い、保険料の徴収などについては市区町村窓口で行います。

75歳が近づく誕生日の1ヶ月前を目安に、加入している健康保険組合から後期高齢者医療制度への加入について個別で案内が来ますので、その案内にしたがって加入手続きを行います。

後期高齢者医療制度に加入する対象者がいる場合には、被保険者が必要書類を用意し手続きをして、削除をしましょう。

被扶養者が結婚した

被扶養者となっていたものが結婚した場合は、結婚した他の被扶養者ないし被保険者となりますので、同じように削除の手続きが必要となってきます。まずは新しく健康保険に加入する手続きを済ませた上で、他の被扶養者削除の手続きと同様に必要書類を用意しましょう。

また、健康保険組合によって手続きの順番がありますので、必要であれば、被扶養者の氏名変更の手続きを行って削除を行うなど、一度加入している健康保険組合に問い合わせをしましょう。

被扶養者と離婚した

被扶養者であった配偶者と離婚した場合、被扶養者の条件に当てはまっていないのであれば削除する手続きをとります。一番考えられるのが被保険者がその被扶養者の主たる生計維持者でなくなるという理由が考えられます。

この場合、配偶者であった元被保険者の資格失効日は「離婚した日」となりますのでご注意ください。またこの中に子どもがいる場合は、どちらが親権を持つか、またはどちらが生計維持者になるかによって手続きが変わってきます。

被保険者のそのままの被扶養者としておくのであれば、配偶者のみ削除する手続きを取り、子どもも被扶養者からはずすのであれば一緒に削除の手続きをします。ですので後者の場合、配偶者が働いているときは、早い段階で子どもを配偶者側の健康保険の被扶養者にしておくのが望ましいです。

また共働きでない場合でも、国民健康保険への速やかな変更も考えなくてはなりません。子どもは大人よりも病気や怪我をしやすいですので迅速に行動しましょう。

被扶養者が同居から別居となった

被扶養者だったものが同居から別居になった場合、健康保険組合に書類を提出することとなりますが、被保険者の三親等内の親族や配偶者の父母など同居していることが条件の場合は、別居した時点で被扶養者から削除する手続きが必要となります。

また、別居となった場合の被扶養者の条件でもある収入が被保険者からの仕送り額未満でなくてはならないという条件に変わりますので気をつけましょう。

被扶養者の別居している住所が変更になった場合も、住所変更の連絡を加入している健康保険組合に「健康保険被扶養者(異動)届」を提出しましょう。加入している健康保険組合によっては同居から別居になった理由によっては必要な書類の提出を求められる場合もありますので、確認しましょう。

健康保険被扶養者(異動)届を提出するには

健康保険被扶養者(異動)届を「記入」するのは被保険者側

基本的に健康保険被扶養者(異動)届を記入するのは被保険者側になります。提出する為の事象が起きてから事業主などにその旨を伝えて用紙をもらうか、健康保険協会のHPから印刷して用紙に記入し、事業主に渡すどちらかになります。

基本的に当事者ではないですので、事象が起きてすぐに健康保険組合などから通知が来るものではありません。追加や削除などの手続きが必要な場合には、被保険者が速やかに動きましょう。

健康保険への提出や申請そのものは事業主を通すのが一般的

一般的には会社員の場合、事業主や担当者を通して健康保険組合へ提出や申請を行いますので、健康保険被扶養者(異動)届に記入を済ませたら、提出先は被保険者の勤める会社の担当者になります。提出された事業主および担当者は、この届書を健康保険組など指定されたところへ提出することとなります。

ご自分で健康保険組合へ提出するということはできなくはありませんが、結局事業主の印鑑や会社名など記入してもらわなくてはならない部分が会社側にもありますので、提出は会社にしてください。

必要な添付書類を確認する

必要な添付書類はどういった事象によってこの届を提出するのかによって変わります。それぞれ該当するものが必要ですので、改めて必要書類を確認するときには、以下をお役立てください。

☑被扶養者として加入する場合、事業主の証明があれば添付書類は要りませんが、被扶養者となった日が事業主への提出日より60日以上さかのぼる場合、退職を理由として収入条件を満たす場合は「退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し」。失業保険の受給終了で条件を満たす場合には「雇用保険受給資格者証の写し」が必要になります。

年金受給の場合は「年金額の改定通知書」。自営による収入や不動産収入がある場合は「直近の確定申告書の写し」。そのほかに収入がある場合には「課税(非課税)証明書」がそれぞれ必要です。

☑続柄確認の為に必要な場合、被保険者と別性の被扶養者が対象となります。この場合「被扶養者の戸籍謄本」が必要。

☑同居確認が必要な場合は、被扶養者として認定される人が同居でなければならないときに「被保険者の世帯全員の住民票(個人番号のないもので、コピーは不可)」が必要です。

☑内縁関係の配偶者が被扶養者となる場合は、「内縁関係にある両人の戸籍謄本、戸籍妙本」や「被保険者の世帯全員の住民票」が必要になります。

事象発生後速やかに申請する

被扶養者の追加や削除といった事象が発生した場合には、日にちを明けずに速やかに事業主に相談、または担当者へ相談しましょう。

被保険者がこの事象発生から事業主へ健康保険被扶養者(異動)届を提出するまでには、5日以内という期限が決められています。先ほどご説明したとおり、60日以上さかのぼることも可能ですが、時間もかかりますし、必要な書類も増えてきますので、分からないことなども含め事業主へ速やかに申請、相談をしましょう。

提出の大まかな手順

☑1.健康保険の規定を確認して届け出の必要があるかチェックする

健康保険被扶養者(異動)届の提出の前に、まずはその届出が必要となるのか確認します。確認には会社の担当者や、加入している健康保険の窓口に電話してみたり、HPで健康保険の規定や条件に当てはまっているのかを今一度確認することからはじめましょう。

また、この時点で追加するのか削除するのかも確認し、内容に伴った必要な書類を発行してもらったりしておくことが手続きをスムーズに行うためには重要となってきます。

☑2.健康保険被扶養者(異動)届の用紙を用意して必要事項を記入する

記入は被保険者側が行い、健康保険被扶養者(異動)届の用紙は事業主あるいは担当者からもらったり、健康保険組合のHPから印刷することで使うことができます。必要事項を一つ一つミスのないように記入していきましょう。

最初の事業諸整理記号や被保険者整理番号などが分からなければ、以前提出した書類や健康保険組合から送付されている書類にも記載がありますので、確認して記入しましょう。そして捺印も忘れることなく必要なものはすべて記入します。

☑3.事業主に提出する

すべての書類の記入、添付書類がそろったら、提出は事象発生から5日以内に事業主または会社の担当者へ提出します。その後漏れがないか会社側が確認および、会社名など必要な部分を記入してくれますので、その後協会けんぽである日本年金機構へ提出されて、手続きが完了となります。

健康保険被扶養者(異動)届は各健康保険の規定の確認が重要

被保険者となっている健康保険組合で規定はすこしずつ違っています。それぞれの手続きの際にも必要な書類は何か、被扶養者として加入する為の条件は何かをすべてを把握しておくということはとても難しいことです。

各健康保険では、そういったお問い合わせの窓口やHPでもお問い合わせができるところも多くあります。こういった手続きは本当に面倒なものが多いですが、必要書類が足りなかった、加入条件を満たしていなかったなど2度3度と手続きをしなくてもいいように確認することがとても重要です。

被保険者として、生計を維持している人が問い合わせるのが難しいのであれば、配偶者などがしっかり協力して手続きを一緒に進めましょう。1人で行うより2人で行うほうがミスも少なく済みます。

さらに詳しく知りたい方は
税理士に無料相談LINEChatworkメール

関連記事