雇用保険は、従業員を一人でも雇用したら、ハローワークに適用事業所設置届を提出する必要があります。パートやアルバイトであっても雇用保険への加入が必要となりますので、きちんと制度を理解して漏れないようにすることが大切です。
目次
適用事業所設置届の基本
雇用保険の適用を受けるための提出
雇用保険の適用事業所設置届は、雇用保険の適用事業所になったことを届け出る書類です。適用事業所とは、雇用保険に加入している事業所ということ。事業所は常用労働者を1人でも雇用したら、雇用保険に加入する義務があります。そのため、常用労働者を雇用したら事業所は適用事業所となり、ハローワークに届け出る必要があります。
適用事業所設置届は、労働者を雇用してから10日以内に届け出を行わなければなりません。迅速に処理を行うようにしましょう。
また、常用労働者だけでなく、アルバイトやパートの雇用を行っている場合であっても、1年以上継続的に雇用していれば適用事業所となりますので届け出が必要です。
事業所を設置することで、従業員を雇用保険に加入させることができます。雇用保険は、失業保険として認識されていることも多いように、雇用の安定を図るための公的保険となります。失業保険だけでなく、事業主によっても有利に働く助成金なども準備されていますので、従業員を雇用したら、まずは設置届の提出を行いましょう。
雇用した従業員が、以前に他で働いていたような場合は、雇用保険に加入していたことを証明する雇用保険被保険者証を持っています。雇用の際にそれを提出してもらい、事業所を設置した際に被保険者証を添付して従業員に雇用保険資格取得届の提出を行います。被保険者証があれば、記載されている番号をそのまま使用できます。雇用保険はその都度ではなく、通算してどのくらいの期間加入しているのかが重要なので、更新していくことが必要です。
事業所設置届の提出期限
事業所設置届は、対象となったときから10日以内に行う必要があります。従業員を雇用したら、雇用を始めた日から10日以内に行う必要があるということです。ただし、ハローワークは土日祝日は休みとなりますので、そのことも考えて遅れないように提出する必要があります。
事業所設置は、設置届だけを出すのではなく、その他にも必要となってくる書類がありますからそちらも準備して一緒に届け出ることになります。
試用期間は雇用保険には関係ないので、雇用したときから10日以内と考えましょう。雇用保険では試用期間も雇用した期間に入ります。安易に判断しないようにしましょう。
事業所設置届の提出場所
雇用保険の事業所設置届は、ハローワークに提出します。それぞれの事業所の住所を管轄しているハローワークがありますから、そこに提出するようにしましょう。また、事業所設置届は、ハローワークに置いてありますので事前にそれをもらってくるか、必要なものを揃えたうえでハローワークで記入することもできます。
また、ハローワークだけでなくそれぞれの市町村にある商工会や商工会議所といったところにも準備されています。そちらを利用して用紙をもらうのもよいでしょう。記載の仕方などに不安を感じるようであれば、ハローワークで用紙をもらう際に記載の仕方などの説明を受けるようにしましょう。
また、提出の際には、会社の印鑑も一緒に持っていくと訂正などがあったり、漏れがあった際にその場ですぐに対応できるので便利です。
提出時の必要書類
雇用保険の事業所設置届を提出する際、一緒に提出しなければならない書類があります。それが次のものとなります。
☑法人登記簿謄本(3ヶ月以内)
☑事業所等の賃貸契約書
☑事業の名称、所在地、事業の実態を確認することが出来る書類
☑監督官庁の許認可証(飲食・不動産・建設などの事業)
☑登録証(弁護士などの士業)
☑事業開始届・確定申告書などの税務関係書類
☑社会保険関係の届出書の控え
☑取引先が発行した契約書や請求書など
☑公共料金の領収書
☑被保険者の在籍を確認することが出来る書類
☑労働者名簿
☑出勤簿
☑賃金台帳
☑雇用契約書、雇入通知書
業種などによって必要となるものには違いもありますので、きちんと確認して漏れの内容に準備するようにしましょう。
事業所設置届の記入ポイント
雇った日が設置年月日
雇用保険の事業所設置届の作成を行う場合、どのように記載してよいのか迷ってしまう場面もあります。その1つが設置年月日でしょう。設置年月日は、労働者を雇用した日となります。
正式雇用は、試用期間が終了してからという考えかたもありますが、試用期間というのはそれぞれの事業所の考えです。試用期間の有無に関わらず、雇用した日が設置年月日となり、その日より数えて10日以内に届け出る必要があります。
常時使用労働者数の算定
雇用保険の事業所設置届には、常時使用労働者数を記載する項目もあります。常時使用労働者数と言われてもどのくらいになるのかわからないと戸惑ってしまうこともあるでしょう。この場合の常時使用動労者数は、1ヶ月の平均労働者数ということで考えるとよいでしょう。
雇用保険の事業所設置届を提出するということは、それまで常時雇用労働者がいなかったということになりなりますから、雇用した際の人数ということでも判断することができます。
労働保険番号は保険関係成立届で確認
適用事業所設置届には、労働保険番号を記載する欄もあります。労働保険は、労災保険と雇用保険の両方を合わせたものを指します。そのため、労働保険番号は、労災保険でも雇用保険でも使用することになり、それぞれの事業所によって番号が違います。
労働保険番号は、保険関係成立届は雇用保険の適用事業所設置届をハローワークに提出する前に労働基準監督署に提出する書類となります。保険関係成立届を労働基準監督署で受理した時点で、労働保険番号が振り分けられます。この番号をわかるようにしておいて設置届にも記載しましょう。
裏面には道順を示す地図
雇用保険の事業所設置届の裏面には地図を記載する欄が設けられています。事業所のある位置をわかりやすく記載します。駅などわかりやすい目印とともに道順を記載しておきましょう。地図の中で目標物にするものは、公共機関などあまり変化の起きないわかりやすいものにしておくとよいでしょう。
適用事業所設置届の注意ポイント
アルバイトやパートが対象になる条件
雇用保険の事業所設置届の提出が必要となるのは常用労働者ができた時となりますが、アルバイトやパートなども対象となってきます。アルバイトやパートで週に20時間以上働く場合、1年以上継続して雇用している場合には、雇用保険の対象となり適用事業所設置届の提出が必要となります。
アルバイトやパートであっても対象となりますから、きちんと雇用保険の設置届を提出して漏れのないようように気を付けましょう。
雇用保険は、週に20時間以上の労働時間がある場合、1年以上の継続雇用がある場合が対象となります。ただしアルバイトやパートの場合には時間を短く働くことが通常となっています。この場合には、短時間労働者という区分で雇用保険に加入することになります。
短時間労働者は、所定の週の労働時間が20時間以上であり31日以上の継続雇用が見込まれる場合です。短時間労働者も雇用保険の対象ですから、勘違いしないように気を付けましょう。
また20時間以下のアルバイトの雇用の場合は、雇用保険の対象にはならなくても労災保険の対象になります。労働保険成立届を労働基準監督署に提出する必要があります。
被保険者資格取得届の届け出
被保険者資格取得届は、従業員が雇用保険に加入するために必要となる書類です。雇用されたら、事業主がハローワークに従業員一人ずつの被保険者資格取得届を提出することになります。
雇用保険の事業所設置届を提出する際にも、対象となる従業員の被保険者資格取得届が必要です。被保険者資取得届を提出すると被保険者証が発行されます。この被保険者証には、それぞれに違った番号が記載されており、これは、その人に当てられた番号となるため、現在の仕事を辞めて他の事業所で働くことになっても同じ番号を使用することになります。
この番号によって転職などを行っても雇用保険加入年数などもわかりますので、重要な番号といえます。転職などを行った場合には、前職の事業所から被保険者証を受け取ってきて新しい事業所に提出します。事業所では、被保険者証と一緒に被保険者資格取得届をハローワークに提出しますから、事業所はハローワークに被保険者資格取得届を提出する前に必ず従業員にもっていないか確認するようにしましょう。
被保険者資格取得届は、雇用した月の翌月の10日までに提出する必要があります。雇用保険の適用事業所設置届とは違っていますから気を付ける必要があります。また、10日までということで余裕があるということではなく、早めに手続きを行い、遅れないようにすることも大切です。
事業所設置届を紛失した際の再交付
事業所設置届はハローワークに提出した後、控えを受け取ることになります。ところがこの設置届が必要となるのは、奨励金の申請などで必要となるだけで、特に必要となる場面がないために、控えをどこかにしまい忘れてしまうということも多くなっています。
実際に数十年も使用することなくしまい込んでしまうということも少なくありませんが、奨励金の申請が必要となった際に必要となります。
どうしても見つからないようであれば再交付の手続きをとる必要があります。再交付申請書は、ハローワークに設置されていますから、必要事項を記入して提出することで事業所設置届を再交付してもらうことができます。
一人でも雇ったらしっかりと届け出をしよう
雇用保険は、従業員を一人でも雇用したら加入することが義務となります。また、雇用した日から10日以内に適用事業所設置届を提出する必要がありますから早めに処理を行うようにしましょう。一度適用事業所設置届を提出しておけば、その後は従業員の出入りに応じて被保険者の取得届や喪失届を提出するだけになりますから、まずは設置届の提出を行います。
雇用保険への加入は従業員のためにも事業のためにも重要なものとなります。また、従業員を雇用したにも関わらず雇用保険への加入を怠った場合には、遡って保険料を納める必要が出てくる可能性も出てきますから十分に気を付けるようにしましょう。