目次
事業計画書の内容について
何が目的の事業なのかを表す事業概要
事業計画書は銀行などからの融資や資金調達を受ける目的などで使用する書類のことです。融資や資金調達を受けることができるかどうかを左右する大切な書類なので、相手の心に響き説得できる内容である必要があります。
事業計画書に記載する内容は、主に「事業概要」「経営方針」「事業内容」「収支計画」「財務計画」など。読みやすく説得力のある文章であることがポイントです。
事業概要は何が目的の事業なのかを表すためのもので、計画書の最初にくるという点でも非常に重要です。簡潔にわかりやすくまとめるためには「誰が・誰に、いつ、どこで、何を、どのような理由で、どのように」という内容の文章を記入しましょう。覚え方は5W1Hです。
Who(誰が、誰に)
「誰が」は、事業の名称や起業の責任者などを記入します。会社の概要をわかりやすくまとめましょう。
「誰に」は、売ろうとしている商品や、提供するサービスは誰をターゲットにしているかを記載します。顧客層について、年齢層、性別、独身者がターゲットなのか、ファミリー層がターゲットなのかなどを明確にしましょう。
When(いつ)
事業を開始するのはいつなのか、営業時間帯や休みについて、季節限定であるかなどを記載します。そして今後の事業成長に有利なタイミングであること、利益ができる営業時間や営業日程であることをアピールできる文章にしましょう。
Where(どこで)
全国規模なのか、地域密着型なのか、移動販売なのか、通信販売なのかなど。立地条件については駅から近いので集客を見込めるなど、顧客を獲得するために好立地であるというアピールになることがポイントです。
What(何を、業種)
業種は何かを説明します。何を売ろうとしているのか、どのようなサービスを提供しようとしているのかなどをわかりやすくまとめましょう。
Why(どのような理由で、事業を選んだ理由)
どうしてこの事業を選んだのか、その理由を説明します。自分自身が積み上げた経験や資格や特技をいかすため、市場性や将来性を見込んでなど。事業を行う目的や会社のビジョンを明確にし、説得できる内容にしてアピールしましょう。
How(どのように)
どのように事業を進めていき実現していくのか、具体的な行動計画を記します。顧客の支持を得るための戦略について、利益が出る仕組み・ビジネスモデルは何かを伝えましょう。
目的を明らかにする経営方針
事業の目的を明らかにするためには、経営方針をわかりやすく明確に伝えることが大切です。経営方針は融資担当者やベンチャーキャピタリストらが重要視するポイントでもあります。経営方針が定まっていないと融資を受けるための審査に通らず、資金調達ができなくなるかもしれません。
経営方針を明確にする前に、まずは経営理念を再確認しましょう。改めてなぜ起業しようと思ったのかを自分自身に問いかけるいい機会になります。経営理念と経営方針は、社会や従業員や顧客に対して確実に示さなければいけない重要なものです。
経営理念とは
経営理念とは、会社が社会に対して何をしたいのか、どのように貢献したいのかを示すもの。会社が存在する価値や考え方を示す宣言書のようなものです。
もし将来会社が発展したり世の中の流れが想像と違う方向に行ったとしても、経営理念は変わることなく確固たるものであるようにしましょう。
経営方針とは
経営方針は、経営理念を目標にしてどのような手段で実現していくかを示すものです。計画的に事業を推進し、成果を収めるまでの計画を立てて事業計画書に記入します。
経営方針について迷いが出たら、事業に成功している中小企業の経営方針・経営戦略を参考にしてみるという手段もあります。もちろんすべてを真似するのではなく、あくまでも参考にするということです。事業に成功するためのヒントが見つかるかもしれません。
仕事の内容を記載する事業内容
事業計画書には、仕事の内容を記載する事業内容を記入します。個人事業主もしくは法人が営む仕事の内容のことを指し、事業が何かを表現したものです。
事業内容を記入する前に、まずは事業についてなるべく具体的な内容をイメージして書き出してみましょう。そうすることで読みやすくまとまった文章を記入できます。
具体的な事業内容
事業内容をできるだけ具体的にイメージして書き出してからまとめましょう。例えばパン屋を開業するのであれば、「トッピングのバリエーションが豊富なメロンパンとカレーパンに特化しているパン屋を開業する。メロンパンにはヨモギなどの健康面を意識した食材を入れている。カレーパンは辛さのバリエーションを選べる。」などと具体的に記入します。
何がメインなのか、メニューのバリエーションや今後のバリエーションはどうしていくのかなどを伝えましょう。他にはない魅力的なお店であるということをアピールすることが大切です。
事業の特徴とセールスポイント
事業内容を簡潔にまとめながら、ターゲットとしている顧客層や商品のセールスポイントをアピールします。わかりやすく簡潔に伝えることがポイントです。
例えば、「ターゲットにしているOLやサラリーマンに気に入ってもらえるようなメニューや価格である。」「メロンパンとカレーパンは日本人が好きなパンなので、味やトッピングのバリエーションを増やして展開する。」など。事業によって内容は異なりますが、このお店ならではの魅力があるということを伝えましょう。
仕入れ計画
仕入れ計画も具体的に記載してあると信頼してもらいやすいです。例えば「パン生地は有機酵母を使用するなど、素材にこだわるので原価は50%くらいになっても仕方がない。」などといった文章は、一見ネガティブに見えますが素材へのこだわりと信念が伝わるので大丈夫です。
「仕入れ先は前職のつてで当てがある。」など、友人・知人や前職のつてで当てがある場合は記入しておきましょう。当てがある場合は説得力が増します。
販売計画
顧客層と顧客単価を具体的に記入します。例えば「ターゲットにしているのはOLとサラリーマンと近隣に住む主婦で、昼食やおやつとしてなので客単価は500円くらい。」など。
客単価などは数字を具体的に示した方がわかりやすいです。利益が出る数字であることをイメージできるようにしましょう。客単価が低い場合はたくさんの顧客を相手にすることを伝え、逆に客単価が高い場合は確実に顧客を獲得できる条件であるということを伝えられるとよりいいです。
設備計画
説明することは、店舗についての設備と、その他の機械や内装などの設備についてです。数字で示せるものは数字を提示するようにしてなるべく具体的に記入しましょう。
店舗についての設備とは、店舗の立地条件と家賃や保証金など。その他の機械や内装については、機械をいくらで購入するのか、内装のイメージや改装費についてなど。金額がわかるものはおよそでいいので記入しましょう。
従業員・要員計画
親族の協力があるのかどうか、従業員の雇用についてなどを記入します。親族の協力がある場合は、誰がどのように協力してくれるのかを具体的に説明します。
従業員の雇用についても具体的に説明しましょう。販売と営業はアルバイト・パートスタッフを雇い、シフトを組んで業務をするなどのように、雇用形態や従業員の働き方まで示せるとよりいいです。
今後の見通しを表す収支計画
今後の見通しを表すのが収支計画です。新規事業をするということは膨大なお金がかかるので、融資や資金調達が必要となります。
融資や資金調達をスムーズに進めるために事業に必要な資金計画を具体的にしておきましょう。資金計画を具体的にするためにまず考えなくてはいけないことは、設備資金と運転資金です。
設備資金とは
新規事業をするために一時的に必要な資金のこと。例えば機械設備、内容、車、什器備品など。一度購入したらしばらくは買い替える必要がないもののことです。
運転資金とは
事業を進めていくにあたり日常的に必要になる資金のことです。例えば家賃、人件費、商品に必要な仕入金額などがあります。
収支計画書について
融資を受ける際には、収支計画書を作った方が万全です。収支計画書とは、収支と支出を表して、実際にどれくらいの利益が出るかを説明する計画書のこと。金融機関の担当者は収支計画書を見て、融資をしたらその後きちんと返済してもらえるのかを判断します。
事業開始から3年間にわたってどのように利益を出すかを具体的に数字を出して示してみましょう。融資を申請する時に、収支計画の利益がどれくらい出るのかのアピールがポイントになってきます。
☑ 1.経営利益見込みを予測して具体的に数字に出す。
☑ 2.年間売上、仕入れ、経費を予測して具体的に数字に出す。
☑ 3.毎月分の収支計画書も作成する。
☑ 4.税金を差し引いた当期純利益を予測して具体的に数字に出す。
収支計画書の内容を大まかにまとめると、以上の4つの項目が中心です。他にも色々とありますが、根拠があって具体的な内容であるということが重要になります。
資金運用などの財務計画
資産運用などの財務計画も、具体的に数字で示してみましょう。事業が将来どれだけの利益を上げるかを見るポイントになります。
5年後まで予測して書いてみるといいでしょう。財務計画を記入するにあたり、必要になる項目がたくさんあります。
売り上げ計画
販売する商品・サービスの売り上げを予測します。各商品・サービスごとに計画して記入しましょう。見込み客数や経営指標などを利用して、無理のない実現可能な計画にすることが大切です。
売上原価計画
売上原価とは、売り上げを上げるために必要になった費用のことです。各商品・サービスごとに計画して記入しましょう。
人員計画
人件費(給与、社会保険料、通勤費、研究費、退職金積み立てなど)をはじめ、採用にかかる募集の費用も予測して計画を立てます。
設備計画
機械や内装などの設備投資に見合うリターンが見込めるかどうかを予測し、何年後に回収できるかを見積もって計画を立てます。
利益計画
売り上げ、売上原価、人件費、減価償却費、販売費、管理費、借入利息、法人税など、これらを順番に予測していきます。そうすることで売上総利益、営業利益、経営利益、税引後の利益が予測可能です。無理のない信ぴょう性の高い数字を出しましょう。
資金計画
融資の担当者は資金計画を見て、返済能力があるかどうかを判断する材料にします。利益計画と同じくらい重要な計画です。資金計画を立ててみた結果、どうしても不足する場合は、返済できる自己資金がどれくらいあるのかも記入しておきましょう。
事業計画書を作る時のポイント
自分の経験をしっかりとアピールする
事業計画書を作るときには、自分の経験をしっかりとアピールしましょう。自分の経験が強みであれば、その強みを使い、起業を成功に導くことができると審査を担当する方がみてくれるからです。
自分の経験がどれくらいあるのか、スキルやノウハウをどれくらい持っているかも具体的に記入しましょう。豊富な経験と、スキルやノウハウを持っていると説得力が増します。
起業動機は気持ちだけにしない
起業動機は真剣さや熱意を伝えるために重要な項目です。融資の面接を受ける際にも、序盤で起業動機の質問があることが多いので、動機を明確に説明できるようにしておきましょう。
「儲かりそうだから」などのような気持ちだけの動機は真剣さが伝わらないのでよくありません。どうして起業を思い立ったのか、起業の目的は何かを説明できるようにしておきましょう。融資の審査の担当者の方が共感できるような目的だとよりいいです。
自分で詳しく説明できる内容を記載する
事業計画書は、事業に対する自分の考えを整理し、長期的な視点と多角的な視点から成長するための戦略を練り上げることに役立ちます。銀行などの融資を受ける際に必要で重要な書類ではありますが、自分自身の考えをまとめるきっかけにもなるのです。
事業計画書を作りながら何度も精査して書き直すことで、客観的に事業の方向性が間違っていないのかを見つめ直すことができ、事前に修正することもできます。また、銀行などの融資を受ける審査のためにも、事業計画書には自分で詳しく説明できる内容を記載するようにしましょう。
抽象的にならないように作成する
注意しなければいけないポイントは、抽象的にならないように作成するということ。客観的な裏付けのない、抽象的な文章だと事業内容が伝わりにくく実現性がないと判断されてしまいます。
未来の内容や経営理念や経営方針などは抽象的になりがち。そうならないためにはわかりやすく具体的な内容にして、イメージが伝わるようにしましょう。
抽象的にならないようにするコツ
☑ 1.具体的な数字を示す。
☑ 2.起業の準備度合いについて記入する。
☑ 3.支援者の協力について記入する。
☑ 4.立地選定理由を具体的に記入する。
本質を見失わないようにする
事業計画書の作り方について調べてみると、書き方の例や注意するポイントなどたくさんのアドバイスが出てきます。アドバイスを参考にすることは事業計画書を書く上で役に立ちますが、それらにこだわりすぎると元々どうして起業しようと思ったのか、どんな事業にしたかったのかなど、本質を見失ってしまうことがあります。
起業に対する信念と事業内容を説明し、そして確固たる経営戦略がある内容でないと説得力がありません。アドバイスを参考にしながらも、事業の本質を深く追求して説得力のある内容にしましょう。
第三者にチェックしてもらう
事業計画書の作成が完成したら、第三者にチェックしてもらいましょう。部下や後輩など気を使われる立場の人は避け、客観的な立場で見てもらえる人を選ぶことが重要です。
第三者にチェックしてもらう理由は、客観的に見て将来性がある事業かどうか、収益性があるかどうかを判断してもらうためです。実現の可能性を客観的に見てOKをもらえたのであれば、自信を持って融資先などに事業計画書を提出することができます。
事業計画書のテンプレートを使う
シンプルな無料のテンプレート
事業計画書のテンプレートは、無料でダウンロードできるものがたくさんあります。いろいろなテンプレートがありますが、シンプルなテンプレートは使いやすくメッセージが伝わりやすいといわれています。
例えば、最近ではカラフルな表や図を用いたテンプレートがありますが、一見キレイでも上手に構成しないと本当に伝えたいメッセージがぼやけてしまう可能性があります。構成力に自信がないのであれば、白と黒のテンプレートの方が使いやすいです。しかし色彩感覚が尊ばれる特殊な業種の場合は、カラフルなテンプレートの方がいい場合もあります。
枚数の少ない金融機関のテンプレート
金融機関には特定の事業計画書テンプレートがあることが多いです。金融機関のテンプレートは枚数が少ないので、別途で自分で作成した事業計画書を添付した方が具体的な説明をしやすくなります。
金融機関の融資の担当者はとても忙しく、場合によっては1日に何十件もの事業計画書やその他の書類を読んだり聞いたりしています。そのため事業計画書の全てをじっくり目を通さない場合もあるので、枚数の少ない金融機関のテンプレートに要約をまとめておくといいでしょう。その内容が説得力があり魅力的なものであれば、この先も読みたいと思ってもらうことができます。
ワードやエクセルで使いやすいテンプレート
事業計画書は、記入する項目さえおさえていれば複雑なフォーマットは必要ありません。そのためワードやエクセルで使いやすいテンプレートを使用することもできます。
わかりやすく見やすい事業計画書というのは、ある程度フォーマットが決まっています。そして一般的な書式でないと読みづらい事業計画書になってしまうので、ワードやエクセルのテンプレートを使用することは無難だといえます。
パワーポイントで作るテンプレート
事業計画書を作るためには特殊なソフトやツールを必要としません。自分が持っているパソコンとパワーポイントがあれば簡単に作れます。
パワーポイントは、エクセルやワードと違って構成に制限がないということが特徴です。そのためどこまでも凝った作りにすることができるのですが、あまり凝らずにシンプルにした方が見やすい事業計画書になります。過剰に飾り立てず、シンプルなテキストとグラフがあれば十分です。
記入例を参考にして考えていく
シンプルに作られている記入例
事業計画書を作るときには、記入例を参考にして考えていくといいでしょう。そのためには参考にする記入例の選び方がポイントになってきます。
シンプルに作られている記入例を参考にすると、自分の事業計画書をスムーズに進めることができます。あまり凝った事業計画書は参考にしにくく、自分の考えをまとめにくいです。事業計画書はシンプルにまとめることが理想なので、参考にするならシンプルな記入例を探しましょう。
記入例は参考までにする
事業計画書の記入例を参考にするのはいいのですが、あくまでも参考までにすることが大切。そのままコピーしてはいけません。書き方や構成の参考にする程度にして、内容はあくまでも自分で考えたものにしましょう。
初めて事業計画書を作るときには、色々な記入例を見てみると参考になります。その中からシンプルに作られている記入例を選び、必要最低限の必要項目や構成を学び、それを参考にして作成するようにしましょう。
記入例に自分の考えをのせていく
参考にできそうな事業計画書の記入例を見つけたら、まずはその記入例に自分の考えをのせていきましょう。しかしそのまま使用するのではなく、自分の考えをまとめるためです。
記入例はマネしてはいけません。そのまま自分の考えをのせただけのものを作っても、融資の担当者の方は「どこかで見たような文章だ」などと見透かされてしまい、熱意や覚悟が感じられないものになってしまいます。しっかりとわかりやすく説明できるように、自分の考えをまとめたら、改めて事業計画書を作成するようにしましょう。
目的を明らかにしてわかりやすく書く
事業計画書は事業内容と事業に対する熱意と覚悟を伝えるための大切な書類です。融資を受ける際には、事業計画書に記載されている内容が審査の結果を左右する重要なものになります。
説得力があるものにするためには、事業の目的を明らかにしてわかりやすく書くことが大切です。具体的な内容が簡潔にまとめられた事業計画書であれば、内容が伝わりやすく実現性があると判断してもらえます。