会社を設立するメリットとデメリット。きちんと準備と手続きをしよう

会社を設立するなら、起業するメリットとデメリットを知るところから始めましょう。法人化するには準備することとやらなくてはいけない手続きがたくさんあります。専門家に相談するにしても、自分でも会社を設立する際のポイントをおさえておきましょう。

目次

個人事業主が会社を設立するメリット

取引先からの信頼が増す

最近はフリーランスが増えてきているという背景もあり、個人事業主でも技術や実績があれば高額な取引ができるようになりましたが、それでも法人のほうが信頼度は高くなります。実際に取引先や仕入れ先とやり取りをしていると、個人事業主よりも法人のほうが信頼が増すため、有利になることは多いです。

ネットビジネスの場合は特に、個人よりも法人であったほうが信頼されやすいので、個人事業で行うと成功しにくくなります。その他の事業であっても、信頼面において個人と法人を比較すると、法人のほうが上です。

法人のほうが有利になる理由とは

☑ 1.ウェブサイトの運用元は個人よりも法人のほうが信頼されやすいから。
☑ 2.ネットショップの場合は個人よりも法人のほうがよく売れるから。
☑ 3.事業に対しての信頼度は個人よりも法人のほうが高いから。
☑ 4.個人事業主とは取引をしないという会社がまだ存在するから。
☑ 5.営業や人材確保の際には法人のほうが相手に好印象を与えることができるから。
☑ 6.個人では口座取引不可になることが多いから。
☑ 7.個人事業よりも法人のほうが銀行の借入の際に有利だから。

税金の節約になる

年間所得が500万円を超えることが続くのであれば、節税という観点で見ると法人のほうが有利になります。いろいろな考え方がありますが、事業をしていく上で税金の節約はとても大切なことです。

ただし所得が多くなるにつれて事務的な負担やランニングコストが発生するため、所得が増えていく予測が立ったのであれば税理士などの専門家に相談しながら税額の計算をしてもらうようにしましょう。初回の面談や相談のみ無料で対応可能な税理士事務所もあります。

節税効果の具体例

☑ 1.経費の幅が増える。
☑ 2.赤字の繰越控除が長くなる。
(個人事業主は3年間、法人は7年間。)
☑ 3.法人にかかる法人税は税率が一定になる。
(個人事業にかかる所得税は累進課税。)
☑ 4.法人の場合は会社の資産に相続税はかからない。
(本人諸流の会社の株式には相続税がかかる。)

個人事業主が支払う税金

☑ 1.所得税
☑ 2.住民税
☑ 3.消費税
(開業してから2年間と売上が1,000万円以下の場合は消費税がかからない。)
☑ 4.個人事業税
(年間所得が290万円以下の場合は個人事業税がかからない。)

法人が支払う税金

☑ 1.法人税
☑ 2.法人住民税
☑ 3.法人事業税
☑ 4.地方法人特別税
☑ 5.消費税
(資本金1,000万円未満の場合は創業してから2年間の会社と、課税対象期間中の売上が1,000万円以下の会社は消費税がかからない。)
☑ 6.固定資産税

経費に使えるものが増える

個人事業主と比べると、法人のほうが経費に使えるものが増えます。例えば、自分や家族に払う給料や退職金が経費にできるというのは個人事業との大きな違いの1つです。

個人事業主も経費に計上できるものはいろいろあり、事業に関するものであれば経費として計上できます。しかし法人は個人事業が計上できるすべての経費に加えて、他にもまだ経費として認めらえるものが増えるので、領収書は必ず取っておくようにしましょう。

個人事業主が計上できる経費の例

☑ 1.消耗品
(文房具や10万円未満のPC用品や事業用の車のガソリンなど、既定の条件を満たしているもの。)
☑ 2.旅費交通費、自動車関連
(通勤費、駐車代金、自動車の自賠責保険や任意保険、海外出張時の損害保険など。)
☑ 3.接待交際費
(打ち合わせの飲食代や取引先の方の冠婚葬祭で払った慶弔費など。)
☑ 4.水道光熱費
☑ 5.その他
(敷金を除いた事務所の引っ越し費用や事業のためになるセミナー参加費など。)

法人が計上できる経費の例

☑ 1.個人事業主が計上できるすべての経費
☑ 2.自分や家族への給料と退職金
☑ 3.自分にかける生命保険料
☑ 4.住宅費
(会社名義で社宅として物件を借りた場合は家賃の8割ほどを経費に計上できる。会社名義で自宅を購入した場合は、借入金の利息、不動産所得税、固定資産税、修繕費などを経費に計上する方法がある。)
☑ 5.労をねぎらうために支給される日当

決算月を自由に決められる

会社を設立して法人にするメリットの1つは、決算月を自由に決められることです。個人事業主の決算日は、税法により12月31日と決められているので、1月1日〜12月31日の期間の売上と支出をまとめて算出します。

日本の会社は一般的に3月を決算月にすることが多いのですが、多くの欧米企業のように12月を決算月にすることも可能です。決算月をいつにするかによって、節税対策になったり計画的な経営をすることができます。

金融機関からの融資が楽になる

個人事業主よりも法人のほうが金融機関からの信頼が高くなるので、融資が楽になります。個人事業主は法人よりも融資の条件が厳しいです。

個人事業主で融資を受けようとするときには、第三者保証人を要求されることが多くなります。法人の場合は財産管理が厳格であり、貸借対照表と損益計算書が作成されるので、金融機関はそれらを見て明確に融資判断ができ、融資しやすくなるということです。

経営者としての責任感が芽生える

個人事業主でいるよりは、会社を設立したほうが経営者としての責任感が芽生えます。個人事業主でも責任感を持って事業を行わなくてはいけませんが、法人化するとより大きな責任を背負うことになるのです。

会社の経営を守る責任、従業員を守る責任など、さらには判断力や情熱も必要。会社のリーダーとしての責任感を持って経営を行いましょう。

個人事業主が会社を設立するデメリット

ランニングコストがかかる

会社を設立するデメリットは、ランニングコストがかかることです。設立時にもコストがかかりますが、設立後のランニングコストも決して低いとはいえません。

例えば法人税はもし経営が赤字だったとしても払わなくてはいけないものです。設立時のコストや設立後のランニングコストを考えると、売上の見込みがないなら会社を設立しないほうがいいでしょう。

会社設立でかかるランニングコストの例

☑ 1.法人税
(法人住民税など)
☑ 2.印鑑
(代表取締役の印鑑、社内用となる法人の実印や角印、銀行印)
☑ 3.定款の作成費用
☑ 4.設立登記にかかる費用
☑ 5.保険料

保険加入への義務が発生する

会社を設立すると、社会保険加入への義務が発生します。もし社長が1人で従業員がいなかったとしても保険の加入は義務です。個人事業主の場合は常時5人以上の従業員が働いていたら保険に加入しますが、個人事業主1人だけの場合は加入義務はありません。

社会保険には、健康保険と厚生年金保険があり、会社と従業員で保険料を折半します。例えば月給20万円支給の従業員1人あたりの会社負担金額は月額3万円弱くらいです。

会計処理や確定申告の負担が増える

会社を設立すると会計処理や確定申告などの事務負担が増えます。請求書発行や入金など、通常の営業内での事務負担は個人事業主と変わりません。しかしそれ以外の業務が多くなり複雑化します。

申告書の枚数も増えますし、法人税の申告の場合は会計処理が複雑です。ほとんどの場合が税理士・会計事務所などの専門家に依頼することになり、税理士費用などの負担も増えます。

会社を畳むときにも費用が発生する

会社を畳むときには、会社の借金(未払の給与、仕入れ代金、銀行からの借入)を清算してきれいにします。借金を返しきれない場合は、弁護士に依頼して特別清算の手続きを取るケースが多いのですが、この時にかかる弁護士費用は200万円弱くらいが一般的です。

大まかな手続きの流れは、会社の決算を締めて税金を支払い、残った財産を株主・債権者に分配して借りのない状態にし、法律に従った手続きを取って登記を消します。自分で行う場合は登記関連で5万円くらいの実費、官報公告で5万円くらいの実費が必要です。

会社の運営にコストがかかる

会社の運営にはコストがかかります。具体的に例を挙げるとキリがありませんが、法人税、外注費、銀行口座の維持にかかるコストがかかるという会社は多いです。

外注費は、税金や保険や申告書の作成など複雑で専門的な知識を要する業務をする際に専門家に依頼した費用も含まれます。銀行口座の維持にかかるコストとは、振込手数料などの取引にかかる手数料のこと。取引量が多い場合は手数料も多くかかります。

設立の際の手続きに手間がかかる

会社設立の際には、定款の作成、株主総会の開催、登記などの複雑な手続きがあり手間がかかります。提出書類も多数あり、専門的な知識が必要なものが多いので、専門家に相談しながら手続きを行ったほうが安心です。

定款作成前に決めること・やらなくてはいけないこと

会社名(商号)、事業目的、本店所在地、資本金の額、資本金を出す株主の構成、期間設計、事業年度の時期、会社の印鑑、印鑑証明書、設立費用の準備など。

提出しなくてはいけない書類

登記申請書、登録免許税貼付用台紙、登記事項を保存したCD-Rもしくはフロッピーディスク、定款、資本金の払込証明書、発起人決定書、取締役の就任承諾書、取締役全員の印鑑証明書、印鑑届出書など。

会社を設立するときのポイント

合同にするか株式にするか決める

会社を設立するときには、合同にするか株式にするかをよく検討して決めましょう。合同も株式も法人の1つの形態で、共通点もありますが相違点もあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

少ない負担で会社を設立したい場合は合同会社、負担はかかるけれど圧倒的に信用度が高いのは株式会社。合同も株式も、他にメリットはいろいろあるので選ぶ理由は人それぞれです。

合同にするメリット

☑ 1.会社の設立費用が株式会社よりも約14万円くらい低くなる。
☑ 2.決算公告の義務がない。
(ランニングコストも低くなる。)
☑ 3.利益分配や経営の意思決定の自由度が高い。

株式にするメリット

☑ 1.信用度が高い。
☑ 2.幅広い資金調達が可能。
☑ 3.組織機関の役割が明確。

優秀な人材を集める

会社の特性、ビジネスモデル、弱点を見極めたうえで、それを補えるような優秀な人材を集めましょう。人材を募集する前に、マーケティングをするなどして会社の商品のターゲット層やビジネスモデルを理解することも大切。そして人材をある程度限定してから募集したほうが優秀な人材を集めやすいです。

会社の環境を整備し、会社やビジネスモデルをより魅力的に見せる工夫をすることも優秀な人材を集めるためには重要なポイント。そうすることで結果的に会社にとってもプラスになります。

慎重に定款を作成する

定款は会社を設立するなら必ず作成しなくてはいけないものです。ネット上では穴埋めするだけで作成できる定款の雛形も多数あり、無料でダウンロードがます。

しかし定款は慎重に作成しなければいけません。設立後に許認可を受けたいときに事業目的に必要な項目の記入がなければ、許認可を受けるために定款の目的変更を行う必要があり、その際に登録免許税3万円を納めなければいけなくなります。

印鑑の作成をしておく

会社設立で必要になる印鑑は、個人の実印(代表者印)、会社の認印(社印・角印)、銀行印です。法人の場合、印鑑届書と実印を用意して法務局に提出すると印鑑を登録することができます。そして発行された印鑑カードと代表者の生年月日などの情報があれば、法人用の印鑑登録証明書の取得が可能です。

代表者印の大きさは登記上で定められており、1辺の長さは1cmを超え、3cm以内の正方形に収まるものでなくてはいけません。形態には決まりがなく、一般的に直径18mmの丸印を使用するケースが多いです。会社の認印として使用する社員や銀行印にはサイズの決まりはありません。

不安な場合は専門家に相談する

会社を設立する際には複雑な手続きや準備をする必要があり、それらを適当にしてしまうと設立後にさまざまな問題が発生してしまうケースが多いです。1つ1つ慎重に行う必要があります。

専門的な知識が必要となる手続きも多いので、不安な場合は専門家に相談しましょう。自分だけですると失敗をして会社にとって不利になってしまう可能性もあります。

会社設立のために必要な費用

信用を得るための資本金

資本金の額は会社の信用度を左右する重要なものです。会社を設立して登記をすると資本金は登記簿謄本に記載されて誰でも見ることができるので、他社との取引が成立するかどうかの重要な判断材料の1つになるのです。

資本金の額が多いほど社会的な信用を得ることができます。しかし無理をしてまで資本金の額を多くする必要はありません。資本金は運転資金に使用されるので、多めに用意するなら運転資金の6ヶ月分くらいですが、一般的には初期費用に加えて運転資金の3ヶ月分くらいあるといいと考えられています。取引先や企業の規模も考慮して資本金の額を決めましょう。

専門家への顧問料

会社を設立するにあたり、難しい経理処理や申告書の作成など専門的な知識が必要な作業がたくさん発生します。それらは自分だけで行うよりも専門家に依頼したほうが安心です。

専門家とは、司法書士、行政書士、税理士など。専門家に依頼すると顧問料が発生しますが、節税対策の提案をしてくれたりと結果として会社にとって有利になることもあります。

登記を申請する費用

会社を設立する際にはさまざまな費用が発生しますが、その中でも最低限必要な費用といわれているのが登記を申請する費用です。登記費用が最低限になるケースは個人事業から法人となるなど、登記費用以外に必要な費用が発生しないこともあります。

定款の作成から登記を申請するまでにかかる費用は、株式会社と合同会社とでは違いがあり、合同会社を選んだほうが費用は安いです。株式会社は合計で約25万円ほど、合同会社は合計で約10万円ほどの費用が必要。ただし代行サービスを利用するとこれらの費用が安くなる場合があります。

株式会社が登記申請までに必要な費用

☑ 1.公証役場に払う定款の認証手数料が5万円
☑ 2.公証役場に払う定款に貼る収入印紙代が4万円
(電子定款の場合は不要)
☑ 3.公証役場に払う登記の際の定款の謄本手数料が2冊で約2,000円ほど
(1ページ250円)
☑ 4.法務局に払う登記の際の登録免許税が15万円もしくは資本金×0.7%のうちのどちらか高い金額
☑ 5.法務局に払う登記事項証明書代が1通600円
☑ 6.法務局に払う印鑑証明書代が1通450円

合計で約24万3,050円です。

合同会社が登記申請までに必要な費用

☑ 1.公証役場に払う定款に貼りつける収入印紙代が4万円
(電子定款の場合は不要)
☑ 2.法務局に払う登記の際の登録免許税が6万円もしくは資本金×0.7%のうちのどちらか高い金額
☑ 3.法務局に払う登記事項証明書代が1通600円
☑ 4.法務局に払う印鑑証明書代が1通450円

合計で約10万1,050円です。

会社設立のおおまかな手順

必要なものの準備

会社設立する際には公証人役場や法務局に向けた手続きが必要になりますが、その前に必要なものの準備をしましょう。

必要な準備とは、会社の名前の決定、会社の事業目的の決定、印鑑の作成、定款の作成と認証、公証人役場や法務局に支払う設立に必要な費用の準備です。定款を作成したら公証人役場に認証してもらいます。

必要書類の作成と申請や口座開設

定款を申請して公証人役場に認証してもらえたら、資本金の払込と各種申請書の作成が必要です。登記書類の作成をして法務局に設立登記の申請をし、登記簿謄本の取得などの手続きを行います。

取締役会を設置しない株式会社の一般的な中小企業の場合、設立登記に必要な書類はいろいろあります。

設立登記申請に必要な書類

☑ 1.登記申請書
☑ 2.定款謄本
☑ 3.発起人の同意書
☑ 4.設立時の代表取締役を選定したことを証明する書面
☑ 5.設立時の取締役の就任承諾書
☑ 6.印鑑証明書
☑ 7.本人確認証明書
☑ 8.払込を証明する書面

開業を届け出て設立完了

会社設立登記の手続きまで終了したら、開業を届け出て設立完了となります。このときにやることは、銀行口座の開設と税務署に届け出を出すことです。

設立が完了したら会社を運営していきます。助成金申請などの手続きもあるので、最後まで気を抜かず手続きを完了させましょう。会社設立直後にしなければいけない手続きもいろいろあります。設立前後は税金関連や保険関連などの理解するまでに時間を要するような難しい手続きが多数あるので、専門家に相談しながら行うとスムーズです。

最寄りの税務署に提出する書類

☑ 1.法人設立届出書
(期限は会社設立後2ヶ月以内)
☑ 2.青色申告の承認申請書
(期限は設立後3ヶ月以内)
☑ 3.給与支払事務所などの開設届出書
(期限は事務所開設から1ヶ月以内)
☑ 4.源泉所得税の納期の特例の承認に関連の申請書
(期限は特例を受ける月の前の月の末日まで)
☑ 5.減価償却資産の償却方法の届出書
(期限は設立第一期の確定申告の提出期限)
☑ 6.棚卸資産の評価方法の届出書
(期限は設立第一期の確定申告の提出期限)

都道府県税事務所や市町村村役場に提出する書類

☑ 1.法人設立届出書もしくは事業開始等申告書
(期限は設立後15日〜1ヶ月までの間で、自治体により異なる)

年金事務所に提出する書類

☑ 1.健康保険厚生年金保険/新規適用届
(期限は原則として設立後5日以内)
☑ 2.健康保険厚生年金保険/被保険者資格取得届
(期限は原則として設立後5日以内)
☑ 3.健康保険被扶養者(異動)届
(期限は被保険者に扶養がいる場合は速やかに提出)

労働基準監督署に提出する書類

☑ 1.適用事業報告
(期限は従業員を使用する日から遅滞することなく提出)
☑ 2.労働保険保険関係成立届
(期限は従業員を雇った日から10日以内)
☑ 3.労働保険概算保険料申告書
(期限は会社を設立してから50日以内)
☑ 4.就業規則届
(期限は常時10人以上の従業員を使用する場合は遅延することなく提出)

公共職業安定所に提出する書類

☑ 1.雇用保険適用事業所設置届
(期限は適用事業所になった日の翌日から10日以内)
☑ 2.雇用保険被保険者資格取得届
(期限は適用事業所になった日の翌日から10日以内)

起業の利点と欠点をふまえた上で会社を設立しよう

会社を設立するにあたり、起業の利点(メリット)と欠点(デメリット)は知っておいたほうがいいです。そして会社の特性や事業目的や弱点などについてもよく理解しておきましょう。

設立前に準備することや設立前後の手続きなどもたくさんあります。難しいことも多いので、専門家に相談しながら手続きを進めていったほうが安心です。そして起業の利点と欠点をふまえた上で会社を設立しましょう。

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