法人税は、経営においては軽視できないものです。大きな出費となることもあり、時に経営にも大きく影響することがあります。法人税には税率に関するルールがあり、それを知ることで節税も可能です。知識を深めて、経営に役立てていきましょう。
目次
中小企業の法人税の税率に関するルール
所得に応じて税率が定められている
企業が納める法人税は国税に当たり、国に治めるものです。法人税は、それぞれの企業の所得によって税率が決まります。中小企業とは「資本金が1億円以下などの条件に当てはまる企業のこと」で、税率においては優遇されている部分が大きいとされています。
基本的には所得が800万円までの場合で15%、800万円以上の場合で23.4%となっています。ちなみに法人税の他にも地方法人税や事業税などがあり、これらは400万円まで、400万円から800万円、800万円以上の場合で税率が変わってきます。
この税率は所得に応じたものですが、所得とはその企業の利益のことをいいます。売上金額ではなく利益そのものの金額となる所得に対して、法人税は課税されるものです。
計算式に当てはめて実効税率を算出する
中小企業が支払う法人税には、法人税以外のものもあります。地方法人税や事業税、県民税、市民税などがこの法人税等に入ってきます。これらを合計したものが、表面税率合計と呼ばれるもので、22.5%から37%となります。
しかしこのうちの事業税は、所得からマイナスすることができます。そのため事業税の分を加味して実際に支払う税金を算出するには、実効税率というものが必要です。この実効税率は、下記の計算式から算出できます。
【法人税+地方法人税+事業税+県民税+市民税-事業税のマイナス分=実効税率】
会社の規模によって実効税率が変わる
前項で見た実行税率は、会社の規模によって税率が変わってきます。法人税のみの場合には所得800万円を境にして税率が変わりますが、実行税率の場合には3つのケースがあります。
実効税率は、所得が400万円までの場合で21.4%、所得が400万円から800万円の場合で23.2%、所得が800万円以上の場合で33.8%です。
これは、地方法人税や事業税、県民税、市民税の税率が所得400万円まで・400万円から800万円まで・800万円以上で税率が変わってくるからです。これに法人税をプラスすると、上記の実効税率となります。このように会社の規模によって、実効税率は異なるのです。
また実効税率は、法人の種類によっても変わります。普通法人、公共法人、公益法人等、共同組合等、人格のない社団。これらの法人の種類によっては、法人税が非課税となることもあります。
中小企業には軽減税率がある
資本金が1億円以下の中小企業には、軽減税率が設けられています。軽減税率とは、年間所得が800万円以下の場合の法人税を15%とする政策のことです。
本来、所得が800万円以下の場合には法人税が19%と決まっています。これが、平成24年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する各事業年度については、4%引き下げた15%となっています。
平成29年度税制改正大綱では、この軽減税率の適応期間が2年間延長されていますので、平成31年3月31日までが軽減税率の対象です。
軽減税率を受けられる対象企業には、いくつか条件があります。公益法人や協同組合、人格のない社団等の他、普通法人でも制限があるので注意しましょう。
まず資金が1億円以下であることや期末資本金の額が1億円以下であること。そして、資本金や出資金の額を有しないこと。これらに当てはまる場合は、軽減税率の対象となります。
前述してきた税率は、800万円以下の場合には全て軽減税率の対象であるという過程で計算されています。そのため軽減税率の対象外で所得が800万円以下の場合には、前述の税率は変わってくることもあります。
赤字の場合はゼロになる
法人税は、所得に応じて金額が決定されるものです。所得に相応の税率を当てはめて算出したものが、実際に支払うべき金額となります。
しかし経営が赤字の場合には、所得はゼロとなります。所得がゼロのケースでは、課税対象の所得がないことになるので法人税はゼロです。つまり赤字の場合には、企業の規模に関わらず法人税はゼロとなるのです。
中小企業が行う節税のポイント
急な借り入れや設備投資を控える
できることならば、税金は少なく抑えたいものです。そこで、中小企業が行う節税のポイントもいくつか頭に入れておきましょう。
まずは、急な借り入れや設備投資を控えること。計画的な借り入れや設備投資なら問題ありませんが、予定外でのこうした行動は節税とは逆効果になります。
借り入れがあると、もちろん返済しなければならない金額としての支出が増えることになります。また設備投資をしたとしても、それは予定外の出費であることには変わりません。
節税の目的は、支出をなるべく減らすことにあります。そのためこうした予定外の出費をまず減らして、得た所得を温存しておくことが大切なのです。
経費の削減に取り組む
利益から経費を引いたものが、所得です。経費が多くなれば、もちろん所得の額は下がってくるので課税対象額も低くなります。
そう考えて経費を多くするというケースもあります。経費が多くなればもちろん税金も下がりますが、実際の収支を見てみると税金が下がって節税できたとしても経費の出費の方が多くなっていることもあるのです。
例えば50万円の経費を計上し、税金が10万円減らせたとしましょう。この場合税金だけを見れば、大きな節税ができています。
しかし収支を見ると、差額の40万円は支出した結果となります。逆に50万円の経費がなく税金が10万円多かったとしたら、支出は10万円で済むことになります。
つまり、経費を多くすることで課税対象所得を減らすよりも、経費を削減した方が支出が少なくて済む場合もあるのです。
年金や共済に加入する
節税対策としては、年金や共済への加入も効果的です。倒産防止共済や小規模企業共済などは、全額所得控除対象になるものもあります。
倒産防止共済の場合は、健康状態に左右されず40ヶ月以上経過した後解約手当金が100%戻ってきます。そのため、加入しても損がない制度といえるでしょう。
また確定拠出年金なども、節税につながるのでおすすめです。そして年金や共済への加入は、福利厚生にもなるのが嬉しいポイントです。
税制上のメリットを利用する
法人税の節税では、税制上のメリットを最大限に利用していくといいでしょう。まずは税率の軽減対象になるように、所得を調整する方法があります。特に軽減税率対象となれば、4%の節税が可能です。
また欠損の繰越ができる税制も、積極的に利用していきましょう。欠損繰越は、税務上の赤字を次年の所得と相殺できる制度です。つまり赤字のマイナス額は、次年度以降の所得と相殺して所得を減らすことができるのです。
これは最大で9年まで繰り越せるので、欠損金を使い切るまで所得が減ることになります。課税対象となる所得が減るので、これは嬉しい節税対策ですね。欠損金がある場合には、ぜひともこの税制も利用していきましょう。
国税庁のHPで税率の推移をチェックする
法人税は、適宜改正されていくものです。そのため、知らないうちに税率が変わっていたということもあります。節税のためには、最新の税率をしっかりと把握していくことが必要不可欠です。
なるべく税率の推移をチェックして、最新の情報を仕入れていきましょう。国税庁のホームページで確認ができるので、ぜひチェックしてみてください。
法人税の税率を見極めて中小企業の経営を安定させよう
企業にとって決して見過ごせる支出ではない法人税は、正しく理解して税率を見極めていく必要があります。できるだけ抑えていくために、さまざまな工夫をしていくといいでしょう。
こうした工夫を重ねていくと、支出はなるべく少なく抑えて経営に支障が出ないようにすることができます。
税金を払って経営が傾いてしまうのは、とても勿体ないことです。また間違った節税対策をしていると、それこそ経営を圧迫してしまうことにもなりかねません。税率のチェックも、怠ってはいけない事項のひとつです。上手に法人税を見極めて、安定した経営を心がけていきましょう。