雇用保険の資格喪失届の提出は事業主の責任でもあります。

雇用保険の資格喪失届は、退職だけでなく、死亡した場合や役員就任といったように、雇用保険の加入資格がなくなった場合に提出が必要となります。労働者が次の就職先で困らないためにも提出期限を守って速やかに提出を行うことが大切です。

目次

雇用保険の資格喪失届が必要な時

従業員が退職した場合

雇用保険は、該当する労働者を雇用したとき雇用保険資格取得届をハローワークに提出します。これでその従業員が雇用保険に加入したことになります。では、雇用保険に加入している従業員が退職した際にはどのような手続きをとったらよいのでしょうか。

雇用保険へ加入している従業員が退職した場合に必要となるのが資格喪失届。労働者が退職した日から10日以内に資格喪失届をハローワークに提出することで、その従業員は雇用保険から外れることになります。

資格喪失届と一緒に提出するのが、雇用保険被保険者離職証明書となります。雇用保険被保険者離職証明書は、労働者が失業保険を受給する際に必要な書類となります。また、出勤簿や退職辞令発令書類、労働者名簿、賃金台帳といったものの提出を求められることもありますから、準備しておくとよいでしょう。

従業員が亡くなった場合

雇用保険の資格喪失届は、労働者が退職した時だけでなく、労働者が亡くなった時にも提出が必要となります。労働者が亡くなった時点で、雇用保険の資格は喪失することになりますから、通常の喪失届と同じように亡くなった日から10日以内にハローワークに資格喪失届を提出することになります。

通常の退職と同じように氏名変更届の記載に二重線を引き喪失届として提出します。

従業員が法人の役員になった場合

雇用保険資格喪失届は、労働者の離職や死亡の場合だけでなく、昇進によって会社の役員となり、労働者から管理者になった場合にも提出が必要となります。管理者でも一般の労働者と同様の仕事を行っている場合には、雇用保険への加入が認められています。しかし、一般の労働者とは働き方に違いがあり、同じ仕事を行わず管理職としての仕事のみとなるような場合には、雇用保険の資格がなくなります。

この場合、喪失届に記載する喪失日は、役員就任の前日の日となります。役員就任日やその翌日の日付ではないので、間違えないようにしましょう。

雇用保険脱退の手続き必要書類

雇用保険被保険者資格喪失届が必要

退職や死亡などにより雇用保険を脱退する際には、雇用保険被保険者資格喪失届が必要となります。雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険への加入の申請を行った際に発行される雇用保険被保険者証・確認通知票の下部の部分となります。こちらに必要事項を記入して提出することになります。

記載する事項は、一番上に雇用保険被保険者資格喪失届と一緒に氏名変更届の記載がありますから、氏名変更届の記載を二重線で消します。その他、記入が必要となるのは次の欄となります。

☑帳票種別

☑離職等年月日

☑喪失原因

☑被保険者氏名

☑性別

☑生年月日

☑被保険者の住所

☑事業所名称

☑被保険者でなくなったことの原因

☑事業主 横判・印鑑

被保険者氏名より上部に関しての記載は鉛筆で、被保険者氏名からはボールペンで記載します。

希望があれば雇用保険被保険者離職証明書

雇用保険被保険者離職証明書は、離職者が失業保険を受給するために必要となってくる書類です。辞める前、6ヶ月から12ヶ月遡って出勤日数、賃金を記載することになり、それを元に失業保険の受給額が決定されることになります。雇用保険被保険者離職票がないと失業保険の手続をとることが出来ませんから、必要な場合には、資格喪失届と一緒に提出し、処理してから離職者に渡すことになります。

離職する人から離職証明書を発行してほしいという依頼があれば喪失届と同時に処理できます。仮に、後から必要になった場合でも希望されれば処理しなければなりません。喪失届を提出する際に、失業保険の受給を考えているなら、離職証明書が必要になるということを離職者に説明して確認するようにしましょう。

その他に照会が求められる書類

労働者の退職など離職することになって雇用保険の脱退が必要となった際には、雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出します。また、離職証明書の発行の希望があれば、そちらも一緒に手続きをとることになります。基本的にはこれが脱退の際の提出書類となりますが、それだけでなく必要に応じて提出を求められる書類もありますから準備しておきましょう。

必要となるのは、出勤簿、退職辞令発令書類、労働者名簿、賃金台帳など。特に離職証明書の発行が必要となる場合には、出勤簿や賃金台帳が必要となります。また、退職辞令発行書類がないような場合には退職願いなどの写しなどが必要となる場合もありますから、きちんと書類を揃えておくようにしましょう。いつ求められてもいいように、ハローワークに行く際に準備していくとよいでしょう。

提出期限と方法

退職日の翌日から10日以内が提出期限

雇用保険被保険者資格喪失届の提出は退職日の翌日から10日以内にハローワークに提出する必要があります。提出期限を過ぎても受付けをしてもらうことはできますが、離職者が他で就職をした際に、雇用保険の資格取得の手続きをとることができないといった不都合が生じる可能性がありますから、早めの処理が大切です。

時には、従業員の都合によって提出が遅れてしまうということもありますが、遅れた場合には、きちんとその理由をハローワークで伝えることも必要です。しばらく無断欠勤していて連絡がつかない状態が続くという場合も考えられます。有給休暇の消化の問題や、無断欠勤期間を遡って退職扱いにするといったことも。こうなると10日以内に書類を提出することができないこともあります。

無断欠勤が続き解雇するとなっても、雇用保険の場合では、解雇とは考えないこともあります。無断欠勤の場合には、あくまでも自己都合という解釈になります。退職理由によって、失業保険が出るまでの期間に違いがでます。判断ができないような場合はハローワークで相談してみましょう。

ハローワークに直接提出する

労働者が退職した場合には、雇用保険の被保険者の資格を喪失することになるため、資格喪失届をハローワークに提出します。提出は、直接ハローワークの窓口に提出することもできますし、郵送や電子申請システムを利用して提出することもできます。雇用保険被保険者資格喪失届は退職日の翌日から10日以内に提出する必要がありますから、都合の良い方法をとるとよいでしょう。

直接ハローワークの窓口に提出すれば、記載漏れや訂正があっても、その場ですぐに対応できます。雇用保険被保険者離職証明書の発行が必要となる場合は、窓口に直接提出するようにしましょう。離職票は3枚複写の書類ですから、電子申請システムを使用することはできません。ハローワークの窓口で提出をしましょう。

ハローワークに郵送で提出する

雇用保険資格喪失届は、ハローワークに郵送することもできます。出向いていく時間がない場合には郵送も便利ですが、手続きが終了した書類を返送してもらうことはできません。直接ハローワークに取りに行く必要があるので注意が必要です。

賃金台帳など、他の書類が必要な場合は郵送できないので、ハローワークに出向く必要があります。

e-Govの電子申請システムを利用して提出する

雇用保険資格喪失届は電子申請システムであるe-Govを利用して提出することもできます。e-Govを利用する場合には、事前にID、パスワード、電子証明を取得しておく必要があります。その後必要な電子申請用の届書をダウンロードして必要事項を入力し、オンラインで提出することになります。

初めて利用する際には、IDなどの取得が必要となります。しかし、それができてしまえば、いつでも都合のよい時間に必要な書類を作成して提出することができて便利です。

提出期限を過ぎると退職者に不利益を生じる可能性がある

雇用保険被保険者資格喪失届は、退職日の翌日から10日以内に提出することになっています。何らかの事情によって提出期限が過ぎてしまった場合には、何かペナルティなどがあるのか心配にもなりますが、基本的には何らかのペナルティがあるということはありません。しかし、雇用保険の資格取得や喪失届は、事業所が行うことになっていますから、遅延ということで指導が入る可能性はないともいえません。

雇用保険の被保険者としての期間は通算されるので、個人に番号が振り分けられており、それによって管理が行われています。退職した後に他の事業所で就職が決まった場合には、そちらで雇用保険の取得届を出すことになります。前職で喪失の手続が行われていないと新しい事業所での取得の手続きをとることができません。

また、失業保険の受給を検討している場合にも、やはり手続きをとることが出来ずに受給が遅れる可能性もあります。事業所にとっては不利益がなくても、労働者にとっては手続きの遅れが不利益に繋がることが充分に考えられます。離職が決まったらなるべく早く手続きを行うようにしましょう。

 

雇用保険被保険者資格喪失届の記入例

エンピツ記載欄とボールペン記載欄があるので注意

雇用保険被保険者資格喪失届を作成する場合に、まず気を付けたいのが、エンピツで記載する欄と、ボールペンで記載する欄があるという点です。

雇用保険被保険者資格喪失届には機械で読み取る部分があるためその部分はエンピツで記載して、修正の必要がある場合には簡単になおすことが出来るようにしています。喪失届の上の方はエンピツで記載し、被保険者氏名から下部分に関してはボールペンで記載します。

エンピツで記載する部分を、ボールペンなど消すことができないようなもので記載してしまうと、修正が必要となった際にとても面倒なことになりますから十分気を付けましょう。

氏名変更届を二重線で消す

雇用保険被保険者資格喪失届は、就職して雇用保険資格取得の手続きを取った際に発行される雇用保険被保険者証・確認通知書の下の部分にあります。受け取った時点では、被保険者喪失届と氏名変更届の両方で使用することができるようになっています。

喪失届を提出する場合には、一番上に記載されている氏名変更届という記載を二重線で消して喪失届として提出します。その下の帳票種別欄にも資格喪失と氏名変更を選択するようになっていますから、資格喪失の1を記載します。

被保険者番号など基本情報の記入

雇用保険被保険者資格喪失届の記載欄の中には、被保険者番号を記載する欄もあります。この被保険者番号は、個人に振り分けられている番号となり、この番号で情報を管理しています。転職があっても、どのくらいの期間雇用保険に加入していたのか、通算した期間もこれでわかります。

被保険者番号は、被保険者証に記載されていますから、その番号を記載するようにしましょう。この他、氏名などの基本的な情報を記載する必要があります。

離職理由や1週間の所定労働時間の記入

雇用保険被保険者喪失届では、氏名などの基本的な情報の記載の他にも、離職理由や1週間の所定労働時間の記入が必要となります。1週間の所定労働時間とは、1週間で決められた就業時間となります。もちろん1週間ごとに就業時間が決められているということは少ないでしょうから、決められた就業時間を1週間で計算することになります。

一般の雇用保険被保険者の労働時間が週40時間を切っている場合には、週の労働時間が20時間から30時間の短時間労働者として扱う必要がある場合も出てきます。短時間労働者は、失業保険の算定に必要な期間が6ヶ月ではなく12ヶ月となります。

また、離職理由は、多くの場合が自己都合となりますが、実際に記載する場合には、

☑1. 離職以外の理由

☑2. 3以外の離職

☑3. 事業主都合による離職

この3つから選択することになり。自己都合の場合には、2を選択して記載することになります。離職以外の理由というのは、役員への就任などです。さらに下の欄で具体的な理由を記載することになります。

事業主欄と会社の印鑑を押す

雇用保険被保険者資格喪失届は、事業所で手続きを行うことになり、喪失届には、事業主欄と会社の印鑑を押す欄もあります。必ずしもボールペンで記載するのではなく横判で押しても大丈夫ですが、漏れのないようにしましょう。

事業主の印鑑を押すのは、事業主がそれに対して証明するということにもなりますからきちんと確認を行って印鑑を押すことが必要です。

事業者として速やかに正しい手続きをしましょう

雇用保険の資格喪失届は、労働者が退職や死亡、また役員就任した場合に、手続きを行う必要があります。雇用保険の手続は労働者ではなく事業主の責任ですからきちんと行うことが大切です。

また、提出期日までにきちんと提出を行うことは、労働者に不利にならないために重要なことになりますからきちんと行いましょう。退職した従業員のために行うとなると場合によっては抵抗を感じる場合もありますが、事業主の責任としてきちんと行うようにしましょう。

時には、離職理由で事業主と従業員とで意見の食い違いがあるような場合もあり、このような状況になると事業主もいい気持ちはしないというのが正直なところですが、最後まで責任を持つことは、その後の事業のためにも必要なことになります。意見の食い違いがある場合にはハローワークに相談して解決するようにしましょう。

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