決算時に法人税を計算して支払うことだけでなく法人は期の真ん中である半期に一度の予定納税をおこないます。予定納税は対象外の会社もあるのですが前期法人税額が合計20万円を超えている場合には予定納税が必要。計算は2つのパターンがあり選択可能です。
目次
予定申告の種類
前年度の実績基準による予定申告
多くの企業は前年度基準による予定申告をおこなっています。もう一方に仮決算による予定申告もあるのですが、半期で決算を締めなくてはならないため、こちらの前年度の実績基準による予定申告のほうが簡略的なためです。税務署から送られてきた送付物を使って申告及び納付すれば予定申告・納付が完了します。法人の方で準備することは納税額と押印くらいですので、比較的時間をとられることのない申告です。
1.計算方法
前事業年度の法人税額×6/前事業年度の月数
簡略的には前事業年度が1年間(12ヶ月間)だとすれば前事業年度の法人税の1/2の額が予定申告による納税額になります。計算された結果10万円以下になる場合には、予定申告をおこなう必要はありません。よって予定納税をおこなう必要もありません。また計算をしなくても税務署から送られてくる納付書に予定納税額が記載されています。
2.申告及び納付期限
事業年度開始の日以後6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内におこないます。2ヶ月以内であれば申告書の提出と納付は別の日でも構いません。
予定申告をする場合は税務署から送付される予定申告書用紙に記入して税務署へ提出すれば、申告は完了です。
仮決算による予定申告
1.計算方法
期首から6ヶ月間を1つの計算期間である事業年度として仮決算をおこないます。通常の法人税の申告書と同一の用紙を使用します。前年度は業績がよく、法人税額が大きくでた場合に当期は業績が悪化してしまい前年度の半分の法人税額に基づく予定納税だと納付のための資金繰りが大変になってしまうこともあります。そのような「前期はよく、当期は業績が下がってしまった」という法人のために業績の下がった当期の数値をもとに中間申告を計算できるようにしました。
2.申告及び納付期限
事業年度開始の日以後6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内におこないます。2ヶ月以内であれば申告書の提出と納付は別の日でも構いません。また、予定申告を行うにあたって、納税額が0円であっても0円納付をする必要があります。0円でも納付書を提出したことによって予定申告書の提出も行われたことになります。
仮決算による予定申告対象外
前年度の確定法人税額の半分が10万円以下
前年度の確定した法人税額が20万円以下の場合には、中間申告及び中間納税を行う必要はありません。前期実績による中間申告による法人税の納税額が10万円以下になるからです。この場合には予定申告対象外になります。事務的処理の簡略化のため、計算結果が10万円以下になった場合には申告不要となっております。また、税務署からも送付物は届きません。
仮決算による中間申告の法人税が前年度の半分の額を超える場合
仮決算をおこなった場合に、前年の法人税額の半分(6/前事業年度の月数)を超えることになった場合には仮決算による中間申告はおこなえません。仮決算においてさまざまな操作により多めに中間納付をし、還付加算金目当てのケースを防止するためです。あくまで前年度は業績が良かったけれども、当期は思わしくない業績になってしまった事業所に対して、前年ベースの納税はしなくてよいということに対応した仮決算になります。
予定申告の対象者外
初年度
設立1年目は予定申告はありません。ただし適格合併によって設立された法人は予定申告があるので注意してください。適格合併とは法人税法に規定する一定の合併をいいます。吸収合併、新設合併などが該当し、事業年度開始の日から6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内に予定申告及び納付をしなければなりません。ただし、基本的には設立1年目は予定申告はないので、税務署から納付書などの送付物も届きません。
前年の納税法人税が20万円以下
前年度の確定した法人税額の納付額が20万円以下の場合には、予定申告をおこなう必要はありません。前年度の確定された法人税額が20万円以下、つまり半分にして10万円以下になる場合には予定申告対象外になります。
税務署からの送付物も届きません。比較的事業規模が小さいと予定申告は必須でなくなるというイメージです。事業規模が小さいということは利益が大きくでません。そのためその利益に課される法人税額は20万円を超えないことも少なくないため、予定申告の対象法人でなくなります。
予定納税の必要性
確定申告時の法人税を減らすため
事業年度の半分が過ぎた頃に予定納税をおこなうため、前期と同様の事業推移の場合は年2回の分割払いというイメージとなります。一度にまとめて法人税を納付するよりも2度に分けて納付した方が確定申告時の法人税を中間納付分減らすことができます。(納付自体の総額は変わりません。)
国としても分けて納付してもらう方が、月ベースの税収が安定する効果があります。税収の平準化のため予定申告を導入した経緯もあり、納税者にとって手続きの手間を簡素化しています。予定納税は申告書・納付書が送付されます。予定申告は納付をすると自動的に申告書も提出したとみなされます。
法人税の払い忘れを防ぐため
予定納税の該当者には国から予定申告書が送られてきます。それによって中間納付の払い忘れは防ぐことができると考えられます。郵送までしてくれるのは、それだけ税収の平準化及び納税を忘れないでほしいという思いからなのですが、国から納付書や申告書が送られるため、そもそも納税者にとって忘れにくいものとなります。
また、そのときに会計処理として仕訳をおこなっていれば翌期も前期になるため、計画に含めることもでき、さらに忘れにくいものとなります。
法人税の中間納付額の還付を受ける対象
中間申告を予定申告して仮払い経理してある
中間申告を予定申告して納付時の仕訳を仮払法人税で処理した場合において最終的に確定した事業年度分の法人税額が予定申告の予定納税額より少ない場合には、その差額分を未収法人税等などの勘定科目で処理します。この差額分は翌期に還付される金額となります。
仮払税金等 ×××/現金預金×××(予定申告時)
法人税等 ×××/仮払税金等 ×××(決算申告時)
未収法人税等 ×××/
現金預金 ×××/雑収入 ×××(還付時)
会計の仕訳による処理は上記のようになります。仕訳を見慣れていない人のために予定申告で20万円納めました。決算申告でその年度の法人税の金額が15万円になりました。5万円分が予定申告で余分に支払っている状態です。その5万円は次の事業年度の早めの段階で多く支払った分を国から返還してもらいます。この返還を還付というのですが、さらに還付金には利息である還付加算金も含まれて国から余分に支払っていた法人税額分の還付を受けます。
予定申告した場合よりも少額だった場合
最終的な事業年度の法人税の納付額は
(算式)年税額ー中間納付額=納付額
で求められます。結果がマイナスになったときはマイナス分還付されます。前期と比べ当期の業績が大幅に減少してしまった場合には、仮決算による予定申告ではなく、前年度の実績基準による予定申告による中間納付の方が税額が大きくなります。よって前年度の実績基準による予定申告による中間納付の方が税額を払い、当期の年税額が予定申告による中間納付額を下回る場合に還付が発生します。
還付金が発生すると国にお金を預けていることによる利率(還付加算金)が適用され、還付金にプラスで還付加算金も加えられて入金されます。
会社の経営状況を把握して予定申告をする
会社を動かしていることには、業績のよいときもあって、業績が振るわないときもあります。しかし国としては安定的かつ継続的に税収が欲しい事情もあるため、予定申告の制度がはじまりました。税収の平準化というのですが、納税者側からみると税金の分割払いのようなものです。
そのため多くの企業は前年度の実績基準による予定申告をすることに対し、前期の業績が良くても当期が思わしくない場合には仮決算による予定申告を認めてくれています。国も強引には徴収しないということですが、会社の経営状態を把握してどちらかを選択する必要があります。
前年分に基づいて推定される予定申告ですが、納税者も大きな金額の資金繰りをおこなうよりも分割払いの感覚で当期の1年分の納税額を先に一部支払っておくことは心の準備も少し楽になります。会社の経営状況を把握して予定申告を忘れないようにしましょう。