退職した際に必要になってくるのが健康保険の切り替え手続き。必要な書類や手続きの仕方などを知らないまま退職するのは不安だと思います。さまざまな種類の健康保険とその条件や手続きについて知り、自身に合ったものを選択しましょう。
目次
退職時の健康保険について
会社の健康保険を使用できるのは退職日まで
会社に在職している間は、会社の社会保険に加入する義務があります。そのため、社会保険の中に含まれる健康保険にも加入することになり、会社の健康保険証を持つことになります。しかし、会社を退職すると社会保険から脱退しなくてはならないため、健康保険の資格も失います。退職日の翌日からは健康保険が使えなくなるため、会社の健康保険証を使って医療機関を受診できるのは退職日までとなるのです。また、扶養家族がいる場合は、家族の分の保険証も使えなくなるためその旨を伝えておく必要があります。
保険料の支払いは月単位なので、退職した月の月末までは使えると思って使用してしまったり、扶養家族に保険証が使用できなくなることを伝えていないなど、誤って保険証を使用してしまうケースがあるので気を付けましょう。健康保険の資格を失効した保険証を使用した場合は、医療費の返還を求められることになります。
退職後は保険証をすぐに返却
資格喪失後に誤って保険証を使ってしまわないためにも、退職後はすぐに保険証を返却する必要があります。退職する日までに事業主に返却しておくといいでしょう。70歳から74歳の人は、高齢受給者証も返却する必要があります。
基本的には保険証は手渡しで返却することになりますが、手渡しで返却できなかった場合には郵送で送ることもできます。その際には、郵送で返却してもいいか退職した会社に前もって確認しておきましょう。返却先の宛名も聞いておくと会社側でスムーズに受け取ることができます。保険証は身分証の代わりとしても使える重要なものなので、郵送する際には普通郵便ではなく簡易書留や一般書留を使いましょう。
退職後に加入する健康保険の選択肢
再就職先の健康保険へ加入
再就職して新しく会社に勤める際は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの手続きが必要です。正社員はもちろん、パートやアルバイトでも加入条件を満たしていれば保険に加入する義務があるので覚えておきましょう。新しい健康保険への加入手続きは、再就職先の会社の担当者が行います。また、厚生年金保険と雇用保険の加入手続きも会社が行ってくれるので、年金手帳などの必要書類を提出しましょう。
しかし、前の会社を退職して再就職するまでの間に国民健康保険などの他の保険に入っている場合は、古い健康保険の脱退手続きは自身で行うことになります。新しい健康保険証と古い健康保険証、印鑑、身分証明書を持参して、お住いの市町村区の役所などで手続きを行いましょう。
退職した会社の健康保険に任意継続
会社を退職しても、そのまま現在の健康保険を継続できる任意継続という制度があります。この制度を使うと、退職した会社の健康保険に2年間継続して加入することができます。任意継続するためには、以下の条件と書類が必要です。
任意継続できる条件
☑資格喪失日(退職日の翌日)までに被保険者だった期間が2ヶ月以上であること
☑資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に手続きすること
任意継続の手続きに必要な書類
☑任意継続被保険者資格取得申出書
☑扶養事実を確認できる書類(扶養する家族がいる場合)
任意継続被保険者資格取得申出書は、健康保険組合のサイトからダウンロードするか取り寄せるなどして入手することができます。
また、扶養する家族がいる場合には更に以下の書類が必要になります。
☑非課税証明書
☑所得税に関する源泉徴収票のコピー
☑雇用保険受給資格者証のコピー
以上の書類を、退職の翌日から20日以内に加入していた健康保険組合に郵送します。
手続きが完了すると、新しい保険証と共に納付書が届きます。保険料の納付の方法としては、納付書を使ってコンビニや銀行で納付したり、半年分や1年分をまとめて納付することもできる他、口座振替での納付も可能です。納付期限までに保険料を支払わない場合、任意継続ができなくなってしまうため気を付けましょう。
国民健康保険へ加入
退職後すぐに再就職するか任意継続しなかった場合は、国民健康保険へ加入することになります。国民健康保険は、いずれの社会保険制度にも属さない人は必ず加入しなくてはなりません。
切り替えの手続きを行わなかったとしても退職日の翌日から加入することになり、1日でも加入していれば保険料の納付義務が発生するため、国民健康保険に加入せずに任意継続や家族の扶養に入りたい場合は、退職日の翌日付で手続きしなくてはなりません。
国民健康保険への切り替え手続きは、お住いの市区町村の国民健康保険窓口で退職日から14日以内に行いましょう。手続きには以下の書類が必要になります。
☑退職日が証明できるもの
☑身分証明書
☑印鑑
退職日を証明するために、離職票や健康保険の資格喪失証明書が必要な場合もあるので退職する際に会社に請求しておきましょう。
家族の扶養となり健康保険へ加入
家族の中に社会保険に加入している人がいれば、被扶養者として健康保険に加入することが可能です。将来の年収が130万円未満であったり、被保険者の3親等以内であることなどの条件を満たしていれば被保険者の勤務先に申し出ることで手続きができます。また、被扶養者が増えても社会保険料は上がりません。
被扶養者になるための条件と手続きの方法は、以下のようになります。
被扶養者の範囲
☑被保険者の直系親族、配偶者(事実婚も含む)、子、孫、弟妹で、被保険者の収入で生計を維持されている人
☑被保険者の同一の世帯で、被保険者の収入で生計を維持されている3親等以内の親族、被保険者と事実上婚姻関係にある人の父母と子
収入の制限
☑被保険者と同居していて、年収が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であり、被保険者の年収より低い
☑被保険者と同居しておらず、年収が130万円未満であり、被保険者からの援助額より低い
※失業給付金も収入と見なされます
手続き方法
☑被保険者が社会保険に加入している場合は、勤務している会社へ申し出る
☑被保険者が健康保険の任意継続に加入している場合は、協会けんぽ都道府県支部に健康保険任意継続被扶養者(異動)届を提出する
健康保険の未加入はデメリットが多い
病院での治療費は100%自己負担
健康保険に加入していれば、病院での治療などの医療費の自己負担額は3割となります。しかし、健康保険に未加入でいると医療費を100%自己負担することになってしまいます。退職後、国民健康保険などへの加入手続きをしないと健康保険証がもらえないため、健康保険の制度が使えないのです。
未加入時をさかのぼって請求されるケースがある
国民健康保険に未加入の期間があり、その後改めて加入すると未加入期間の保険料も請求されることがあります。ただ、未加入期間の分の保険料を払うまで加入できないというわけではありません。
未加入期間の保険料は、自治体から送られてくる納付書を使って支払うことになります。また、収入が少ないなどの理由で保険料を支払うのが難しい場合は自治体の担当窓口に相談しに行きましょう。事情によっては、減免制度を利用することもできます。
健康保険加入は国民の義務
社会保険でも国民健康保険でも、健康保険に加入することは国民の義務となっています。退職後に切り替えの手続きをしなかったとしても、他の保険へ切り替えていない限りは自動的に国民健康保険へ加入させられることになります。
退職後はすぐに手続きを
会社を退職した際は、会社の社会保険を脱退することになるため他の健康保険への切り替えが必要になります。国民健康保険の他にも、任意継続や被扶養者になるなどの選択肢があるので、自身にあったものを選びましょう。
また、退職してから短期間で再就職を考えているなどの場合でも、退職した翌日からは国民健康保険に加入することになるため、切り替え手続きと納付を忘れずに行っていきましょう。