社会保険の扶養とは。扶養になるための条件と、メリットとデメリット

会社に勤めている社会人なら、誰もが入っている社会保険。共働きの世帯が増えている中、扶養に入るべきかどうか、悩むこともあるでしょう。扶養になるために必要な条件を満たしていること、メリットとデメリットがあることも理解しておくことが大切です。

社会保険の扶養の対象者

配偶者と子供と祖父母

社会保険とは、国民の生活を保護するために国が設けた、日本の保険制度です。企業で働く従業員は、「相互扶助」という国民が相互に助け合うという理念に基づいて、毎月の給与から社会保険料を負担することが義務付けられています。
社会保険とは、さまざまな保険制度の総称です。社会保険に含まれるものとしては、「医療保険」、「年金保険」、「介護保険」、「雇用保険」、「労災保険」などがあります。
医療保険には、「国民健康保険」と「社会保険」の2つがあります。

国民健康保険

☑加入条件:個人事業主、無職の人、その他保険制度に属さない人すべてが対象
☑運営者:市区町村役場の国民健康保険窓口
☑保険料:世帯単位。加入者の数、年齢、収入によって算出
☑扶養:扶養という概念がない。世帯内の加入者数によって保険料が異なる

社会保険

☑加入条件:企業に勤めている正社員、正社員の3/4以上労働する人
☑運営者:協会けんぽ、または各社会保険組合
☑保険料:個人単位。年齢、収入によって算出
☑扶養:認定された親族を扶養することができる。人数に限らず保険料は変わらない。

社会保険に含まれる「医療保険=健康保険」では、健康保険の被保険者である従業員の家族に保険証が発行され、扶養対象となる家族も健康保険を使うことができるという制度です。扶養手続きをすることによって条件を満たしている家族を健康保険の扶養に入れることができます。
扶養の加入対象となるのは、健康保険の被保険者である直系の親族、配偶者、子、孫、弟や妹で被保険者の収入で生計を立てている人になります。
また、年金保険には、「国民年金」と「厚生年金保険」があります。

国民年金保険

国民年金は、基礎年金と呼ばれており、日本国内に在住している人すべての最も基本となる最低限の保障です。自営業や学生、無職の人などがこれにあたり、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者もこの国民年金に値します。

厚生年金保険

厚生年金は、国民保険に上乗せして支払われているもので、企業に勤めるすべての社会人が保険料を支払うことになります。収入によって支払額が異なり、国民年金に追加して支払うことになるので、国民年金よりも保険料は割高に。
ただし、老後に給付される年金額は、国民年金よりも高く給付されるので、決して損をするというわけではありません。
また、厚生年金には、障害を負ったときに給付される障害年金や、被保険者が亡くなった場合に遺族に支払われる遺族年金ねなどの保障も含まれています。

社会保険の扶養になる条件

生計維持されている

健康保険に加入し、万が一の時には必要な給付を受けられる人のことを被保険者といいます。被保険者になれる人は、適用事業所で働く人すべてが被保険者となります。
被保険者が扶養する直系尊属や配偶者、子、兄弟などで、被保険者の収入によって生計を維持している人のことを被扶養者といいます。
社会保険の扶養対象になるための条件としては、まず、被保険者と同一の世帯で被保険者の収入によって生計を維持されている人が対象。

ただし、被保険者の収入によって扶養対象者の生活が成り立っていれば、同一世帯である必要はありません。その場合は、認定対象者の年間収入が130万円未満であることが必要となります。また、認定対象者が60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者であった場合は180万円未満が条件です。

生計維持と同一世帯

被保険者と同一世帯で、兄や姉、叔父、叔母などの三親等以内の親族、内縁関係にある配偶者や、配偶者が亡くなった場合の配偶者の父母、及び子も扶養の加入対象となります。
詳細としては、同居していても別居していても被扶養者となれる人は、配偶者(内縁関係も可)、子(養子も可)、孫、弟、妹、直径尊属の父母、祖父母です。同居が条件となる人は、兄、姉、叔父、叔母などの三親等以内の親族、内縁関係の配偶者の父母、子など。
対象者が病気で入院していたり、施設に入っている、転勤などで一時的に別居しているなどの場合も同居とみなされ、扶養対象にすることができます。

被保険者から受け取っている援助より年間収入が少ない場合

社会保険の扶養対象となる条件には、収入も基準となります。同一世帯の場合は、被扶養者の年間収入が130万円未満で、被保険者の年間収入の半分未満であることが条件です。
被保険者の年間収入の半分より収入が多くても、被扶養者の年間収入が130万円未満で被保険者の収入を上回らない場合は扶養対象に該当し、さらに被保険者と同居していない場合は、被扶養者の年間収入が130万円未満で被保険者から受け取っている金額の合計額よりも少ない場合に該当します。
ちなみに、厚生年金上の扶養は、「20歳以上60歳未満の配偶者」に限定され、収入条件は上記に述べたものと同じで健康保険に加入することが条件となります。

社会保険の扶養にならない場合のメリット

健康保険の給付金の適用範囲が広がる

健康保険における被扶養者は、被保険者とほぼ同等の保険が適用されるため、一般的な診察や治療、手術などで困ることはまずありません。
ただし、女性の場合には出産についての給付金の適用が大きく異なってきます。まず、被保険者に対して適用されるのが、出産手当金です。これは、被保険者が出産のため仕事を休まなければならなくなったとき、出産日から56日後まで仕事を休んだ分の手当金が支給されます。

また、出産をしたときには、出産手当が支給される期間、出産手当付加金が1日につき基礎額の10%支給されます。さらに、被保険者が、妊娠4ヶ月以上で出産(死産・早産・流産)したときには、1児につき105,000円が支給されますが、被扶養者であった場合は、55,000円が支給されることになります。
このように被保険者と被扶養者では、健康保険での適用範囲が異なるため、これから出産を考えている女性は、よく検討してみるのがよいでしょう。

年金受給額が増える

被保険者として、社会保険である厚生年金保険を利用する場合、基礎年金である国民年金に上乗せして受給することができるため、扶養に入っている場合よりも多くの年金がもらえます。
厚生年金の保険料は、事業主と被保険者とで半分ずつ負担して納付することになります。被保険者からの給与または賞与から被保険者分の保険料を差し引き、事業主が負担する保険料とあわせて年金事務所に納付します。
差し引かれる保険料は高くなるというデメリットはありますが、将来的に受け取る金額は増えるという大きなメリットがあります。

社会保険の扶養にならない場合のデメリット

社会保険料の負担が発生

これまでに述べてきたとおり、社会保険は国が企業や国民に義務付けている保証制度です。社会保険には、健康保険、厚生年金のほかに、雇用保険、労災保険、40歳以上なら介護保険といったものがあります。
社会保険の扶養にならない場合のデメリットとしては、これらの保険料を自分の給与から差し引かれるということでしょう。いざというときのためには必要不可欠な保険ですが、毎月の負担額は少なくありません。

社会保険加入者の税金が増える

自分が社会保険に加入するということは、当然給与額に応じた所得税や市民税などの税金をおさめることになります。年間収入130万以上の年収があったとしても、社会保険料や税金の支払いを考えると、少なくとも160万円以上の年間収入がなければ、家族の手取り金額が増えることはないと考えるのがよいでしょう。

社会保険の内容について

病気やけがによる通院

企業に勤める会社員に義務付けられている健康保険。多くの企業は、協会けんぽに加入しているところが多く、現在での保険料率は、給与の9.97%。自己負担金額は、その半分の4.985%となっています。
業務外での病気やけがにによる通院時には、医療機関に保険証を提出し、医療費の一部を負担することで、診察や検査、処置、手術、入院や療養、薬の処方などを受けることができます。

被保険者と同様、被扶養者も同じように保険証を使って医療機関を利用することができます。自己負担金額は、小学校入学前なら2割、小学校入学後から70歳未満なら3割、70歳以上なら2割を支払うことになります。
上記のような療養の給付金の他にも、手術や入院で高額な医療費が発生した場合などには、高額療養費として、給付を受けることができます。一定の自己負担限度額を超えた分が給付金の対象となり、後で払い戻される仕組みになっています。

さらに、疾病による休業にもかかわらず、事業主から報酬が得られない場合などには、疾病手当金の給付を受けることもできます。1日の被保険者の標準報酬日額2/3に相当する金額が対象となり、支給を開始した日から最長1年6ヶ月支給されることになっています。
また、出産育児一時金や出産手当金など、出産に関する給付を受けることができるほか、被保険者が業務外の事由によって亡くなった場合には、埋葬を行う人に埋葬料5万円が支給されることになっています。

介護ケア

40歳以上の人に加入が義務付けられている介護保険。介護が必要になったとき、訪問介護や老人福祉施設など、所定の介護サービスが受けられるという保険制度です。
介護を必要とする高齢者を社会全体で支えるための仕組みとなっており、65歳以上なら、第1号被保険者となり、介護状態になった原因を問わず、保障を受けることができます。
第1号被保険者の介護保険料は市町村ごとに定められており、介護サービスの予算総額の21%が総保険料となります。その総保険料を各市町村に住んでいる第1号被保険者の数で割って、年間の介護保険料を算出することになります。

所得が低く基準額の保険料を負担できない場合には、設けられた所得基準額に基づいて、それぞれの保険料率を掛けたものが、最終的な被保険者の介護保険料となり、40歳から64歳の人は、第2号被保険者となります。
65歳未満の介護保険料は、各健康保険で異なり、平成29年8月から総報酬制が導入され、被保険者間で各保険者の総報酬額に応じて介護保険料を負担する仕組みです。
また、65歳未満の人が介護サービスを受ける場合は、指定された16の疾患による原因に制限されます。

介護サービスが受けられる16疾患

☑ガン(末期状態)
☑関節リウマチ
☑筋萎縮性側索硬化症
☑後縦靭帯骨化症
☑骨粗しょう症
☑初老期の認知症
☑パーキンソン病
☑脊髄小脳変性症
☑脊柱管狭窄症
☑早老症
☑多系統萎縮症
☑糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症
☑脳血管疾患
☑閉塞性動脈硬化症
☑慢性閉塞性肺疾患
☑両側の膝関節、または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

また、要介護認定は、2段階の「要支援」と、5段階の「要介護」の7段階に分けられています。公的介護保険の給付には、要介護認定を受けた人が1割の利用料を支払うことで、現物給付による介護サービスを受けることが可能です。

老後の生活保障

公的年金の目的は、国民の老後の生活を安定させることです。公的年金には、厚生年金、国民年金があり、年金の種類によって受け取る金額が異なります。
年金保険は、老後の生活をはじめ、障害を負った際に支給される障害年金や、被保険者が死亡した際に遺族が受け取れる遺族年金などがあります。

ちなみに、毎月の給与から差し引かれた年金保険料は、積み立てた金額に応じて年金を受け取ることができます。会社に勤めている人なら厚生年金、自営業や短時間労働、無職の人なら国民年金に加入することになります。
将来的に受け取れる年金は、基礎年金(国民年金)だけを支払っている人よりも、基礎年金に厚生年金が上乗せして支給される厚生年金の方が支給額は高くなります。

失業時の生活保障

企業が従業員の雇用の安定と促進を目的とした保険制度である雇用保険には、いくつかの種類があります。何らかの事情で失業した場合、一定期間給付金を受け取ることができる失業保険や、3年以上勤務した場合に受けられる教育訓練給付金、育児休暇中に受けられる育児休業給付金などがあります。
さらに、会社向けの給付制度、キャリアアップ助成金や、トライアル雇用奨励金などといった給付も利用することができます。

業務中の病気やケガ

業務中の病気やケガを保障する労働保険は、労災保険と雇用保険を総称したものです。勤務中や通勤時の事故や災害によって病気やケガ、死亡などの場合に、労働者の社会復帰や遺族への援助を保障してくれます。
事故の内容によって、給付を受けるための手続きや方法は異なりますが、基本的には医師からの診断書や必要書類を準備して給付金の支給請求書と一緒に労働基準監督署に提出することになります。

社会保険の扶養になるときの手続きのポイント

世帯全体の住民票が必要

被保険者が家族を扶養にする場合、被保険者は、事業主を経由して被扶養者届けを出すことになります。基本的には、同居確認のための書類として、同居している被保険者の世帯全員の住民票(コピー不可、個人番号のないもの)が必要です。
被保険者と別性の被扶養者の場合は、続柄確認のための書類が必要となるため、被保険者との続柄がわかる被扶養者の戸籍謄本が必要となります。内縁関係にある場合は、それを確認するための書類として、内縁関係にある両人の戸籍謄本と被保険者載せたい全員の住民票が必要となります。

収入が分かる給与明細などが必要

同一世帯で、収入がある被扶養者の手続きを行う際には、パート、アルバイト共に最新3ヶ月分の給与明細、もしくは労働契約書が必要となります。賞与や通勤交通費の支給をされている場合は、その証明書も添付することが義務付けられています。
被扶養者が、収入がなく18歳以上の学生の場合は、学生証、または在学証明書が必要となり、子供が学生以外、配偶者、父母、義父母、その他の家族で今まで働いていない人なら、所得証明書、もしくは非課税証明書が必要となります。

また、雇用保険を受給延長する人なら受給期間延長通知書、退職した人は、退職証明書や退職時の源泉徴収票、退職して雇用保険を受給しない人は、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書が必要となります。それぞれの状況に応じた添付書類は多種ありますので、きちんと確認をして準備しておきましょう。

年金の受給額がわかる書類

勤務先以外からの収入を得ている場合は、それに応じた書類が必要となります。年金収入を受けている人は、年金振込通知書、もしくは年金支払い通知書、または、源泉徴収票などの年金の受給額がわかる書類が必要です。
年金以外でも、事業収入や不動産収入などで収入を得ている人は、確定申告書、または所得証明書が必要となり、利子収入や投資に収入を得ている人は、収入を証明する書類が必要となります。健康保険の傷病手当金や雇用保険の失業保険の給付を受けている人は、支給決定通知書等金額を証明する書類が必要です。

また、被保険者以外からの仕送りを受けている人は、仕送り者氏名と仕送り金額がわかる書類が必要。その他の収入を得ている人や、原稿料や印税、講演料などでの収入は、確定申告書、または所得証明書、もしくは収入を証明する書類が必要です。

老後の年金受給を考えて加入を検討する事をおすすめ

給与や賞与から天引きされる社会保険は、健康保険や厚生年金、雇用保険、介護保険などさまざまなものがあります。毎月の支出が大きく負担に感じている人も多いのではないでしょうか。

しかし、私たちの将来を考えると、老後の生活を支えてくれる老齢年金や、健康保険。また、介護状態になったときに必要なサービスが受けられる、介護保険など、これまでに負担に思いながらも、積み立ててきた保険がとても役立ちます。
働けなくなったときに、私たちの暮らしを支えてくれる社会保険は、やはりきちんと加入しておいたほうが良いのは間違いありません。この機会にぜひ老後の年金受給を踏まえて社会保険の加入の検討をしてみてはいかがでしょうか。

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