登記手続きに委任状が必要なシーンとは?注意したいポイント

登記申請の際、多くの場合は専門家の方に依頼することになります。その際必ず必要なのが「委任状」。個人で相続登記等をする場合は、相続人数分の用意が必要であったりと注意すべき点が多くあります。ここでは、委任状の基本的なルールや注意点について触れていきます。

目次

登記に委任状が必要な場合

代理人が法務局で手続きをする

登記申請手続きは、どなたでも行うことができます。しかし、その手続きは多くの書類を集める必要があったり、登記簿の見方が複雑であったりと、時間や手間のかかるものです。専門的な知識を要する場面もあり、ミスなくスムーズに完了するため一般的には登記手続きの専門家である「司法書士」や「弁護士」の方へ手続きを依頼することになります。登記申請において、代理人となるのはどなたでも可能ですが、報酬を貰って業として手続きを行うことができるのは司法書士(弁護士)のみと法律で定められています。

代理人が手続きを行う場合は、委任状が必要となります。この委任状をもってはじめて、依頼者本人の意思のもとであるということが証明され、その手続きが正式なものとして通用することになります。

依頼された代理人は、法務局で手続きを行います。基本的に、登記事項に変更が生じてから2週間以内に登記変更の手続きをする必要があります。

相続人の代表者が手続きをする

不動産の所有者が亡くなり、不動産を引き継ぐため相続人の名義を変更することを「相続登記」といいます。このとき相続人が複数いる場合には、その相続人のうちの代表者または司法書士(弁護士)に登記手続きを依頼することになり、委任状が必要となります。複数の相続人がいる場合、代表者一人だけが手続きをするとき他の相続人全員分の委任状も必要です。

ただし、遺産分割協議などを行わず「法定相続分どおり=民法のルール通りの分配」の登記については、代表者のみの委任状で手続き可能です。例えば、妻と子どもが法定相続分どおりに不動産を二分するため、妻が登記手続きを行うというケースです。この場合の委任状作成は、妻の分のみで済みます。

委任状の作成の仕方

記載すべきこと

委任状の記載内容には、特に決まった形式はありませんが、

☑1.委任者(依頼者)の名前、住所、署名捺印

住所は、住民票に記載されているとおりに記入します。署名は直筆で書きましょう。

☑2.受任者(代理人)の名前、住所

同じく、住所は住民票どおりの記載です。

☑3.登記申請の目的、原因

☑4.委任日

☑5.添付書類の内容

戸籍謄本や徐住民票、遺産分割協議書、住民票などです。

以上は最低限記載する必要があります。これが相続登記であれば、被相続人(亡くなった方)の氏名や相続人の氏名、持ち分、不動産の表示も必要です。さらに、「登記申請書類の提出及び登記識別情報、添付書類の受領に関する件」などと、委任する範囲を明記します。

用紙サイズはA4で、文字は黒インク、2枚以上になる場合は割印をします。

また、委任状は不正に改ざんされないよう、署名欄は自分の直筆であることと、文書の最後には「以下余白」と記載しておきましょう。

司法書士の方に依頼する場合は委任状があらかじめ用意されているので、内容に間違いがないかなどを確認し、署名捺印するのみとなります。

実印が必要な場合

印鑑には、実印と認印があります。実印とは、住民登録している自治体で正式に印鑑登録された印鑑のことです。登録をしている印鑑(実印)には、役場で印鑑証明書というものが発行されます。対して認印は、印鑑登録をしていない印鑑ということになります。

登記申請において実印が必要になるケースと、認印でも対応可能なケースがあります。

実印が必要なのは、所有権を失ったり担保をつけられたりと、申請する当事者が不利な立場となる場合です。実印を押すことで、不当な手続きではなく本人の意思で登記申請しているということを証明すしなければいけません。

具体的には、以下の通りです。

☑1.不動産を売却・贈与した場合

不動産の売買や贈与の際、「登記義務者」である売主(贈与者)から、「登記権利者」である買主(受贈者)に登記名義を変更する場合です。この場合は、登記義務者である売主(贈与者)の実印が必要となります。買主・受贈者の欄は認印で構いません。

☑2.不動産の相続登記をする場合

不動産の所有者が亡くなり、複数の相続人に登記名義を変更する場合です。相続に使用できる遺言書がなく、協議によって相続分配を行う場合に実印が必要となります。

☑3.不動産に抵当権などの担保を設定する場合

不動産の所有者は、実印を押印する必要があります。

実印が必要な場合には、必ず印鑑証明書の提出が必要になるので用意しておきましょう。

委任状のひな型

委任状のひな形は、法務局のホームページなどから無料でダウンロードすることができます。司法書士や弁護士の方に依頼する場合には、司法書士の方が用意してくださるので、署名捺印をすれば委任状作成は完了となります。

提出は原本が原則

基本的に、委任状は原本で提出します。原則として委任状の原本に対して返還請求はできません。提出前にあらかじめコピーをとっておきましょう。

原本還付ができないものとして、

☑1.申請書(本人申請)または委任状(代理人申請)に押印した申請人等の印鑑証明書

☑2.第三者の同意または承諾を証する情報に押印した者の印鑑証明書

☑3.登記申請のためだけに作成された委任状

が該当します。

相続登記の委任状

不動産の所有者が亡くなった時点で、登記変更する義務が生じます。この手続きを行わず所有者を被相続人のままにしておくと、不動産の売却ができなかったり、保険に加入できないなど後々面倒なことになってしまいます。法定相続どおりに登記する場合、委任状は相続人が複数であっても不要です。

司法書士や弁護士の方に依頼する場合には、委任状は司法書士の方が作成し、署名捺印すれば完了となります。

自身で登記手続きを行う場合は、不動産の相続人が複数おり、そのうちのひとりが代表で申請する際に委任状が必要となります。相続人の署名捺印は必ず直筆で記載しましょう。登記申請書には、申請する代表者の印鑑(認印可能)を押印します。

<必要な書類一覧(被相続人)>

☑1.戸籍謄本または除籍謄本

配偶者の方がいる場合には、「戸籍謄本」を用意します。配偶者の方が亡くなられており、子が相続人となる場合は、「除籍謄本」を用意します。

☑2.住民票の除票または戸籍の附票

☑3.登記済証または登記識別情報

相続登記をする不動産の登記済証です。

☑4.固定資産課税通知書

相続不動産を確認するため、登記する直近年度のものを用意します。年度が変わる場合は、4月1日以降のものです。

<必要な書類一覧(相続人)>

☑1.委任状

☑2.戸籍抄本

☑3.住民票または戸籍の附票

☑4.実印、印鑑証明書

遺産分割協議を行い、相続する場合に必要となります。その際、印鑑証明書は3ヵ月以内に発行されたものを用意します。

所有権移転の委任状

不動産の贈与や売買があった場合、同時に所有権も変更となるため、贈与者(売主)から受贈者(買主)へと所有権移転登記をする必要があります。この手続きによってはじめて、登記簿上の所有者が贈与者(売主)から受贈者(買主)へと変更されます。

<必要な書類一覧(贈与者)>

☑1.委任状

☑2.権利証

登記済証または登記識別情報です。

☑3.実印、印鑑証明書

印鑑証明書は、3ヶ月以内に発行されたものを用意します。

☑4.身分証

運転免許証、健康保険証、国民年金手帳、マイナンバーカードなどです。

☑5.住民票

登記記録上の住所と現住所が異なる場合には、前の住所または本籍記載のものを用意します。

<必要な書類一覧(受贈者)>

☑1.住民票

☑2.実印、印鑑証明書

印鑑証明書は、3ヶ月以内に発行されたものを用意します。

☑3.身分証

運転免許証、健康保険証、国民年金手帳、マイナンバーカードなどです。

登記の申請では委任状を上手に活用

登記申請は自身で手続きすることも可能ですが、複雑で専門的な知識を必要とするため、ハードルの高いものです。多くの場合は司法書士や弁護士の方に依頼することとなります。上記のように、委任状をうまく活用すれば、煩わしい手続きもぐっとスムーズに済みます。ぜひ、参考にしていただければと思います。

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