就職や転職をしたとき、会社を退職したときには、国民年金と厚生年金が切り替わります。でも、いつまでに何をしたらいいのか、案外知らないことも多いのではないでしょうか。切り替え手続きの注意点などしっかりと把握しておきましょう。
目次
国民年金から厚生年金への切り替え
厚生年金に加入の際は会社が手続きをする
国民年金を払っている人が会社に就職すると、自動的に厚生年金に加入することになります。つまり、国民年金第1号被保険者から国民年金第2号被保険者に切り替わることになりますが、加入手続きは就職先の会社がおこなうので、自分自身では手続きする必要がありません。国民年金を払っている人とは下記に該当する人のことをいいます。
☑第1号被保険者:自営業者など第2号被保険者、第3号被保険者のいずれにも該当しない人
☑第3号被保険者:会社勤めもしくは公務員の人の配偶者として第2号被保険者の扶養に入っている人
自分自身での手続きは不要である
就職した本人がすることは、会社に年金手帳を提出するだけ。特に国民年金の脱退手続きなどは自分でする必要はありません。もし、年金手帳をなくした場合には、会社にいえば年金事務所に再交付の申請をしてもらうこともできます。ただ、年金手帳の再交付申請は自分でもできますので、会社に迷惑をかけないためにも自分で申請しておくといいでしょう。
国民年金保険料は毎月納付のほかにも前払い制度があります。前払い制度を利用すると保険料が割り引きとなるため、利用されている人もいるのではないでしょうか。前払い制度を利用したあとに就職した場合は、前納した国民年金保険料は後日還付されます。
年金保険事務所より「国民年金保険料還付請求書」が送られてきますので、口座番号など必要番号を記載して郵送しましょう。ただし、実際に口座に振り込まれるのは数ヶ月先になります。
厚生年金から国民年金への切り替え
退職日から14日以内におこなう
会社員や公務員の人が退職すると、退職日の翌日付けで厚生年金は資格喪失となり、国民年金第2号被保険者から第1号被保険者に切り替わります。このとき、一定の条件を満たす場合には、厚生年金の被扶養者、つまり第3号被保険者になることもできます。この種別変更は退職後14日以内におこなう必要がありますので、退職証明書や離職票など、退職日を証明するものを持参し手続きをしましょう。
では、年金の切り替えをしなかった場合はどうなるのでしょう。実は退職後に何も手続きをしなければ、自動的に第1号被保険者に切り替わります。制度上、日本では年金の未加入者というのは存在せず、20歳以上60歳未満の人であれば第1号・第2号・第3号のいずれかの被保険者に該当することになるからです。
ただし、手続きが遅れると納付書の交付に時間がかかってしまうことに。そうなると、退職日の翌日まで遡って納付額が計算されるため、後日、数ヶ月分の保険料をまとめて請求されることになります。一度に多額の保険料を納めることになってしまいますので、それを避けるためにも早めに手続きしましょう。
各市区町村役場の国民年金窓口でおこなう
国民年金から厚生年金への切り替えは、住まいの地域の市区町村役場の国民年金窓口でおこないます。その際、退職日を証明するもののほかに、年金手帳と印鑑も持参しましょう。
社会保険には任意継続の制度がありますが、年金については対象外です。つまり、会社を退職した場合は、国民年金の加入者になるか、厚生年金に加入している配偶者の扶養に入るかのいずれかになりますので注意しましょう。
国民年金と厚生年金の扶養の切り替え
配偶者の勤務先へ異動届を提出する
結婚して退職したとき、配偶者が厚生年金に加入している第2号被保険者なら、厚生年金の被扶養者になることができます。厚生年金の被扶養者になると、国民年金第1号被保険者から国民年金第3号被保険者となり、保険料は払わなくてもよくなります。
ただし、自動的には切り替わりませんので、手続きが遅れてしまうと国民年金を支払うことに。速やかに配偶者の会社に「被扶養者(異動)届」を提出するようにしましょう。そのほかの必要な書類は配偶者の会社に確認してください。
配偶者の厚生年金の扶養に入るためには、年間の収入が130万円未満になることが見込まれる場合に限ります。このとき、雇用保険の失業給付なども収入として見なされます。雇用保険の被扶養者になれるのは、失業給付の日額が3,611円以下まで。日額3,612円以上になると被扶養者となることができないので注意が必要です。
配偶者が退職すると資格を喪失する
もし、配偶者が退職するなどして第2号資格を喪失した場合は、配偶者として扶養されていた人の第3号資格も喪失し、第1号に切り替わります。この際も自動的に切り替わりませんので、年金事務所での切り替え手続きが必要となります。
もし、手続きを放置するとどうなるのでしょう。保険料の支払いができないため、その分が未納となってしまいます。そうすると将来もらう年金額が減らされるなど受給するときに不利になってしまうことに。それに加え、年金をもらうときに過去にさかのぼって記録を修正するなど面倒な手続きが生じることがあります。このようなことがないように、必ず第1号への切り替え手続きはおこないましょう。
厚生年金と国民年金の切り替えによる支払い
月の途中退職は当月分は国民年金を支払う
厚生年金の保険料は会社を辞めた月の前月分まで納めることになっています。例えば、3月に会社を辞めた場合、厚生年金は2月分まで納めます。そのため、辞めた月末が第1号被保険者の場合は、国民年金加入者となり国民年金を支払う必要があります。
厚生年金の資格は退職したその日までですので、厚生年金の資格喪失日は退職日の翌日となります。退職日は資格喪失日ではありませんので、注意しましょう。
月の途中入社の当月分は厚生年金を支払う
厚生年金の保険料は月単位で計算されます。第1号被保険者の人が月の途中で入社した場合、入社日がいつであっても入社日当日に第2号に切り替わることに。例えば入社日が当月1日でも23日であっても、その月は厚生年金を支払うことになります。
厚生年金は給与をもらう月の給料から、前月分の保険料を控除するのが原則。つまり入社した月が10月なら、11月にもらう給与から10月分の保険料が控除されることになります。
当月中に入社退職すると国民年金を支払う
では、当月中に入社と退社をした場合はどうなるのでしょうか。資格を取得した月は、加入期間が1日だけだとしても1ヶ月分の厚生年金保険料を納める必要があります。そのため、厚生年金の保険料は退職時の給料から控除されることになりますが、月末時には国民年金に加入していることになるため、国民年金保険料も支払うことになります。そうなると、厚生年金と国民年金の二重払いとなってしまいます。
従来は当月中に入社退職すると二重払いをする必要がありました。ただ、平成27年10月の法改正によって当月中に入社退職をした場合は、厚生年金の納付は不要となり、国民年金の保険料を納めればいいということに。もし、厚生年金の保険料が天引きされていた場合には、勤務先から還付してもらうようにしましょう。
例えば、A社に平成27年10月1日入社し、平成27年10月21日に退職し月末まで再就職しなかった場合。平成27年10月21日から国民年金に加入していることになるため、10月分は国民年金保険料を支払う必要があります。A社から支払われる給与からは保険料は控除されませんが、万が一、控除されていた場合には、会社から保険料を還付してもらう必要があります。
健康保険と国民健康保険の切り替え
国民健康保険は本人が手続きをおこなう
国民健康保険に加入していた人が就職すると、一般的には会社の健康保険に加入することになります。健康保険の加入手続きは会社から配られる書類に必要事項を記載し、年金手帳とともに提出すれば会社がしてくれます。ですが、役場では健康保険に加入したかどうかが把握できないため、国民健康保険は自動的に脱退しません。そのため脱退手続きは本人がする必要があります。
もし、脱退手続きを忘れてしまうと健康保険と国民健康保険の二重請求となってしまいます。また、就職後、会社の社会保険証が届く前に国民健康保険を利用して医療を受けると、国民健康保険の負担分が後日請求されてしまうことにもなりかねません。そのため、できるだけ早く脱退手続きをしましょう。国民健康保険の脱退手続きは各市区町村役場でおこないます。必要な書類は下記の通りです。
☑勤務先で加入した健康保険証(コピーでも可)もしくは健康保険資格取得証明書
☑国民健康保険の保険証(家族全員分)
☑本人確認ができるもの(運転免許証、個人番号カードなど)
☑マイナンバーが確認できるもののコピー(個人番号カード、マイナンバーが記載されている住民票など)
会社で手続きしてもらった社会保険証が手元に届くまでには、書類を会社に提出してから2週間程度かかります。ですが、通院中などの場合、健康保険証が手元にないと医療費を全額自己負担することになり、負担が大きくなってしまいます。
そのときは、会社に「健康保険被保険者資格証明書」の交付を依頼しましょう。証明書は即日交付されます。この証明書があれば、健康保険証の代わりとなり普段通りの負担額で医療行為を受けることができるのです。
月末日の加入保険で請求書が発行される
社会保険・国民健康保険ともに、毎月月末にどちらの保険に加入しているかで請求書が発行されます。そのため、月末までに国民健康保険の脱退手続きが済んでいれば、入社当月分からは国民健康保険の保険料を支払う必要はありません。ただし、国民健康保険は原則、1年分の保険料を9ヶ月もしくは10ヶ月に分けて納付するため、保険料を毎月支払っていたにもかかわらず、未納分が生じてしまうことがあります。
国民健康保険の年間保険料は、前年4月~3月の世帯収入などを元に算出されます。住まいの地域にもよりますが、これを翌年の6月~3月(10ヶ月間)、もしくは7月~3月(9ヶ月間)に分割して納付します。仮に年間の保険料30万円とし、6月~翌3月の10ヶ月間で納付するとしましょう。このとき1回の納付額は30,000円となります。例えば、年の途中10月10日で就職し、会社で健康保険に加入したとすると、国民健康保険の保険料は4月~9月分の6ヶ月分だけ納めればいいということになります。
国民健康保険の保険料は年額で30万円でしたが、6ヶ月分に計算しなおすと15万円。6月~9月までの4回分は納付していますので、30,000円×4回分=12万円が納付済み額となります。つまり、差額30,000円が未納ということに。この未納分は10月納付分で納めることになります。住まいの地域の納付期限などについては、市区町村の国民健康保険窓口に直接問い合わせください。
国民健康保険の脱退手続きは郵送も可能
国民健康保険からの脱退手続きは、原則各市町村役場での窓口でおこないますが、仕事で忙しい等の理由で役場まで行けない場合には、郵送での脱退手続きも可能です。下記の書類を住まいの地域の各市町村役場に郵送しましょう。
☑国民健康保険異動届(資格喪失)
☑勤務先で加入した健康保険証のコピー
☑国民健康保険証(家族全員分)
☑世帯主または本人の身分証明書のコピー(運転免許証、個人番号カードなど)
☑マイナンバーが確認できるもののコピー(個人番号カード、マイナンバーが記載されている住民票など)
国民健康保険異動届(資格喪失)は、各市町村のホームページからダウンロード可能です。もし、ダウンロードできない場合には、郵送でも取り寄せ可能ですし、保険証のコピーの余白部分に「勤務先の健康保険に加入した」など脱退理由と住所、氏名、電話番号を記載して提出すれば手続きをしてもらえます。
国民健康保険の脱退手続きは代理人も可能
国民健康保険の脱退手続きは、本人ではなく代理人でも可能です。必要書類は上記の郵送の場合に必要なものに加え、代理人の身分証明書(運転免許証、個人番号カードなど)が必要です。別の世帯の人が代理人として手続きする場合には、世帯主または本人が記入した委任状が必要になります。
ここでの「別の世帯」は住民票上の別の世帯のことをさします。住民票は世帯ごとに作られますので、同じ住所に住んでいても別の世帯という場合があります。例えば、二世帯同居をしていて、父と長男がそれぞれ世帯主として住民票登録をしている、といったケースです。このようにたとえ同居していたとしても、本人と代理人の世帯が異なれば委任状が必要になるため注意が必要です。
国民年金の加入手続きは本人が忘れずに
国民年金の加入手続きは本人がする必要があります。忘れずにおこなうようにしましょう。所得が少ないなど、保険料を納めることが経済的に難しい場合には、本人の申請手続きによって承認を受けると、保険料の納付が免除になるなどの制度もあります。納付が難しい場合には、必ず免除などの申請をおこなうようにしてください。