確定申告はサラリーマンでも必要。損をしないための手続きの方法とは

“確定申告はサラリーマンにはあまり関係がないこと”と考えがちですが、最近の副業ブームで「しなければならない人」が急増しています。従来通り「すれば得する人」も方法を知らずに損をしてしまわないよう確定申告について詳しく知っておくとよいでしょう。

確定申告した人が得する可能性がある場合

年間10万円以上の医療費

確定申告をする本人とその家族を含めた全員で、一年間に医療費として10万円以上掛かった場合には、確定申告をすると所得税の還付を受けることができます。この医療費控除は、年末調整ではできない処理なので、必要に応じて自分で確定申告をしないと控除を受けることができません。

確定申告で医療費控除を受けるときは、家族の中で一番所得が多く、税率の高い人が確定申告をすると納めている所得税が多いので、還付される金額が多くなる可能性があります。家族の中で誰の名義で控除を受けるのが得かを考えて確定申告をする人を決めるようにしましょう。

1年間に掛かった医療費を計算する時には、保険会社から支払われた入院給付金などの保険金や、健康保険から支給される高額医療費、出産育児一時金など受け取った金額を差し引きして計算する必要があります。支払った医療費から保険金などで受け取った金額を差し引きして、10万円以上になる場合には確定申告をして所得税の還付を受けるようにしましょう。

医療費として認められるもの

☑ 治療のために受診した病院の領収書と治療のために利用した公共交通機関の費用

☑ あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師に施術を受けた時の領収書(ただし、病気治療のものに限るので、体調を整えるためや疲れを癒すといったものは控除の対象外になります。)

☑ 病気療養中の世話を依頼した家政婦の費用

☑ 妊娠がわかってから出産までの定期健診や検査に掛かる費用と通院に必要な公共交通機関の費用

☑ 発育段階にある子どもの治療のための歯科矯正(美しい歯並びを目的とした歯科矯正は対象外になります。)

☑ 風邪などの治療のために購入したドラッグストアでの薬代(レシートに印のついているもの)

治療のために利用する公共交通機関で領収書が発行されないものが多いですが、家計簿や覚書などで通院日と使った交通機関、費用を関連付けて記入しておくことで控除の対象として計算することができます。

リフォームや購入などによる住宅ローン

住宅ローンを組んで、家を新しく購入したりリフォームした場合、一定の条件を満たしていれば、10年間「住宅借入金等特別控除」を受けることができます。住宅借入金等特別控除を受ける場合には、1年目に確定申告をする必要があります。

翌年からは会社の年末調整で処理してもらうことができるので、住宅ローンを組んで住宅を購入したりリフォームした時には確定申告を忘れないようにしましょう。

「住宅借入金等特別控除」を受けるために必要な条件

☑ 1.新築もしくは、取得日から6ヶ月以内に住み始めていること。控除を受ける各年の12月31日に継続して住んでいること。

☑ 2.登記簿に記載されている床面積が50平方メートル以上で、半分以上を居住用に使用する目的で購入した住宅であること。

☑ 3.民間の金融機関や住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)からの借入金を10年以上分割して返済する契約をしていること。

☑ 4.バリアフリーのための改修工事や、省エネ住宅への改修工事、三世代同居のためのリフォームをしたとき。

☑ 5.昭和56年5月31日以前に建てられた住宅の耐震工事をしたとき。

ふるさと納税などの寄付

国や地方公共団体、特定公益増進法人(自動車安全運転センターや赤十字など)に寄付をした場合は、確定申告をすることで、寄付金控除を受けることができます。多くの人が行っている「ふるさと納税」は、納税という名前が付いていますが、実際は地方自治体への寄付という扱いなので、寄付金控除の対象になります。

都道府県や市町村などに、寄付をした年には確定申告をして寄付金控除を受けるようにしましょう。ふるさと納税だけでなく、国が定めた団体(特定公益増進法人)への寄付も、その金額の中から自己負担額である2,000円を差し引いた全額が控除対象になるので、確定申告をして所得税から控除してもらうことができます。

株式などの売買

資産運用のために株式投資をしている人で、その年に株式等の売買で損失が出てしまった場合には確定申告をすることで、損失を3年間繰越すことができます。翌年以降の株式売買で売却益が出た時に、損益通算することができるので、売却損が出た年には確定申告をして損失分を繰越しておくようにしましょう。

また、所有している株式等の配当金や分配金をもらった時には、総合課税で確定申告をすると配当金などに掛かる税金が安くなる可能性があります。配当金などに掛かる源泉徴収税率は20.315%なので、本業の収入に対する税率が20%以下の場合、確定申告をすれば過払い分を還付してもらうことができます。

総合課税では、1年間のすべての所得を合算した課税所得金額によって、税率が7.2%〜44.335%と段階的に変化していきます。課税所得金額が少ない人の場合には、配当所得の税率よりも低い税率で計算されるので得になります。ただし、本業の給与収入に対する税率が20%以上の人(課税所得が330万円超の人)には、申告してもメリットがありません。

会社勤めでも確定申告が必要な場合

副業による収入が20万円以上ある

会社員として勤めていて、会社で年末調整をしてもらっている場合は、その他の収入があっても20万円以下の場合ならば確定申告をする必要はありません。しかし、20万円を超えてしまうと給与収入と合わせて確定申告をする義務があるので、副業による収入がある場合は注意が必要です。

副業の収入からは、その収入を得るために掛かった経費を差し引くことができます。(副業収入)−(掛かった経費)=20万円以上の場合のみ確定申告をすることになります。

経費として計算するものについては、基本的に領収書が必要になります。副業のために購入した物品の領収書はしっかり保管しておくようにしましょう。ただしインターネットでクレジットカード払いによって物品を購入した場合などで領収書が手元にない場合は、カードの明細書での確認できれば認められます。

源泉徴収の猶予を受けている

震災や風水害、火災などといった災害によって、大きな被害を受けてしまった時に受けることができる措置として、源泉徴収の猶予があります。災害免除法によって定められている源泉徴収の猶予を受けるための条件は、災害で住宅や家財の価額の50%以上の被害を受けた人で、その年の合計所得金額の見積りが1,000万円以下の人に適用されます。源泉徴収の猶予は税務署に申請書を提出すると受けることができます。

この災害免除法などによって源泉徴収の猶予を受けていると、勤めている会社では年末調整を受けることができません。そのため自分で確定申告をすることで、所得税や復興特別所得税の精算をすることができます。

2カ所以上から給与がでている

働き方の多様化により、パートの仕事を2カ所以上掛け持って仕事をしている人や、会社に勤めながらパートを掛け持ちしている人など、複数の会社から給与を受け取っている人が増えています。

この場合、どちらの会社でも年末調整を受けていないという人はもちろんのこと、一つの会社(主たる給与を受け取っている事業所)で年末調整を受けている場合でも、年間で得た収入をすべて合計した総額で確定申告をして所得税を正しい金額で納税する必要があります。

給与収入が2,000万円以上となる

その年の給与収入が2,000万円以上になる高額給与所得者は、会社での年末調整を受けることができないので、確定申告をして所得税を正確な金額に精算します。多くの高額給与所得者は、税理士や公認会計士といった税金のプロに依頼している人も多いですが、自分でも比較的簡単に確定申告はすることができます。

年末調整をする時と同様に、個人で契約している生命保険や地震保険の保険料の支払いを証明するハガキや、住宅借入金等特別控除などの申告書を用意して、国税庁のHPから確定申告書の作成を行うことができます。住宅借入金等特別控除は、給与収入が年間3,000万円以上の人には適用されないので、申告する時には注意が必要です。

キャリアアップにつながる特定支出控除

適用範囲が広がりサラリーマンでも使いやすい

サラリーマンでも確定申告をすることで、仕事のために必要になった支出を経費として控除してもらうことができます。その制度が特定支出控除で、以前は適用とされる範囲がとても狭く、とても使いにくい制度でしたが、平成25年の法改正によって対象となる範囲が広くなったことから、多くの人が使いやすく適用を受けることができるようになりました。

キャリアアップのために必要な費用でも、今までは自己負担していた英会話教室の費用や、セミナーの参加費、そこに行くための交通費なども対象範囲に認められるので、領収書などをきちんと保管しておきましょう。

控除対象例

特定支出控除の対象事例としては以下のようなものがあります。

☑ 1.通勤費:会社に通勤するために使う交通機関の料金を、個人で支払っていて会社から通勤費の支給が無い場合や、会社の負担額を超えている金額。

☑ 2.転居費:転勤に伴った引越しによって掛かる費用を個人で支払った場合の引越し料金など。

☑ 3.研修費:仕事を円滑に続けていくために必要な技術や知識を深めるために受ける研修に必要な費用。

☑ 4.資格取得費:仕事をするうえで必要になる資格を取得するために必要な費用。法改正以前は、自動車免許や簿記など限られた資格だけの適用だったのですが、改正後では、医師、弁護士、公認会計士など多くの資格が追加されたので、キャリアアップのための資格取得がしやすくなりました。

☑ 5.帰宅旅費:単身赴任をしている人が、その配偶者や家族の住む家に帰る時に掛かる交通費。

☑ 6.勤務必要経費:仕事をする時に必要になる本や雑誌、新聞などの購入費用(図書費)。勤務時に着用する制服や事務服、スーツなどの購入費用や、アパレル関係の仕事に従事している人が勤務中に着るために購入する自社ブランドの洋服などの購入費用(衣服費)。

広がった範囲として、対象となる資格が医師や弁護士などその資格だけで事業を営むことができるものにまで拡大されたことや、研修費も英会話教室や管理職が受けるマネジメントのセミナーといった広く仕事の役に立つものまで、申請が可能になりました。

法改正によって新しく追加された項目は、図書費や衣服費、交際費といったものがあり、合計65万円までは本代や洋服代、取引先との飲食代なども控除できるようになりました。

会社のハンコを忘れずに

特定支出控除を受ける場合には、勤めている会社に報告して、それが仕事に必要であったことを証明してもらう必要があります。そのために、確定申告をする時には「特定支出控除に関する証明書」に会社の承認のハンコを押してもらうことを忘れないようにしましょう。

気になることがあったら確定申告シーズン前に税務署へ相談に

確定申告と聞いても、会社勤めをしている人にとってはあまり関係ないものと思いがちですが、「申告しなくてはならない場合」だけでなく、「申告すると得する場合」も多くあります。所得税から控除を受けることができるものがある場合は、確定申告をして払い過ぎた所得税の還付を受けるようにしましょう。申請することができる控除について気になる事は、最寄りの税務署で相談すると詳しく教えてもらうことができます。

ただし、確定申告のシーズンである2月、3月は税務署がとても忙しく混雑もするので、ゆっくり対応してもらうことができない場合があります。確定申告について気になることがあれば、なるべく早めに税務署に行って相談するようにしましょう。

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